企業兼大株主日産自動車東証プライム:7201】「輸送用機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1) 経営方針及び経営戦略等

 当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。

グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会を目指し、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現することを目標としている。

 この目標に向け、2021年11月には、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、2030年度に向けて、当社が進むべき道を示した。2023年度には、第5次中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2030(NGP2030)」、及び2030年度までの社会性の取り組みを包括的に推進する「ニッサン・ソーシャルプログラム2030(NSP2030)」を策定した。日産は事業を通じてサステナビリティ課題の解決に取り組むことで、社会に価値を提供していく。

2024年度の当社の状況は、(2) 2024年度の経営環境及び主要な経営指標に記載のとおり、厳しい市場環境に加え、コスト競争力やブランド力などの当社固有の課題によっても厳しいものとなった。

 このような状況下で、2024年11月以降、今後のビジネス環境の変化にも柔軟かつ機敏に対応できる「スリムで強靭な事業構造」に再構築するための緊急対策として「ターンアラウンド」の取り組みを計画し、進めてきた。

 そして、2025年4月から新たなマネジメント体制に移行し、当社の新しい経営陣は、「ターンアラウンド」を含む主要な取り組みを慎重に再検討し、2025年5月には、確実に業績を回復させるためのさらなる取り組みである日産経営再建計画「Re:Nissan」を発表した。「Re:Nissan」は、コスト削減、戦略の再定義、パートナーシップの強化を柱とした現実的な実行計画で、2024年度の実績比で、固定費と変動費を計5,000億円削減し、2026年度までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指す。

<変動費の削減>

2026年度までに2,500億円の変動費の削減を目指す(2024年度実績比)

・エンジニアリングとコスト効率の向上

TdC (Total delivered Cost) トランスフォーメーションチーフの下に各部門から集められた約300人のエキスパートで構成するTdC改革オフィスを設置し、コストに関する意思決定を行う。先行開発や2026年度以降の商品開発に、開発期間を短縮するプロセスを迅速に適用することで、商品の投入を遅らせることなく、開発に関わる3,000人の従業員を一時的に配置転換し、コスト削減活動に集中的に取り組む。

<固定費の削減>

2026年度までに2,500億円の固定費の削減を目指す(2024年度実績比)

・生産の再編と効率化

 車両生産工場を2027年度までに17から10の工場に統合し、パワートレイン工場についても見直しを行う。これにより、配置転換や生産シフトの調整に加え、設備投資も削減することで、固定費を削減する。北九州市におけるLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー新工場の建設中止も本取り組みの一部である。

・人員の削減

2024年度から2027年度にかけて計20,000人の人員削減を行う(生産部門、一般管理部門、契約社員も含むR&D部門の直接員と間接員)。販売費と一般管理費においても、シェアードサービスの範囲を拡大し、マーケティングの効率向上を推進する。

・開発の刷新

 エンジニアリングコストの削減や開発スピードの向上を図るため、開発のプロセスを刷新する。グローバルでR&Dのリソースの合理化を通じて、平均の労務費単価を20%削減することを目指す。

 部品種類を70%削減するとともに、プラットフォームの統合と最適化を進め、プラットフォームの数を2035年度までに現在の13から7に減少させる。また、リードモデルの開発期間を37ヶ月、後続モデルの開発期間を30ヶ月へと大幅に短縮する取り組みを進めている。

<市場戦略と商品戦略の再定義>

 商品戦略は市場とブランドに焦点を当てて再構築する。革新的な取り組みを加速し、お客さまにより魅力的な商品を届ける。強化される商品ポートフォリオは、HEARTBEATモデルを中心とした3つのカテゴリーで構成される。HEARTBEATモデルは日産のDNAを体現し、コアモデルは台数と収益を重視し、成長モデルは将来の成長に貢献する。これに加えて、パートナーシップモデルが補完する。

 市場戦略では米国、日本、中国、欧州、中東、メキシコを主要市場として位置付け、他の市場についてはそれぞれの市場要件にあわせたアプローチを行う。その中で、中国・メキシコを輸出拠点として活用する。また、アライアンスパートナーや中国でのパートナーシップを活用してラインアップの拡充を進める。

<パートナーシップの強化>

 当社はパートナーと協働して商品ポートフォリオを補完し、各市場で固有のニーズに応えるモデルを提供する。アライアンスパートナーであるルノー及び三菱自動車工業株式会社とOEM供給等のプロジェクトを継続する。また、本田技研工業株式会社とは、三菱自動車工業株式会社とともに、自動車の知能化・電動化における戦略的パートナーシップの枠組みにおける連携を継続する。

(2) 2024年度の経営環境及び主要な経営指標

2024年度は、グローバル自動車市場において、販売競争の激化、急激な為替変動及びインフレーションの影響を受ける厳しい環境が続いた。特に、米国市場では、メキシコからの輸入に対する25%の関税に対する懸念から業界全体の在庫及び販売奨励金が増加傾向であった。米国の現在の政権の関税政策は、日々状況が変わり先行きを見通すことが非常に困難である上に、それに対する各国の対抗措置も重なり、当社にも大きな影響を与えている。中国市場では、バッテリーEV、プラグインハイブリッド車などの新エネルギー車への長期にわたる急激なシフトと、販売競争激化の状況が続いた。

 さらに、当社固有の課題によっても厳しい状況となった。販売計画が達成できない状況が続き、一般管理費を中心に固定費が増加しているほか、インフレーション、取引先に対する補償費用の発生などにより変動費も増加した。また、モデルミックスの悪化、在庫削減や競争環境に対応するためのインセンティブの増加も収益を圧迫している。また、米国のように、変化するお客さまのニーズに対応した電動車をタイムリーに提供できないことも大きな課題である。

 その結果、当社グループの当期の経営成績は下記のとおりとなった。

 当社グループのグローバル小売台数は前年度比2.8%減の334万6千台となり、売上高は12兆6,332億円と前連結会計年度に比べ525億円(0.4%)の減収となった。営業利益は698億円と前連結会計年度に比べ4,989億円(87.7%)の減益となった。

 また、2025年3月末時点の当社株価は、前年比37.7%減の378円70銭、PBRは0.27倍であった。

 当社は、2024年4月に発行済株式総数(自己株式を除く)の2.5%の自己株式を取得し、同月にその全株式を消却、また2024年10月に発行済株式総数(自己株式を除く)の5%の自己株式を取得し、同月にその全株式を消却することで、1,393億円の株主還元を実施した。当社は、株主還元と資本効率の向上、財務パフォーマンスの継続的改善、将来の成長のための財務柔軟性の維持に取り組んでいる。

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 当連結会計年度における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。

・元会長らの不正行為に関連した事項

 当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。

 当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当有価証券報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。

A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等

 ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。

・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。

2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。

・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。

・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。

・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。

・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。

・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。

B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為

 ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。

 また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。

 金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。

2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。

 上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。

 また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。アムステルダム地方裁判所は、2021年5月20日に出された判決においてゴーン氏の請求を棄却し、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還を命じたが、ゴーン氏は2021年8月20日に控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。その後NMBVが提出した交差控訴及び防御の結果、2022年8月23日にアムステルダム高等裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は大部分が棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約420万ユーロの返還が命じられた。上告期限の経過により判決は確定した。

 ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。

 当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。

 指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。

 当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。

・公正取引委員会からの勧告に関連した事項

2024年3月7日、当社は公正取引委員会から、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という。)の適用対象となる事業者との取引に関して、下請法に基づく勧告を受けた。

 これは、当社が、下請法の適用対象となる事業者36社との取引において、当該事業者から割戻金を受け取った行為の一部が、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の違反と判断されたものである。本勧告において下請代金の減額に該当すると判断された割戻金の総額は、2021年1月から2023年4月までの約30億円である。当社は、本勧告の対象下請事業者に対して、下請代金の減額に該当すると判断された金額を返金するとともに、割戻金の運用自体も廃止した。

 当社は、本勧告を大変重く受け止めている。サプライヤーの皆様との強固な信頼関係なくして双方の事業の発展は成し得ない。法令の遵守状況についての定期的な点検、並びに役員や下請取引に関わる従業員への教育の徹底及び定期的な研修の実施などを通じて、法令遵守体制を強化するとともに、再発防止策の徹底に取り組み、取引適正化を図っており、2025年3月5日に改善報告書を公正取引委員会に提出した。

 取引先との関係を強化し、双方に価値を創造し、法令遵守の徹底のための更なる取り組みの一環として、法令違反の疑いなどがある場合に、取引先から匿名で意見を集約するホットラインを外部に設置している。さらに、モノづくり部門、並びに、関連部署の担当者からなる社長直轄の「パートナーシップ改革推進室」を新設した。このチームは、積極的に取引先のもとに足を運び、懸念事項を正しく理解し、頂いた声を速やかに社内にフィードバックして、必要な対応を迅速に講じることができるようにしている。各部署の通常窓口に加え、2つのルートを設けることで、取引先の状況把握、法令遵守の徹底を図っている。

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