企業兼大株主日産自動車東証プライム:7201】「輸送用機器 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

(1) 経営方針及び経営戦略等

 当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。

グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会を目指し、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現することを目標としている。

 この目標に向け、2021年11月29日に長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、「共に切り拓く モビリティとその先へ」をスローガンとして、当社ならではの2つの価値「移動の可能性を広げる」、「社会の可能性を広げる」を提供するため、以下の分野において、イノベーションを推進する。

<電動化を推進し、多様な選択肢と体験を提供>

 電動化を長期的な戦略の中核に据えて、ワクワクする多様なクルマを求めるお客さまのニーズの高まりや事業環境の変化に対応し、電動化をより一層推進していくため、「Nissan Ambition 2030」で公表した2030年までに投入する電動車のモデル数を19車種のEVを含む27車種に増加した。この結果、2030年度時点のニッサン、インフィニティの両ブランドをあわせた電動車のモデルミックスは、グローバルで従来見通しの50%から55%以上へと上昇する見込みである。2026年時点のグローバルな電動車の販売比率は、従来見通しの40%から44%以上へと増加する。また、急速な変化への対応が求められる中国市場向けには、専用のEVを2024年に投入する予定である。欧州では、確固たる電動化計画を継続して実行するとともに、アライアンスとのより強固な協力関係を推進していく。

<より多くの人の自由な移動を実現するモビリティの革新>

 リチウムイオン電池の技術をさらに進化させ、コバルトフリー技術を採用することで、2028年度までに1kWhあたりのコストを現在と比べ65%削減することを目指す。さらに、2028年度までに自社開発の全固体電池(ASSB)を搭載したEVを市場投入することを目指し、2024年度までに当社横浜工場内にパイロット生産ラインを導入する。ASSBの採用により、様々なセグメントにEVを投入することが可能となり、動力性能や走行性能も向上させることができる。

 加えて、需要及び市場のEV台数の増加に対応し、グローバルな電池供給体制を確立していく。さらに、最先端の運転支援技術や知能化技術を、より多くのお客さまに提供し、交通事故によって亡くなられる方をゼロにすることを目指すとともに、移動手段を多様化していくことを目指す。このため、2026年度までにプロパイロット技術を搭載したニッサン及びインフィニティ車で250万台以上販売することを目指す。

<モビリティとその先に向けたグローバルなエコシステムを構築>

 技術の進化に加え、EVをより競争力のあるものにするため、EVの生産と調達の現地化を進めていく。英国で始動させた、世界初の電気自動車生産のエコシステムを構築するEV生産ハブ「EV36Zero」を日本、中国、米国を含む主要地域へ拡大していく。モビリティとエネルギーマネジメントを組み合わせ、生産とサービスを統合したこのエコシステムにより、カーボンニュートラルの実現を目指す。また、フォーアールエナジー社とバッテリーの二次利用を推進するためのインフラを整備し、エネルギーマネジメントにおける循環サイクルを構築することで、2020年代半ばには、V2Xと家庭用バッテリーシステムの商用化を目指す。

 長期ビジョンを達成する上で、アライアンスでの連携も不可欠である。当社とルノーグループ及び三菱自動車工業株式会社は、共通のプロジェクトと実行計画(ロードマップ)である「Alliance 2030」を2022年1月27日に発表した。アライアンス共同で今後5年間に230億ユーロを投資すること、プラットフォームの共用化率の向上、グローバルで220GWhのバッテリー生産能力を確保することを目指し共通のバッテリー戦略を強化すること等を掲げている。また、2023年2月6日、三社のアライアンスをより高いレベルに引き上げる事を目指した、新たな取り組みを発表した。これら広範囲な取り組みは、新たな機敏性をもたらしアライアンス各社のもつ強みの技術を活用するなど、これまで24年間続いたパートナーシップの進化と強化につながる。より高いレベルのアライアンスは、目まぐるしく変化する自動車及び新しいモビリティサービス市場において、アライアンス各社が革新と変革を続ける中、さらに多くの成長機会を生み、事業の効率化に貢献する。アライアンスの全てのステークホルダーに対する価値の最大化を目指した新たな取り組みは次のとおりである。

<ラテンアメリカ、インド及び欧州において、事業面で高い価値を創造するプロジェクト>

 アライアンス各社は新たにラテンアメリカ、インド及び欧州において、市場、商品、技術という三分野で、ウィン・ウィンで大規模かつ実行可能な主要なプロジェクトを検討する。ルノーグループとのアライアンスプロジェクトとしてラテンアメリカでは、アルゼンチン向け新型ピックアップトラックやAセグメントの電動車が検討されている。インドでも同じくAセグメントの電動車や新しいSUVが検討されている。欧州では2026年にソフトウェア・ディファインド・ビークル技術を活用したFlexEvanや、2026年以降には次世代のCセグメントの電動車が検討されている。

 これらのプロジェクトにより、各社は中期的には創造される価値を享受し、短期的にはコスト分担やコスト回避によるベネフィットを受けられると期待される。

<各社の新しい取り組みにパートナーが参加可能となる、戦略的な機敏性の向上>

 電動化や低排出技術については既存の戦略に沿って、事業に付加価値が期待できるパートナー各社のプロジェクトに投資・協業することで合意した。これら機敏で戦略的な取り組みは、「Nissan Ambition 2030」や「Renaulution」などメンバー各社の事業計画を補完するよう立案されており、各社の持続可能な成長や脱炭素化に向けた目標の実現に向けて、共通性や投資機会の面から活用される。

<リバランスされたルノーグループ・当社間の株式相互保有と強化されたアライアンスのガバナンス>

 従来のアライアンスでの契約のもとで各社がそれぞれの戦略を推進してきたが、今後の事業の好機に対応するためには新たなアプローチが必要となる。このため、アライアンスの創設メンバーであるルノーグループと当社は、有効性を確保し価値創造を最大化するために、株式の相互保有とガバナンスの条件についてリバランスすることに合意した。2023年2月にルノーグループと当社が締結した拘束力のある枠組み合意では、新たなガバナンス体制と両社株式の相互保有のリバランスが定められている。

 当社グループは、2020年5月28日に、これまでの事業規模拡大による成長戦略から転換し、収益性を重視しながらコストを最適化することで、持続的な成長と安定的な収益の確保を目指す2023年度までの4カ年計画「Nissan NEXT」を発表した。この計画により、中国の合弁企業を50%比例連結したベースで、2023年度末に営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルとなることを見込んでいる。過度な販売台数の拡大は狙わずに収益を確保しながら着実な成長を果たす、自社の強みに集中し事業の質と財務基盤を強化、そして新しい時代の中で、『日産らしさ』を取り戻すべく、「Nissan NEXT」で掲げた目標の達成に取り組んでいる。結果として、引き続き事業運営の質、商品競争力、収益性の改善が確実に進んでいる。

 お客さまに新たな価値をご提案するために常にチャレンジし、ブレークスルーを果たす、これこそが、私たち日産のDNAである。新しい時代においても、日産は常に『人』を中心に、『人』の為の技術で、日産ならではの挑戦を続けていく。

(2) 2022年度の経営環境及び主要な経営指標

 長引く新型コロナウイルス、半導体の供給不足の影響に加え、ロシア・ウクライナ問題に端を発する地政学リスクの高まり、急激な為替変動、それらに起因した、原材料・エネルギー価格の急騰、さらには電動化に伴う市場の分断化など、事業環境がさらに大きく変化した。

 当社はサプライチェーンの分断や、引き続き半導体の供給不足、原材料価格の高騰などに直面する一方、為替の円安によるプラスの効果もあった。

 その結果、当社グループの当期の経営成績、業績目標とその達成度は下記のとおりとなった。

 当社グループのグローバル小売台数は前年度比14.7%減の330万5千台となったものの、売上高は10兆5,967億円と前連結会計年度に比べ2兆1,721億円(25.8%)の増収となった。営業利益は3,771億円と前連結会計年度に比べ1,298億円(52.5%)の増益となった。

 また、当連結会計年度の当社グループの業績目標は、「Nissan NEXT」の3年目として重点的に取り組むべき事項に対応し、営業利益、売上高営業利益率、自動車事業のフリーキャッシュフロー(中国合弁会社比例連結ベース)、品質、コーポレートカルチャーの5項目を設定した。「Nissan NEXT」の着実な進展に向けて、収益確保を確実に達成する観点に加え、長期的な事業の持続性の観点から、営業利益及び売上高営業利益率の指標を設定した。その実績は営業利益3,771億円、売上高営業利益率は3.6%となり、それぞれの達成率はその上限である125%となった。自動車事業のフリーキャッシュフローについては、2022年度通期で黒字化を達成するための目標値を設定し、中国合弁会社比例連結ベースで、達成率はその上限である125%となった。品質については、品質保証及び顧客満足度からなる目標値を設定し、実績は目標値を上回り、達成率はその上限である125%となった。コーポレートカルチャーについては、従業員エンゲージメント/満足度に加え、エネーブルメント(社員の意欲をサポートする環境、能力を発揮するための働きやすさ)、企業倫理、リーダーシップ、企業文化、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンといった全社的に優先度の高い5つの重点領域に関する前年度からの改善に必要な目標値を設定し、実績は目標値を上回り、達成率はその上限である125%となった。業績目標の総合達成率は125%となった。

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 当連結会計年度における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。

 当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。

 当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当有価証券報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。

A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等

 ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。

・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。

2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。

・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。

・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。

・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。

・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。

・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。

B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為

 ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。

 また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。

 金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。

2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。

 上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。

 また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。アムステルダム地方裁判所は、2021年5月20日に出された判決においてゴーン氏の請求を棄却し、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還を命じたが、ゴーン氏は2021年8月20日に控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。その後NMBVが提出した交差控訴及び防御の結果、2022年8月23日にアムステルダム高等裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は大部分が棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約420万ユーロの返還が命じられた。上告期限の経過により判決は確定した。

 ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。

 当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。

 指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。

 当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。

PR
検索