東洋エンジニアリング
【東証プライム:6330】「建設業」
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企業概要
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、変化する事業環境の中で、世界に点在する当社グループ企業の全従業員が、共通する使命感、価値観のもとでグループとしての一体感を高めていくことを目的に、Mission、Vision、Values、いわゆるMVVを制定しております。
◆グループ・ミッション(使命):“Engineering for Sustainable Growth of the Global Community”
世界水準のエンジニアリングの提供によって、多様な顧客各社の課題を総合的に解決し、顧客ニーズの充足を実現するとともに、エネルギー・素材等の供給と環境保全を調和させ、持続性のある地球社会の実現に貢献します。
◆グループ・ビジョン(目指す企業像):“Global Leading Engineering Partner”
世界第一級のエンジニアリング企業グループとして、顧客の立場に立脚し共に課題を解決することによって、品質、HSE(健康・安全・環境)、納期、価格等を含む総合的な価値を提供し、顧客にとって最も信頼できる継続的なパートナーとなります。
◆グループ・バリュー(価値観・行動基準):“Integrity, Creativity, Diversity, Learning, Team”
東洋エンジニアリンググループで働く一人ひとりの役職員は、これらの価値観を共有して行動します。
Integrity | :誠意と責任を持って業務を遂行します。 |
Creativity | :知恵と創造力を発揮し、顧客とともに、もしくは自ら、新たな価値を創造します。 |
Diversity | :個性、人格、ならびに各国、各地域の文化、慣習を尊重します。 |
Learning | :進取の気性で、新たな経験、技能、知識を獲得します。 |
Team | :自社グループ内はもとより、顧客や協業先とのチームプレイを通じて、成果を実現します。 |
上記の経営方針に基づき、当社グループは、5つの強み(プロジェクトマネジメント力・技術力・アライアンス構築力・総合エンジニアリング力・グローバル対応力)を発揮し、「EPC強靭化」戦略と「新技術・事業開拓」戦略を軸として、多様化、個別化する顧客の課題に対し、最適なソリューションを提供しています。
(2) 経営環境
当連結会計年度における世界経済全体としては、若干のインフレ緩和による実質所得の持ち直しを背景に底堅い成長を維持しましたが、引き続き、米国トランプ政権の保護主義政策による貿易紛争の拡大、それに伴う中国経済の失速、米欧国債の信用不安等の下振れリスクが想定されます。
地域別に見ると、米国経済は、トランプ政権下での保護主義政策を背景に、国内生産回帰に向けた設備投資やデータ・エネルギー関連の設備投資が堅調に推移する見込みである一方、関税政策については、先行きの不確実性が極めて高く、景気や金融市場に与える影響に注視が必要な状況です。欧州経済は、堅調な雇用所得環境と物価上昇の減速から個人消費の拡大が見込まれますが、EUの中心であるフランスとドイツの政権基盤の不安定に伴う指導力低下による経済政策への影響が懸念されます。中国経済は、景気刺激策により株価が持ち直し、富裕層を中心に消費・投資需要が醸成され、不動産市況も緩やかな改善を見せました。しかし、米国との貿易紛争のエスカレートにより、輸出が失速すれば、株価の低迷、雇用の悪化により、再び不動産市況が冷え込むリスクがあり、注視が必要な状況です。日本経済は、物価上昇は継続するものの、実質賃金の改善、消費者マインドの改善を背景に個人消費の緩やかな持ち直しが見込まれます。また、企業の設備投資は、米国の経済政策およびそれに伴う世界経済の減速の影響を受けながらも、デジタル化・脱炭素化・サプライチェーン強靭化に向けた取り組みを背景に拡大傾向が続く見込みです。一方で人手不足が深刻化しており、引き続き労働力の確保および限られた労働力の中での生産性向上が課題となっております。
このような経済状況を受け、当社グループの事業環境としては、
① カーボンニュートラル事業については、ロシア・ウクライナ情勢、米国のパリ協定再離脱等での政策後退が一部みられるものの、全世界的に脱炭素化や経済安全保障上のレジリエンス強化の観点から、政府支援で民間投資を後押しする動きは継続しています。日本においても代替エネルギー製品について、製造・輸送等に係る、従来製品との価格差に着目した支援制度ならびに拠点整備支援制度への申請が開始されております。燃料アンモニアに関しては、アンモニア製造からアンモニア受入基地およびアンモニア分解による水素製造までの一連のサプライチェーンを構築する複数の案件で、FEED(基本設計)実施に向けた協議が進展しています。インドネシアにおけるグリーンアンモニア製造、バンカリング向け燃料供給事業に関し、2024年8月にPupuk Indonesia Holding Companyおよび伊藤忠商事株式会社と共同開発契約を締結しFEEDを開始、2024年11月には合弁会社設立に向けた株主間契約書を締結しました。CCS(CO2回収・貯留)に関しては、独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)により、2030年度までのCO2貯留開始に向けた先進的CCS事業候補が選定され、FS(事業化調査)/Pre-FEED(概念設計)が進捗しており、当社は複数案件でFEED実施に向けた協議を開始しています。CO2資源化に関しては、燃料としてのメタノールの需要増加が今後期待され、国内市場においては、国内元売り会社が海外で合成燃料を製造し、輸入する動きが継続すると見込まれます。このような動きを見据え、当社グループにおいては、インドにおけるe-メタノールのFSを完了しております。地熱発電に関しては、インドネシアの政府および民間企業とインドネシアにおける包括的な地熱活用のマスタープラン策定に関する覚書を締結しております。また、地熱マスタープラン策定等調査事業は、経済産業省のグローバルサウス未来志向型共創等事業委託費におけるマスタープラン策定等調査事業に採択されており、引き続き社会実装に向け注力しています。SAF(持続可能な航空燃料)に関しては、世界的な市場規模の拡大を見据え、日揮株式会社との国内アライアンスにおける早期実績作りに向け注力しています。
② 石油化学・肥料プラント等の既存事業については、海外では、2024年11月の米国大統領選以降、各種の設備投資計画が再開し始めましたが、新政権による新たな関税政策導入等により未だ国際市場はその影響の見極めに時間を要しております。その中でも肥料案件は人口増加と世界的な食糧安全保障問題の高まりに伴う堅調な需要増が見込まれます。石油化学案件については、中国での需要減退に伴い石油化学製品の需給が緩和した一方、世界のエチレン・ポリマー市場では、低炭素化への動きも織り込みながら今後も成長が見込まれており、既存製油所設備の転換等構造改革も交え、特に中東やインドを中心に引き続き設備投資が見込まれます。インフラ市場においては、主にアジアで再生可能エネルギー、廃棄物等の発電事業分野等で設備投資が見込まれます。一方、国内では、EV(電気自動車)や半導体用の高機能化学品の需要の回復が見込まれ、それらの材料に関する設備投資が期待されます。
③ FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)事業については、2023年以降の10年間はGolden Ageと呼ぶに相応しい活況を呈する市況が予想される中、石油メジャー・国営石油会社による投資が加速しており、引き続き旺盛な需要が期待されます。このような状況下で、ブラジル・ガイアナ等の中南米のほか、オーストラリア、ナミビア等の新規市場の案件も多く、当社グループのエンジニアリングとプロジェクトマネジメント力、複数の戦略的拠点の活用による最適化および三井海洋開発株式会社(MODEC)の知見との融合による差別化を武器に、MODECとの合弁会社であるOFS(Offshore Frontier Solutions Pte. Ltd.)にてEPCI(設計・調達・工事・据付)案件の更なる受注が期待されます。
(3) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
当社グループでは、2021年度から取り組んでいる中期経営計画を、「EPC強靭化」および「新技術・事業開拓」という2つの戦略を軸に推進し、KGI(Key Goal Indicator)の達成を目指して取り組んでいます。その結果、業績の回復を進め、2023年度には期末配当を復活することができました。2024年度については、業務変革が進展する前に受注した一部の案件で進捗遅れ等による下振れ要素も生じていますが、体質強化に向けた取り組みを緩めることなく、2026年度からの次期中期経営計画を下支えする強固な基盤の構築を着実に推進しています。
① 中期経営計画を振り返って
2024年度は現在の中期経営計画の4年目で、2025年度が最終年度になります。
EPC強靭化においては、その一翼を担うDXoT(Digital Transformation of TOYO)を推進し、DX適用の事業領域(プロジェクト、設計、調達、工事)が拡大しています。案件受注フェーズでは、DX活用による良質な案件の選定と人員配置やスケジュールの最適化を高めており、案件遂行フェーズにおいても、DXを活用した案件数が増え、それらの案件で生産性向上や工期短縮といった効果が出ています。
EPC強靭化のもう一つの軸である拠点強化では、EPC拠点(インド・インドネシア・中国・韓国・マレーシア・ブラジル・日本)それぞれが案件受注から完工引き渡しまでを自律的に遂行する力を着実に鍛えています。2024年度にはリスクマネジメントを個社ではなくグループ全体でより強化するための議論を進めてきました。その推進・実行組織としてプロジェクト管理本部を2025年1月に設立しました。従来から取り組んできた案件遂行フェーズでの対応力強化に加えて、案件受注フェーズで良質案件の選別において、リスク感度の向上、Lessons Learnt(過去案件からの教訓・フィードバック)の積極的な活用、ならびにリスク受容度の適正な評価を徹底し、案件選別力の強化に取り組んでいます。将来の成功に資するチャレンジは厭わない姿勢を維持しつつ、無理・無謀な案件取り組みを確りと排除する仕組み・運営が回り始めています。
一方、新技術・事業開拓においては、2024年度までの進捗として、カーボンニュートラル政策に対応する技術開発分野で、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)や合成ガス技術の研究を推進し、環境負荷の低減に貢献しています。バイオマス発電においては、日本国内で連続受注した12件が順次完工・引き渡しを迎えています。地熱分野では、インドネシアで地熱発電案件を継続的に受注するとともに、継続的かつ安定的に発電できる地熱資源の利用促進・最適化を進める「カーボンニュートラルパーク」構想も検討しており、インドネシア・エネルギー鉱物資源省との地熱マスタープラン策定に関する覚書を締結しました。また、将来的な循環型社会の実現に向け、廃棄物のリサイクル技術や省エネルギー技術の開発も推進しています。
② 今後の中期経営計画に関する重点課題
現在の中期経営計画は2025年度が最終年度であり、KGI/KPIの達成に向けた取り組みを引き続き推進するとともに、4年間を振り返って総括を行います。この総括では、未決事項や仕掛り中の事項の確認、これまでの成功・失敗事例の深掘りから得られる様々なLessons Learntを取りまとめてまいります。それらを次期中期経営計画(2026年度から2030年度まで)にも織り込んだ上で、品質関連損失コストを極小化、各案件の成果および全社的な業績の向上を実現し、社会課題の解決を通じた価値提供に確りと活かしてまいります。
特に留意すべき取り組み課題として、以下の三点を認識しています。
(技術革新の継続)
自社開発技術や他社提携技術における優位性を保持しつつ、市場競争力のある事業を展開し、持続可能な社会を実現するためには、絶え間ない技術の向上が不可欠です。
(人財育成)
技術革新・事業開発を推進するためには、優秀な人財の育成と確保が重要で、適切な資本投下を行い、多彩な人財がいきいきと働ける環境と制度の充実を図ってまいります。
(事業ポートフォリオの転換)
EPC案件の受注および個別案件の成否による大きな業績のブレを解消し、安定的な収益基盤の構築と持続的な成長を実現するため、既存事業の強化と新規事業の開拓を進め、収益構造の転換・多様化を図る必要があります。
これらの課題に向き合いつつ、当社グループは持続可能な社会の実現に向けた取り組みを更に強化し、企業価値の向上を図ってまいります。
(4) 2026年3月期連結業績予想
| (単位:百万円) |
| 連結 |
受注高 | 170,000 |
完成工事高 | 200,000 |
営業利益 | 1,500 |
経常利益 | 6,500 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 5,000 |
受注高については、「(2)経営環境」および「(3)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題」に記載した全般的状況を踏まえて算出しました。持分法適用関連会社の当社持分相当の受注目標2,300億円を含めますと、受注目標は4,000億円となります。なお、持分法適用関連会社であるOFSはブラジル向けFPSOプロジェクトを2025年3月に、南米ガイアナ向けFPSOプロジェクトを2025年4月に、各々契約調印、受注しております。
[本業績見通しにおける想定為替レート]
1米ドル=140円
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