日東紡績
【東証プライム:3110】「ガラス・土石製品」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、『日東紡グループは「健康・快適な生活文化を創造する」企業集団として社会的存在価値を高め、豊かな社会の実現に貢献し続けます。』との経営理念に基づいて、時代の要請に即応し、社会の役に立つ新しい価値を創造し提供し続けることで、株主・投資家・行政・地域社会等すべてのステークホルダーと共に喜びを分かち合い、企業価値を高めていくことを目指しております。
(2) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、欧米でのインフレに沈静化の兆しが見られたものの、米国での政権交代や中国の景気低迷などの影響により、不安定な状態が継続しました。わが国経済は、企業収益や設備投資に持ち直しの動きが見られ、景気は緩やかな回復基調が継続した一方、不安定な為替相場、原材料・エネルギーコストの高騰、人件費の上昇などにより、先行き不透明な状況は継続しました。
このような環境の下、当社グループは長期ビジョン『Big VISION 2030』の実現に向けて新中期経営計画(2024-2027年度)をスタートしました。持続可能な社会実現に向け、「環境・エネルギー」「デジタル化社会」「健康・安心・安全」に貢献するグローバル・ニッチNo.1を創造し続ける企業グループを目指しております。
2025年3月期は、電子材料事業を中心に高付加価値品の販売が好調に推移しました。
セグメントごとの事業環境は以下のとおりであります。
電子材料事業
電子材料事業では、グラスファイバーヤーンの製造とガラスクロスの加工の双方を備えた生産・開発体制を保有しております。情報通信インフラの高度化を背景に、プリント配線板材料分野で当社が長年培ってきたグラスファイバーの基盤技術により独自に開発した低誘電特性あるいは低熱膨張特性を有する特殊組成のスペシャルガラスを軸に事業を展開しております。
当社はこれらの独自技術により高い競争力を有しておりますが、今後、国内外の企業の技術的キャッチアップも想定されるため、研究開発体制の一層の強化と高付加価値製品の製造能力向上を行ってまいります。
当連結会計年度においては、AIサーバー向けの旺盛な需要の継続により、低誘電特性を持つスペシャルガラスや、半導体パッケージ基板向けの低熱膨張特性を持つスペシャルガラスの販売が好調に推移し、収益に貢献しました。
メディカル事業
メディカル事業では、体外診断用医薬品の製造販売を行っております。原料から最終製品をグループ内で一貫して製造することにより高品質と安定供給を両立させ、特に免疫系の診断薬に強みを有しております。国内市場では、高齢化の進展や医療費抑制に向けた治療から予防へのシフト等により診断薬の高機能化が求められております。また、海外市場において、先進国では高付加価値医療(高感度の免疫系試薬や感染症、遺伝子検査等)の需要増加、新興国では社会保険制度の整備に伴う診断機会の増加があり体外診断用医薬品の需要が拡大しております。当社グループは、国内において100種類以上の検査項目に対応した診断薬を販売しており、炎症マーカーや骨粗鬆症マーカー等で大きな販売シェアを確保しております。
当連結会計年度においては、体外診断用医薬品の販売は堅調に推移する一方で、世界的なインフレ影響を受けました。また、基盤強化も継続して実施しました。
複合材事業
複合材事業では、プラスチック強化材としてのグラスファイバー製品を提供しております。独自技術によりグラスファイバーの断面を通常の円形ではなく長円形にすることで成型品の反り、ねじれを抑えられるフラット・ファイバーをはじめ、幅広い製品群はFRP(繊維強化プラスチック)やFRTP(繊維強化熱可塑性プラスチック)用途において多様なニーズに対応しております。自動車の軽量化や環境貢献製品へのニーズなど需要の広がりを期待できる一方で、汎用品においては中国メーカーの台頭により競争環境は厳しい状況にあります。
当連結会計年度においては、販売は前年同期を上回ったものの、生産設備の定期修繕に伴うコストアップなどの影響を受けました。
資材・ケミカル事業
資材・ケミカル事業では、産業資材用途グラスファイバー事業、ケミカル事業及び繊維事業を展開しております。産業資材用途グラスファイバー事業では、当社の技術力が評価され大型建造物用の膜材から自動車用の制振材まで幅広い用途で採用されております。取引先が多岐にわたるため個別業界の市況変動が分散され安定的な収益計上が見込める一方で、他素材との競合もあり競争環境は厳しい状況にあります。
ケミカル事業では、機能性ポリマーや無機・有機ナノコンポジット材(SSG)の製造販売を行っております。販売先の業種・分野はトイレタリー、製紙、金属、電子材料、ジェネリック医薬品など多岐にわたっており、競合の参入が難しい独自性の高い製品の研究開発・製造販売に取り組んでおります。
繊維事業では、接着芯地、薄手裏地等の衣料用副資材やふきんの製造販売のほか、独自の接着技術を活用した機能資材を提供しております。
当連結会計年度においては、原材料を中心とするコストアップの影響を受けたものの、販売は値上げの寄与もあり前年同期を上回りました。
断熱材事業
断熱材事業では、高い断熱性能を持つグラスウール断熱材の開発・製造・販売を行っております。住宅やビルの断熱材として使用されており、省エネルギーに貢献しております。また、主原料には、使用済みのガラス瓶や廃棄される窓ガラスなどのリサイクルガラスを用いており、限りある資源の有効活用にも寄与しております。当社グループは、1949年に日本で初めてグラスウールの製造に成功した業界のパイオニアとして、現在も独自の技術を活かし、製品の開発・製造を行っております。さらに、製品の細繊維化による断熱性能の向上や、ノンホルムアルデヒド化を通じて、環境負荷の低減や安全・快適な住環境の実現に貢献しております。
当連結会計年度においては、高性能断熱材の販売が堅調に推移したものの、コストアップなどの影響を受けました。
その他事業
その他事業では、電子材料用途などグラスファイバー製品を中心に工業材料を取り扱う専門商社及び機械・設備の設計、施工、メンテナンスを行うエンジニアリング事業などがあります。
当連結会計年度においては、前年同期に対して増収、減益となりました。
(3) 対処すべき課題
日東紡グループ 『中期経営計画(2024-2027年度)』
○日東紡グループ中期経営計画の進捗
日東紡グループは、2023年に創立100周年を迎え、次の100年も持続的に成長することを目指し、長期ビジョンである2030年にありたい姿『Big VISION 2030』を策定しております。2024年4月には、『Big VISION 2030』の実現に向けて、『中期経営計画(2024-2027年度)』をスタートしました。
『中期経営計画(2024-2027年度)』の1年目である当事業年度は、AIサーバー向けの旺盛な需要に対応するべく、スペシャルガラスの生産能力拡大に向けた投資を前倒しで実行いたしました。
○『中期経営計画(2024-2027年度)』
<中期経営計画(2024-2027年度)の2つのポイント>
『Big VISION 2030』実現に向けた確実な投資の刈り取りと既存成長戦略の推進 |
スペシャルガラス、メディカル分野において前中期経営計画で実行した投資の着実な刈り取りと、急激な市場の立ち上がりにも対応可能とする積極的な成長投資を継続いたします。
2030年を超え、次の100年に向けた新たな柱づくり |
2024年4月より、従来の3事業部門を5事業本部に改め、新組織体制に移行いたしました。
この体制の下、スペシャルガラスとメディカルに次ぐ新たな柱づくりに加え、開発・製造・販売を一体運営し、顧客視点での活動を強化してまいります。
<本部戦略の基本方針>
『Big VISION 2030』を超えて安定成長を持続するため、打ち出しの4年間として各事業本部は以下の方針に基づき中期経営計画に取り組みます。
[電子材料][メディカル]
・市場拡大が期待できる分野に向けた供給体制の整備、積極的な設備投資を継続します。
・『Big VISION 2030』を実現する2030年度目標に向け、投資の刈り取り、新規開発製品の結実による着実な収益貢献を目指します。
[複合材][資材・ケミカル][断熱材]
・既存事業領域の深掘りをしつつ、2030年度以降を見据え、グラスファイバー、繊維など、従来の括りに捉われない新たな発想で事業の探索を進めます。
<全社定量目標(2024-2027年度)>
<日東紡グループの経営理念と基本方針>
○環境目標
当社グループでは、「環境に関する全社方針」を定め、環境目標の達成に向けて取り組んでおります。
また、一元的に環境課題を把握し、課題解決への取組みを推進するため、代表執行役社長を委員長とする
「サステナビリティ推進委員会」を設けております。
2024年度は委員会を4回開催し、CO2削減推進、環境貢献商品開発、サステナビリティ経営推進等のテーマ別タスクフォースを通じて、持続可能な事業のための具体的な施策の検討と推進に取り組みました。
近年における主な取組みは以下のとおりです。
・2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明しました。
・2023年4月には、当社ウェブサイトをリニューアルし、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報を充実させました。
・2024年2月より、当社富久山事業センター構内において第三者所有モデルによる太陽光発電システム(いわゆるオンサイトPPA)の運用を開始いたしました。また、燃焼時にCO2を排出しない燃料への転換に向けた実証実験を開始いたしました。
・2024年10月に当社福島事業センター、11月に当社連結子会社である富士ファイバーグラス㈱でISCC(国際持続可能性カーボン認証)PLUS認証を取得し、マスバランス方式によるリサイクル商品の取扱いが可能となりました。
今後も持続可能な豊かな社会の実現に向けて取り組んでまいります。
<CO2排出量削減> 2030年度 目標:CO2排出量削減 ▲30%(2013年度比、Scope1+Scope2) 2050年度 目標:カーボンニュートラル達成 |
<廃棄ガラス削減> 2030年度 目標:廃棄ガラス量の実質ゼロ達成 |
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