企業兼大株主日本製鉄東証プライム:5401】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社は、需要家のニーズや環境・エネルギー等に対する社会的ニーズが多様化するなかで、「技術先進性」の拡大を通じた利益成長とカーボンニュートラルの実現を含む環境に配慮した製鉄技術構築に資する研究開発分野に対し、重点的に経営資源を投入しています。鉄鋼研究所、先端技術研究所及びプロセス研究所の3つの中央研究組織と各製鉄所に配置した技術研究部が強固な連携体制を構築し、「リサーチ・アンド・エンジニアリング」の理念のもと、基礎基盤研究から、応用開発、エンジニアリングまでの一貫した研究開発を推進しています。

 当社の強みは、①研究開発とエンジニアリングの融合による総合力及び開発スピード、②需要家立地の研究開発体制と需要家ニーズに対する的確なソリューション提案力、③高度な基盤技術に基づく新技術の開発力、④製鉄プロセス技術を基盤とした環境・エネルギー課題への対応力、⑤産学連携、海外アライアンス及び需要家との共同研究です。当社はこれらの強みを活かし、鉄を中心とした新しい機能を持つ商品開発をはじめ、カーボンニュートラルの実現を含む環境に配慮した革新的生産プロセスの創出と迅速な実用化を図り、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った社会の発展に貢献していきます。

 当連結会計年度における当社及び連結子会社全体の研究開発費は807億円です。各セグメントの研究主要課題、成果及び研究開発費は次のとおりです。

(製鉄)

 当セグメントに係る研究開発費は715億円です。

当社は、3地点の研究開発センター(富津市、尼崎市、波崎市)を軸に、①鉄鋼研究所では、鉄鋼材料・商品と利用技術・ソリューション研究開発、②先端技術研究所では、共通基盤技術研究及びCO2の分離回収や再利用に関する研究、新素材事業を中心とした製鉄以外のセグメント事業支援開発、③プロセス研究所では、設備エンジニアリングと設備保全技術開発を担当する設備・保全技術センターと密接な連携を図りながらCO2削減も考慮した製鉄プロセス関連の研究開発に取り組み、開発の短期化・効率化を目指し、鉄源コストの削減・基幹ラインの生産性の抜本的向上・省CO2化等の研究開発の加速化を進めてきました。

<薄板>

・当社は、生産設備の新設・更新時のCO2排出量削減を目的として、制御盤筐体の仕様標準に塗装工程を省略できる着色高耐食めっき鋼板「スーパーダイマ®GB」を追加しました。スーパーダイマGBは、高耐食めっき鋼板スーパーダイマの後処理に顔料を用いて、一般的な電設資材に用いられる色調マンセル値「5Y7/」近似色を着色した鋼板です。従来、制御盤等の電設資材は塗装による防錆機能を担保していましたが、当社が提供する高耐食めっき鋼板(スーパーダイマ、ZAM®)を適用することで、製造工程でのCO2排出量を削減することが可能です。今回、当社は㈱TMEIC及び㈱ティエスイーと共同で、溶接以外の接合方法等の諸課題を解決し、名古屋製鉄所の制御盤91面(鋼材ベースで約45トン)、東当社所君津地区の制御盤4面(同2トン)での適用を決定し、すでに製造・設置を開始しています。スーパーダイマGBは、当社の高機能製品・ソリューション技術NSCarbolex® Solutionの構成製品の一つであり、社会におけるCO2排出量削減に寄与します。当社は今後も、高機能製品・ソリューション技術の提供を通じて、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

・当社が提供するグリーンスチール「NSCarbolex® Neutral」は、様々な企業やプロジェクトで採用されています。日産自動車㈱の量産車に採用され、Scope3上流におけるCO2排出量削減に貢献しています。また、㈱㈱田窪工業所の鋼製物置製品や㈱日立製作所の電動機、南電機㈱の電路支持材商品にも採用され、各社のカーボンニュートラル目標達成に寄与しています。さらに、大阪万博コロンビア館の建築にも採用され、持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献しています。当社は、NSCarbolex Neutralを通じて、社会全体のCO2排出量削減とカーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでいます。

<厚板>

・当社は、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所及び今治造船㈱と共同で開発した「衝突安全性に優れた船体用高延性厚鋼板」により、令和6年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。この技術は、船舶からの大規模油流出を防止し、海洋環境を保全するために開発されました。最先端の数値シミュレーションと大型構造実験を駆使し、従来規則値の1.5倍以上の鋼材の伸びの目標を技術的に示し、延性向上のための冶金原理を確立しました。これにより、厚鋼板の製造条件の高度化と量産化が実現しました。高延性厚鋼板を船側部に使用することで、衝突による超大型原油タンカー等の油漏洩リスクを低減し、強度・靭性、溶接性等の加工性も従来鋼と同等であるため、造船所の施工負荷は変わりません。この技術を採用した船舶は、国土交通省告示第356号の「先進船舶」として税制優遇され、国際的な入港料減免制度の評価項目にも追加されています。すでに超大型原油タンカー8隻を含む63隻(計画を含む)に実装され、日本の海事産業の競争力向上に寄与しています。

<鋼管>

当社は、化学工業・ボイラ用鋼管製品において、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の環境ラベルプログラム「SuMPO EPD」認証を新たに5件取得しました。これにより、資源採取から製造、物流、使用、廃棄・リサイクルまでの製品のライフサイクル全体を考えた環境情報を定量的に開示することが可能となり、公共調達物品におけるCO2排出量表示への対応も容易になります。当社の化学工業・ボイラ用鋼管は、耐食性・耐熱性・低温特性に優れ、石油精製、石油化学、電力・ガスのエネルギー分野で広く採用されています。また、原子力発電や高圧水素用途等の脱炭素、新エネルギー分野でも高機能製品・ソリューション技術「NSCarbolex® Solution」を提供しています。

・当社は、熱押形鋼製品において、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の環境ラベルプログラム「SuMPO EPD」認証を新たに3件取得しました。当社の熱押形鋼は「自由設計」、「小ロット製造」のミル特性を活かし、物流機器、建築、土木、特殊車両、工作機械、食品・医療機器、半導体製造装置等の様々な分野で採用されています。また、NSCarbolex® Solutionの構成製品として、鋼材加工時に溶接や切削を要する作業を省略することでCO2排出量の削減に寄与しています。当社は、リサイクル性に優れた環境に優しい鉄鋼製品の環境性能開示に積極的に取り組み、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

<棒線>

・当社、日鉄溶接工業㈱及び日鉄ボルテン㈱は、日本政府によるバヌアツ共和国への無償資金協力事業「テオウマ橋災害復興計画」において、大日本土木㈱/㈱横河ブリッジに塗装周期延長鋼「CORSPACE®(コルスペース)」の鋼板(SM490YB-CORSPACE他)、溶接材料(SF-・PX他)、高力TCボルト(S10TCR)を納入しました。CORSPACEが海外橋梁工事に採用されるのは初めてです。CORSPACEは鋼中に微量のスズ(Sn)を添加し、塗膜欠陥部の鋼材腐食量や塗膜剥離面積を従来鋼に比べ大幅に抑制し、塗装の塗り替え周期を延長することでライフサイクルコスト低減を実現します。当社グループは今後もODA道路(橋梁)整備事業に対してCORSPACEを積極展開し、「質の高いインフラ」の輸出に貢献していきます。

<建材>

・当社は、建設ソリューションブランド「ProStruct™(プロストラクト)」の海外版を立ち上げ、2024年10月より運用を開始しました。ProStructは、高性能な鋼材製品と高度な鋼構造技術を組み合わせた「鋼材×利用技術」パッケージを提供し、構造物の強靭化・高機能化・最適化、工期短縮やコスト削減、CO2排出量削減に貢献します。海外版の第一弾として、建築分野向け「NSHYPER BEAMTM×Semi-rigid Composite Joint」、土木分野向け「Widest Hot rolled Sheet pile×Reusability」及び「Hat-type sheet pile×Close-proximity installation」の3パッケージを展開しました。当社は今後もProStructを通じて、社会・産業基盤の強靭化と発展に貢献していきます。

・当社と㈱テノックスが提供する「TN-X工法」が、MCデジタル・リアルティ㈱のNRTデータセンターキャンパスに連続採用されました。NRT10(2021年9月)での初採用以降、NRT12(2024年3月)、そして2025年2月稼働予定のNRT4においても採用されています。TN-X工法は油圧式の拡縮掘削ヘッドにより杭先端部に最大直径2400㎜の根固め球根を築造し、大きな支持力を発揮します。この工法は、大型物流倉庫、庁舎、病院、空港施設等の重要建築構造物に採用されており、高い耐震性能と低排土特性が評価されています。当社は今後もTN-X工法を通じて、日本の社会・産業基盤の強靱化と発展に貢献していきます。

・当社は、国内初かつ最高強度の高強度ハイパービーム「NSYP®385B」の販売を2024年4月に開始しました。この製品は、熱加工制御圧延法(TMCP)による製造技術を用いており、強度クラス550N/mm2を実現しています。NSYP385Bは高い強度と靭性を両立し、溶接性も向上しています。設計基準強度(F値)は385N/mm2で、ウェブ高さ700~1000mm、フランジ幅300~400mmのサイズバリエーションを提供しています。今回のNSYP385Bの販売開始により、建築物の大型化に伴う部材の高強度化ニーズ、深刻化する人手不足を背景としたさらなる工期短縮ニーズ、さらにはCO2排出量削減ニーズにも最大限にお応えできるとともに、需要の高まる超高層建築物等での採用拡大が期待されます。

・当社は、鋼管杭・鋼管矢板製品において、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の「エコリーフ宣言」認証を新たに3件取得しました。特にスパイラル鋼管製品としての認証取得は当社が初めてです。エコリーフ宣言は、製品のライフサイクル全体を考えた環境情報を定量的に開示するEPD認証制度であり、これにより鋼管製品の環境負荷を客観的に評価することが可能となります。

<チタン>

・当社は、チタン厚板、チタン線材及び純ニッケル薄板製品において、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の環境ラベルプログラム「SuMPO EPD」認証を取得しました。チタン厚板では標準のチタン厚板とTranTixxii®-Ecoの2種類が認証され、チタン線材では一般材とTranTixxii-Ecoの2種類が認証されました。TranTixxii-Ecoはチタンスクラップを50%以上使用し、製錬工程でのCO2発生量を大幅に削減する環境配慮型素材です。純ニッケル薄板は耐食性や高温強度に優れ、苛性ソーダプラントやリチウムイオン二次電池等で採用されています。これにより、製品のライフサイクル全体での環境負荷を客観的に評価し、公共調達物品におけるCO2排出量表示への対応が容易になります。当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを強化していきます。

・当社は、2025年1月より意匠性チタン「TranTixxii®」及び「TranTixxii®-ECO」の一部対象素材について、腐食による穴あきに関し30年間の耐用年数保証を開始します。さらに、所定の条件を満たす場合、最大4回の保証期間の追加延長が可能で、最長累計150年間の保証が提供されます。TranTixxiiは超長寿命、軽量高強度、優れた環境性能を持ち、独自技術で色彩美と色調美を発揮する最先端素材です。今回の保証開始により、建築家やデザイナーが手がける建築物の長期使用における経済性・環境負荷低減の観点でTranTixxiiの優位性を具体的に認識できるようになります。

<交通産機品>

・当社は、交通産機品製品において、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の環境ラベルプログラム「SuMPO EPD」認証を新たに9件取得しました。認証された製品は、鍛鋼品、輪軸、環状品、型鍛造品(非調質鋼・調質鋼)、車輪、歯車、車軸、台車枠です。これにより、交通産機品のライフサイクルでの環境負荷を客観的に評価し、公共調達物品におけるCO2排出量表示への対応が容易になります。当社は、NSCarbolex Solutionを活用し、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた取組みを強化しています。

<製鉄プロセス>

・当社は、「当社カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、国の支援を受けながら「高炉水素還元」技術の開発に取り組んでいます。この技術は、高炉での鉄鉱石の還元を石炭の代わりに水素を用いることでCO2排出を大幅に削減するものです。2024年1月から12月に実施した試験では、世界初となるCO2削減43%を実現し、開発目標を前倒しで達成しました。この成果は、国内外で開示されている実績値を大きく上回り、当社が脱炭素技術開発において世界のトップランナーであることを示しています。今後、当社はスケールアップ技術の開発を進め、製鉄プロセスからCO2排出を50%以上削減する技術の実用化に向けた取組みを加速していきます。この開発は、NEDOのグリーンイノベーション基金の支援を受け、JFEスチール㈱、㈱神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターとのコンソーシアムで進められています。

当社は、公益社団法人発明協会による令和6年度全国発明表彰で「クロム資源循環・環境調和ステンレス製鋼プロセスの発明」により「発明賞」を受賞しました。この発明は、ステンレス製鋼プロセスにおけるクロムの還元回収能力を高め、クロム資源の有効活用と副産物であるスラグの環境負荷低減を実現する技術です。クロム資源は一部の国に偏在しており、日本では重要鉱物として国家備蓄の対象となっています。従来の製鋼法では、酸化精錬後に同じ炉内で還元精錬が行われていましたが、還元回収能力は不十分でした。本発明では、酸化精錬と還元精錬を完全に分離し、還元精錬を行う電気炉で溶鉄成分やスラグ成分を制御する技術を開発しました。還元時の溶鉄中の炭素濃度を高めることで還元力を大幅に向上させ、クロムの酸化ロスを低減しました。また、環境負荷のないアルミナや石灰を用いた最適なスラグ成分に制御することで、蛍石を使用せずに溶解性と反応性の両立を実現しました。これにより、高速・高効率なクロム還元回収プロセスを確立しました。

<スラグ・セメント>

・日鉄興和不動産㈱が発注する『(仮称)BIZCORE飯田橋計画』の地上躯体のスラブコンクリート工事において、㈱鴻池組が環境配慮型BFコンクリート「CELBIC」を適用し、コンクリート材料に由来するCO₂排出量を約28%削減しました。CELBICは、普通ポルトランドセメントの30%を高炉スラグ微粉末に置き換えたA種クラスのコンクリートで、高炉スラグ微粉末には日鉄スラグ製品㈱製のエスメント®を使用しています。また、杭についても普通ポルトランドセメントの40~45%を高炉スラグ微粉末に置き換えた高炉セメントB種を適用し、CO₂排出量を約43%削減しました。CELBICは、製鉄所で生成される副産物である高炉スラグ微粉末を使用することで、天然資源の使用削減にもつながります。今後も脱炭素社会の実現に向けて、環境配慮型コンクリートの普及を進めていきます。

・当社が開発し、日鉄スラグ製品㈱が販売を代行している鉄鋼スラグ製品「カタマ®SP」は、2009年の販売開始以来、簡易でコストパフォーマンスの良い舗装資材として広く採用され、2024年12月に累計出荷1,000万トンを達成しました。カタマSPは鉄鋼スラグを原料とし、散水と重機による転圧で固化が進行する特性を持ちます。これにより、林道や農道、ソーラー発電所、遊休地、中央分離帯等での簡易舗装工事や防草対策に利用され、維持管理費や除草費用の軽減に貢献しています。さらに、鉄鋼副産物を有効活用する環境に優しい資材として、天然石材の保護や環境負荷の低減にも寄与しています。当社グループは、持続可能な開発目標(SDGs)に合致した活動を通じて、社会の発展に貢献していきます。

(エンジニアリング)

 当セグメントに係る研究開発費は24億円です。

 日鉄エンジニアリング㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。

・環境・エネルギー分野  廃棄物発電プラント競争力強化、コージェネレーションの高効率化、
カーボンリサイクルに向けた研究開発

・海洋分野        洋上風力発電施設の開発、海底パイプライン敷設の開発

・都市インフラ分野    免制震デバイス商品の開発、次世代商品の探索、土壌浄化技術の開発

・陸上パイプライン分野  陸上パイプライン溶接技術の開発

(ケミカル&マテリアル)

 当セグメントに係る研究開発費は40億円です。

 日鉄ケミカル&マテリアル㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。

・コールケミカル製品、化学品、機能材料、複合材料等に関する研究開発

(システムソリューション)

 当セグメントに係る研究開発費は28億円です。

 技術進化・ビジネストレンド・社会環境・人々の価値観の変化等の不確実な状況を踏まえ、新技術の探索、評価・検証、顧客企業への新技術導入支援等において長年にわたって蓄積してきた経験とノウハウを基に、社会全体の「サステナビリティ」の実現に向けた将来像を3つの「未来目標」として設定し、取り組みました。

・未来目標1「究極のデジタルツイン(注)」    - すべてをデジタルな世界に転写して再現しよう

・未来目標2「業務を理解・実行できる人工知能」 - 機械の知的能力をとことん人間に近づけよう

・未来目標3「サステナブルな企業情報システム」 - 変化への対応力があり長持ちするシステムにしよう

(注) デジタルツイン:工場の設備・製品等の実世界のオブジェクトをデータとしてデジタルな空間に転写・再現することで、リモートからの監視・制御や、過去の状況の再現・未来の予測シミュレーション等を可能にすること。

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