岩井コスモホールディングス
【東証プライム:8707】「証券業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、中核となる金融商品ビジネスを展開するうえにおいて、お客様の最善の利益を最優先とする「顧客第一主義」の基本方針のもと、個々の取引志向やリスク許容度に応じた最適な商品、サービスの提供を通じ、お客様との強固な信頼関係の構築に努めて参ります。また、経営陣・管理職・一般社員が三位一体となった「全員参加型経営」を実践し、持続的な企業価値の向上を目指して、グループ一丸となって取り組んで参ります。
(2)経営戦略等
2025年3月期を最終年度とした第5次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)では、ITを活用した営業推進による顧客基盤の強化や市場動向に左右されない安定収益の拡大など、競争力の強化に向けて各重点施策及び数値目標を策定し、当該達成に注力して参りました。その結果、業界平均を上回るROEの維持と株主への適切な利益還元については、達成することができました。一方、安定収益による固定費カバー率は、同計画期間を通じて向上しておりますが、目標に掲げた50%には届かず、今後も継続して取り組む課題としております。
当該計画の骨子及びその取り組み状況と進捗状況は、以下のとおりであります。
1.営業施策・基盤強化
①お客様ニーズと最善の利益の追求
・米国株を中心とした口座、残高の増大
→外国株式残高は、前中期経営計画の最終年度(2022年3月期)末比126.3%増加
・長崎県への新規出店(2023年3月 長崎プラザ開設)
・株式投資信託の残高積み上げ(2025年3月末目標:6,000億円台)
→前中期経営計画の最終年度(2022年3月期)末比1.6%増加
②ITを活用した営業推進
・Webセミナーの開催に加え、SNSやYouTubeを活用した情報配信
・ITを活用し、お客様への情報提供機会の拡充及び接点強化
・「生成AI」や新しいIT技術の導入に積極的に取り組むべく、岩井コスモ証券において、
「DX推進部」を新設(2024年1月)
③ネット取引サービスの拡大
・「信用・デイトレ」における金利・貸株料無料化(2022年4月)
・米国株式のリアルタイム取引が可能な「米国株式リアルタイムトレードシステム」提供開始(2022年
10月)
・お客様に代わって資産運用を行うゴールベース型資産運用サービス「岩井コスモ・ゴールナビ」提供
開始(2023年1月)
・米国株式リアルタイムトレードにおいて、「外貨決済サービス」を開始(2023年7月)
・NISA口座における日本株・米国株の売買手数料無料化(2024年4月)
2.財務目標・株主還元
①安定収益による固定費カバー率50%以上(最終年度目標)
→2023年3月期:33.5%、2024年3月期:38.9%、2025年3月期:40.9%
②資本効率を意識した経営
業界平均(※)を上回るROEと上位ランクの維持
2023年3月期 当社ROE: 6.2%(17社中1位) > 業界平均値:0.8%
2024年3月期 当社ROE: 9.0%(17社中1位) > 業界平均値:6.0%
2025年3月期 当社ROE:10.0%(17社中1位) > 業界平均値:6.2%
※業界平均とは、ネット専業証券を除く上場証券及び主要証券16社の平均値
③安定配当の継続と業績連動の利益還元
1株当たりの年間配当金40円を下限に設定するとともに、総還元性向を50%以上とする
2023年3月期 年間配当金: 80円、総還元性向:52.7%
2024年3月期 年間配当金:120円、総還元性向:50.7%
2025年3月期 年間配当金:145円(過去最高)、総還元性向:50.6%
3.ESG/SDGsへの取り組み強化
・親会社株主に帰属する当期純利益の1%程度を「社会貢献積立金」として毎期積み立て
2025年3月期:67百万円、合計:2億47百万円
・古い紙幣(紙幣裁断屑)を再利用した封筒の導入
・営業車両に電気自動車を導入
・発行手数料の一部がSDGs関連団体へ寄付される「SDGs推進私募債」を発行(2023年3月)
・営業店の照明をLEDへ順次切り替え
・各種資格の勉強会や受講補助など、従業員に成長機会を与え自律型人材の育成に注力
・性別や中途採用などに関係なく、管理職へ積極登用
・文化、スポーツ事業等の発展や地域振興等に寄与することを目的とした協賛や寄付活動
2026年3月期を起点とする新たな中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、前中期経営計画の結果並びに現状の課題を踏まえて、以下のとおり策定いたしました。当社グループの持続的な企業価値の向上を目指して、役職員一同、当該計画の達成に全力で取り組んで参ります。
<第6次中期経営計画骨子(2026年3月期~2028年3月期)>
1.財務目標、株主還元
・資本効率を意識した経営
-株主資本コストを意識した経営
-株主資本の有効活用により業界上位のROEを維持
・安定配当の継続と業績連動の利益還元
-総還元性向50%以上と純資産配当率(DOE)3%程度のいずれか高い方
(中間配当:DOE2%程度、期末配当:DOE1%程度+業績連動)
・固定費カバー率50%以上(最終年度)
-投信の信託報酬、金融収支の増加
-低コスト体質の堅持
・営業収益経常利益率の向上
-収益性の向上
・株主総利回り(TSR)の向上
-TOPIXを上回る収益性を目指す
-中長期にわたる企業価値の創造
2. 預り資産の増大、IT・人的投資
・預り資産3兆円(最終年度)
・DXの推進
・人的資本への投資
(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
近年、米国をはじめとした世界の金融市場は、トランプ大統領の掲げる政策動向に加え、中東やロシア・ウクライナ情勢などに代表される紛争の長期化など予測不可能なリスクの増大によって、投資環境がますます複雑化しており、プロの投資アドバイザーである証券会社の営業員が果たすべき役割は、一層重要性を増しております。このような状況のもと、お客様の満足度向上を目的とする「顧客本位の業務運営」(フィデューシャリー・デューティー)に基づき、お客様それぞれの資産運用ニーズに合った金融サービスを提供することが、当社グループの企業価値向上に資するものと確信しておりますが、更なる当社グループの発展に向けて、以下の項目を対処すべき課題と認識しております。
①DX推進によるお客様の満足度向上及び業務効率化の推進
近年、生成AIをはじめとするIT技術の進展は目覚ましく、急速なスピードで事業環境の変化が進んでおります。このような状況のもと、当社グループでは、新しいIT技術を活用し「進化した対面営業」を推進することで、お客様の利便性及び満足度の向上に努めるとともに、グループウェアの見直しなど社内インフラの高度化を図り、業務の見直しと改善を行い、生産性向上や業務効率化を推進して参ります。
また、DXを推進する上での課題である「人材不足」や「知識不足」を補うべく、子会社の岩井コスモ証券では、2024年1月にDX推進部を新設しました。当該部署が中心となり、各部門が自発的に業務のDX化に取り組むことができるようサポートを行うことで社員のITリテラシー向上を図るとともに、DX人材を育成し全社的なDXの推進を更に加速させ、企業の持続可能な成長を支える強固な事業基盤を構築して参ります。
②人的資本投資の拡大及び人材育成
当社グループの中核事業である証券営業部門における最も重要な経営資源・財産は“人”であり、“人財”に対する重要性を認識するとともに、人材の育成及び優秀な人材の確保に努めております。
このような考えのもと、昨今の世界的な物価上昇に対する社員の生活支援と優秀な人材の確保及び定着を目的として、継続的に実施している賃上げ(昇給・昇格など)に加え、2025年度においても4年連続となるベースアップの実施を予定しております。
また、今後、当社グループが持続的に発展していくためには、将来を担う若手社員の育成や豊富な経験・知見を持ったシニア社員の活躍が必要不可欠であると認識しております。
当社グループでは、各人の職階に応じた階層別研修に加え、社員にリスキリングの機会を提供し、業務に有益な資格取得を後押しするとともに、健康で元気なシニア社員が末永く安心して活躍できる職場環境や人事制度の構築など様々な施策を講じて参ります。このような取り組みにより、自ら考え業務を遂行できる自律型人材や事業環境の変化に柔軟に対応でき、リーダーシップを発揮できる人材の育成を強化し、企業内部の拡充を図って参ります。
③コンプライアンスの徹底
信用を第一とする金融機関の企業活動には高い倫理観が求められており、コンプライアンス上の問題は経営基盤に重大な影響を及ぼすものと考えております。役職員に対しては、定期的な研修を実施するとともに、取引内容等に応じて、適宜、コンプライアンス担当者が営業員を指導・教育し、コンプライアンスの意識の醸成と定着に努めております。また、お客様と営業員との通話内容について、AIを活用し、より精緻にモニタリングを行うなど、コンプライアンス体制の充実とリスク管理体制の強化を図っております。更に、通話記録の解析データを資質向上のための教育・研修にも活用するなど、顧客本位の倫理観を持った社員の育成に努めて参ります。
④サステナビリティへの継続的な取り組み
中長期的な企業価値の向上のためにはサステナビリティに関する取り組みを推進することが重要であると認識しており、環境問題の解決に貢献すべく役職員一丸となって取り組みを推進しております。このほか、芸術や文化活動の支援に加え、地域経済の活性化及び発展にも積極的に取り組んでおります。今後も、様々な社会課題を解決するための取り組みを推進して参ります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上を目指すうえにおいて、自己資本に対する利益率を高めることが重要であるとの認識のもと、ROEを経営上の重要指標と捉えています。もっとも、当社グループの業績は、経済情勢や市場環境の変動により大きく影響を受ける状況にあるため、目標の設定に関しては、ROEの絶対値ではなく、主要な証券会社16社(ネット専業証券会社を除く)の平均値を上回るROEと、比較対象(当社含む17社)の中での上位ランクの維持を目指して参ります。
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