日本国土開発
【東証プライム:1887】「建設業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 日本国土開発グループの経営の基本方針
当社グループは経営理念として「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を掲げています。この理念は、1991年4月に創立40周年を機に策定したもので、当時は「社会が直面している問題の解決とより良い社会の構築、快適環境の創造を通じ、ゆとりある社会づくりを目指す」、この想いを経営理念に込めました。30年以上経った今もこの想いは変わらず、SDGs達成を目標に取り入れる等、当社グループは全てのステークホルダーに対して「豊かな社会づくり」とは何かを考えてきました。
2022年7月から当社グループは、2030年までの長期ビジョンとして「社会課題を解決する『先端の建設企業』」を目指すべき姿と位置づけ、立ち向かう社会課題として「気候変動問題」「2030年問題」を設定し、脱炭素社会の実現や人口減少による担い手不足などの諸問題に対して当社グループが持つノウハウや知見を生かし、社会課題の解決に貢献できるよう取り組んでいます。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
①「中期経営計画2024」の振り返り
2023年5月期からの3カ年経営計画である「中期経営計画2024」において、土木・建築事業が2024年5月期に大幅損失を計上し、2024年7月に中期経営計画の計数目標の見直し(最終年度ROE10%水準→5%水準、営業利益110億円→40億円に修正)を行いました。
最終年度である2025年5月期に、前年度の損失計上を受け、土木・建築事業で受注審査の厳格化、管理・施工体制強化などを実施しました。その成果もあり、建築事業が回復基調に転じ計画を超える利益を計上、関連事業の販売用不動産の一部売却によるフロー収益や太陽光発電を中心としたエネルギー事業のストック収益などが貢献し、黒字化を達成しました。
一方、土木事業は3期連続の大幅損失計上となり、回復が遅れています。その結果、前中期経営計画における見直し後の財務目標においても計画未達(ROE2.0%、営業利益23億円)となりました。
非財務目標については、脱炭素の取り組みにおいて2050年のカーボンニュートラルの目標であるSBTイニシアチブの「SBTネットゼロ」目標の認定取得したほか、健康経営では「健康経営銘柄2025」(通算4回目)に選定されるなど、先進的な取り組みを実施することができました。
②外部環境認識
海外経済においては、米国政権による各国への通商政策は不確定要素であり、地政学的リスクなどによる原材料・エネルギー価格の高騰や金融・資本市場の変動などの影響は先行き不透明となっています。国内経済は、雇用・所得環境の改善もあり、回復傾向が続いていましたが、海外経済の減速により、国内企業の収益なども下押しされ、成長ペースは鈍化が見込まれます。
国内建設市場は堅調に推移しており、脱炭素化関連投資、国土強靭化計画による公共投資が見込まれるものの、資材・労務費の高騰、少子化に伴う住宅建設投資減などもあり、収益性の低下も考慮に入れる必要があります。また、担い手不足が深刻化しており、人財の確保・育成に関連する人的資本の活用が求められるほか、労働時間削減や生産性向上につながるAI(人工知能)やICT(情報通信技術)などのDX(Digital Transformation)は加速すると見込まれます。一方、南海トラフ地震、首都直下型地震などの発生確率が高まっており、被災地の復旧復興に貢献する建設業の果たす役割は大きいと認識しています。
以上の外部環境認識、前中期経営計画で果たせなかった目標に対する経営課題などに対応するため、2028年5月期を最終年度とする3カ年経営計画「中期経営計画2027」を策定しました。
③日本国土開発の目指す姿
我々が目指す姿は、経営理念である「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を実現することです。そのため、「気候変動問題」「2030年問題」を立ち向かう社会課題に掲げ、それらを解決する『先端の建設企業』となることを長期ビジョンとしています。“豊かな社会づくり”への貢献を目指し、経済的価値と社会的価値の相互作用により、企業価値向上を図るサステナビリティ経営を推進するため、マテリアリティ(重要課題)の刷新を実施した上で、新中期経営計画を策定しました。
④「中期経営計画2027」のミッション
「中期経営計画2027」では、ミッションとして「持続的に利益を生み出す経営基盤を再構築し、『成長軌道への回帰』を実現する」を掲げました。これは前中期経営計画の財務目標が未達となり、我々が2030年までを見据えて計画していた“成長軌道”について、この3カ年で再び元の軌道に戻すため、持続的に利益を生み出す経営基盤を再構築することを最大の目的とします。中期経営計画の最終年度における計数目標は、ROE(自己資本利益率)8.0%、営業利益90億円とし、3カ年で投資総額740億円を実施する方針です。
⑤各事業の取り組み
<土木事業>
土木事業は、適正利益を確保した受注活動と施工管理体制強化により、事業体質を改善し、強みを活かした事業に注力して「持続的な安定事業への回帰」を目指していきます。「インフラリニューアル」「防災減災」「復興」への取り組みに注力し、“インフラソリューション”で社会課題解決に貢献します。
<建築事業>
建築事業は、エリア別に注力マーケットを確立し、適正利益を確保できる受注活動を展開、品質管理を中心とした現場管理を徹底し、「安定事業から成長事業への脱皮」を目指していきます。設計・施工の品質向上はもちろん、積算・購買力強化に努め、当社グループのみならずお客様の収益力向上を図るとともに、竣工引き渡し後の管理維持も手掛け、お客様に寄り添う“建物のトータルサポーター”を目指します。
<関連事業>
関連事業は、投資・回収のバランスを意識した堅実投資でストック収益を伸ばし、開発不動産の適時売却によるフロー収益を積み重ねることで利益の拡大を図っていきます。
不動産事業は、優良収益不動産の取得やアセットタイプの拡充、土地区画整理事業などを進めていくほか、新分野への挑戦を進めていきます。
エネルギー事業は、自社開発案件の累計発電容量を2030年までに現在の127MWから200MWへの拡大を進めていきます。既存案件のバリューアップや屋根置き太陽光発電に取り組むこと、新分野への挑戦として蓄電池事業への参入なども加えて、長期安定適格太陽光発電事業者の認定を目指していきます。
<新規事業>
新規事業については、「地域課題解決パートナー」として、日本全国の地域経済・地域社会への貢献、地域再興資源の創出支援を推進し、社会課題であるインフラリニューアルへの参入、気候変動問題に対応する再生可能エネルギーの普及に貢献していきます。
⑥DX戦略
前中期経営計画においては、企業活動のあらゆる業務のDXを目指し、経営・業務システム、AI・RPAの導入、ICTを活用した測量や自動化施工、BIM/CIMの活用などを推進してきました。今後、これらのシステムやツールを導入・活用し、生産性向上、省人化、提供価値の最大化を目指していきます。そのためにも全社員のDX活用人財化、全社のDX活用体制の構築を進めるべく、人財と組織の変革の両輪で建設DXを実践していきます。
⑦財務戦略と投資計画
財務戦略として、財務健全性の観点から「中期経営計画2027」期間中は自己資本比率40%以上、D/Eレシオ0.7倍以下を堅持してく方針です。自己資本は2024年5月期の大幅損失前の水準(790億円程度)を念頭に、最終年度は720億円の確保を目指していきます。
投資計画については、前中期経営計画において、キャッシュ・フローの不足から投資計画が未達となったことも踏まえ、新中期経営計画では収益力強化と事業基盤拡充に向け、有利子負債を戦略的に活用し、成長分野である関連事業(不動産事業、エネルギー事業)を中心に積極的な投資を実施する方針です。3カ年で740億円の投資を計画しています。
⑧株主還元
配当政策では、前中期経営計画において安定した株主還元を実施するために導入した「DOE(株主資本配当率)」を継続して採用します。収益力の回復を前提に「DOE2.5 ~ 3.5%」を配当方針とし、最終年度まで順次引き上げを目指します。
⑨市場評価と資本収益性改善への取り組み
ここ数年の営業利益率とROEの低下、業績悪化による株価の下落などから、当社のPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回って推移しています。2025年5月期から「市場評価と資本収益性の改善」に向けた取り組みとして、ROE改善と、PER(株価収益率)向上を目指し、安定性・収益性・将来性・関係性の観点から取り組みを実行しており、今後もPBRの向上に努めていきます。
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