日進工具
【東証プライム:6157】「機械」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において、当社グループが判断したものであり、その実現を保証するものではありません。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「SOFT(技術)・HARD(機械)・HEART(心)を創ります。人と地球に優しい製品を開発し社会に貢献します」の経営理念のもと、生産性の向上に役立つ切削工具等の開発・製造・販売に携わってまいりました。また、ブランドステートメントとして“「つくる」の先をつくる”を掲げ、お客様や社会のニーズに応える高付加価値製品を生み出し、モノづくりの夢と可能性を切り拓くことを経営の基本方針としております。
また、当社グループは、社会との共存と自社の持続可能性を同期させた「サステナビリティ基本方針」を策定しております。自社グループの中長期的課題と向き合い、社会と共生しつつ企業としての持続的成長を維持継続するため、超硬小径エンドミルを中心に「人と地球にやさしい高付加価値製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努める」ことで、精密・微細加工用工具分野で圧倒的なプレゼンスを目指します。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの持続的成長と社会との共存を実現するため、当社の各部門とグループ企業体が互いに連携し、製品開発サイクルの好循環をつくり出すことで、高付加価値製品の継続的な創造、提供の実現を図ります。
上記目的達成のため、開発・生産・販売の各部門においては、下記戦略を実施してまいります。
① 開発部門
新製品開発では、当社グループの強みである製品群の豊富な品揃えをさらに強化、充実するとともに、他社との「違い」を意識したユニークな製品の開発を目指します。新たな素材を使った工具の開発や、新たな工具の加工方法やコーティング技術の改良を推進するとともに、営業部門と連携して製品開発に関わる情報の収集と共有化を図り、販売店やユーザー様に支持される製品を開発してまいります。また、生産技術開発では、次世代加工技術への取り組みによる既存技術の革新を基本方針として、自社開発工具研削盤の更なる機能向上や画像処理技術による自動測定の範囲拡大を図ります。
② 生産部門
仙台工場で策定した「ものづくり行動指針」を生産活動の基本としつつ、自社開発機による自動化ラインの増強、自動化範囲の拡大等により無人化・省力化を引き続き推進し、高性能でバラツキのない、かつ価格競争力のある高付加価値製品を安定的に供給できる体制を深化させてゆきます。また、品質改善と原価低減のための小集団改善活動「オレンジFC活動」(FCはFuture Challenge)を一段と強化してまいります。また、子会社工場での生産増強による小径エンドミル生産体制のリスク分散や、生産効率と環境に配慮した生産活動を推進するため電力使用量の削減等を引き続き進めてまいります。
③ 販売部門
国内販売は、製品の拡販を図るための仕組みづくりに再度注力し、ユーザー様に、タイムリーかつ効率的に全製品をお届けするための販売網の整備や在庫の充実を図りつつ、販売店に配慮した施策の展開を行うほか、ユーザー様に対してはデジタル技術を活用し、自社サイトでの工具検索機能を充実させるほか、情報サイト「オウンドメディア」等を活用した製品情報の提供や、データ分析に基づいたマーケティングを進めてまいります。また、海外では地域別戦略に基づき、地域特性に合わせたアプローチにより精密・微細加工市場の開拓、拡大を目指し活動してまいります。
(3)経営環境について
当社グループの主力製品である超硬エンドミルは、切削工具の一種で、工作機械に取り付け、主に精密・微細加工を必要とする金型や各種部品の製作といった金属等の加工に使用されます。それらの金型や部品は様々な工業製品に用いられることから、当社製品は自動車、半導体、電子部品、光学機器、日用品、医療機器等、多くの産業で使用され、当社グループの業績はこれら工業製品の生産動向に大きく影響されます。この数年間、成長ドライバであったスマホや自動車の分野での製品需要が一段落し、国内市場が横ばい推移しておりますが、中期的には、DXの発展を支える半導体、電子部品等に対する着実な需要増加や、医療や航空宇宙等、新たな成長が期待される分野において、当社の製品が強みを発揮する精密・微細加工技術が必要とされる機会が増加すると思われ、小径切削工具の市場は引き続き成長してゆくものと考えております。
当社グループを取り巻く現在の経営環境としましては、米国関税問題を巡る交渉の帰趨が見通せない中、我が国及び世界における経済活動の安定性、予見可能性が担保できない状況であり、一方で素材費や人件費を中心とした着実なコストアップが見込まれるため、現時点におきましては、当社グループを取り巻く経営環境は一段厳しいものになるとの前提を置かざるを得ません。
このような環境の中、主要需要先の動向といたしましては、自動車関連は、認証問題等の供給制約要因が解消し、電気自動車(EV)シフトが一段落する中でハイブリッド自動車(HV)や燃料電池自動車(FCV)の需要回復、生産増加が期待されますが、米国関税政策の動向によっては輸出の大幅減や世界景気の底割れが顕在化するリスクがあるため、当社製品のユーザー様の動きは鈍いものと予想されます。半導体や電子部品関連は、AI関連の需要に加え在庫調整が一巡し、全般的に徐々に需要回復してゆくものと見込まれますが、米国の動向によってはサプライチェーンが分断されるリスクがあるため、当社製品の販売量が非連続となる可能性があります。
(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
我が国のモノづくりが圧倒的な強みを発揮する精密・微細加工分野を、小径工具を使った切削加工技術の面から支え続けてゆくこと、ユーザー様が安心して新たな精密・微細加工にチャレンジできるよう、高性能で品質の安定した高付加価値製品を、販売店を通じ妥当な価格で安定的に供給していくことが当社グループの使命であると認識しております。
当社グループが対処すべき事業上の課題としましては、上記使命を踏まえ、内外の代理店、販売店による販売網の一段の充実を図りつつ、小径工具の分野で、他社との「違い」を意識したユニークな新製品を供給する一方、標準品の圧倒的な品揃えと豊富な在庫を確保することで、小径工具市場でのプレゼンスを再度確立することに重点を置いて業務を推進してまいります。
当社グループが対処すべき財務上の課題としましては、ここ数年成長が鈍化し設備投資が伸び悩んだことから、総資産に占める現預金の割合が増加し資産効率の悪化を招いている点が挙げられます。これに対処するため足元は株主還元を強化しておりますが、早期に成長軌道へ復帰することで増産や生産効率改善のための新規設備投資へ現預金を振り向けることにより、資産効率を改善してまいる所存です。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上よりも利益を優先する経営方針を掲げ、売上高経常利益率20%の確保を中長期的な目標としておりましたが、当期の売上高経常利益率は18.9%、前期比2.2ポイント減となり、11期ぶりに目標とする指標を下回りました。国内の小径工具市場が停滞する中で、販売価格を据え置いて対応する一方、人件費や販売費の増加による原価率、経費率の上昇が利益を圧迫する結果となりました。次期につきましても、世界情勢や景気動向の不透明感から販売や原価低減の見通しが困難な一方、引き続き人件費等の原価、費用の着実な上昇が見込まれることから、売上高経常利益率は当期を0.8ポイント下回る18.1%を予想しております。また、株主資本を効率的に活用する観点から自己資本利益率(ROE)10%の確保も経営指標としておりますが、当期は7.1%に止まっております。厳しい経営環境が続く中、足元では次年度施策の着実な遂行により、経常利益率の計画水準達成と資本コストを上回るROEの回復を目標としつつ、中期経営戦略と施策の推進により利益成長機会を再度確保し、中期的に両指標の達成を目指します。
(6)経営戦略の現状と見通し
「中期的な会社の経営戦略」に記載の通り、この数年間市場が踊り場を迎える中、製品開発では製品群の品揃えの充実を図る一方で、高硬度鋼材向けの新コーティングを使った製品やユニークなレンズ形状エンドミル等を開発して発売し、生産現場では自社製研削盤の改善や測定技術の向上を図るとともに、自動化を推進してコストの低減を進め、販売部門では内外の販売網を活用して多様な製品を滞りなくユーザーに届ける仕組みの充実を図っております。
今後の見通しにつきましては、精密・微細加工の市場は中長期的に着実な拡大が見込まれると想定し、引き続き小径工具の製造販売に特化し、他社との「違い」を追求しつつ市場と共に成長してゆくための中期的施策を策定し実行することで、再び持続的な利益成長の実現を目指してまいります。
(7)その他、会社の経営上重要な事項
① 内部管理体制の整備・運用状況
当社グループでは、社内規程や稟議制度を整備し、ルールに基づいた業務運営を実施しております。また、内部統制報告制度への対応につきましては、常務取締役を委員長とする「内部統制委員会」を設置し、内部統制の整備・運用の推進及びその評価、また監査法人により実施される内部統制監査への対応を行っております。
② 指名・報酬委員会の設置
当社グループでは、ガバナンス強化の観点から任意の指名・報酬委員会を設置しております。指名・報酬委員会は独立社外取締役が過半を構成し、委員長は独立社外取締役から選任される諮問委員会であり、取締役等の候補者の指名(監査等委員である取締役を除きます)や、取締役等の報酬(監査等委員である取締役を除きます)について取締役会より諮問を受け、審議内容を答申することで、取締役会の独立性を高めるものであります。
③ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けての対応
当社グループでは従前より自社の連結資本コストを8.6%と想定し、これを上回る資本効率を達成するため自己資本利益率(ROE)10%を経営目標としております。また、このROE目標達成のため、売上高経常利益率20%を維持することをもう一つの経営目標として事業に取り組んでおります。当期のROEは7.1%、売上高経常利益率は18.9%といずれも目標となる指標を大きく下回る結果となりました。厳しい経営環境下、次期業績予想でも指標の目標未達が見込まれます。会社の中期的課題については総括が終了し対策を開始しており、足元は次期計画を着実に遂行することで、まず漸減傾向にある経常利益額と経常利益率を反転させ、併せてグループ全社一丸で中期課題に向き合い解決することで次の持続的成長を実現し、資本コストを上回る水準へROEを回復させることに注力してまいります。
④ その他
その他の取組みといたしましては、監査等委員による各部門長へのヒアリングの実施、内部監査部門による各部門への内部監査の実施等を行っております。なお、内部監査につきましては、社長及び取締役会の両方へ報告、答申等を行うデュアルレポーティング制度を採用しております。コンプライアンスにつきましては、コンプライアンス担当役員を中心に推進を図っており、従業員研修会や社内業務連絡(コンプライアンス便り 月1回配信)で取り上げることにより、社内教育に努めております。また外部弁護士を窓口とする「コンプライアンス相談窓口」を設け、内部通報制度の窓口といたしております。
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