岩谷産業
【東証プライム:8088】「卸売業」
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企業概要
当連結会計年度の研究開発は、「ガス&エネルギー」を基軸に総合エネルギー、産業ガス・機械からマテリアルまでの事業領域を対象として取り組むとともに、「水素のイワタニ」としての地位を強固なものにするべく水素サプライチェーンの構築に向けた技術開発、さらには脱炭素に向けた新技術開発に注力しました。
当社グループは、兵庫県尼崎市の中央研究所及び岩谷水素技術研究所を中心に研究開発活動を行っております。中央研究所はグループ全体の成長ビジョンを見据え、新事業・新商品の開発に繋がる研究開発に取り組みました。また、お客さまへの技術サービス、当社取扱製品の品質管理、商品開発効率を高めるため、分析を主体とした基盤技術の強化にも取り組みました。
岩谷水素技術研究所では、最新鋭の水素試験研究設備を活用し、極低温の液化水素や超高圧圧縮水素ガスに適合した材料や機器の評価を行いながら、水素ステーション建設コストの低減や保安強化につながる研究開発を進めました。また、液化水素の冷熱を回収するための熱交換器の開発や将来の液化水素ステーションの実用化に向けた充填技術開発を推進しました。さらに、バイオ燃料や水素と二酸化炭素からプロパンなどの炭化水素燃料を合成する研究を進めています。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は2,589百万円となりました。また、当社の研究開発費は2,134百万円であります。
主な研究開発内容は水素関連で、その金額は434百万円です。その他の研究開発費用をセグメント別に分けると、総合エネルギー事業355百万円、産業ガス・機械事業88百万円、マテリアル事業121百万円、その他1,589百万円となっております。その他には、研究開発拠点である当社研究所の共有費用が含まれています。
なお、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
(水素エネルギー関連)
水素・燃料電池戦略ロードマップ及び水素基本戦略に基づき、水素ステーションの整備や新たな水素エネルギー・アプリケーションの開発等の水素エネルギーの利用拡大に繋がる活動に取り組みました。さらに、水素エネルギー社会の実現を見据えたCO2フリー水素サプライチェーンの構築にも重点を置き研究開発を推進しました。
具体的には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との取り組みにおいて、豪州の未利用褐炭を用いた大規模水素サプライチェーンを構築する実証事業に参画し、これまでに液化水素運搬船や受入基地に関するエンジニアリングデータなど様々なデータを蓄積してきました。今後は液化水素運搬船に関する規格の国際標準化と商用時のターミナルの運営費・建設費削減に資するデータ収集を行っていきます。
「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)では、引き続き商用水素ステーションや県内施設に設置される燃料電池への水素ガス供給を行いました。NEDOとの契約は2025年度まで延長となり、水素製造コストを低減するための水素製造設備の運用最適化や水素需給管理の最適化に取り組みます。
大阪・関西万博において、国内初となる水素燃料電池船の旅客運航を開始しました。万博会場までの航路は、大阪の中心地である中之島ゲートからユニバーサル・シティポートを経由し、万博会場の夢洲を繋ぐルートで運航しております。研究所のカーボンニュートラル化を目指して導入した100kW純水素型燃料電池発電設備については順調に稼働しており、研究所のCO2排出量削減に貢献しています。
(総合エネルギー事業)
カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みの一環として、LPガスの脱炭素化につながるグリーンLPガスの製造技術に関する調査研究を進め、岩谷水素技術研究所にてラボレベルでの基礎技術を確立しました。グリーンLPガスの合成触媒開発を進めており、今後小型製造実証設備での検証を行っていきます。
また、NEDO委託事業として、岩谷水素技術研究所での水素混合LPガスに対するガス機器の安全性検証を完了させ、2025年度に株式会社グリージョンおよび相馬ガス株式会社と共同で、福島県南相馬市の集合住宅にて既存インフラを利用した水素混合LPガスの導管供給の実証試験を行います。
さらに、当社主力のコンシューマープロダクツであるカセットガスの拡販に繋がる新商品の開発に向け、ガスコンロ以外の応用商品や熱電発電素子を使った製品開発を進めています。
(産業ガス・機械事業)
再生医療分野に力点を置き、大阪大学との共同研究で得られた細胞凍結・解凍プロセスの最適化研究成果を活かし、細胞保管輸送容器や凍結装置の開発を進めました。また、「再生医療・バイオ研究開発拠点」である中央研究所のバイオ研究専用クリーンルームを活用し、細胞構造体(3D細胞)製品への実用化が期待できる新たな凍結技術を確立しました。共同研究先と事業化の検討を進めていきます。
陸上養殖分野における酸素ガスなどの事業拡大に向け、中央研究所に導入した陸上養殖の研究設備を活用し、バナメイエビ養殖における酸素富化効果を確認しました。今後は養殖条件の見極めに加え、センサーやカメラなどデジタル技術を活用した養殖向け飼育システムの開発を行っていきます。
中央研究所で確立した半導体向け重水素ガス製造技術を基に、岩谷瓦斯株式会社三重工場内で稼働させた重水素プラントは順調に稼働しています。更なるプラントの運転効率化、製造ロス削減に寄与する技術開発を行うとともに、新たな付加価値の高い半導体材料ガスの開発を進めています。
溶接・溶断分野では、銅とステンレスの異種金属接合技術を確立しました。高価な銅の使用量削減を目的に、エアコン業界等への提案を進めています。また、電気自動車等の車両軽量化に需要が高まっているアルミダイキャストの溶接技術を開発しました。
(マテリアル事業)
携帯電話やパソコン向けに需要が拡大する積層セラミックコンデンサー(MLCC)に使われるナノニッケルの合成技術開発を推進しました。大手ユーザーにサンプルを出荷し、評価を受けながら品質を高めるとともに、量産移管に向けた自動化や製造コストの削減技術の開発に取り組んでいます。
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