第一稀元素化学工業
【東証プライム:4082】「化学」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、『世に価値あるものを供給し続けるには、価値ある人生を送るものの手によらねばならぬ。価値ある人生を送るためには、その大半を過ごす職場を価値あるものに創り上げていかねばなるまい。』という経営理念のもと、『稀な元素とともに、「100年企業」へ』をビジョンに掲げ、永続的に成長を続ける企業グループを目指します。
「価値あるもの」とは、社会課題の解決に貢献する独創的で付加価値の高い製品のことです。次に「価値ある人生」とは、自身の夢や理想の実現に向かって成長する公私ともに充実した生き方のことです。そして「価値ある職場」とは、ジルコニウムのトップメーカーの一員であることに誇りを持ち、「キゲンソらしさ」を体現する仲間がいる職場のことです。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、「世に価値あるものを供給し続ける」という経営理念のもと、ジルコニウム化合物の開発・供給を通じて社会課題の解決に取り組んでまいりました。近年、自動車業界では電動化及び脱炭素化の潮流が加速しており、当社の主力製品である内燃機関車向け材料の市場は構造的な縮小局面を迎えております。こうした事業環境の変化を踏まえ、当社グループは、持続的な成長の実現に向けて、事業ポートフォリオの転換を進めております。
その一環として、2023年3月期から2032年3月期までの10年間を対象とした中期経営計画「DK-One Next」を策定し、「新たな事業を創出し続け、今後10年に起こる大きな環境変化を乗り越える」ことを中期経営方針として掲げ、経営資源の重点配分を進めております。また、2025年5月には、同計画の前期(2023年3月期~2026年3月期)の進捗状況を踏まえ、当初計画との差異を分析のうえ、中期(2027年3月期~2029年3月期)及び後期(2030年3月期~2032年3月期)の定量目標を見直し、経営戦略の実効性と柔軟性を高める方針を中期経営計画「DK-One Next」の進捗として公開いたしました。
本中期経営計画では、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアを戦略分野として位置付け、当社従来の自動車排ガス浄化触媒分野及び基盤分野で得られた利益を成長投資に振り向けることで、戦略分野及び新規事業の売上構成比を2029年3月期に30%、2032年3月期には50%以上とすることを目指しております。「新規事業の創出」「収益構造の改革」「革新的なものづくりの実現」「成果を出し続ける組織づくりの実践」「キゲンソらしさの更なる醸成」「サステナビリティへの取り組み」の6つの柱を掲げ、それぞれの活動に対しKPIを設定し、ガバナンス体制のもとで継続的なモニタリングを行っております。これらの取り組みを通じて、変化に対応できる強固な経営基盤を構築し、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
(3)目標とする経営指標
中期経営計画「DK-One Next」では、2029年3月期(第73期)及び2032年3月期(第76期)に向けた定量的な経営目標を以下のとおり設定しております。2025年5月に策定した新たな目標値では、従来の売上・利益指標に加え、資本効率や株主還元の視点を重視し、ROE及びDOEを新たに明示しています。
経営目標(連結)
| 第73期 2029年3月期 | 第76期 2032年3月期 |
目標 | 目標 | |
売上高 | 410億円 | 500億円以上 |
営業利益 | 30億円 | 75億円以上 |
EBITDA | 70億円 | 105億円以上 |
ROIC | 4% | 9%以上 |
ROE | 5% | 11%以上 |
DOE | 1.8% | 1.8% |
配当性向 | 30% | 30% |
当該計画においては、ROICスプレッド(ROIC-WACC)の最大化を重視し、収益性の向上と資本効率の最適化を両立する方針としております。これに加え、2025年5月の目標見直しに際しては、株主還元との整合を意識し、経営指標としてROEを新たに設定するとともに、配当方針においてDOEを下限として明示することで、成長と株主還元の両立を図る体制を明確化いたしました。また、キャッシュアロケーションに関しては、2026年3月期から2032年3月期までの期間において、累計355億円程度の営業キャッシュ・フローを見込んでおり、これを財源として、戦略分野増産投資75億円、研究開発投資80億円、基盤投資70億円、M&Aを含む成長投資65億円、株主還元65億円等に配分する計画です。これにより、成長投資と財務健全性の両立、並びに持続的な株主還元の実現を目指しております。
なお、投資判断にあたっては、適切なハードルレートを設定し、個別案件ごとに採算性や戦略的意義を評価のうえ、意思決定を行う方針です。基盤分野についても、収益性及び資本効率の観点から精査を行い、慎重かつ柔軟な投資運営に努めてまいります。
これらの目標及び方針は、現時点において入手可能な情報に基づくものであり、今後の経済環境、業界動向、原材料価格、為替変動その他の不確実な要素により、実際の業績とは乖離する可能性があることをご理解願います。
(4)優先的に対処すべき課題
当社グループは、内燃機関搭載車向け需要への依存リスクを低減すべく、新規事業や戦略分野を軸足とする事業ポートフォリオの再構築を進めております。また、主原料であるジルコニウム化合物に関しては、2025年7月に本格稼働を予定しているベトナム新工場を、中国以外の供給拠点として位置づけており、早期安定稼働とコスト競争力の強化に注力しております。これらの重点事項を含め、次の課題に取り組んでまいります。
①新規事業の創出・戦略分野の開発活動の強化
当社グループでは、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアといった戦略分野への展開を重点施策として位置づけ、製品・技術開発並びに市場開拓に取り組んでおります。
2025年3月期には、半導体・ヘルスケア用途では堅調な成長を示しました。一方、エネルギー分野においては目標未達が見込まれる状況を踏まえ、市場ニーズとのギャップ分析を実施し、製品開発及び営業戦略の再構築に着手しております。今後は、用途別の価値提案力を高め、顧客との協業や共創を通じた提案型ビジネスを強化することで、販売拡大を目指します。
また、中期経営計画のローリングを通じて、戦略分野におけるKPIの進捗確認及び前提条件の妥当性を継続的に検証し、市場環境の変化に即応できる柔軟な戦略運営を行ってまいります。当社グループは、これらの分野を将来の成長ドライバーと位置づけ、資源配分の最適化を図りながら、グローバル市場での競争優位性を確立してまいります。
②主原料調達のサプライチェーンの強化
ベトナム新工場においては、オキシ塩化ジルコニウム(以下、「ZOC」という。)のフル生産体制の早期確立を最重要課題と位置づけ、現在、設備整備及び人材配置を順調に進めております。生産初期段階における安定稼働を目的に、現地運営体制の強化、保全計画の構築、現場従業員に対する教育訓練を重点的に実施してまいります。また、安定稼働と並行して、製造コストの最適化も重要な課題と捉え、エネルギー使用量や原材料コストの削減に向けた製造条件の見直し、資材調達の見直しといった取り組みにより、コスト構造の再構築を推進しています。今後も、本工場を当社グループにおける原料調達の重要拠点として位置づけ、その競争力と供給安定性の強化に努めてまいります。
また、レアアースに関しましては、今後も複数国のサプライヤーとの関係強化に努め、安定的な調達を進めてまいります。なお、酸化イットリウムのような特定国以外からの調達が厳しく、国家政策によって輸出が規制されるレアアースにつきましては、戦略的に在庫を積み増すとともに官民一体の取り組みで対応してまいります。
③キャッシュ創出力の強化と収益性の改善
当社グループは、中長期的に安定した経営基盤を確立・維持するため、収益性の向上と資産効率の改善に注力しております。棚卸資産の削減に向けては、製品品種やロットサイズの見直しに加え、ITシステムの活用によるリードタイム短縮を進めております。あわせて、原価低減を目的とした生産プロセスの革新及び業務プロセスの効率化に取り組み、継続的な改善を図っております。今後もキャッシュ創出力の強化と収益性の改善の取り組みを継続してまいります。
④温室効果ガスの排出削減への対応
当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献すべく、温室効果ガス(以下、「GHG」という。)の排出削減を中長期的な経営課題と位置づけ、段階的な取り組みを推進しています。高効率設備の導入や運転条件の最適化、廃熱回収の活用などによる省エネルギー活動を継続し、エネルギー使用量の削減に取り組んでいます。また、再生可能エネルギーの導入についても検討を進めており、脱炭素に向けた中長期の排出削減ロードマップを策定・具体化しております。更に、GHG排出量の把握・管理体制を整備し、Scope1・2に加え、サプライチェーン全体(Scope3)の見える化にも取り組んでいます。今後は、TCFD等の国際基準への対応や排出量の対外開示を強化し、ステークホルダーとの信頼関係を一層深化させてまいります。
当社グループは、環境対応を成長の機会と捉え、事業活動を通じて脱炭素社会の実現に寄与してまいります。
⑤多様な人材が活躍できる基盤づくり
当社グループが新しい価値を創出しながら成長を続けるためには、多様(国籍、年齢、性別、社歴など)な人材の活躍が必要であることから、海外人材の採用と育成、若手人材の積極登用、女性管理職候補者の育成及びシニア人材が貢献できる制度の整備を進めております。更に、多様な人材が活躍できる基盤づくりとして、キャリアプラン面談や心と体の健康相談を通し、多様な価値観を実現する場として、価値ある職場を創り上げる活動を実践してまいります。
⑥成長を続けるための組織力強化と人材育成
当社グループが「100年企業」として持続的に成長し続けるためには、組織力の強化とともに、人材の多様性と挑戦を尊重する企業風土(キゲンソらしさ)の醸成が不可欠であると認識しております。特に、チャレンジした人が正当に評価される仕組みの構築や、組織の中核を担う経営管理職層の底上げ、それぞれの職場におけるプロフェッショナル人材の拡充の実現に向けて以下の取り組みを推進しております。
人事制度並びに給与制度の改定を2025年3月期より進めており、今後は社員の挑戦意欲と貢献意識を高めるための運用を実践してまいります。組織力強化のためのマネジメントの仕組みの変革や能力向上に重きを置いたプロフェッショナル人材の育成を通じて、成果を出し続ける組織全体の強靭化と次世代リーダー育成のための活動を定着させます。
これらの取り組みを通じて、社員一人ひとりが成長を実感できる環境を整備し、企業としての持続的競争力の向上と、次なる成長ステージへの飛躍を目指してまいります。
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