東北特殊鋼
【東証スタンダード:5484】「鉄鋼」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、創立の精神である『高級特殊鋼を製造し、産業界に貢献する』に基づき、特殊鋼素材開発、製造、精密部品加工、熱処理、表面処理から成るバリューチェーンを活かした特徴ある商品をお客様に提供しております。また、お客様とのコラボレーションによる新たな商品開発も含め、多方面で新しい技術開発に取組んでおります。さらに、海外での生産活動も積極的に進め、タイとインドの生産拠点と連携し、グローバルに広がるお客様の多様なニーズに応えております。
2025年度は、前年度から続く厳しい経営環境の下、「事業改革推し進め 希望の松明(たいまつ) 未来に繋げ!」をスローガンに掲げました。全社一丸で事業ポートフォリオ改革や収益性向上などの事業改革を推進し、これからも産業界の発展ならびに人々の豊かな暮らしに貢献できるよう挑戦し続けてまいります。
(2)中期経営計画の実績
当社グループは2024年に「2026中期経営計画」を策定し公表しました。当中期経営計画の中で、当連結会計年度は、売上高230億円、営業利益14億円、ROS(売上高営業利益率)6%、ROE(自己資本利益率)4%の目標を掲げましたが、売上高211億円、営業利益12億円、ROS 5.9%、ROE 3.6%の実績となり、各数値目標は未達でした。
当社グループは前回の中期経営計画において、2030年に目指すべき姿である「東北特殊鋼 2030 VISION」を「迫り来る革新的モビリティ・エネルギー・デジタル社会 その激流に流されず、変化を御してよりよい社会づくりのために高機能材を提供し続ける」として定めました。「東北特殊鋼 2030 VISION」の実現に向けて、「2026中期経営計画」は前回の中期経営計画を踏襲した「『開発機能会社』への前進と柔軟な事業の転進」を基本コンセプトに掲げ、特殊鋼事業と不動産賃貸事業が相互に連携し価値の創出と成長を目指します。具体的には「未来への成長投資」を強化するとともに、厳しい事業環境の中でも利益を確保する「収益性の改善」に注力します。より詳細なアクションプランとその実績は次の通りです。
特殊鋼事業アクションプラン①「商品ポートフォリオ改革の断行」
第一に、当社グループの強み商品である電磁ステンレス鋼と特殊合金を、半導体製造装置や新エネルギーなどの成長産業向けの領域での販売拡大を図ります。過年度において投資した設備装置を最大限活用し安定した供給体制を構築するとともに、マーケティング・営業活動も並行して強化してまいります。当連結会計年度においては、自動車産業が型式認証の不正問題により低調であったこと、半導体製造装置産業がAI需要のけん引があったもののその効果が限定的であったことから、強み商品の販売量も前連結会計年度比で減少しました。しかし、拡販活動を強化したことで、新規の引き合いが増加しており、その一部は注文につながってきています。
第二に、新たなビジネスモデルの構築として、トマト栽培向けの害虫防除機器(トマタブル)の量産化と販売開始、振動発電によるIoT電源の商品化を計画しております。トマタブルとIoT電源は、ともに当社が開発した磁歪クラッド材を使用した商品です。トマタブルについては、防除する害虫による被害には地域特性があるため、重点販売エリアの見直しをしております。現在、西日本を中心に商品評価を行っており、2025年度以降の量産化と販売を計画しております。IoT電源については、当社工場内での検証を行っておりましたが、2025年度は他社工場での検証を計画しております。どちらも直ちに収益に貢献する商品ではありませんが、当社グループの成長をけん引する事業として育成してまいります。
第三に、内燃自動車向けの既存主力商品と海外事業については、今後の需要減少局面でも収益性を維持するため、生産体制の見直しや低収益商品の見極めを計画しています。これまでとは異なる受注環境が継続することを前提とした、設備稼働の集約や従業員の配置転換を進めてまいります。当連結会計年度においては、更なる原価低減活動による製造原価の圧縮と原価低減では吸収できないコスト上昇の値上げ活動に注力してきました。
特殊鋼事業アクションプラン②「環境価値の優れた開発商品拡大」
当社グループは、顧客や社会の課題を解決する環境価値に優れた開発商品の拡大を目指しています。現在の具体的な活動として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業の取組みである次世代モーター用素材の開発や、当社独自の磁歪クラッド材の用途開発があります。これらは電動車の省エネルギー化や振動発電による新エネルギー獲得など、将来の電動化社会に貢献する開発活動です。
当連結会計年度においては、当中期経営計画の中で計画している研究開発費17億円の25.8%にあたる4億円の研究開発費を投入しております。個別の開発活動については、次世代モーター用素材の開発はNEDOの定めたステージゲートを通過し、次の開発段階へ進んでおります。磁歪クラッド材の用途開発では、進行中のトマト栽培向けの害虫防除機器だけではなく、その他の農作物への応用や害虫防除以外の効果を検証中です。
特殊鋼事業アクションプラン③「未来工場実現に向けた基盤整備」
特殊鋼事業アクションプラン①②を支えるため、多様な従業員が活躍しデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための工場基盤整備を進めます。生産設備や基幹システムの更新により、強み商品の拡販や工場の効率稼働だけではなく、将来の成長に向けた生産技術の蓄積や商品の高付加価値化・高品質化を進めてまいります。
当連結会計年度においては、新しい基幹システムの稼働やITツールの浸透により、DXが進展しました。これまでにDXを実現した業務領域は限定的ですが、基幹システムやITツール利用の習熟度が増すことで、翌連結会計年度以降はより広い範囲でDXが進行すると見込んでいます。ITやIoTなどのデジタル領域と特殊鋼製品製造のアナログ領域が融合した未来工場の実現に向け、部門や職制を横断した工場基盤の整備に取り組みます。
不動産賃貸事業アクションプラン「収益性の長期持続性確保」
当社グループの不動産賃貸事業は仙台市長町エリアの旧工場跡地に建設した商業施設の賃貸サービスが中心です。不動産賃貸事業は特殊鋼事業と並ぶ当社グループの主力事業として、安定的な利益を生み出しています。当中期経営計画では商業施設の新たな価値の創出と最大化を目指します。中心である商業施設の老朽化対応に加え、周辺不動産への追加投資により、エリア全体の価値向上を図ります。
当連結会計年度においては、商業施設の計画的な予防保全を継続しつつも、周辺不動産の有効活用に向けた調査を開始しました。
(3)経営環境及び対処すべき課題
当社を取り巻く環境は、自動車の電動化、カーボンニュートラル、IT技術の進化、そして爆発的なAIの普及等、これまで経験したことがないスピードで変化しています。また、それぞれの分野で国際的な競争が激化しており、各種コストが高騰する中で、より良いものを需要環境に応じて柔軟に生産しお客様へ提供することが求められてきています。このような環境の中で、当社グループが策定した新たな中期経営計画に沿って以下の活動を実施してまいります。
①特殊鋼事業
a.本業での収益力強化
近年の原材料や人件費等の上昇により、当社では製造コストの上昇分を原価低減活動で吸収することが困難になってきております。併せて、事業の継続的な成長のため、研究開発活動や人的資本への投資を続けながら設備の維持更新も必要となります。また、半導体製造装置産業を中心とした慢性的な需要変動により理想的な操業水準が予測困難な状況となっており、コストの固定費負担が大きくなっています。
自動車産業では生産台数が回復基調、かつ半導体製造装置産業では日本国内で半導体企業の進出が増えている状況ですが、サプライチェーンの上流における特殊鋼の需要はまだ先行きが不透明です。既存商品に係る特殊鋼の需要が低位な状況でも、当社は収益を確保するため、高付加価値商品を中心とした拡販活動を強化してまいります。
b.ポートフォリオ改革
特殊鋼事業の売上高の約7割は自動車産業向けであり、その大部分はエンジンバルブ用耐熱鋼や燃料噴射装置用電磁ステンレス鋼の特殊鋼鋼材並びに自動車燃料系統用途の精密加工商品が占めています。今後、これらエンジン用商品の需要は縮小すると見込んでおりますが、その他の用途で需要がある電磁ステンレス鋼等の高機能材料について、市場シェアの拡大を図ります。
また、現在当社グループの中で磁歪クラッド材や拡散接合技術の収益貢献はわずかではありますが、マーケティングの結果潜在的な需要があることがわかりました。これらの商品や技術が将来の収益に貢献できるよう、個々の需要を捉えて事業成長を図ります。
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