日本ライフライン
【東証プライム:7575】「卸売業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは「最新最適な医療機器を通じて健康社会の実現に貢献する」ことをMissionとして、主に国内の総合病院等の顧客向けに心臓血管領域を中心とする医療機器事業を展開しています。メーカー機能と商社機能の両方からなるハイブリッド型のビジネスモデルと全国規模の自社販売網を有していることが当社グループの特長であり、業界内でユニークなポジションを確立しています。メーカー機能は、自社製品を通じて、医師が日々の手術で用いる機器へのニーズをラインナップの豊富さや使いやすさという点において高い水準で満たしています。商社機能は、海外の優れたテクノロジーを素早く国内に導入することで、国内における最先端の医療へのアクセスを提供しています。当社グループは、自社製品と仕入商品を戦略的かつ選択的に組み合わせることで、柔軟で強靭なプロダクト・ポートフォリオを構築し、医療機器業界の中で差別化を図っています。このハイブリッド型のビジネスモデルをさらに高度に洗練させることを基本的な経営方針としています。これにより、真に価値のある医療機器をタイムリーに医療現場に提供し続けることが可能となり、健康社会の実現に貢献できると考えています。
(2)経営環境
当社グループは主に国内の総合病院等の顧客向けに心臓血管領域を中心とする医療機器事業を展開しています。日本の医療需要は、人口の高齢化に伴い増加しており、今後もそのトレンドは継続することが予想されています。一方、医療供給はひっ迫しており、各種医療サービスの持続可能性が懸念されています。国は、現行の医療システムが医療従事者の慢性的な長時間労働に依存している状況を改善するため、「医師の働き方改革」を推進しています。
このような状況において、医療機器業界で厳しい競争に勝ち残るには、単に治療効果の高い製品を提供するだけでなく、持続可能な医療を実現するためのさまざまな課題の解決にも貢献していく必要があります。当社グループは、メーカーと商社の2つの機能を併せ持つ強みを活かし、柔軟で強固なプロダクト・ポートフォリオを構築することで、これに取り組んでいます。
(3)経営戦略および対処すべき課題
① 中期経営計画の取組み
当社は2023年5月に2024年3月期から2028年3月期までの5年間を対象とした中期経営計画を公表し、売上高、新領域売上高、営業利益率、ROIC、EPSについて、最終年度における数値目標を設定しました。数値目標の達成に向け、「新領域の拡大」、「競争力のある製品の継続的導入」、「資本効率を意識した経営の強化」を重点施策と位置付け、取り組んでいます。
計画の2期目にあたる2025年3月期を終え、業績の順調な進捗と重点施策の取組み状況を踏まえ、今後の中期的な展望について見直した結果、中期経営計画の最終年度である2028年3月期に当初の数値目標を上回る公算が高くなりました。そのため、2025年5月7日付のプレスリリース「中期経営計画の数値目標の上方修正のお知らせ」で公表した通り、各数値目標を次のとおり上方修正しました。今後は、上述の3つの重点施策に加え、新たな重点施策である「グローバル売上高の拡大とOEM製造の推進」にも注力していきます。
(数値目標)
| 2028年3月期 旧数値目標 | 2028年3月期 新数値目標 | 修正内容 |
売上高 | 630億円 | 700億円 | +70億円 |
うち新領域(注) 売上高 | 80億円 | 110億円 | +30億円 |
営業利益率 | 毎期20%水準 | 毎期20%水準 | 変更なし |
ROIC | 12% | 13% | +1pt |
EPS | 120円 | 145円 | +25円 |
(注)旧数値目標においては、脳血管および消化器領域。新数値目標においては脳血管、消化器および構造的心疾
患領域(2027年3月期に参入予定)
ⅰ.新領域の拡大
当社グループは創業以来約40年にわたって培ってきた心臓血管領域での知見や技術を活かし、2017年に消化器領域、2022年に脳血管領域へ新規に参入しました。これらの新領域は持続的な市場成長が期待できることから、新たな収益の柱になることを見込んでいます。中期経営計画の最終年度である2028年3月期の売上高としては、脳血管領域で45億円、消化器領域で35億円(注)を目標数値としています。中期経営計画の2年目にあたる2025年3月期の売上高は脳血管領域で1,842百万円(前期比+101.9%)、消化器領域で1,345百万円(注)(前期比+45.3%)となり合計で3,187百万円(前期比+73.5%)まで拡大しました。なお、新数値目標の110億円のうち、残りの30億円は2027年3月期に参入予定の構造的心疾患領域による売上高を想定しています。
脳血管領域ではWallaby Medical社の脳血管内治療デバイスを国内の医療機関に販売しています。当期は、モデルラインナップを強化した塞栓用コイルと血栓吸引カテーテルが好調に推移し、売上高の拡大をけん引しました。さらに、血栓吸引カテーテルと高い販売シナジーをもつステントリトリーバーの販売を開始しました。これにより、脳梗塞治療で使用される主要デバイスがそろったため、脳血管領域における成長を加速させてまいります。
消化器領域では2017年以降、心臓血管領域で確立したカテーテル製造技術やステント製造技術を活かして複数の製品を上市してきました。当期は医療現場で高い評価を受けている胆管チューブステントの売上高が順調に拡大したほか、胆管拡張バルーン、造影カニューラ、ダブルルーメンダイレータなどの特長ある自社製品を上市しました。
脳血管領域および消化器領域においては、今後も既存製品のモデルラインナップ追加や新製品の投入を通じて、売上高の拡大を目指します。
新たに新領域と位置付ける構造的心疾患領域には、Meril Life Sciences社の経カテーテル生体弁で参入します。経カテーテル生体弁の市場成長性は高く、仕入商品での展開ながら高い利益率が期待できるため、中長期で業績成長の大きなドライバーとなることを見込んでいます。
(注)終了した冠動脈インターベンション事業を除く売上高
ⅱ.競争力のある製品の継続的導入
当社グループを取り巻く事業環境は、保険償還価格の継続的な引き下げや競合他社との競争激化などにより、今後も厳しい状況が続くことが見込まれます。当社グループは、メーカー機能と商社機能を併せ持つビジネスモデルを活かし、継続的に新製品を導入することで、市場競争力の強化ならびに収益の拡大に努めてまいります。
心腔内除細動カテーテルおよびFrozen Elephant Trunk(以下、「FET」という)において、前期より他社の新規参入により競争が生じています。心腔内除細動カテーテルについては、既存モデルのラインナップ追加に加え、当社独自モデルを新たに展開したことで、製品競争力を強化しました。この結果、2社の競合企業参入の影響を抑え、95%程度の市場シェアを維持しています。FETについては、新モデルとして投入した人工血管と一体型のFETの販売に注力したことにより、シェア喪失を最小限に抑えました。さらに、症例カバー率の増加を目的に競合企業が得意としていたサイズのラインナップを強化しました。この結果、FETは市場シェア90%超を維持しています。今後も医療現場のニーズに基づいた製品開発を継続し、新製品や新しいモデルの導入などにより、市場競争力の強化に努めてまいります。
収益の拡大においては、前期に販売を開始した大腿静脈用止血デバイスの市場浸透を加速させ、発売後1年で20億円を超える規模の事業に成長させました。大腿静脈用止血デバイスは、心房細動のアブレーション手術後の早期止血を可能とし、医療従事者の負担軽減と患者様のクオリティ・オブ・ライフ向上の双方へ貢献できる商品です。当期末時点では、全国のアブレーション実施施設の半数にあたる約400施設で採用され、心房細動症例の3割程度で使用されました。採用施設数の拡大に注力し、中長期では40億円から50億円程度の売上高を目指します。
当期は心房細動アブレーションの領域においてPFA(パルス・フィールド・アブレーション)という新たな治療法が市場導入されました。この治療法は合併症リスクの低減と手技時間の短縮が期待できるため、多くの医療機関で導入が進むと予想しています。当社は2025年2月に、独自のPFAシステムを有するCardioFocus社とPFA製品の共同開発およびグローバル市場への供給を目的とした戦略的パートナーシップを締結しました。当社の強みであるカテーテル製造技術とCardioFocus社のPFAに関する臨床および装置ノウハウを組合せた競争力ある製品を開発し、PFA市場への早期参入を目指します。
ⅲ.資本効率を意識した経営の強化
当社グループは上記の施策により着実な事業成長を実現するとともに、適切な資本配分を行うことで、資本効率の向上を目指しています。資本効率を測定するKPIとして、ROIC(投下資本利益率)を採用しており、2028年3月期にROIC13%以上を目標としています。自社の資本コストについては、投資家の皆さまとの対話も踏まえ、WACC8%程度と分析しています。
上方修正を行った中期経営計画において、キャッシュ・アロケーションおよび株主還元の方針を次のとおり公表しています。中期経営計画期間においては、原則として、次の方針に従った運営を行います。
(キャッシュ・アロケーションの方針)
●財務安全性確保のため手元キャッシュは100億円程度
●成長の機会と財務状況に基づき以下に配分する
・事業運営に必要な設備の更新
・研究開発やグローバル推進に伴う設備増強を含む成長投資
・配当(ベース)
・配当(上乗せ)または自己株式の取得
(株主還元の方針)
・配当(ベース)は安定性と継続性を重視し、配当性向40%またはDOE(株主資本配当率)5%のいずれか高い方を採用する
・上記に加え、中期経営計画の数値目標の達成状況、成長の機会および財務状況を考慮し、追加の還元策として、配当(上乗せ)または自己株式の取得を検討する
・本計画の期間における還元総額の目安は270億円から300億円程度とする
(ROIC改善のための主な取組み)
・営業効率を高めるための医師向けのオンライン・プラットフォーム等を活用したデジタルマーケティングの推進
・ROICの持続的な改善に向けた重点取組事項の選定と推進(売上総利益率および棚卸資産回転率)
ⅳ.グローバル売上高の拡大とOEM製造の推進
当社グループは中長期的な事業成長を実現するため、「グローバル売上高の拡大とOEM製造の推進」を新たに重点施策に設定し、下記の取組みを推進してまいります。
・グローバル売上高の拡大
心臓血管および消化器領域の自社製品について、海外における販路開拓を加速していきます。中期経営計画の期間内では、日本国内承認で展開できる中東・アジアを中心に十数か国へ販路を広げつつ、米国FDAや欧州CEの承認取得のために必要な品質管理システム規制への対応等を迅速に進めます。長期的には、当社のコア自社製品である心腔内除細動カテーテルやFrozen Elephant Trunk 製品の米国や欧州市場への輸出を目指して取り組んでいきます。
・OEM製造の推進
当社グループが長年培ってきたカテーテルやステントなどの技術やノウハウを最大限に活かし、国内外でのOEM製品の展開を推進することにより、新たな事業機会の創出に取り組んでいきます。
② サステナビリティの取組み
当社ではサステナビリティの取組みを対処すべき課題と認識しています。
詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。
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