東邦銀行
【東証プライム:8346】「銀行業」
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企業概要
以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものであります。
(1)経営環境
①国内経済
2024年度の国内経済は好調な企業収益や賃上げの動きを背景に個人消費の持ち直しや設備投資が増加するなど緩やかに回復しました。一方で、欧州や中東における地政学リスク、アメリカの政策動向が景気を下押しするリスクとなっているほか、物価上昇による個人消費への影響や金融資本市場の変動等に注意する必要があり、先行きは依然として不透明な状況が続いております。また、国内の金融情勢においては、日本銀行が賃金・物価上昇の持続性の高まりを受け、2024年7月に15年7ヵ月ぶりに政策金利を引上げた後、2025年1月に追加利上げを実施するなど、金融機関を取巻く環境に大きな変化がありました。
②福島県内経済
当行の主要な営業基盤である福島県の経済は、住宅投資や新車登録台数が前年を下回るなど個人消費は足踏みの状況にありましたが、雇用情勢が緩やかに持ち直すとともに、新規事業や新規出店に関する設備投資が増加するなど一部に回復の兆しが見られました。
③金融環境
長期金利の指標となる10年国債利回りは、日本銀行の政策金利引上げや国債買入減額を要因として2025年3月に16年ぶりの高水準となる1.59%まで上昇しました。
また、為替相場は2024年7月に1ドル161円台まで円安が進行しましたが、日米金利差が縮小したことを受け、年度末には1ドル148円台まで円高が進みました。一方で、日経平均株価は好調な企業収益などを背景に、2024年7月に史上最高値となる4万2,224円まで上昇したものの、米国における通商政策への警戒感により年度末には3万5,617円まで下落しました。
(2)経営の基本方針
当行グループは、主に福島県を地盤とする地域金融機関として、パーパス「すべてを地域のために」のもと、ビジョン「地域社会に貢献する会社へ~金融サービスの枠を超えて~」の実現に向け、2024年4月から2030年3月までの6年間を計画期間とする長期経営計画「TX PLAN 2030」をもとに2つの基本方針である「地域・お客さまとの価値共創」及び「当行グループの成長戦略」に基づき、地域社会の持続的成長に向けた諸施策を展開しております。
<経営理念体系図>
(3)中長期的な経営戦略及び目標とする経営指標
①中長期的な経営戦略
新たな経営理念を実現するための計画として、2024年4月から2030年3月までの6年間を計画期間とする長期経営計画「TX PLAN 2030 (TOHO TRANSFORMATION(X) PLAN 2030)」をスタートしております。前中期経営計画期間で取り組んできた「変革」(2021年度~2023年度)をさらに進め、当行が「進化」(2024年度~2026年度)を果たし、地域・お客さまと新たな価値を「共創」(2027年度~2030年度)していくという決意を3つの「X」に込めました。TX PLAN 2030では「お客さま1社1社の事業価値向上」と「お客さま一人ひとりのゆたかな暮らしづくり」をゴールに掲げながら、「地域・お客さまとの価値共創」と「当行グループの成長戦略」を実現してまいります。
(a)基本方針Ⅰ.お客さまとの価値共創
地域経済の持続的成長を達成する10TARGETSを展開し、地域の皆さまの企業価値・資産価値を高め、経済を循環させることで地域・お客さまとの価値共創を実現してまいります。サステナブルファイナンスの拡大を通じて持続可能な地域社会を支え、総合コンサルティングにより産業創出・育成を行い、付加価値の高いサービスを提供することで、お客さまのゆたかな暮らしづくりへ貢献してまいります。
(b)基本方針Ⅱ.当行グループの成長戦略
当行グループの企業価値向上を図るための成長投資・人的資本投資に積極的に取り組むとともに、営業体制変革によるコンサルティング力の強化、BPRによる重点分野への人員再配置、アライアンスへの取り組み強化によって、当行が掲げる3つの成長ドライバを加速させ、グループ全体での収益を拡大してまいります。
②目標とした経営指標
TXPLAN2030では、2026年度計画としてコア業務純益115億円、当期純利益60億円、ROE3.0%、コアOHR77.0%、2029年度計画としてコア業務純益185億円、当期純利益110億円、ROE5.0%、コアOHR67.0%を掲げておりましたが、日本銀行による2024年7月及び2025年1月の政策金利引上げに加え、今後、計画期間中に政策金利が0.75%まで引き上げられるとの想定をメインシナリオとして、今後もさらなる金利上昇局面が想定されることを踏まえ、長期計数計画の見直しを実施しました。
(連結) | 2024年度実績 | 2026年度計画 | 2029年度計画 |
コア業務純益 | 120億円 | 190億円 (当初計画比+75億円) | 275億円 (当初計画比+90億円) |
当期純利益 | 74億円 | 105億円 (当初計画比+45億円) | 170億円 (当初計画比+60億円) |
ROE | 3.69% | 5.0% (当初計画比+2.0%) | 7.0% (当初計画比+2.0%) |
コアOHR | 74.9% | 68.5% (当初計画比△8.5%) | 60.0% (当初計画比△7.0%) |
金利環境の変化を追い風として、TXPLAN2030に掲げる各種施策を着実に遂行し、貸出金の増加やコンサルティング分野における非金利収入拡大によるトップライン増強を図りつつ、業務効率化のための行内DX促進や営業体制変革によって生産性向上を図ることで、ROE・PBRの改善に取り組み、経営体質をさらに強化してまいります。また、企業価値を向上させる3本柱として、成長・環境投資、人的資本投資、株主還元を掲げており、お客さまのさらなる利便性向上を目指すための積極的な成長投資を継続するとともに、さらなる人的資本投資を行い地域の持続的成長に貢献できる人材の創出、育成に努めることに加え、株主還元をより一層充実させることで、当行グループの企業価値向上を実現してまいります。
(4) 対処すべき課題
TXPLAN2030において、地域経済の持続的成長を達成するための「10TARGETS」を設定し、各種施策に取り組んでおります。
TARGETS | 課題認識 |
① 人材不足への対応 | 少子高齢化を背景とした人材不足への対応は地域社会における重要課題と認識しております。「人材紹介」はお客さまアンケートにおいても金融機関から受けたいサービスの上位であり、人材ビジネスの充実が求められていることに加え、ITの活用により生産性向上を図ることで地域DXを目指していくことが必要と考えております |
② 脱炭素促進支援 | 地球温暖化への対応として、脱炭素化への取り組みは企業の重要課題と認識しております。サプライチェーンから排除されるリスクも想定されるほか、当行のScope3への対策としても更に取り組みを強化することが必要と認識しております |
③ 金融コンサルティング | 事業性融資は、第1成長ドライバとして当行収益の柱に位置付けております。お客さまが銀行に最も期待する役割は資金供給機能であり、多様な調達手法をよりスピーディに提供するため、金融コンサルティングの高度化に取り組むことが必要と認識しております |
④ 創業・成長・経営支援 | 地域経済の活性化のためには、地域でイノベーションを創出する新たな取り組みが必要であることに加えて、地域金融機関の使命である金融仲介機能を発揮することによって、企業の成長を支えるとともに、経営改善支援・事業再生支援に積極的に取り組むことが必要と認識しております |
TARGETS | 課題認識 |
⑤ 事業性評価・有益情報提供 | お客さまに最適な提案を行うためには、事業内容を正確に理解し、真の課題を把握する事業性評価の取り組みが必要であるとともに、補助金制度やその他各種支援制度の紹介など、お客さまに必要な情報をタイムリーに提供する体制の構築が必要と認識しております |
⑥ キャッシュレス | 政府が2025年6月までにキャッシュレス比率4割程度を目指すなか、キャッシュレス決済は消費者の利便性向上だけでなく、現金決済に係るインフラコストの削減、業務効率化や人手不足の対応としても有効であり、法人・個人に対して普及を促進することが必要と認識しております |
⑦ ライフイベント・サポート(ローン) | 自動車購入資金や教育資金、住宅取得資金など、お客さまのライフステージに応じた資金ニーズに対応し、消費活動を通じた地域経済の活性化を図りつつ、お客さまのゆたかな暮らしづくりをサポートすることが必要と認識しております |
⑧ 資産形成・運用(預かり資産) | 政府は「資産所得倍増プラン」において「貯蓄から投資」に向けたさまざまな施策を打ち出し、成長と資産所得の好循環の実現を目指しています。その環境下、お客さまのゆたかな暮らしづくりの実現に向け、個人コンサルティングの高度化に取り組むことが必要と認識しております |
⑨ 相続・信託 | 高齢化社会の進展により、高齢者から将来世代への資産承継ニーズが高まっております。資産承継分野における専門性に磨きをかけ、お客さまの想いの実現に向け、価値あるソリューションを提供していくことが必要と認識しております。 |
⑩ 金融リテラシー向上 | 「人生百年時代」を生きる上で、金融経済教育の普及は非常に重要な課題と捉えており、当行の将来の顧客基盤となる子どもたちへの金融教室や、若年層~高齢層にかけてライフステージに応じた金融経済教育活動を実施していくことが必要と認識しております |
そのなかでも、人口減少、少子高齢化が地域社会に及ぼす影響は時間の経過と共に益々深刻化していることから、TARGET①「人材不足への対応」を解決すべき重要な社会課題の一つと捉えております。
2024年度の同分野に関する当行グループへの相談件数は累計で1,400件を超え、今も着実に増加しております。その環境下、ITの力で地域全体のデジタル化とお客さまの生産性向上支援に取り組むIT関連事業と、人材不足という地域にとって最大の課題解決に取り組む人材関連事業を2本柱とする「株式会社東邦ITヒューマンソリューションズ」を新設し、他業銀行業高度化等会社の認可を取得したうえで2025年10月より事業を開始する予定です。
2025年度においては、基本方針に「GoingBeyond もう一つ上の世界へ」を掲げ、成長戦略として、3つの成長ドライバを加速する取り組みを行ってまいります。第1の成長ドライバとして、事業性貸出・リース取引においては、シェアアップで地域におけるプレゼンス向上を図るとともに、消費者ローンでは保証会社との連携強化やWEB受付システムの更なる利便性向上を図ってまいります。また、預かり資産分野では、野村證券株式会社との金融商品仲介業務における包括的業務提携の完全移行を10月に控えるなか、営業店とコンサルティングプラザ、コンタクトチームの更なる連携強化を図ってまいります。
第2の成長ドライバとしては、金融コンサル分野で多様なファイナンスに積極的に取り組み、収益基盤の拡大を目指していくとともに、経営コンサル分野では人材紹介対応領域の深化・拡大に加え、脱炭素経営に関する多様なニーズにワンストップで対応できる体制を整備してまいります。また、地域経済の活性化に欠かせない中小企業の本業支援においては、物価高や人件費上昇など経営環境が厳しいなか、経営計画の策定支援や販路拡大を支援する有料ビジネスマッチングや生産性向上に向けた伴走型経営支援の取り組みを強化しております。
第3成長ドライバへの取り組みとして、相双地域を起点とした福島県の創造的復興を大きな課題と捉え、法人コンサルティング部内に設置した相双新産業推進室を中心として、新たな産業創出に向けた創業・スタートアップ、進出企業への支援を積極的に行っております。引き続き「創業の地 ふくしま」の確立に向け積極的に取り組んでまいります。
上記の取り組みによって、第1成長ドライバとなるストック収益基盤の拡大、第2成長ドライバとなるフロー収益の強化に加え、第3成長ドライバとして新たな収益獲得を目指す考えの下、当行グループの成長戦略を着実に実行してまいります。
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