岩手銀行
【東証プライム:8345】「銀行業」
へ投稿
企業概要
当行グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当行は、1932年5月の創業以来、基本姿勢である「地域社会の発展に貢献する」ならびに「健全経営に徹する」の2つを経営理念として堅持し続けております。
(2)経営環境
国内外で政治経済の不確実性が高まる中、当行が主たる営業基盤とする岩手県においては、少子高齢化や都市部への人口流出による人口減少、働き手不足、事業の後継者不在など、経済・社会構造の変化に伴う課題が急速に顕在化しており、地域に根差す総合金融グループとしての役割を担う当行グループへの期待は、これまで以上に大きくなっています。地域社会の持続可能性を高めるためには、主力産業である一次産業の基盤を維持しながら、製造業・サービス業の人材を確保し、さらに新たな成長領域への投資を行うなど、地域一体で産業振興に向けた対策を講じていく必要があると認識しております。
(3)中期経営計画
① 長期ビジョン
2023年4月、当行グループは向こう10年の長期ビジョン「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」を掲げました。この長期ビジョンは、「地域が賑わい、安心して暮らすことができる」「多くの魅力ある企業があり、身近で便利な金融インフラが揃っている」といった地域のみなさまやお客さまが理想とする地域社会を実現していくため、10年先の当行グループとしてのありたい姿を表現したものです。
② 中期経営計画の進捗状況
当行グループは長期ビジョンの実現を目指し、2023年4月より「第21次中期経営計画~地域価値共創プラン~」(以下、「今次中計」といいます。)に取り組んでおります。今次中計は、高い水準にある自己資本の有効活用と事業ポートフォリオの変革を通じて、利益成長軌道をつくりだす期間と位置付け、金融サービス領域と新たな事業領域への挑戦を推し進めています。 今次中計に定める基本方針と主な施策は次のとおりです。
[基本方針Ⅰ:ソーシャルソリューションビジネスの高度化]
<グループ総合力と外部連携による包括的なソリューション提供>
法人のお客さまに対しては、投融資・リース等を通じて地域の事業者のみなさまに円滑な資金供給を行うほか、多様化・複雑化する経営課題の解決に向け、グループ会社機能の活用や外部の専門家との連携による包括的なソリューション提供に努めております。コンサルティング分野では、事業承継・M&Aや事業再構築の支援、人手不足への対応として副業人材の紹介などに取り組むほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上を支援するためデジタル事業者と連携し、ICTコンサルティングを展開しております。また、お取引先の本業支援策として、商品のブランディングやビジネスマッチングによる販路拡大にも取り組んでおります。
個人のお客さまに対しては、様々なライフイベントや長寿社会に対応するため、各種ローンや資産形成にかかる商品メニューの充実を図るとともに、民事信託、遺言信託、遺言代用信託などの資産継承ニーズに幅広くお応えできる体制を整備しております。また、NISA制度の拡充などにより資産運用に対する意識が高まるなか、職域や教育現場においてセミナーを開催するなど、幅広い世代を対象とした金融リテラシーの向上に取り組んでおります。
<データ利活用による金融サービスの革新>
お客さまの利便性向上のため、「いわぎんアプリ」の機能拡充など、非対面サービスの強化に取り組んでおります。また、2025年3月には、実店舗を持たないデジタル専用店舗「ソラ支店」を新設し、口座開設時に印鑑の届出が不要となる「印鑑レス」の普通預金口座の取扱いを始めました。
また、グループが保有するデータを活用し、いわぎんアプリやATMなど当行のチャネルを通じたお取引先の広告・マーケティング支援にも取り組んでおります。
<環境ビジネスの推進強化>
持続可能な地域社会の実現とESG経営の推進を図るため、頭取を委員長とするサステナビリティ推進委員会において取組の方向性を協議し、各種活動を展開しております。
脱炭素経営に取り組む事業者への資金供給やコンサルティングサービスの提供に加え、県内自治体との連携を広げ、森林資源・海洋資源を活用したJ-クレジットやJブルークレジットの販売仲介業務の推進や、久慈地域における再生エネルギー循環プロジェクトや宮古市などでの太陽光発電設備導入事業への参画など、地域の脱炭素化支援を強化しています。
<フロンティア事業領域への拡大>
新事業開発の専担部署であるフロンティア事業室を主体とした新たな事業分野への業務展開として、NTT東日本グループ及び自治体と連携して、県内2か所でデジタル技術を活用した道路インフラのマネジメントにかかる実証事業を行ったほか、地域の最重要課題である事業承継問題への対応策としてファンドの組成に向けた準備を進めております。
また、投資専門子会社「いわぎん未来投資」では、当行グループのビジネスパートナーになり得るスタートアップ企業等への投資事業を展開し、2023年10月のファンド組成以降の投資先数は5先(累計)となりました。
[基本方針Ⅱ:地域を支える盤石な経営基盤の確立]
<アセットアロケーションの変革>
最適なポートフォリオを構築・維持することを目的として、各種資産のリスク・リターン特性を踏まえた資産配分を行っております。貸出部門では、地元中小企業向け貸出への積極的な取組に加えて、秋田・岩手アライアンスによる連携ファイナンスや仕組ローンなどの取り込みを図りながら収益機会の多角化を進めているほか、有価証券部門では、マーケット動向を踏まえつつ、円債を中心とした残高の積み上げによりポートフォリオの再構築を進めております。
<生産性の高い業務運営体制への変革>
当行では2024年2月より、地域の金融インフラ機能を維持しながら、各地域の統括店に人員と業務を集約し、広範囲に質の高いサービスを提供する「地域統括型店舗運営体制」への移行を進めており、お客さまのご理解ご協力のもと、14地区、26カ店 で移行を完了しました。
事務の効率化・削減を目指す取組としては、テレビ相談窓口による相続業務等の遠隔相談体制を整備するとともに、帳票の電子化によるペーパーレス化を推進しております。また、各業務の生産性改善に向け、生成AIアプリケーションの利用環境を整備し、社内規程類の検索や文書の要約・作成など、行内での活用を開始しております。
<ガバナンス態勢の高度化>
持続的な成長や企業価値向上の基盤となるガバナンス態勢の高度化を目指し、コンプライアンス態勢をはじめ、各種リスク管理態勢の強化に取り組んでおります。また、近年深刻化するマネー・ローンダリングや特殊詐欺などの金融犯罪被害に対して、岩手県警や県内金融機関との緊密な連携のもとで犯罪情報を迅速に共有する体制を確立し、あわせてサイバー攻撃によるデータ漏洩やシステムダウンのリスクを低減するため、セキュリティの強化に注力しております。
株主や投資家のみなさまとのコミュニケーション機会を拡充する観点から、機関投資家との対話(ワンオンワン)やWeb配信による全国の個人投資家向け説明会を開催しているほか、海外投資家向けに決算発表内容の英訳配信を開始するなど情報開示の充実に努めております。また、株主のみなさまとの一層の価値共有を進めることを目的として役員報酬制度の見直しを行い、譲渡制限付株式報酬制度を導入しました。
[基本方針Ⅲ:多様な人材が働きがいを持ち続ける組織づくり]
<地域課題を解決できる人材の育成>
地域課題にビジネスチャンスを見出し、解決に導く人材を育成することを目的に、コンサルティング能力や対話力の向上をねらいとしたプログラムを階層別研修に導入しております。また、行員の成長意欲に応えるため、休日セミナーのシーズン企画化や本部・グループ会社へのトレーニー派遣などを実施しているほか、研修費等の人材育成への投資を積極的に行っております。
<チャレンジ性にあふれた企業風土への変革>
職員の自律的なキャリア形成を促進するため、「いわぎんエキスパートパス制度(社内公募制度)」を通じて中小企業診断士やファイナンシャル・プランニング技能検定(FP)1級などの公的資格取得を支援しているほか、希望する部署への異動の機会を提供する「ジョブ・エントリー制度」を通じて、職員のチャレンジ意欲の醸成を図っております。
<働きがいを持ち続け、安心して活躍できる組織の実現~D&I推進~>
当行における人と組織に対する基本的な考え方となる「人事ポリシー(※)」に基づき、2024年4月に人事制度を全面改定しました。新制度では、従来の年功的な考え方から「仕事基準」の仕組みへ転換し、評価への納得性を高めることで、全職員がプロフェッショナルとして成長し活躍する基盤を整備しました。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進については、男性職員の育児休業取得率は3年連続で100%を達成しました。また、ライフプランに応じた柔軟な働き方を実現するため、一定の条件下で勤務地を選択できる「エリア選択制度」を新設しました。
※人事ポリシー…当行では「人こそが最も重要な財産であり、あらゆる価値の源泉」であるとともに、経営理念の実現のためには「職員一人ひとりと銀行がともに成長し続ける」と制定しています。
③ 主要計数目標(中期経営計画、長期目標)
長期目標達成に向けた第1フェーズとして、以下の主要計数目標を設定しております。
指標 | 2024年度 実績 | 中計最終年度 (2025年度) 計画 | 長期目標 (2032年度まで) |
連結当期純利益 | 69億円 | 70億円 | 100億円 |
連結ROE(株主資本ベース) ※1 | 3.8% | 4%以上 | 5%以上 |
連結自己資本比率 ※2 | 11.3% | 10%程度 | - |
OHR(単体) ※3 | 66.6% | 60%台 | - |
顧客向けサービス業務利益 ※4 | 9.9億円 | 10億円以上 | - |
※1 連結当期純利益÷株主資本平均残高
※2 自己資本の額÷リスク・アセット等の額
※3 経費(除く臨時処理分)÷コア業務粗利益
※4 貸出金平残×預貸金利回り差+役務利益-営業経費
(4)対処すべき課題
当行は、今次中計の最終年度となる2025年度において、預貸ビジネスを基軸とした的確なバランスシート運営や生産性向上に向けた業務体制の整備等により強固な収益基盤を構築し、次のとおり地域活性化と持続的成長に資する取組に一層注力してまいります。
① 地域の活性化に向けた取組
地域のリーディングカンパニーとして、基幹産業である自動車・半導体分野の進出企業や地元サプライヤーへのサポート体制を強化し、設備投資計画の支援、ビジネスマッチング等の付加価値の高いサービスを提供します。成長分野として期待されるヘルステック産業やスタートアップ企業を産学官金の連携体制により支援し、M&Aへの取組やファンド投資事業を通じて地域企業の成長・拡大戦略を支援していきます。お取引先や自治体の生産性向上を支援するため、IT事業者やスタートアップ企業との連携により、地域全体のDX化を推進します。
2025年3月、大和証券株式会社と新たな協業体制構築に向けた包括的業務提携を締結し、2026年4月の協業開始に向け業務体制の構築を進めております。当行は、地域のお客さまに資産形成・資産管理サービスをより身近なものとして提供し、お客さまの豊かな生活の実現、ひいては地域経済の発展に貢献していきます。
② 地域の持続的成長の実現に向けた取組
中小企業経営者の高齢化や後継者不足が深刻化する中、事業承継問題を地域の最重要課題のひとつと捉え、事業承継ニーズに対してグループ総力で取り組みます。2025年10月に設立を予定する「事業承継ファンド」を通じて、経営管理や人材紹介、業務効率化などのハンズオン支援により、地域経済や雇用に貢献している地場企業の円滑な事業承継に取り組んでいきます。多様化・複雑化するお取引先のニーズにお応えできるよう、グループ機能と豊富なネットワークを最大限に活用し、経営改善計画の策定や財務改善に関するアドバイスなど、当行グループの強みである高度なコンサルティング業務を提供していきます。
③ 企業価値の向上への取組
上場企業においては、より資本効率や株価を意識した経営が求められています。当行も「持続的成長に向けた投資」「リスクへの強靭性を備えた適正な自己資本」「株主還元の充実」の観点からバランスのとれた資本運営を進め、PBRやROEの改善に取り組んでいきます。また、株主・投資家のみなさまとの実効性ある建設的な対話に積極的に取り組み、当行グループの成長戦略や財務・非財務情報をより理解いただくための情報開示の拡充に努めていきます。
当行グループは、「健全経営に徹する」という企業理念のもとで、長期ビジョンに掲げる「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」として地域経済の発展に向けた取組を一層強化しながら、今後もステークホルダーのみなさまからの期待にお応えできるよう企業価値の向上に取り組んでまいります。
- 検索
- 業種別業績ランキング