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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営の基本方針

 当社は、「安全・安心にビットを運ぶ」という使命(ミッション)を実現するため、モバイル通信サービス及びモバイルソリューションサービスを提供し、当社の特許技術であるデジタルID(FPoS)により本人性及び真正性を担保した通信基盤及び認証基盤を提供する事業(以下、「FPoS事業」という)を展開しています。FPoSは、金融庁から金融取引の安全性の確保や利便性の向上に資することが認められた技術です。当社は、モバイル通信サービスにおいて、2024年2月に株式会社NTTドコモ(以下、「ドコモ」という)とドコモの音声・SMS網との相互接続に合意し、当該接続による新サービスを2026年5月に開始する予定です。これにより、当社はネオキャリアとしての新たな事業展開が可能となり、2034年には1,000万回線の提供を想定しています。また、FPoS事業においては、技術的な安全性に加えて、電子署名法の認定による制度的な信頼性についての評価が浸透してきたことから、等比級数的な成長が見込まれており、2034年には1億件の電子証明書の提供を想定しています。当社は、これらのサービス及び事業により、2034年において、国内売上2,400億円、税引き後当期純利益360億円のレベルを想定しています。まずは、2026年5月に向けてドコモの音声・SMS網との相互接続の準備を進め、同時に認知度を向上させるための施策を通して顧客基盤の拡大に努めるとともに、FPoSの評価定着及び事例拡大に努めてまいります。

(2)経営環境及び経営戦略

① モバイル通信サービス(MVNO/MVNE事業)について

 当社は、2020年6月の総務大臣裁定を受け、2020年7月に大手携帯電話事業者と同等の音声定額プランを提供する「日本通信SIM」を発売して以来、契約回線数及び四半期売上ともに成長を続けています。

 当社は、「日本通信SIM」の成長を加速させるための認知度向上策として、当連結会計年度に当社として初めてのテレビコマーシャル(「これ以上、引けない。290円」編)を実施し、インターネットでも同様の広告を展開しました。

 また、当社は、「日本通信SIM」の競争力を強化するため、2024年9月30日から「合理的みんなのプラン」と「合理的30GBのプラン」の料金を据え置いたままでデータ容量を増量しました。

 これらの施策により、「日本通信SIM」は比較サイト及びSNS等で取り上げられ、商品性及び価格競争力が高く評価されています。

 なお、「日本通信SIM」の音声通話サービスは、業界最安値でありながら、MVNOの多くが採用しているプレフィックス方式ではなく、大手携帯電話事業者と同等の通話品質のサービスを提供しています。

 当社は、「通信品質」「料金プラン」「手続き・サポート対応」を重視し、お客様の満足度を上げることに注力しており、株式会社J.D. パワー ジャパンが実施した2024年携帯電話サービス顧客満足度調査MVNO部門において、総合満足度第1位を受賞しました。

「日本通信SIM」の売上は、認知度の向上及び商品性の評価により、個人・法人ともに契約回線数が順調に伸長しており、当社の成長を牽引しています。

 また、当社は、2022年6月にドコモに音声・SMS網との相互接続を申し入れ、2024年2月にドコモと相互接続について合意しましたので、ドコモの音声・SMS網との相互接続に基づく新サービスを2026年5月(予定)に開始することを目指しています。当社は、当社の音声通信サービスのコアシステムをプライベートクラウド上で仮想化することで、サービスの柔軟性を高めるとともに構築コストを抑えることを計画しています。当社は現在、システムを構成するソリューションの選定を進めており、ng-voice GmbH(ドイツ、ハンブルクに本社を置く通信ソフトウェアプロバイダー)のほか、いくつかの海外ベンダーと契約を締結いたしました。

② モバイルソリューション(MSP事業)について

 モバイルソリューション(MSP事業)のうちローカル携帯網による通信(ローカル4G/5G)事業は、先進的な事例の多い米国で実績を作り、その経験を生かして日本で展開することを目指しており、当社米国子会社は、米国市場で、ローカル携帯網との接続に使用するSIMを提供する事業を進めています。

2023年12月に公表したとおり、当社の米国子会社のJCI US Inc. (以下、「JCIUS」という)は、米国ユタ州とCBRS(ローカル4G/5G)の教育及び遠隔医療ネットワークへの導入をユタ州全体で実現するための契約を締結しました。これは、JCIUSが、当社のセキュアLTEネットワークゲートウェイプラットフォーム(NGP)サービスを主要なサービスとして商業提供する契約を、米国ユタ大学、及び、ユタ教育及び遠隔医療ネットワーク(Utah Education and Telehealth Network、以下「UETN」という)を通じて米国ユタ州と締結したものです。この契約で構想されているローカル4G/5Gネットワークは、Wi-Fiのサービス要件を置き換えて拡張し、ユタ大学とUETNが実装する高速ブロードバンドサービスの現在及び将来のユーザーに安全な(プライベート/クローズド)ネットワークを提供するものです。JCIUSは、ユタ州の人々のネットワークへの接続性を高めるために必要なすべてのSIM及び/または他のハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)を提供します。

 当社は、米国子会社を通じてローカル携帯網による通信(ローカル4G/5G)事業に関する技術及びノウハウを蓄積し、これらを活用することで、日本のパートナー企業や顧客企業が設置するローカル携帯網に接続することのできるSIMを提供しています。当社は、引き続き、日本及び米国で知見を蓄積し、これらを活用して、ローカル4G/5G事業の導入事例を積み上げてまいります。

 なお、ドコモの音声・SMS網との相互接続による新サービスの提供には、これまで培ってきた米国でのSIM認証技術及び認証基盤を活用していきます。

③ FPoS事業について

 社会・経済の多くの分野でデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進められる中、デジタルIDの重要性があらためて認識されていますが、当社は、当社が特許を取得しており、金融庁から金融取引の安全性の確保や利便性の向上に資することが認められた技術であるFPoSを利用してスマートフォンで利用できるデジタルIDを構築し提供する事業を推進しています。FPoSによる認証は、ⅰ)お客様のマイナンバーカードのICチップに搭載されている秘密鍵と電子証明書によって確実な身元確認を行ったうえで、ⅱ)電子署名法による認定を受けた電子認証局がお客様のスマートフォン(iPhone及びAndroid)に内蔵されているハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)内で秘密鍵を生成するとともに電子証明書を発行し、ⅲ)電子証明書に記録されている公開鍵と秘密鍵との組み合わせで、お客様の本人性(本人に間違いないこと)と真正性(本人の意思が改ざんされていないこと)を担保するものです。

 すなわち、FPoSによる認証はマイナンバーカードをトラストアンカーとしており、マイナンバーカードと同等の高度なセキュリティを備えています。マイナンバーカードは、行政手続きにおけるデジタルIDとして利用することができますが、FPoSは、行政手続きを含む幅広い分野で、自治体や事業者にデジタルID・認証基盤として利用していただくことができます。

 なお、スマートフォンのアプリでサービスを利用する場合、お客様のデータ(個人情報を含む)がなりすまし、または改ざんされるおそれがあるという問題がありますが、FPoSには、なりすまし、または改ざんされるおそれはありません。また、お客様のデータ(個人情報を含む)が連携される事業者をお客様自身で管理することが難しいという問題もありますが、FPoSは、お客様の個人情報の提供先を一覧で表示し、お客様自身で個人情報の提供を許諾しまたは許諾を取り消すことができる機能(「ダイナミック・オプトイン」)を搭載しており、お客様のデータ(個人情報を含む)が連携されている事業者をお客様が確認し管理することが容易です。

 当社は、このようなFPoSの可能性を実証するため、前橋市並びに民間企業及び大学による官民連携会社であるめぶくグラウンド株式会社に協力しており、めぶくグラウンド株式会社は、2022年10月から、FPoSの技術を利用したデジタルIDである「めぶくID」を発行する「めぶくアプリ」を運営しています。

「めぶくID」は、他のID等に比べて圧倒的に高度なセキュリティを備えているだけでなく、事業者をまたいでデータ連携ができ、かつどの事業者にどのようなサービスにおいてデータ連携できるかを「ダイナミック・オプトイン」機能で提供していることが、多くの自治体、企業、組織等に高く評価していただいています。

 さらに、2023年12月には、「めぶくID」及び「めぶくアプリ」により、前橋市の電子地域通貨である「めぶくPay」のサービスが開始しました(前橋市及びめぶくグラウンド株式会社により2023年9月発表)。「めぶくPay」は、決済データが地域に残り、地域で活用されることで地域社会に還元されることを最優先して設計開発されています。「めぶくID」及び「めぶくPay」は、社会及び経済のデジタル化による恩恵を地域が享受することのできる取組みであり、社会課題を解決することのできる有効な手段になりうると考えています。

 なお、前橋市の出産・子育て応援給付金は、「めぶくPay」で給付することができます。これは、「めぶくID」による高度なセキュリティ、及び、「ダイナミック・オプトイン」機能による本人同意の取得により、個人情報を安全確実にデータ連携できることから実現したものです。

 当社は、2024年5月に、FPoSの中核機能である、身元確認、当人認証、データ連携の機能を部品化した「FPoSライブラリ」をリリースしました(2024年5月24日付当社公表資料をご参照ください)。また、2024年10月には、FPoSによる「my電子証明書」において、マイナンバーカードに記載された基本4情報(氏名、住所、生年月日及び性別)に変更があった場合に本人の同意を得て変更後の情報を取得する業務実施方法について、電子署名法に基づく認定を受けました(2024年10月7日及び8日付当社公表資料をご参照ください)。

 当社は、これらを受け、2025年2月、当社子会社であるmy FinTech株式会社、及びめぶくグラウンド株式会社等との提携により、スマートフォンアプリの開発用ソフトウェアモジュールとして「デジタル認証モジュール」の提供を開始いたしました(2025年2月14日付当社公表資料をご参照ください)。

 スマートフォン用アプリを使ってサービスを提供する事業者の方は、「デジタル認証モジュール」を自社のアプリに組み込むことで、当該アプリに、めぶくIDと同じレベルの身元確認、当人認証、データ連携の機能を搭載することができ、併せて、マイナンバーカードに記載された基本4情報に基づくデジタルIDを利用することができるようになります。これにより、スマートフォンでインターネットを利用する場合の「安全性」及び「データ連携の困難さ」という2つの課題を解決することができます。

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、上記を踏まえ、以下の事項を優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しています。

① 公正な競争環境の確保のための取組み

 当社は、創業以来、お客様のニーズに合った多様なサービスの提供を可能とし電気通信事業を成長・発展させることのできる事業モデルとしてMVNO事業を提唱しており、MVNO事業の成立後は、MNOとMVNOとの間で公正な競争環境を確保するための取組みを進めています。

 当社は、2007年の総務大臣裁定により、ドコモのデータ通信網との相互接続を実現しました。一方、音声網との接続は、携帯電話番号(090番号等)の付与対象をMNOのみとする規制等により、実現できず、ドコモから卸提供を受けてお客様に提供しているところ、MNOがMVNOに提供する音声通話サービスに係る卸電気通信役務の料金は10年以上据え置かれていたため、MVNOがMNOと競争することのできる事業環境ではありませんでした。

 そのため、当社は、2019年に2度目の総務大臣裁定を申し立て、2020年6月の裁定により、ドコモが当社に提供する音声通話サービスに係る卸電気通信役務の料金について、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた金額を超えない額で設定するものとされました。

 これにより、ようやくMNOと競争することのできる環境が整い、当社は、2022年3月期から4期連続で黒字を継続しております。

 なお、2021年12月に、総務省の情報通信審議会において、携帯電話番号(090番号等)をMVNOにも付与する方針が示されたことを受け、当社は2022年6月にドコモに音声・SMS網の相互接続を申し入れ、2024年2月にドコモと相互接続について合意しました。当社は、データ通信網と音声・SMS網の両方を相互接続で調達することで安定した事業基盤を確保し、携帯基地局は保有しないものの、MNOと同等のサービスを提供することのできる「ネオキャリア」を目指します。まずは、ドコモの音声・SMS網との相互接続に基づく新サービスを2026年5月(予定)に開始するため、総務省からの携帯電話番号の取得、当社における音声・SMS網の構築、さらに当社独自SIM等の開発等を可能な限り迅速に進めてまいります。

 公正な競争環境の確保は、MVNOが本来の目的を果たして成長するための最大の課題であり、当社は、引き続き、MNOとMVNOとの間の公正な競争環境の確保に取り組んでまいります。

② MVNO事業モデルの進化による安定的な収益の確保

 当社が今後も安定的に収益を確保するためには、公正な競争環境の確保のための取組みを進めつつ、MVNO事業モデルを進化させることが必要です。

 まず、モバイル通信サービス(MVNO事業)の月額課金商品については、2020年7月に「日本通信SIM」のブランドで発売した音声定額プランが多くのお客様の支持を獲得し、2021年3月期下半期以降の収益に大きく貢献しています。MVNO事業は、MNO4社及び多数のMVNOにより今後も激しい価格競争が想定されますが、当社は2020年6月の総務大臣裁定により、ドコモが当社に提供する音声通話サービスに係る卸電気通信役務の料金について、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた金額を超えない額で設定するものとされているため、当面の間、MNO及び他のMVNOに対抗することのできる競争力を確保しています。

 当社は、「日本通信SIM」ブランドの競争力を維持するため、利便性の向上による他のMVNOとの差別化を図っています。2022年4月には、スマートフォン等に内蔵されているeSIMへの対応を開始し、2023年1月からは、携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認においてマイナンバーカードに格納された電子証明書による方法を導入したほか、2023年5月には、MNPワンストップ方式にも対応しました。さらに、「日本通信SIM」の各プランは、月額基本料金を据え置いたままデータ容量を増量するなど、商品力も強化しています。当連結会計年度においては、2024年6月から同年8月に当社として初めてのテレビコマーシャルを実施し、インターネットでも同様の広告を展開するなど、「日本通信SIM」ブランドの認知度向上にも努めました。

 また、モバイル通信サービス(MVNO事業)のプリペイド商品については、新型コロナウイルスの影響下で訪日旅行者向け商品の売上が減少していましたが、前連結会計年度以降においては、コロナ後の本格的な回復が認められるため、eSIMへの対応を開始し、売上の回復を目指します。

 以上の取組みにより、当社は、引き続き、MVNO事業モデルを進化させ、安定的な収益を継続して確保することを目指します。

③ 中長期的な成長のための取組み

 当社は、安定的な収益を継続して確保する一方で、中長期的に成長するための取組みとして、FPoS事業及びモバイル・ソリューション(MSP事業)のうちローカル携帯網による通信(ローカル4G/5G)事業に注力しています。

 まず、FPoS事業については、2018年11月に設立したmy FinTech株式会社において、スマートフォンに秘密鍵及び電子証明書を搭載する「my電子証明書」サービスについて、2021年11月10日に、電子署名法に基づく特定認証業務の認定を受けました。現在は、FPoS事業を実際のビジネスに落とし込んでいく段階となっていますが、前連結会計年度においては、前橋市において、めぶくグラウンド株式会社に協力して、2023年12月に、同市の電子地域通貨である「めぶくPay」のサービス提供を開始しました。さらに、当社は、2024年5月にFPoSの中核機能である身元確認、当人認証、データ連携の機能を部品化した「FPoSライブラリ」をリリースし、2024年10月にはFPoSによる「my電子証明書」において、マイナンバーカードに記載された基本4情報(氏名、住所、生年月日及び性別)に変更があった場合に本人の同意を得て変更後の情報を取得する業務実施方法について、電子署名法に基づく認定を受けました。なお、FPoSが備えている高度な安全性は、当初想定していた金融取引に限らず、社会全体で利用されるデジタルIDとしての役割を期待されるようになっています。今後は、FPoSの利用地域及び利用分野の拡大に向けて取り組んでまいります。

 また、ローカル4G/5G事業は、当社米国子会社であるJCI US Inc.が、ローカル携帯網との接続に使用するSIMを米国市場で提供しており、2023年12月には、米国ユタ州とCBRS(ローカル4G/5G)の教育及び遠隔医療ネットワークへの導入をユタ州全体で実現するための契約を締結しました。当社は、これらの知見を活用して、ローカル4G/5G事業の導入事例を積み上げてまいります。

④ 優秀な人材の確保及び育成

 上記①から③のいずれの取組みにおいても、多種多様な調査や企画、さらに技術開発や事業開発が必要であり、これを担うことができる人材の確保及び育成が極めて重要となります。例えば、FPoS事業においては、金融業界に関する法律、制度、経営課題、技術課題等、顧客の事業領域に対する一定の知見が必要です。そのため、当社グループは、優秀な人材の採用を進めるとともに、採用した人材に会社の優先順位に応じた多様な業務を担当させることによって、様々なノウハウや技術を身に付けさせるとともに、必要な資格を取得させるなど、人材への投資を推進しています。当社が取り組んでいる課題はいずれも前例のないもので、手本となる企業が存在するものではありませんが、当社は、創業時からMVNO事業モデルを定着させる今日までの道のりにおいて、前例のない環境で培った経験及びノウハウがあるため、これらを活用して人材の育成を進めます。

 当社は、「安全・安心にビットを運ぶ」という使命(ミッション)を実現するために、上記の課題に取り組みながら、モバイル通信サービス、モバイル・ソリューション及びFPoS事業を成長させる計画です。

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