企業兼大株主積水ハウス東証プライム:1928】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

 私たち積水ハウスグループは、企業理念として、根本哲学を「人間愛」、基本姿勢を「真実・信頼」、目標を「最高の品質と技術」、事業の意義を「人間性豊かな住まいと環境の創造」に据えています。

 根本哲学である「人間愛」とは、「人間は夫々かけがえのない貴重な存在であると云う認識の下に、相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする奉仕の心を以て何事も誠実に実践する事」であり、積水ハウスグループは、この「人間愛」に根差し、「真実・信頼」を旨として、「最高の品質と技術」の提供を通して、「人間性豊かな住まいと環境の創造」という使命を担ってまいります。

 このような企業理念のもと、1960年の創業以来、第1フェーズ(1960年~1990年)「住宅性能の向上」では「安全・安心」な住宅を、第2フェーズ(1990年~2020年)「先進的技術の開発」では「快適性・環境配慮」を追求し続けてきました。

 現在は、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンのもと、2020年からの30年を第3フェーズ「高付加価値の提供」として、「健康・つながり・学び」を追求し、事業を通じて「お客様の幸せ」「社会の幸せ」「従業員の幸せ」を提供することで「人生100年時代の幸せ」を担う社会づくりを目指しています。

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題ならびに中長期的な会社の経営戦略 

 世界経済は、各国のインフレ継続や金融引き締め政策、ならびに為替変動や地政学リスクが、エネルギーや原材料価格及び調達コストに与える影響に注視が必要な状況が継続するものと見られます。

 国内の住宅市場では、人生100年時代の到来やWith/Afterコロナ等によるライフスタイル・価値観の多様化、気候変動に伴う自然災害の激甚化、及び長期優良住宅の認定制度の見直しや建築物省エネ法の改正等を背景に、省エネルギー性能が高い住宅等、安全・安心と快適性・環境配慮を両立する高品質な住宅へのニーズが高まることが想定され、多様化する顧客のニーズへの対応が求められます。

 また、アメリカの住宅市場では、インフレと金利上昇の影響により住宅市場は調整局面にあるものの、良質な住宅の供給不足を背景とした潜在的な需要は強く、経済環境の安定とともに回復することが想定される新築住宅需要の顕在化への対応が求められます。

 当社は、このような事業上の課題認識に基づき、2050年を見据えたグローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”のもと、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とする第6次中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定しました。

 当社グループのコアコンピタンスである「技術力」「施工力」「顧客基盤」と、商品・技術開発から、営業・設計・施工・アフターサービスまで、住まいづくりに関わるすべてのプロセスを当社グループが担う独自のバリューチェーンを活かし、既存事業の深化と拡張を図ります。

 また、日本で培った積水ハウステクノロジーの移植による海外での事業展開や、社会・事業環境の変化への対応やデジタル技術の活用による新規事業の開拓と拡張を推進します。

 加えて、従業員のキャリア自律支援やベクトルの一致、ダイバーシティ&インクルージョンの推進等の取り組みを通じ、当社グループの更なる人財価値の向上を図り、グローバル企業としての成長を加速させます。

 財務面においては、資本効率を意識した成長投資の推進と財務健全性のバランスを保つことが重要という認識のもと、キャッシュリターン創出力の強化によるROE向上と、ESG経営推進の相乗効果により企業価値の向上を目指します。

 成長投資は、国内外の不動産投資と、人財、IT・DX、研究開発、M&A等への成長基盤投資を積極的に実施します。財務健全性は、D/Eレシオと債務償還年数(Net Debt/EBITDA倍率)を適正な水準でコントロールすることで国内信用格付AA格、ならびに外国信用格付A格を維持しつつ、更なる成長に向けた投資余力の確保に努めます。株主還元については、中期的な平均配当性向を40%以上とする従来方針に加え、株主還元の更なる安定性向上を図るべく第6次中期経営計画期間の一株当たり配当金の下限を年間110円(2022年度実績)とするとともに、機動的な自己株式取得の実施により株主価値向上を図ります。

■各ビジネスモデルの事業方針と戦略

 上記の事業上及び財務上の課題に対応するため、事業戦略と組織の連動性を高め、資本効率の向上を図ることを目的として2023年度よりセグメント構成を見直し、以下のとおり事業戦略(*1)を策定しました。

セグメント

事業方針と戦略

請負型

ビジネス

モデル

戸建住宅

価格レンジ別戦略の深化により戸建住宅ブランドの強化を図る

■  3ブランド戦略の深化

■  CRM(*2)戦略の推進

■  ハード・ソフト・サービスの融合

賃貸・

事業用建物

エリア戦略に基づく高付加価値物件を供給し、シャーメゾンブランド向上を図る

■  エリアマーケティング強化

■  高付加価値シャーメゾン

■  CRE(法人)・PRE(公共団体)事業(*3)強化

建築・土木

環境対応・技術力をドライバーに、顧客・社会への持続的な価値創出の安定基盤を築く

■  建築:受注チャネルの拡大・深化

■  土木:環境・技術による差異化

ストック型

ビジネス

モデル

賃貸住宅管理

オーナー様・入居者様への充実したサービスを提供するプロパティ・マネジメントを実践する

■  オーナー向け:資産価値の最大化

■  入居者向け:サービスの強化

リフォーム

累積建築250万戸から形成される住宅ストックの資産価値向上と長寿命化を提案

■  戸建住宅:大型リフォーム強化

■  賃貸住宅:資産価値向上リノベーション

開発型

ビジネス

モデル

仲介・不動産

徹底したエリアマーケティングと中長期視点の投資判断により、都市と地方の開発を実施

■  四大都市圏の都市再開発

■  地方創生に資する開発事業

マンション

都市再開発

国際事業

開発事業中心型から開発事業・戸建住宅事業を両輪とする2本柱の事業ポートフォリオとするべく、戸建住宅事業の積極的な成長戦略を継続する。米国・豪州を中心に戸建住宅事業で、2025年までに海外での供給戸数1万戸を目指す。開発事業においてはパートナーとの連携強化及び多様化により利益最大化と安定化を目指す。

■  アメリカ

 戸建住宅・コミュニティ開発:M&Aにより販売エリアを拡大し、商品・生活提案を含む一気通貫のテクノロジー移植を総合的に進める

 賃貸住宅開発:事業エリアとパートナーシップの多様化を図りながら新規開発を推進する

■  オーストラリア

 エリア戦略とブランド確立で、国際事業の2本目の柱に拡大

■  シンガポール

 有力なアジア企業との緊密なパートナーシップ

■  英国

 M&Aによる技術・事業の進出

*1 第6次中期経営計画の詳細は、当社ホームページにてご確認ください。

<中期経営計画>

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/plan/index.html

*2 CRM:Customer Relationship Management。顧客から得られた情報を一元的に管理し、適時適切に活用することによって、顧客との良好な関係を構築・維持し、価値創出と収益向上をめざすマネジメントの仕組み・手法

*3 CRE・PRE事業:Corporate Real Estate(企業不動産)、Public Real Estate(公的不動産)を指し、法人・企業・公共団体・行政機関の保有する不動産の有効活用を提案する事業

(3) 目標とする経営指標

①資本効率及び財務健全性

ROE          :11%以上を安定的に創出

 信用格付け      :国内AA格・外国A格の確保

 当社は、国内AA格・外国A格を確保すべくD/Eレシオ0.5倍程度、債務償還年数(Net Debt/EBITDA 倍率)1.5年を下回る水準を目途とし、積極的な成長投資と財務健全性のバランス保持に努めます。

②2024年1月期 業績目標

(単位:億円)

 

2023年1月期

実績

2024年1月期

計画

増減額

増減率

売上高

29,288

30,800

1,511

5.2%

営業利益

2,614

2,650

35

1.3%

経常利益

2,572

2,590

17

0.7%

親会社株主に帰属する

当期純利益

1,845

1,930

84

4.6%

EPS(1株当たり当期純利益)

276.58円

295.05円

18.47円

6.7%

ROA(総資産事業利益率)

9.1%

8.8%

ROE(自己資本利益率)

11.9%

11.6%

1株当たり配当金

110.00円

118.00円

8.00円

7.3%

配当性向

39.8%

40.0%

(4)サステナビリティに関する考え方及び取組み

①サステナビリティの基本方針と取組み

 当社グループは、長期ビジョンの目標年である2050年に向けたNEXT SEKISUI HOUSE「30年ビジョン」を基礎として、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”をグローバルビジョンとして掲げ、住を基軸に、融合したハード・ソフト・サービスを提供するグローバル企業として、お客様、社会、従業員の「幸せ」を最大化する取り組みを推進します。

 ビジョンの達成のために「ESG(環境・社会・ガバナンス)経営のリーディングカンパニー」を目指し、取締役会は、ESGの取組みを当社グループの経営基盤を支える重点項目と定め、中期経営計画に織り込んで推進しています。

 当社グループは、取締役会での決議を経て、ESG経営を進めるにあたってのマテリアリティ(重要課題)として「良質な住宅ストックの形成」、「持続可能な社会の実現」、「ダイバーシティ&インクルージョン」を特定し、マテリアリティの取り組みに向けたテーマとKPIを掲げています。

 また、当社グループは、サステナビリティを軸に、当社の価値創造に影響をもたらす中長期の課題を分析し、リスク要因を洗い出すとともに、リスクを将来の事業創出の機会と位置付け、中長期の事業戦略立案に繋げています。

 取締役会は、専門的な知見を有する2名以上の社外委員を含むESG推進委員会を設置し、ESG経営の取り組みの進捗と課題等についての意見交換を通じて実効性を高めています。ESG推進委員会は3ヵ月に1回のペースで開催し、内容は取締役会に報告され、審議されています。また、リスクに関する内容については、リスク管理委員会にも共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しています。

ESG推進委員会では、その推進を担う3つの部会、「E:環境事業部会」「S:社会性向上部会」「G:ガバナンス部会」を設置、ESG3部会長には、それぞれ職責者を任命し、目標・KPIを設定しています。本3部会は、各部門・国内外のグループ会社と連携しながら、ESG経営の旗振り役として先導していくとともに、実効性ある取り組みを行います。そして、その取り組みについて、進捗報告と普及に向けた課題・改善提案のフィードバックを通じて、全従業員の理解・浸透を図ります。

 さらに、2020年6月に発足したESG経営推進本部が主管部署となり、ESG推進委員会での議論を踏まえ、当社内及び国内外のグループ会社と連携の上、ESG経営のさらなる推進を図っています。また、「全従業員参画」「先進的な取り組み」「社外評価向上」をESG経営推進の3要素として位置づけました。加えて、最大のポイントとなる「全従業員参画」のため、ESG経営の基盤づくりを実践する基本的な活動を「ESGベーシック」として従来の対話や研修を体系化するなど、全従業員が認知・理解・共感して行動につなげるためのプラットフォームを構築しました。

 また、当社グループは、社会課題へのアプローチを通じて、顧客価値最大の社会づくりとSDGsへの貢献を目指しています。

 サステナビリティについての取組み内容の詳細については、Value Report2022を発行し、当社WEBサイトで開示を行っていますのでご参照ください。なお、Value Report2023の発行は2023年6月を予定しています。

<Value Report>

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/annual/

②気候変動に対する取組み(TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示)

◇ガバナンス

 当社グループでは、ESG経営に関わるあらゆる取り組みが社会の常識や期待と合致しているかをチェックしながら、その活動方針を定め推進する「ESG推進委員会」を取締役会諮問機関として設置し、3ヵ月に1回開催しています。気候変動対応は本委員会の重要議題の一つとして位置づけており、活動方針の妥当性や進捗状況の評価を行うとともに、重要事案については取締役会に報告しています。

ESG推進委員会の傘下に、環境経営に関わる本社部門の職責部長および各事業部門の環境責任者を中心とした全社横断の「環境事業部会」を設置し、適時に開催しており、より具体的で詳細な検討を行っています。また、ESG推進委員会の決定事項は環境事業部会を通じて、関連会社を含む全グループに展開し浸透させています。

ESG推進委員会を通じた経営層の監視の実効性確保のために、取り組みの推進は、各業務の担当取締役や経営層への日常的な報告と指示を経て進めており、これによってタイムリーな監視・監督機能を確保しています。

◇戦略

 当社グループは目指すべき事業全般の脱炭素化への歩みを着実に進めるために、今後起こり得るさまざまな事態を想定し、戦略の妥当性や課題を把握すべく、事業活動および資源の固有の状況や、物理的リスクについて想定される事業活動・期間・資産の耐用年数などを考慮したシナリオ分析を行っています。また、移行リスクについて法制化、技術開発、市況に係る潜在的なシナリオに基づき評価し、事業活動に与える気候関連のリスク(物理的リスクおよび移行リスク)と機会を抽出し、対応しています。

2021年度は、カーボンニュートラル達成に向けた日本の新たな温室効果ガス排出量削減目標として2030年までに2013年比46%削減が設定され、これに基づき住宅産業に関わる中長期にわたるさまざまな方向性も示されました。そのため、全事業を対象としてあらためて大規模なシナリオ分析を実施し、戦略の見直しを行っています。シナリオ分析により特定した、財務影響が大であると想定された主要なリスク・機会と対応を示します。

 なお、ここで財務影響と想定期間については以下のとおり定義します。

 財務影響 大:200億円以上、中:100億円以上、小:100億円未満

 想定期間 短期:現在より3年まで、中期:2030年まで、長期:2050年まで

(主な移行リスク)

[影響]カーボンプライシングは世界で広く採用されている。日本においても政府による炭素税導入の検討がなされており、比較的早期に導入される可能性がある。(財務影響 大、想定時期 中期)

[対応]グループ全体やサプライヤー企業の事業活動における脱炭素に向けた取り組みは中期では道半ばであり、仮に炭素税や排出権取引単価が1万円/t-CO2程度かかると、その影響は大きい。RE100の推進、事務所や生産設備などの省エネルギー化、サプライヤーとの協働による建材製造段階のCO2排出削減など、すでにバリューチェーン全体においてさまざまな取り組みを始めており、この影響をできるだけ早期に減らしていく考え。

[影響]長期的には、カーボンニュートラルに求められる規制強化に対応するための住宅価格の高騰、また省エネルギー性能や耐震性能に劣る住宅が減り、良質な住宅ストックの住み継ぎが増えることにより、新築市場自体が縮小する可能性がある。(財務影響 大、想定時期 長期)

[対応]当社の取り組みは先行しているため、短中期の規制強化に対する影響は小さい見込みだが、長期のさらなる規制強化に対しては、コストを抑えた脱炭素住宅の開発に計画的に取り組む必要がある。また、あわせて新築市場縮小に備え、ストック型ビジネスを強化する考え。

[影響]管理物件の脱炭素化性能が十分でない物件は競争力を失い、入居率・家賃の低下につながる。(財務影響 大、想定時期 長期)

[対応]管理物件のZEH住戸比率を高めるとともに、非ZEH住戸の脱炭素化リフォームを推進し、借り手に訴求力のある賃貸住宅の価値の維持・向上に努める。

(主な物理的リスク)

[影響]全国規模での気象災害により、当社グループで保有する資産(工場、オフィスビルなどの事業拠点、生産設備や車両など)が罹災し、事業が継続できなくなる、また、補修や交換のための大きなコストが発生する可能性がある。(財務影響 大、想定時期 中期)

[対応]当社グループは日本国内では沖縄県を除く全国で事業展開しており、本社機能を含み一部エリアで災害が起こった場合は、被害のないエリアがサポートすることで事業を継続できる体制をすでに構築済み。このような事業継続性に関するBCP対応は、リスク管理委員会により適切に管理され、必要に応じて更新している。なお、日本国内の5工場について河川氾濫ハザードマップまたは内水氾濫シミュレーションにより浸水深を想定して被害額を算定したところ、浸水被害を受ける可能性のあるのは兵庫工場を除く4工場であり、最も大きい被害が想定される関東工場についてIPCC(*1) RCP8.5シナリオに基づくさらに詳細な分析を行った結果、すでに加入済みの保険の補償範囲内であることを確認済み。ただし、今後、さらに自然災害の激甚化が増加し、大規模災害が全国で同時に発生した場合を想定すると、当社事業も甚大な被害が想定されることから、災害へのレジリエンス性強化の検討は継続する。

*1 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change。気候変動に関する政府間パネル

(主な機会)

[影響]日本政府が家庭部門の温室効果ガス排出量を2030年までに2013年度比で66%削減することを目標に掲げるなど、ZEH・ZEBの普及は重要施策として位置づけられている。また、消費者のエシカル志向や、事業者の脱炭素指向が進み、今後ますますZEH・ZEBの需要が高まると考えられる。(財務影響 大、想定時期 中期)

[対応]当社の戸建ZEH比率は90%を超えており、すでに標準仕様の状況。現在は、賃貸住宅・分譲マンションでも積極的に推進を始めている。これまで培った日本一のZEH受注実績を活かし、グループ全体においてZEH・ZEB受注を拡大していく。

[影響]日本政府は2030年以降に新築されるすべての建物でZEH水準の省エネルギー性能を求める考えであり、いずれは賃貸住宅のZEH化が一般化する中、消費者のエシカル志向の高まりとともに、ZEH賃貸住戸のニーズが飛躍的に高まる可能性がある。(財務影響 大、想定時期 中期)

[対応]当社は2018年に日本で初めて全住戸ZEH基準を満たす賃貸住宅を竣工して以来、入居者様に訴求できるZEH住戸の普及に取り組んでいる。すでに2万7千戸以上の受注実績があり、将来のエシカル消費者を中心とした賃貸ZEHの需要拡大に備えている。

[影響]2030年までの政府目標「家庭部門の温室効果ガス排出量2013年比66%削減」の達成にはストックの省エネ改修も不可欠であり、さまざまな政策支援策も想定されるため、脱炭素リフォームの受注増加が見込まれる。(財務影響 大、想定時期 中期)

[対応]カスタマー対応、リフォーム提案などにより、断熱改修や燃料発電・蓄電池の受注は増加傾向にある。特に、居住エリア中心の部分的な断熱強化を行う「いどころ暖熱」は、工期やコストのお客様負担が少なく好評。これらのリフォームは災害レジリエンス性を高める点も訴求している。今後も現実的に普及可能なリフォーム提案を推進していく考え。

◇リスクマネジメント

 当社グループでは、グループ全体のリスクマネジメントプロセスの一環として、気候変動関連リスク及び機会を判断するための評価をTCFDの提言に基づき実施しています。リスクと機会の抽出は、グループ全体を対象に各事業の主幹部署を中心に行い、その結果は環境事業部会で集約し、財務影響評価を行っています。このプロセスに基づき特定した主要なリスクと機会については、取締役会の諮問機関であるESG推進委員会において検討した後に、取締役会に報告し、必要に応じてリスクの緩和・移動・受容・コントロールについて検討します。さらに、この結果はリスク管理委員会にも共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しています。

◇指標とターゲット

 当社グループでは、2008年に、2050年までに住まいからのCO2排出ゼロを目指す「2050年ビジョン」を宣言し、事業活動全体において、再生可能エネルギーの利用も含めてCO2排出収支ゼロを目指し、すでにさまざまな取り組みを開始しています。

 この目標達成へのマイルストーンとして、2030年までに企業が自社で直接排出するスコープ1(直接排出量:自社の工場・オフィス・車両など)とスコープ2(間接排出量:電力など自社で消費したエネルギー)、およびスコープ3(カテゴリ11:供給した住宅の使用段階)におけるCO2をそれぞれ2013年度比で50%、45%削減することを目指し、SBTより認定を受けています。さらに、スコープ1,2については、1.5℃目標に整合させるべく75%削減に目標を上方修正しています。

 スコープ1・スコープ2のGHG排出量

分類

排出量合計 t-CO2e

対象

スコープ1

55,483

積水ハウス(単体)、国内外の主要な連結子会社(51社)

スコープ2

26,319

同上

合計

81,802

同上

 集計期間=2022年2月より2023年1月末

※ 当社グループでは、2022年6月に発行したValue Report 2022において、詳細なTCFD提言に沿った情報開示を行っています。当社WEBサイトをご参照ください。

<Value Report>

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/annual/

※ また、Value Report 2023を2023年6月に発行する予定であり、本誌でより詳細なTCFD提言に沿った情報開示を行います。また、上記表のスコープ1・スコープ2のGHG排出量については有価証券報告書作成時点での暫定値であり、確定値、ならびに算定基準、スコープ3に掛かるGHG排出量等はValue Report 2023にて開示する予定です。

③人的資本・多様性に関する取組み

◇人財の育成、社内環境整備に関する方針

<人財開発基本方針>

 グローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”を実現するための人財理念として「積水ハウスを世界一幸せな会社にする」を掲げています。この実現に向け、「人財価値を最大化し、知と経験のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)で事業成長を牽引する」を当社グループの人財開発基本方針と新たに定めました。

 創業以来、創意と挑戦のDNAを受け継いだ当社グループでは、「人生100年時代の幸せ」を担うべく、人財価値と社会価値の向上により、さらなる企業価値の向上を目指します。

<社内環境整備方針>

「誰もが働くことに、やりがいや幸せを感じられる会社」を目指し、諸施策の整備を進めます。

◇人財育成・社内環境整備の考え方及び主な取り組み

 従業員の自律を支援し、自律した従業員と組織のベクトルを合わせて人財価値を最大化することで、お客様の幸せと社会の幸せを実現したいと考え、“人財価値の向上=「従業員の自律」×「ベクトルの一致」の向上”をグループ共通言語と新たに定め、トップメッセ―ジを通じて、従業員への周知・浸透を図っています。

 また、人財価値向上のため、1)キャリア自律支援 2)DE&Iの推進 3)多様な働き方の推進 4)幸せの基盤づくり 5)企業理念と戦略を浸透するリーダーの育成 6)戦略に応じた人財の確保と適正配置 を重点項目として、2021年に着手した人事制度改革とともに、人財関連施策を立案・推進しています。

1)キャリア自律支援

 従業員が自らのキャリアビジョンを描き、その実現に向けて主体的にチャレンジできるよう、強力にサポートしています。2003年に開始したキャリア自律意識を醸成する各種研修については累計16,987名が受講し、自律的なキャリア形成に意欲を高めています。また、マネージャー職の責任範囲、職務内容、必要な知識・スキルを定めた職務記述書を作成し、従業員に公開しています。さらに、2022年からは人財公募制度もスタートし、グループ会社を含む多くの従業員が新たなキャリア機会にチャレンジしています。

2021年から開始した創発型表彰制度第2回「SHIP」では、初年度よりも68.9%増の6,295名が参加、組織の壁をこえ、自ら提案したアイデアを具現化するプロセスをメンバーと楽しみ、数々の新たな価値を生み出しています。

2)DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進

 すべての人財がそれぞれの多様性を尊重し活かし合い、自身の能力を最大限に発揮することで生み出されるイノベーションを通じて従業員と企業がともに持続的に成長することを目指しています。

 従業員と企業のサステナブルな成長を図るため、2006年に「人材サステナビリティ」を宣言しました。「女性活躍の推進」「多様な人財の活躍」「多様な働き方の推進」をダイバーシティ推進方針の三つの柱とし、取り組みを進めてきました。

2016年には「女性活躍推進法」に基づく「積水ハウスグループ女性活躍推進行動計画」を定めて活動を強化しました。2019年に目標を前倒しで達成し、2021年に新たな目標を設定し、着実に実行しています。

 当社の女性活躍推進に向けた取り組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「なでしこ銘柄」に6度選定されています。

 また、2020年4月には「積水ハウスグループ人権方針」を策定しました。従業員一人ひとりがお互いの多様性や価値観、働き方を認め合い、自由闊達なコミュニケーションが行われる職場環境づくりを目指して、具体的な方針や推進体制を定め、実行しています。

i)女性活躍推進

「住まい」を通じて社会課題の解決に貢献し、新たな価値を創造するために「女性の活躍」を重要な経営戦略のひとつと位置づけています。「積水ハウスグループ女性活躍推進行動計画目標」において、2025年度までにグループ全体※1で女性管理職を310名以上登用することを目標値としています。2023年1月末時点の女性管理職数は302名(4.6%)で第5次中期経営計画期間の目標に対し、116.2%の達成状況となっています。

 柔軟な働き方に代表される諸制度の整備の結果、2022年度には女性従業員正社員比率は、28.9%となり、建設業界平均14.2%※2の2倍超となっています。

※1 積水ハウス㈱、積水ハウス不動産グループ、積水ハウス建設8社(2023年2月より積和建設15社を合併・商号変更)、
積水ハウスリフォーム㈱、積水ハウス ノイエ㈱の合計

※2 2021年度建設業平均

ii)社会人採用

 社会人採用も積極的に進めており、2022年度実績は603名を採用し、採用者全体に占める社会人採用者の割合は43.5%です。

 今後も引き続き、経営人財、DX人財、ガバナンス強化にかかわる人財等、多様性を強化する方針のもと、毎年の新規採用者に占める社会人採用者の割合を高めていく予定です。

iii)グローバル人財の活躍推進

 国籍を問わない人財採用と能力適性を考慮した積極的な登用を進めています。海外子会社においては、人員強化の観点から、現地採用を積極的に行い、優秀な現地採用者の重要ポストへの登用を進めています。2022年には、米国戸建住宅事業持株会社にて現地採用者を社長に登用、その他重要ポジション※3へ5名登用しました。

※3 現地法人のC-Suiteポジション

3)多様な働き方の推進

 従業員総活躍を目指し、さまざまな両立支援の推進は非常に重要であると考えます。介護や治療と仕事との両立を支援する制度整備、昼休憩時間を活用した事例紹介や外部専門家による情報提供機会の設定等を行っています。

 育児と仕事の両立については、制度整備に加え、本人ならびに上司向けに職場の配慮事項等をまとめた情報の提供、メンターとつながる場の提供、職場復帰にむけた保育園情報の提供、復帰後の一時保育への補助金制度の拡充等に取り組んでいます。引き続き、人財活躍促進につながる諸施策の検討を進めます。

4)幸せの基盤づくり

 従業員の幸せの源泉は健康の維持・増進であると位置づけ、「幸せ健康経営」に取り組んでいます。具体的には、ESG推進委員会の社会性向上部会の幸せ健康プロジェクト(2021年6月発足)が中心となり、健康保険組合、外部アドバイザー等と連携して、課題の抽出、全社方針の策定、具体施策の立案、全従業員への周知・浸透を図っています。AIによる健康診断結果活用サービスや自身の組織幸福度を可視化できる幸せ度調査を活用するなど、「幸せ健康経営」に取り組んだ結果、健康経営優良法人(ホワイト500)に3年連続(2020年~2022年)認定されています。

 また、「社員に幸せになってもらいたい」という想いに基づき、2018年より「男性社員1ヶ月以上の育児休業完全取得」を推進しています。社内全体の意識改革への取組みを強力に推進し、制度整備、家族や職場とのコミュニケーションツールの開発、申請システム整備等を行った結果、2019年2月の本格運用開始以降、期限を迎えた対象者全員(2023年1月末1,571人)が1ヶ月以上の育休取得を完了(2021年4月以降はグループ会社も全員取得)しています。また、「日本でも男性の育児休業取得が当たり前になる社会」を目指し、2019年より社外への情報発信も積極的に行っています。

5)企業理念と戦略を浸透するリーダーの育成

 当社グループとしてお客様と社会に幸せを届けるためには、自律した従業員に企業理念と事業戦略を浸透させ、組織力を生み出すリーダーの存在が不可欠です。

 組織成果創出力・人財育成力・組織活性化力等の強化のためのマネジメント対象の階層別研修を強化、実施しています。また、支店長・本社部長・工場長等の組織リーダー候補の選抜と育成を目的に2018年から実施している経営塾、2019年にスタートした若手(30~35歳)リーダー候補者を育成する「SHINE! Challenge Program」によって、次世代のビジネスリーダーを計画的に生み出す土壌を作り、継続的に実施しています。

2021年からは執行役員、業務役員およびキーポジションの後継者候補を挙げ、全社的かつ多様な視点で透明度の高い議論を行うサクセッションプラン会議を開始しました。候補者全員の個別育成計画を立案し、定期的な進捗レビューを実施することでリーダーパイプラインのさらなる充実に努めています。

 また、グループリーダー以上の全マネージャー職を対象に多面観察を実施しています。フィードバックされた結果を基に、マネジメント行動の変革に向けたアクションプランを作成し、定期的なコーチングによる内省を通じてマネジメント力の向上に取り組んでいます。

6)戦略に応じた人財の確保と適正配置

各ビジネスユニットの事業戦略に基づく人財ニーズを把握し、適正配置を実現すべく、持続的成長に必要な人財の採用・育成を計画的に進めています。リファラル採用をはじめとする多様な手法や媒体を活用し、入社直後からの活躍を支援するオンボーディングプログラムを積極的に拡充しています

 人的資本・多様性に関する取組み内容の詳細は当社WEBサイトの「Value Report2022」「ダイバーシティ&インクルージョン」をご参照ください。なお、Value Report2023の発行は2023年6月を予定しています。

<Value Report>

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/annual/

<ダイバーシティ&インクルージョン>

https://www.sekisuihouse.co.jp/diversity_inclusion/

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