栗田工業
【東証プライム:6370】「機械」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念とし、2023年度において新たに企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」を定めました。また、当社グループの経営の中核的概念を、従来の「CSR」から「サステナビリティ」に広げ、企業活動と自然環境や社会システムとの相互影響を踏まえた持続的な成長を指向し、サステナビリティを標榜した企業ビジョンの実現に向けた当社グループの重要課題を「クリタグループのマテリアリティ」として定めました。
当社グループは、企業価値の向上と競争優位の創出に邁進し、株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様に対する適正かつ迅速な情報開示を通じ、より透明性の高い経営の実現を目指しております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
①価値創造ストーリー
当社グループは、企業理念の実現に向け社会と共に持続的、長期的に成長していくための道筋をクリタグループの価値創造ストーリーとして言語化しました。当社グループの一人ひとりが価値創造ストーリーの担い手となることで、企業理念の実現を目指してまいります。
(クリタグループの価値創造ストーリー)
私たちクリタグループは、世界の様々な現場で日々変化する水の課題に対しソリューションを提供しております。
現場から得られる水に関する課題や情報は、私たちの知として集約、蓄積されます。私たちはこの知の活用により、お客様の真の課題を理解し、お客様と共有できる形での価値の予測とともに最適なソリューションを提供します。
私たちは、予測した価値の実現により、お客様と社会との共通価値を創造(Creating Shared Value:CSV)し、社会と産業を変えていきます。そして、創造した価値にふさわしい収益を得るとともに、お客様と社会からの信頼を基に更なる現場と新たな知を獲得していきます。
②Value Pioneering Path
当社グループは、マテリアリティへの取り組みを中期経営計画PSV-27の戦略と有機的に融合させております。この全容をPSV-27計画における価値開拓および企業ビジョン実現の道筋として「Value Pioneering Path」に示し、グループ一体の取り組みによって企業ビジョンの実現を目指しております。
③中期経営計画
当社グループは、2023年4月より5カ年の中期経営計画「PSV-27」(Pioneering Shared Value 2027)をスタートさせました。マテリアリティの課題解決に繋がる社会価値を起点とした新事業の創出やCSVビジネスの展開に加え、顧客価値を起点とした既存ビジネスの深化・変革により、強固な社会価値・経済価値の創出基盤を確立することを目指しています。PSV-27 計画最終年度(2027年度)の目標は次の通りとしております。
(財務指標)
売上高 4,700億円
売上高事業利益率※ 16%
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE) 12%以上
投下資本利益率(ROIC) 10%以上
※事業利益は、売上高から売上原価ならびに販売費及び一般管理費を控除した恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の指標です。IFRSで定義されている指標ではありませんが、財務諸表利用者にとって有用であると考え、自主的に開示しております。
(主要な非財務指標)
CSVビジネスによる節水貢献量 250百万㎥
CSVビジネスによる温室効果ガス(GHG)削減貢献量 3,000千t-CO2以上
CSVビジネスによる資源化貢献量・資源投入削減貢献量 300%増(2022年度比)
「PSV-27」では「人材・技術・しくみを磨き上げ、圧倒的なスピードと課題解決力で、期待を超える価値を切り拓く」を基本方針とし、次の重点施策に取組んでいきます。
(重点施策)
・電子産業への重点化
超純水供給事業で蓄積した「水に関する知」をバリューチェーン全体で活用し、併せて営業・設計・調達の変革を実現することにより、圧倒的なスピードで深い顧客理解に基づくソリューションを提供し、世界の電子産業市場に対する事業展開を加速していきます。
・多様な産業を通じた社会との共通価値の創出とグローバル展開
各国・地域の顧客動向やニーズを一元的に把握し、CSVビジネスをはじめとした社会との共通価値を創出するソリューションをグローバルに展開します。また、サーキュラーエコノミーの視点で、企業と企業、企業と地域をつなげるソリューションを開発し提供していきます。
・社会課題を解決するイノベーションの推進
GHG排出削減、節水、資源循環などで社会に貢献する新たな領域の開発に中長期的な視点で取り組みます。また、外部機関との協業を推進し、新たな領域で確固たる競争優位性を確立していきます。
・技術立社としての基盤強化
技術立社を支える多様な分野の人材の獲得と育成を強化するとともに、世界の知財のビッグデータを駆使し、イノベーションや事業の方向付けを行います。また、デジタル技術を駆使した「水に関する知」の蓄積と利活用を進めていきます。
・グループ経営基盤のさらなる強化
当社の経営体制を変革し、コーポレート・ガバナンスの水準を一層高めていきます。また、多様な人材の育成と活躍の支援によるエンゲージメントの向上、生産プロセスの変革とサプライヤーとの共存共栄に基づく強固なサプライチェーンの構築、デジタル技術の早期確立と業務プロセスの変革によるデータドリブンな経営に取り組んでいきます。
(3) 会社の対処すべき課題
当社グループが2023年度にスタートした5ヵ年の中期経営計画 Pioneering Shared Value 2027(PSV-27計画)は、人材・技術・しくみを磨き上げ、圧倒的なスピードと課題解決力で、期待を超える価値を切り拓くことを基本方針としており、「顧客価値起点のトランスフォーメーションの実現」と「社会価値起点のイノベーションの創出」の2軸の競争戦略を通じて、企業ビジョンが目指す、社会に高い価値を提供するとともに、クリタグループが高収益企業へと成長することを目指しています。そのため、PSV-27計画には、企業ビジョン実現のための重要課題であるクリタグループのマテリアリティ解決の取り組みが有機的に組み込まれており、その全容は前項の②Value Pioneering Pathのとおりです。
PSV-27計画の2年目である当期は、電子産業における事業基盤の強化とグローバル展開の推進に取り組み、世界四極(日本、アジア、北南米、EMEA)での電子事業戦略の基本方針に基づいた活動を推進し、米国および欧州での案件を受注したほか、精密洗浄事業の市況低迷や水供給事業の計画変更を受けて、サービス事業の拡大を図りました。社会との共通価値の創出の取り組みにおける重点施策であるCSVビジネス(注1)の拡大については、新規CSVビジネスの創出に向けた業務プロセスの運用を開始したほか、既存CSVビジネスを中東・アフリカ・インドでも展開しました。社会課題を解決するイノベーションの推進に向けては、1件の新規事業を開始しました。また、技術立社としての基盤強化に向けた「水に関する知」として蓄積すべき情報の活用について、当期は国内で製紙工場の紙製品製造工程における水質データなどを活用し、製造品質の低下やそれに伴う操業障害などを事前に予測して、その原因の推定を可能にする予兆診断サービスの本格展開を開始し、中国・ASEANでは遠隔支援サービスを拡大しました。2025年度には、世界四極共通のデータ基盤の本格稼働を見込んでいます。さらに、グループ経営基盤の更なる強化として、取締役会による「長期的な方向付け」の策定に向け、取締役会およびサステナビリティ諮問会議において、長期的な外部環境の変化や当社グループの価値提供のあり方について検討を行ったほか、タレントマネジメントプラットフォーム構築に向けた取り組みを進めました。
これらの取り組みの結果、多くの重点施策で一定の成果が見られ、2024年度までの計画は次のとおり順調に進捗しています。しかしながら、前述の精密洗浄事業の市況低迷や水供給事業の計画変更等の影響を踏まえて、2025年度以降は計画達成に向けて中期的な視点で重点施策を推進する必要があります。
PSV-27計画の3年目にあたる2025年度は、当社グループの対処すべき課題として、次の5つの重点施策に取り組んでまいります。
1) 電子産業での重点化
競合他社との差別化を推進し、海外および主要顧客における顕在・潜在案件の投資情報を事前に把握して確実に確保するとともに、EPC(注2)およびEP+モジュールを起点としたサービス事業の拡大に取り組みます。また、精密洗浄事業の選択と集中により収益性改善を図るとともに、連携して事業拡大を推進していきます。
2) 多様な産業を通じた社会との共通価値の創出とグローバル展開
CSVビジネスの既存展開および新規創出のさらなる加速を目指すとともに、PFAS需要への高まりに対してグローバルに対応していきます。また、低収益ビジネスの見直し、リカーリングビジネスの獲得による顧客生涯価値の最大化に取り組み、収益性と営業効率の向上を目指します。
3) 社会課題を解決するイノベーションの推進
新規事業創出の事業化テーマについて、社会価値と経済価値の両面から検証を行うとともに、顧客および社内外との意見交換を通じた大型化の検証と見直しを図ることで、新規事業立ち上げを目指します。また、既存事業の強化に向けて、新たな市場開拓・価値創出、シェア拡大に貢献する製品・サービスの競争力を生み出すコア技術の開発に取り組みます。
4) 技術立社としての基盤強化
新規事業案や開発テーマの中から、特許網構築やIPランドスケープの活用により競争優位性を強化できる対象を選定し、PSV-27計画達成への貢献を高める事業開発・市場展開策を具体化します。また、「水に関する知」として蓄積すべき情報の活用に向け、データ基盤を本格活用する範囲を拡大していきます。
5) グループ経営基盤の更なる強化
中長期視点での戦略的取り組みおよび企画力の強化に向けて、サステナビリティに関する社内外の情報やIPランドスケープを活用した洞察により、中長期的な経営戦略の核となる社会価値起点の新規事業の構想を立案するプロセスを構築していきます。また、タレントマネジメントプラットフォームにおいて、クリタグループ全体を対象にグループ人材の適所適材に向けた運用を開始します。
(注)1 社会価値が高い水処理に係る事業の中でも、従来に比べ節水、GHG排出削減、廃棄物の資源化または資源投入量の削減に大きく貢献する製品、技術、ビジネスモデルを「CSV(Creating Shared Value)ビジネス」として定めています。
2 Engineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)。
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