企業兼大株主東日本旅客鉄道東証プライム:9020】「陸運業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものです。

(1)経営の基本方針(グループ理念)

○私たちは「究極の安全」を第一に行動し、グループ一体でお客さまの信頼に応えます。

○技術と情報を中心にネットワークの力を高め、すべての人の心豊かな生活を実現します。

(2)今後の経営環境の変化

 国内では生産年齢人口の減少や少子高齢化、首都圏への一極集中や地方の過疎化が進んでいます。人々の価値観は多様化し、コロナ禍によりライフスタイルやマーケットは大きく変容しました。金利のある世界が到来したほか、資本コストや株価を意識した経営への要請も高まっています。また、生成AIやロボット、自動運転技術など、テクノロジーの進化も加速しています。さらに、脱炭素社会に向けた取組みは地球規模の課題になっています。

(3)中期的な会社の経営戦略

 グループ経営ビジョン「変革 2027」においては、世の中の大きな変容を、これまで事業全般にわたって取り組んできた構造改革をさらに加速させる好機と捉え、将来の環境変化を先取りした経営を進めてきました。「安全」を経営のトッププライオリティと位置づけ、「ヒト起点」の発想で輸送サービス、生活サービス、IT・Suicaサービスの融合と連携による新たな価値創造に取り組み、鉄道を中心としたモビリティと、お客さまと地域の皆さまとの幅広い接点を持つ生活ソリューションの二軸で経営を支える基盤を構築しました。

 ポストコロナの日本経済が本格的に始動し、経営環境がさらに急激に変化する今こそ、当社グループが「当たり前」を超え、かつてない高みをめざして勇ましく翔びたつときです。「変革 2027」のもと磨いてきた「ヒト起点」の発想をさらに進化させ、モビリティと生活ソリューションの二軸によりこれまでにない発想と戦略で新たなマーケットを創造していきます。

 当社グループは「すべての人の心豊かな生活の実現」に向け、事業活動を通じて地域の社会課題にしっかりと向き合い、利益成長をしていきます。そして、創出した利益をステークホルダーの皆さまに還元しつつ、当社グループの未来の成長・発展にも振り向ける「四方良しの経営」をさらに推進し、社会の進運を支える「志の高い企業グループ」への進化をめざします。

 現在、新しいグループ経営ビジョンを構想しており、2025年7月1日に発表する予定です。

 新ビジョンの実現に向けて、会社発足以来維持してきた国鉄時代に由来する事業運営体制と人事・賃金制度について抜本的に見直します。これまでの2本部・10支社から、それぞれの地域のマーケットやお客さまのご利用状況などを踏まえ、第一線の職場と本部・支社を融合した36の事業本部での事業運営体制に改正します。今まで以上に地域の実情やニーズに密着したスピード感のある事業運営をめざし、安全レベルのさらなる向上とお客さまや地域の皆さまのご期待にお応えした品質の高いサービスの創造を実現していきます。あわせて、社員一人ひとりの業務への取組みと成長を賃金に反映し、社員の果敢なチャレンジ意欲を強く後押ししていく人事・賃金制度の抜本的な見直しを実施します。

(4)目標とする経営数値

 グループ経営ビジョン「変革 2027」において、第39期(2025年度)をターゲットとした数値目標を設定していましたが、コロナ禍で急激に変化した経営環境のその後の推移などを踏まえ、2023年4月に第41期(2027年度)を新たなターゲットとした数値目標を以下のとおり設定しました。今後も目標達成に向けてグループ一体となって取り組んでいきます。

 

第41期(2027年度)

数値目標

第38期(2024年度)

4月計画

第38期(2024年度)実績

第38期(2024年度)計画対比

連結営業収益

3兆2,760億円

2兆8,520億円

2兆8,875億円

101.2%

 

モビリティ

運輸事業

2兆190億円

1兆9,350億円

1兆9,457億円

100.6%

生活

ソリューション

流通・

サービス事業

6,540億円

3,870億円

3,937億円

101.8%

不動産・

ホテル事業

5,070億円

4,290億円

4,454億円

103.8%

その他

960億円

1,010億円

1,025億円

101.5%

連結営業利益

4,100億円

3,700億円

3,767億円

101.8%

 

モビリティ

運輸事業

1,780億円

1,880億円

1,760億円

93.7%

生活

ソリューション

流通・

サービス事業

800億円

610億円

605億円

99.2%

不動産・

ホテル事業

1,240億円

1,010億円

1,203億円

119.2%

その他

300億円

220億円

229億円

104.3%

調整額

△20億円

△20億円

△31億円

連結営業キャッシュ・フロー

(5年間の総額 ※1)

3兆8,000億円

7,322億円

(進捗率)

37.4%

連結ROA

4.0%程度

3.8%

ネット有利子負債/EBITDA (※2)

中期的に5倍程度

長期的に3.5倍程度

6.0倍

※1 第37期(2023年度)から第41期(2027年度)までの総額を記載

※2 ネット有利子負債=連結有利子負債残高-連結現金及び現金同等物残高

   EBITDA=連結営業利益+連結減価償却費

(5)経営方針と事業の経過及び対処すべき課題

 当社では2024年4月1日に喜㔟陽一が代表取締役社長に就任しました。新体制のもと、「変革 2027」の実現に向け「安全」を経営のトッププライオリティと位置づけ、「収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)」、「経営体質の抜本的強化(構造改革)」、「成長の基盤となる戦略の推進」及び「ESG経営の実践」に引き続きグループを挙げて取り組んでいきます。

○ 「安全」がトッププライオリティ

 経営のトッププライオリティであり、当社グループの不変の使命である「究極の安全」を追求し、不断に安全レベルを向上させていきます。

 当連結会計年度においては、東北新幹線の走行中に連結部が外れ停車した事象を二度発生させたことに加え、輪軸組立作業における圧入力値の不適切な取扱いが判明するなど、お客さまや関係の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしました。

 東北新幹線の走行中に連結部が外れ停車した事象については、関係する全車両に対して緊急総点検を実施するとともに、当面の対策として、何らかの電気的な異常が発生した場合でも連結器の分割動作が行われないよう、機械的に動作機器を固定する器具を取り付け、安全性を確保したうえで、連結走行を再開しました。今後は、恒久対策として、連結器を分割させる回路が走行中に動作しない仕組みに見直していきます。

 輪軸の事象については改善措置として、当社においては規定値を下回っていた輪軸の取替、社内規程の見直し、鉄道車両における定期検査の業務実態把握を踏まえた作業の標準化を実施しました。グループ会社においては、規程類の整備、教育体制の改善、作業記録の書き換えの防止、安全管理体制の点検と見直しを実施しました。また、グループ全社員に対しコンプライアンス教育を実施するとともに、グループ全社員に対するコンプライアンス意識調査で得られた結果を品質管理に活かしていきます。あわせて、現場第一線を支援する企画部門が改善策のモニタリングを行うとともに、ルール・仕組みが正しく機能しているか確認し、必要により見直しを実施していきます。内部監査部門による監査を通じて、現場第一線、企画部門の業務の統制状況を確認していきます。さらに、本件を輸送サービスだけの事象と狭く捉えるのではなく、グループ全体がお客さまに提供しているサービス全体の品質管理の問題であるとともに、ガバナンスへの教訓と捉え、グループ全体のガバナンス向上につなげていきます。

 すべての基盤であるお客さまや地域の皆さまからの「信頼」を高めていくために、社員一人ひとりが「究極の安全」に真摯に向き合い、具体的な行動を継続していきます。

○ 収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)

 当社グループを取り巻く環境が大きく変容する中、変化をチャンスと捉え、「変革 2027」で進めてきた構造改革をさらに加速し、グループの持つポテンシャルを最大限に引き出します。マーケットインでスピード感と構想力をもって商品やサービスをバリューアップし、連結キャッシュ・フローの最大化に努めていきます。

 移動需要やライフスタイルの変化に対応した新しい商品・サービスを展開していきます。当社グループの強みはリアル×デジタルの顧客接点を組み合わせ、多くのお客さまに多様な商品・サービスを提供できる点にあります。お客さまの移動の目的(地)づくりを推進するとともに、Suicaを中心とした各種データやデジタルでのお客さま等との接点を活かし、お客さま一人ひとりのニーズにあったサービスを提供していきます。

 2024年12月には「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を公表しました。Suicaは今後10年以内に機能を順次グレードアップし、「移動と決済のデバイス」という今までの当たり前を超え、交通、決済だけでなく地域のお客さまの様々な生活シーンにてご利用いただける「生活のデバイス」に生まれ変わります。

 2025年3月には「TAKANAWA GATEWAY CITY」のまちびらきを迎えました。モビリティと生活ソリューションの融合と連携により、より良い未来のための社会課題に取り組むまちをつくり、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置づけました。引き続き、当社グループの資産を有効活用したまちづくりを進めていくとともに、不動産回転型ビジネスによる攻めの戦略を加速していきます。広域品川圏の駅を中心としたまちづくりでは1,000億円の収益規模をめざしていきます。

○ 経営体質の抜本的強化(構造改革)

 当社グループをはじめ、国内の鉄道事業者は生産年齢人口の減少という課題に直面しています。この課題に対処するため、鉄道のメンテナンス分野における他社との包括的連携や車両装置及び部品の共通化などを推進し、さらなる安全・安定輸送のレベルアップとサステナブルな運営に取り組みます。

 2024年6月には新たなビジネス成長戦略「Beyond the Border」を策定しました。当社グループのビジネス圏を飛躍的に拡大し、「すべての人の心豊かな生活」を実現していきます。

 また、鉄道に求められる社会的な役割や多様化するお客さまのニーズにお応えし、今後も鉄道事業をサステナブルに運営していくため、2024年12月に鉄道旅客運賃の上限変更認可申請を実施しました。引き続き、シンプルかつ柔軟な運賃料金制度の実現に向けて、国に要望していきます。

 さらに、地方ローカル線については、沿線自治体などと持続可能な交通体系の構築に向けた協議を進めます。津軽線(蟹田・三厩間)においては、2024年5月に沿線自治体と自動車系交通への転換について合意し、新たな地域交通の運行に向け関係者との調整を行っています。久留里線(久留里・上総亀山間)においては、2024年10月に「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」が取りまとめた報告書を受け、翌11月に当社としてはバス等を中心とした新たな交通体系へ転換することが必要と考えている旨を公表しました。

 急速なスピードで変化する経営環境に柔軟に対応し、一人ひとりの社員の働きがいの向上と生産性向上による経営体質の強化を図るため、組織改正を引き続き進めます。地域の状況に即した社会課題解決への貢献、感動の創造、「究極の安全」の追求やサービス品質の向上をスピーディーに実現するとともに、社員の活躍フィールドの拡大を通じた働きがい及び働きやすさを高め、社員とグループの成長の好循環をめざします。

○ 成長の基盤となる戦略の推進

 「変革 2027」の実現に向け、その基盤となる人材、DX・知的財産、財務・投資などの戦略を明確にし、グループ一体で取り組みます。

 人材戦略については、「多様性」「革新性」「柔軟性」の観点から、多様な人材が多様な価値を創造できるフィールドを充実させ、従来の働き方にとらわれない柔軟な発想で業務改革を進め、社員がボーダーを超えて挑戦できる環境を整備していきます。

 DX・知的財産戦略については、デジタル技術の最新トレンドを積極的に取り入れるとともに、オープンイノベーションによる社内外の技術・知見を活用した技術開発及びDXの推進により、ビジネス創出と仕事の仕組みの変革を進めていきます。

 財務・投資戦略については、連結キャッシュ・フロー及びグループ価値を最大化するためにビジネスごとの戦略の策定・実行を推進します。また、モビリティと生活ソリューションの二軸経営にふさわしいキャッシュ・アロケーションや有利子負債の考え方を導入するとともに、資金調達の多様化を進め、成長の加速と信用力の維持を両立していきます。

○ ESG経営の実践

 事業を通じて社会課題の解決に取り組むことで、企業価値の向上と「すべての人の心豊かな生活」を実現していきます。

 環境については、2020年度に公表した環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」において掲げる2050年度のCO2排出量「実質ゼロ」の達成に向けた挑戦を続け、持続可能な社会の実現をめざして新たな価値を提供していきます。また、グループ事業全体のサプライチェーンにおいて排出される温室効果ガス削減にも貢献していきます。さらに、水素ハイブリッド電車「HYBARI」の実用化検討を進め、2030年度の営業運転開始をめざします。

 社会については、地方中核駅を中心としたまちづくりや6次産業化による地域経済の活性化など、地方創生に取り組みます。また、共生社会の実現に向けた知識やスキル、マインドを身に付けた社員の育成に取り組むとともに、パラスポーツへの支援等を通して、お客さまや地域の皆さまとともに「心のバリアフリー」を推進します。

 企業統治については、機関設計として監査等委員会設置会社を選択し、意思決定や業務執行の迅速化及び取締役会のモニタリング機能の充実などに取り組んでいます。今後もコーポレート・ガバナンスを一層充実させ、さらなる企業価値向上をめざします。

 これらの戦略を着実に推進するとともに、グループ全体の「融合と連携」の深化、そして新領域への絶えざる挑戦により、グループを挙げて新たな価値を創造します。

 「すべての人の心豊かな生活」に向け、事業活動を通じて地域の社会課題にしっかりと向き合い、お客さまや地域の皆さまからの「信頼」を基盤としたサステナブルな企業グループをめざします。

 当社グループにおいて、中央省庁等向けの委託事業及び補助金事業に関する不正な人件費請求をはじめ、輪軸組立作業における圧入力値の不適切事象、独占禁止法に抵触するおそれのある行為に対する公正取引委員会からの警告など、ステークホルダーの皆さまの信頼を損なう事象を連続して発生させたことにつきまして、深くお詫び申し上げます。

 経営の信頼を取り戻すべく、当社内に外部有識者を招いた委員会を速やかに設置し、客観的な検証により課題を抽出します。その結果を今後の対策に反映し、グループ全体のガバナンスの改善と強化を図ってまいります。

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