企業石光商事東証スタンダード:2750】「卸売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループはコーヒー等の飲料及び食品の専門商社として主に業務用の分野で事業を行っております。経営理念「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」のもと、事業活動のミッションとして「世界の食の幸せに貢献する」ことを掲げております。当社グループは1906年創業とわが国にあって比較的長い業歴を有しておりますが、更に業歴を伸ばし「永く続く会社となること」に重点を置いております。その必要条件として以下を規定しております。

・社会に必要とされ続ける会社であること

 社会と同じ方向を向いて事業を行うこと、利益とともに社会貢献にもしっかり取り組むこと

・顧客、取引先に必要とされ続ける会社であること

 価値を共有するパートナーから信頼され、頼りにされ、よい顧客、よい取引先であり続けること

・株主に必要とされ続ける会社であること

 ガバナンスを強化し、適切な還元と発信により株主に愛され、満足し続けていただくこと

・従業員に必要とされ続ける会社であること

 従業員に適切に報いるだけでなく、働きやすさ、働きがいを追求し、従業員に愛され希望が宿る職場であり続けること

・変化に対応し続ける会社であること

 変化に対する感度を高め、変化に対し常にしなやかに対応できる会社であり続けること

・利益を安定継続して出し続ける会社であること

 社会や環境に配慮しながら事業や取扱商品の新陳代謝をすすめ、労働生産性・資本生産性を追求し続けること、適切な事業ポートフォリオを追求し続けること

 そしてこれらの必要条件の充足を着実に進めていくため、継続的に新たな「商売の仕組み」「経営の仕組み」「人事の仕組み」「働く仕組み」の確立や改革改善等、さまざまな「仕組み化」を進めております。

 また、当社グループは2022年度よりスタートさせている中期経営計画「SHINE2024」をもとに、GHG(温室効果ガス)を削減しながらの企業成長や、社会的課題解決のビジネス化等の土台作りに取り組み、2025年4月からは新たな中期経営計画「SHINE2027」をもとに変革と実践を掲げ、一層の経済的価値・社会的価値の追求を目指しております。

 当社の事業はコーヒー・茶類事業、食品事業、農産事業、海外事業の4つに分類され、それぞれの取り組みは以下のとおりであります。

① コーヒー・茶類事業

 コーヒーや茶類の輸入、加工、販売を通じて「1杯の幸せ」をつくり、消費者の皆様にお届けしていきます。原料となる作物の特性上、発展途上国との関りが深く、長期間のパートナーシップの構築により、安定した雇用や技術の向上、生活の改善に貢献するとともに、生産国と共同で社会課題解決に向けて取り組んでいきます。

② 食品事業

 日本国内外で開発する業務用や中食等の食材の販売により「食の豊かさ」を支えていきます。さまざまな分野でのこだわり食材に加え、共働き世帯に役立つ食材、歳を重ねてもいつまでもおいしく食べられる食材、自然災害等による価格高騰から食卓を守るための食材等の提供により、世の中に貢献していきます。

③ 農産事業

「安全安心かつサステナブルな農産物で、世界のステークホルダーの幸せに貢献する。」をミッションとし、専門性を持って付加価値のある海外及び国内の生鮮野菜と加工野菜の安定供給に努めると同時に、雇用の創出、循環型農業の推進、環境や生態系への配慮等、社会課題を解決する商品の開発にも注力していきます。

④ 海外事業

 日本の誇るべき文化と技術を「食」を通じて、多様化する世界の消費者ニーズに寄り添いながら広めていきます。また、海外グループ会社とのシナジーを活用することで、世界の食文化の発展に貢献していきます。

(2) 経営環境

① 企業構造

 当社の企業構造については第1 企業の概況、3 事業の内容の事業系統図のとおりであります。

② 市場環境

 コーヒー・茶類事業、食品事業、農産事業、海外事業それぞれの市場環境・顧客動向は以下のとおりであります。

1)コーヒー・茶類事業

2024年は、国際コーヒー相場が引き続き高騰し、記録的な水準をつけました。わが国のコーヒー輸入量は微増したものの、国内消費量は微減となりました。世界的にはコーヒー消費量の増加が継続しており、近年では生産国においてもコーヒーの消費が伸びており、消費国として成長を遂げている点が注目されています。

 わが国のレギュラーコーヒー市場においては、訪日外国人旅行客の増加もありホテル・レストラン・カフェなど業務用分野でのコーヒー需要はさらに回復傾向にありますが、一方で人手不足等の課題も顕著になっております。また昨今の平均気温上昇の影響もあり、アイスコーヒーの着目度も高くなっております。

 サステナブルコーヒーへの関心は引き続き高まっており、2024年は温室効果ガス排出抑制に向けた焙煎技術のイノベーションが進展しました。消費者のコーヒーそのものへの興味も持続しています。さらに、健康意識の高まりからカフェインレスコーヒーの注目度も引き続き高くカフェインレス市場規模も拡大しております。

 茶類市場に関しまして、家庭用品の市場につきましては数量ベースでは減少しているものの、市場に値上げが浸透し金額ベースでは増加しています。当社の主要な市場である工業用市場においてはRTD(Ready-to-Drink)のペットボトル飲料が大半を占めております。2024年におきましては大手メーカーの積極的なマーケティング及び夏の猛暑によりアイスティー需要が増加し、また麦茶飲料にも伸長が見られました。

2)食品事業

 コロナ禍を経て食の市場は外食へと一気にシフトし、その状況が今年も継続されております。その流れに沿って外食関連の市場規模は急速に拡大し、訪日外国人旅行客増加の後押しもあり、増勢は依然維持されております。まだ暫くこの傾向が継続されるものと思われますが、物流業界の2024年問題以降、慢性的な人材不足等が大きな問題として食品をはじめとする様々な業界に影響を及ぼしております。また、国内市場におきましては人口の減少に加え、高齢化の進展に伴い1人当たりの飲食量が減少することが見込まれ、さらには女性の社会進出、共働き世帯、単身世帯の増加による中食需要の高まりにより、中長期的には今の外食産業の市場規模拡大はいずれ転換点に達し、漸減に転じることも予想されております。

 日常の食生活で健康の維持・向上を図り、健康寿命延伸やアンチエイジングにつなげたいという意識が広まっており、小売等でも健康訴求商品の取扱い意欲を高め、供給側からは減塩化や健康ニーズに対応した商品の投入が進んでおります。またそうした健康面からのこだわり食材に加え、1人あるいは2人世帯の増加や家族バラバラの食事が増えていることにより、小容量タイプや食べ切りタイプといった個食対応の需要が今後一層増加すると考えられます。さらにはより調理が簡便な商品を求める傾向が強まっており、現に容器ごと電子レンジで調理できるような商品が増加中です。そうした動向に対する鋭い観察力を働かせ、きめ細かな、先回りした対応が求められております。

 分野別には、冷凍食品の分野で、近年、外食産業、給食業者、スーパー惣菜での人手不足により調理場、バックヤードの労働軽減のため調理のいらない自然解凍食品の需要が増えております。水産の分野では、わが国の漁船漁業が2010年代後半以降、地球温暖化や乱獲の影響で減少している一方、養殖量は中国やインドネシアやベトナムを中心に急速に伸びております。

3)農産事業

 近年気候変動による異常気象や自然災害の影響が拡大し、国産農産物の豊作・不作の振れが顕著になっております。加えて、国内の人口減少・高齢化による人手不足の問題は深刻化しており、この問題を解消するためにもオペレーションに優れた原料にて効率化を図る動きが強まっております。そのため、カット野菜や保存ができる輸入野菜での安定供給のニーズは今後さらに高まることが見込まれます。

 また、長く続いたデフレから、コロナ禍を機に一転した原料価格の暴騰で食品製造業は大きなコストアップを強いられており、価格転嫁に苦慮している状況下において、コストメリットのある輸入野菜は問題解決の一役を担っております。

 一方で、国内市場では価格だけではなく、品質管理の強化や社会課題解決型商品の開発が求められています。

4)海外事業

 世界における日本食事情は、輸出の増加と現地需要の拡大により引き続き成長を遂げています。健康志向や 食文化としてのブランド価値の高まりはもちろんのこと、日々増加している訪日外国人旅行客が、日本で体験した和食を帰国後に求めるという新しい需要も感じられるようになっています。また、世界の外食市場もコロナ前水準を上回る成長軌道にあり、この中で日本食レストランも増加を続けています。

 農林水産省が発表している2024年の農林水産物・食品の輸出額は、1兆5,073億円となり、前年比3.7%の増加で、過去最高を更新しました。

 なお当社輸出事業における主要顧客は日本食品の販売を手がける卸売業者となり、その内容は特定の商品を専門的に取扱う企業から広範に商品を取扱う企業まで幅広くあり、それぞれの事業規模も様々です。

 そうした顧客に対し、当社グループの専門性を活かすとともに、国内のメーカー=パートナーと緊密に協働し、求められる商品を安定的に供給し、信頼に応えております。また顧客と連携し、現地の食品管理に係る諸規制や流通制度にも対応しております。

③ 競合の状況

 当社グループの事業について、グループ会社のコーヒー・飲料関連の加工工場資本設備を除き総じて比較的少額の資本により新規参入、あるいは川上・川下からの参入が可能であると目され、事実、相応の競合は存在しております。しかしながら事業遂行にあたっては、かなり高度な専門知識や経験に基づくノウハウ、顧客・取引先との相互の信頼関係が伴わなければならず、当社グループはそうしたソフト面の知見や基盤をもとに競争優位を図っております。コーヒー・茶類事業、食品事業、農産事業、海外事業それぞれの競争優位のポイントは以下のとおりであります。

1)コーヒー・茶類事業

・原料、加工技術、品質管理等に関して、業界をリードする広範で深い知見、諸資格を有する人材の豊富さと、こだわりの原料から加工までお客様のニーズに合わせた商品価値創造力

・原料の生産者・輸出業者と長年かけて構築したパートナーシップとそれからもたらされる最新の情報や付加価値の創造力と提案力

・海外拠点(中国、タイ、インド、英国)との連携による広範で深い知見と多角的な視点

・グループ会社が有する東西の焙煎工場機能

・コーヒーや紅茶の商品特性からGHG(温室効果ガス)削減や多様性、生産国とともに生きるための社会課題解決型商品の提案とサステナブルな取組とその価値の提供

2)食品事業

・食品原料、製品、それらの加工技術、品質管理等に関する広範で深い知見

・国内外の多数の食品原料供給元、製品の製造元とのつながり、他方、ニーズ先との接点とそれらの情報の結合

3)農産事業

・商品ごとの高度な専門性を有した担当者による知見と対応力

・供給元との密接な連携により確立された、安定的な供給網

4)海外事業

・食品に関する深く広範な知識と国内メーカーとの厚い信頼関係

・輸出先国の輸入食品管理に係る諸規制や流通制度に関する情報、輸出に係る貿易知識

④ 法改正その他

 当社グループは、事業の遂行にあたって、品質・衛生・表示面についてわが国の食品衛生法、JAS法及び食品表示法等を遵守しております。加えて海外との取引が盛んな当社は、輸出入を行う商品に関し対象国の法的規制も受けており、各国で法令の変更や新たな法令の施行等があった場合には、それを適切に受け入れ遵守していく必要があります。その上、わが国と輸出入先の国とで食品衛生等に関する基準が異なる場合には、そのどちらをも充足するように対応していくことが求められております。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

① 利益の絶対金額(最終利益及び営業利益)

 当社グループは、ステークホルダーとの双方向での実りある関係の維持・発展、すなわち[a]顧客に提供する商品について満足をいただき収入を得る、[b]取引先に仕入れた商品や受けたサービスの対価を支払う、[c]従業員に適切に報い安心して働いてもらう、[d]金融機関等に対しサービスに応じた金利、手数料を支払う、[e]国・地方政府にきちんと税金を納める、[f]株主に配当等により適切に報いる、の関係の均衡の取れた拡大を経営の根幹に置き、それに基づくさまざまな事業活動と直接的にリンクする最終利益(親会社株主に帰属する当期純利益)の絶対額確保を最も重視しております。また事業面でその最終利益を特に大きく左右するものとして営業利益をキーとして捉え、その絶対金額及びその従業員1人当たり金額も注視しております。なお、ステークホルダーの満足度という点では従業員満足度等も考慮しております。

② 自己資本当期純利益率(ROE)

 当社グループは、株主視線での効率化指標として自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。

 自己資本当期純利益率の最近の状況は次のとおりであります。

回次

第71期

第72期

第73期

第74期

第75期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本当期純利益率(%)

5.27

5.45

7.70

9.48

7.45

(注)自己資本 = 純資産合計-新株予約権-非支配株主持分、期首・期末の平均により計算

 わが国では広く自己資本当期純利益率8%が一つの基準とされておりますが、当社グループは長らくその水準に達しておりませんでしたが、徐々に改善が図られ、前連結会計年度はクリアしましたが、当連結会計年度は再び8%を下回っております。引き続き安定して適切な水準を確保できるよう運営してまいります。

 なお近時わが国において株価純資産倍率(PBR)が1を割れている会社が多く存在し、改善への取り組みの必要性が指摘されております。当社グループも残念ながら1を割れております。PBRは本項のROEと株価収益率(PER)の積によって表され、当社グループのPBRとPERの最近の状況は次のとおりであります。

回次

第71期

第72期

第73期

第74期

第75期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

株価純資産倍率(倍)

0.40

0.42

0.56

0.84

0.58

株価収益率(倍)

7.51

7.72

7.28

8.83

7.76

(注)純資産は上記の自己資本で、発行済株式数を8,000千株として計算

 すなわちROEの改善はPBR引き上げのための重要なファクターであると認識され、当社グループは当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画「SHINE2024」のなかで、業績向上の取り組み、IR活動の強化と適切な株主還元等により、ROEとPBRの両方の漸次引上げを図るよう努めてまいりました。しかしながら、当初目標として掲げていた数値には届かず、引き続き改善に向けて努めてまいります。

 またROEが「売上高当期純利益率」と「売上高に対する総資産の回転率」と「自己資本比率の逆数」の積に分解されることはよく知られているところです。「売上高に対する総資産の回転率」の改善を構造的な課題として中長期的に取り組み、短期的には売上高に対する各利益の比率に焦点を当て、なかんずく次項の売上高営業利益率の引き上げを図るべく、事業の見直しや刷新を進めております。

③ 売上高営業利益率

 売上高営業利益率の最近の状況は次のとおりであります。

回次

第71期

第72期

第73期

第74期

第75期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高営業利益率(%)

2.25

1.49

2.23

2.67

2.40

 当社グループは、自己資本当期純利益率の構成要素である総資産回転率や自己資本比率の過去の実績と実効税率等をもとに自己資本当期純利益率8%を達成するために必要な売上高営業利益率を概ね2.5%以上と算定し、事業全体としてこの2.5%を平均的・安定的にクリアすることを目標にしております。前連結会計年度はその目安を上回りましたが、当連結会計年度は仕入価格の上昇を直に転嫁することが難しく、売上総利益率は前連結会計年度に比べ減少し、また一部の海外子会社・関連会社で経済の停滞に伴う価格競争の影響等により収益環境が悪化したことにより、営業利益率は減少いたしました。その結果、当社グループ全体として再び目安の2.5%を下回りました。今後は収益の改善とROIC経営導入による投資効率管理の向上により安定的な売上高営業利益率の確保に努めてまいります。

④ 投下資本利益率(ROIC)

 当社グループでは、投資効率と価値創出の程度を把握するための指標として、ROICを用いております。ROICの重要性は以下2点にあります。

・投資効率の評価: ROICは、全ての投資資本(短期・長期の負債と自己資本)がどの程度効果的に使用されているかを評価するのに役立ちます。つまり、企業が投資した資本に対してどの程度のリターンを生み出しているかを示します。これは企業の資本配分の効率性を評価する上で非常に重要な指標となります。

・資本コストとの比較: ROICと資本コスト(WACC:加重平均資本コスト)を比較することで、企業が投資家から調達した資本のコストを上回るリターンを生み出しているかどうかを評価することができます。ROICが資本コストを上回っている場合、それは企業が投資家の期待を上回るリターンを生み出し、企業価値を創出していると解釈できます。

 ROICは、全ての資本(負債と自己資本)をどの程度効率的に利益に変換できているかを示します。当社はこれらの数値を向上させることで、投資家に対するリターンを最大化し、企業価値を向上させることを目指しています。

 事業によって使用する資本は異なり、前項の売上高営業利益率をそれぞれの事業の目標として一律に適用するのは必ずしも適切でないため、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「SHINE2024」のなかで、全社及び各事業の投下資本利益率を算定し、主要経営指標として注視することにしておりました。今後はこれをもとに的確に事業ポートフォリオマネジメントを行い、投資及び経営資源配分の最適化に繋げてまいります。

 なお、全社の投下資本利益率の最近の状況は次のとおりであります。

回次

第71期

第72期

第73期

第74期

第75期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

投下資本利益率(%)

3.77

2.67

4.40

5.08

4.58

WACC(%)

3.86

3.91

3.65

3.62

3.85

(注)投下資本利益率の分子は営業利益×(1-実効税率)で、実効税率は30.5%とし、分母は期首・期末の平均で計算

  WACCの計算に当たり、暫定的に負債コスト=1.25~1.65%

 株主資本コスト(自社及び類似業種他社のCAPMをもとに、証券会社等の意見を参考に算定)=6.5%

 以上のように、当社グループは株主資本コストと負債コストを織り込んで投下資本利益率をウォッチしながら、経営効率の向上を目指しております。

⑤ 運転資本関連項目の回転期間

 当社グループは、グループ会社にコーヒー・飲料関連の加工工場を有しておりますが、主たる事業は商社として卸売業であり、健全にキャッシュフローを回していくとの観点で棚卸資産、売上債権等、運転資本関連項目の回転期間を重視しております。これは前項の投下資本利益率にも影響を与えるものであります。

(4) 中期経営計画について

 当社グループは、長期経営計画実現のための橋渡しとして、中期経営計画をローリング方式により定め、実行しており、2023年3月期より中期経営計画「SHINE2024」(3か年計画)をスタートさせました。それはミッションに「世界の食の幸せに貢献する」を掲げ、永く続く会社=200年企業を目指し、「少しでも多くの、少しでも大きな食の幸せを創る」を目標にROIC経営、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指そうとするものであります。

 同計画途中では、当社グループを取り巻く事業環境が、当初計画策定時から著しく変化しており、足元の事業環境を踏まえ、中期経営計画の数値目標について上方に見直しを行うこととなりました。

 当連結会計年度で「SHINE2024」は最終年度となりましたが、当初掲げた数値目標の達成だけでなく、次期中期経営計画とのつながりも意識して、GHG(温室効果ガス)を削減しながら、社会課題解決型商品の開発及び高利益率商品へのシフトに積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指してまいりました。

 当連結会計年度においては、新規開拓や値上げの浸透により売上高は概ね順調に推移しておりますが、利益につきましては原料価格の著しい変動を受け商売が低迷するお客様層もあり、そうしたところでは原料価格アップを直に転嫁することが難しく、また一部の海外子会社・関連会社で経済の停滞に伴う価格競争の影響等により収益環境が悪化し、営業利益以下において前年同期比で減益を余儀なくされました。

 その結果、当連結会計年度における売上高は64,953百万円(計画値64,081百万円に対して1.4%プラス)、売上総利益は8,453百万円(計画値8,241百万円に対して2.6%プラス)、営業利益は1,557百万円(計画値1,404百万円に対して10.9%プラス)、経常利益1,336百万円(計画値1,396万円に対して4.3%マイナス)、親会社株主に帰属する当期純利益は888百万円(計画値939百万円に対して5.4%マイナス)となりました。

2026年3月期より新たに「SHINE2027」をスタートさせ、「変革と実践」をテーマに、ROICをもとにした事業・商品の見直しと今後の成長を見据えた必要投資、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発等に引き続き重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組んでまいります。

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、課題認識として、2010年代まで長きにわたり売上高及び利益が大きく成長しない状況が続いておりました。それは食品というわが国国内においては成熟した商品を取扱っていることに由来するものと考えられます。とは言え、わが国の食品業界において急成長を遂げている会社は存在しており、当社グループといたしましても、「永く続く」とともに成長の必要性を十二分に認識しております。その成長に関しましては、次の3点をテーマに取り組んでまいります。

・既存事業の枠組みのもとでヒット商品を生み出し、それを核に新規事業を発展させること

・成長余地のある海外事業を拡大させていくこと

・取扱商品に関し、GHG(温室効果ガス)削減等、プロセスやストーリーを含めた付加価値を創っていくこと

 上記以外にも、ブルーオーシャンの新規事業分野に進出していくこと、M&Aを積極的に行うことが考えられないではありません。しかしながら前者は、果たしてブルーオーシャンかの見極めが難しく、また既存の当社グループの知見や強みを活かせる分野でないと著しくリスクが高いものと思料しております。また後者は、いわゆるPMI(M&A後の事業統合)が障害となることが多く、わが国では過去のM&Aの多くが失敗であったという事実も考慮し、あくまでも目的でなく手段の一つであるとの認識のもとに選別的に展開することとしております。

 そうしたことから当社グループの今後の成長路線のためのテーマとして、上記の3つをまずは優先させております。

 このような企業成長と歩調を合わせる形で、当社グループは収益体質の強化、企業としてのより一層の健全化にも取り組んでまいります。今後の経営環境につきましては、引き続き国内景気の回復が期待されるものの、世界がリーダー不在(Gゼロ時代)で安定性を欠く中、主要国間の自由貿易体制をめぐる対立の他、地球温暖化対策や人権等の問題も絡まり、引き続き先行き不透明な状況が続くことが予想されております。

 そうしたなか、当社グループは、ミッションとして「世界の食の幸せに貢献する」を掲げ、永く続く会社=200年企業を目指しております。当社グループは2025年度から新たな中期経営計画「SHINE2027」(3ヶ年計画)をスタートさせ、「変革と実践」をテーマに、ROICをもとにした事業・商品の見直しと今後の成長を見据えた必要投資、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発等に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組んでおります。今後も引き続き事業の持続的成長を目指すため、以下を課題として挙げ、対処してまいります。

① ビジネスモデル変革

・高利益率商品へのシフト

・今後の成長に向けた必要投資(特にグループ会社)

・グローバル展開の加速

・デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進

・社会課題解決型商品の拡大

・GHG排出削減を踏まえた商品力強化

② 人財育成体制の再構築、エンゲージメント向上

・多様な人財の活躍による組織的人財力強化

・継続的な賃金ベースアップに向けた諸改革

・教育・研修費の適正化

・労働生産性の指標化

・企業風土の刷新…「一緒に、夢中に!」取り組む風土作り

・DE&Iの促進…「女性管理職比率の向上」「障がい者雇用率の向上」「男女の賃金格差縮小」

③ グループ経営深掘

・グループ全体でのシナジー効果追求、戦略人事推進によるグループ内の人財流動化促進

・グループ全体でのインフラ統合と効率化の推進

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