学びエイド
【東証グロース:184A】「情報・通信業」
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企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「Be a player.~教育の「意欲」の機会均等をあまねく達成し、前向きなひとをたくさんつくる企業~」を企業理念に掲げ、「教えたいと教わりたいをていねいに紡ぐ」を経営理念としております。この経営理念に基づき、学習塾等教育関連事業者に対し、鉄人講師等と共に制作した映像授業、塾運営の効率化を支援する管理機能を提供する「学びエイドマスター」、教育関連事業者の教材(紙媒体)の映像授業化と映像授業化したコンテンツを配信するための配信サービスを開発・提供する「学びエイドforEnterprise」の開発・運営を行っております。
「教えたいと教わりたいをていねいに紡ぐ」という経営理念の実現にむけて、良質な映像コンテンツの提供、経営管理体制、人材育成を強化し、「教わった」ひとが、次の「教えたい」衝動へとつながり、情報的・経済的・地域的・世代的格差を超えて、教育の「意欲」の力強い循環を達成し、教育の熱き意欲をていねいに紡ぐ企業となるべく取り組んでいく方針であります。
(2) 経営環境及び経営戦略等
当社の属する業界は大きくは「教育産業市場」となります。また、近年注目されているEdTech(エドテック:Education(教育)×Technology(技術)の造語で、「教育におけるAI、ビッグデータ等の様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取組」)という市場にも属するものと認識しております。
教育産業全体の市場規模は、少子化や直近の新型コロナウイルスの影響はあるものの、矢野経済研究所発表の「2024年版教育産業白書」によると2兆8,000億円程度の横ばいで推移しております。また、同調査では、教育産業全体市場の主「学習塾・予備校市場」は1兆円弱の横ばいで推移していると算出されております。(※1)
また、文部科学省「学校基本統計(平成29年度)」の調査によると、大学進学時の都道県別流入・流出者数は、東京・神奈川といった大都市圏10都県に進学時に流入しており、それ以外の地域では、他都道府県へ学生が流出しております。学習塾にとっては少子化の影響による生徒の確保のみならず、貴重な大学生講師やアルバイトスタッフ等の人員確保が益々困難になることが予想され、より効率的な経営や教室運営が求められると考えております。
こうした背景の中で、EdTech市場規模は2027年に3,625億円に達すると算出されており(※2)、特に教科学習コンテンツの市場規模は当社を含む定額制サービスの普及により低価格化が進み、拡大していくと考えております。
新型コロナウイルス感染症の流行によりパソコンやタブレットを利用したオンラインでの学習が広がり、さらに政府が推進するGIGAスクール構想(※3)により教育業界におけるICT教材導入や、2024年度から学習用デジタル教科書(※4)が導入され、当業界をとりまく経営環境は大きく変化しているものと認識しております。GIGAスクール構想では、「子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現」を進めており、これまでの集団授業から個別最適化された教育へと変化しております。
エンドユーザーである生徒の学びの環境変化は、文部科学省の発表では、2022年度から採用される高校用教科書の大半にQRコードが掲載されており、小中学校用の教科書では既に導入されています。スマートフォンで読み取ると、英語ではネイティブスピーカーの発音で文章が音読されたり、「物理基礎」では物体が運動する映像が流れるなど、デジタル教科書の将来的な本格運用も見据え、音声や映像を通じた深い理解や、知識を定着させる効果が期待されています。
こうした紙媒体の変化は、教科書準拠の補助教材や参考書市場にも変化を与えていると認識しております。矢野経済研究所「2024年版教育産業白書」によると、学習参考書・問題集の市場規模は約930億円と微減傾向にあると算出されている一方で、デジタル教科書とデジタル補助教材の潜在市場規模は株式会社シード・プランニングによる2022年5月「デジタル教材市場の拡大の可能性に関する調査」によると2025年には2,500億円規模に達すると算出されています。こうした変化は学習参考書・問題集を取り扱う出版社にとって、紙媒体のデジタル化への対応は他社との差別化や新たなビジネスチャンスとして、捉えられているものと認識しております。
※1 矢野経済研究所「教育産業白書2024年版」
※2 野村総合研究所「ITナビゲーター2022年版」
※3 GIGAスクール構想とは以下を目標に掲げたものであります。(文部科学省GIGAスクール構想パンフレットより)
・1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する
・これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す
※4 学習者用デジタル教科書とは、紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材(学校教育法第34条第2項及び学校教育法施行規則第56条の5)をいう。動画・音声やアニメーション等のコンテンツは、学習者用デジタル教科書に該当しないが、これまでの学習者用デジタル教材と同様に、学校教育法第34条第4項に規定する教材(補助教材)として、学習者用デジタル教科書とその他の学習者用デジタル教材を組み合わせて活用し、児童生徒の学習の充実を図ることも想定されている。
このような状況の中、当社では、(1)の企業理念等に基づき、2025年4月期において業績未達および赤字を計上するなど厳しい経営環境に直面した状況も踏まえ、上場企業としての信頼を回復するとともに、急速に変化するEdTech市場において競争優位性を再構築すべく、以下の5つの柱から成る基本戦略を掲げ、取組みを行ってまいります。
① 信頼回復とガバナンスの強化
監査等委員会設置会社への移行および執行役員制度の導入を通じて、意思決定の迅速化と取締役会の機動性向上を図り、ガバナンス体制と説明責任の強化を進めてまいります。
② 主力サービスの再定義と顧客基盤の拡張
映像授業を中心とした既存サービスを、教材連携、添削機能、講師ネットワークなどを含む「教育DXプラットフォーム」へと進化させ、学習塾、公教育機関、個人市場における顧客接点を拡大し、ユーザーLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上および新規市場の開拓を推進してまいります。
③ 収益モデルの変革
サブスクリプション型サービスの再構築とプロダクト開発体制の強化により、フロー型収益への依存から脱却し、持続可能なストック型収益モデルの確立を目指してまいります。
④ アライアンスによるスケール戦略
教育業界内外との戦略的提携を通じて、販路の拡大、新サービスの共同開発、経営体制の強化等のシナジー創出を図り、従来の教育分野にとどまらない幅広い市場への展開を進めてまいります。
⑤ 現場力の底上げ
教育現場における知見や技術の形式知化を推進し、それらをプロダクトに反映することで差別化を図るとともに、組織全体の学習能力と実行力の向上を図ってまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
① 経営管理体制の強化
当社は、事業の成長や業容の拡大に対応する中で、経営管理体制の一層の充実が必要であると認識しております。すべてのステークホルダーからの信頼を確保するため、情報開示の透明性を高め、適時・適切な経営情報の発信を強化するとともに、監査等委員会設置会社への移行や執行役員制度の導入を通じて、取締役会の実効性と機動性を向上させてまいります。また、優秀な人材の採用・育成を通じた業務執行体制の強化、内部統制システムの整備・運用、ならびに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底により、コーポレート・ガバナンスの実効性を確保し、経営基盤の安定化と企業の持続的成長を支えてまいります。併せて、コンプライアンスの徹底とリスク管理の強化にも取り組み、企業価値と社会的信頼の双方を高めてまいります。
② 主力サービスの再定義と収益構造の変革
当社は、創業以来、映像授業を基軸とした教育デジタルサービスを提供してまいりましたが、今後の持続的成長に向けては、従来の映像授業にとどまらず、教材連携、添削機能、講師コミュニティを含む「教育DXプラットフォーム」への進化が重要であると認識しております。LTV(顧客生涯価値)の最大化を目的に、サービスを包括的に再設計し、教育現場の多様なニーズに対応するワンストップ型の支援体制を構築してまいります。また、フロー型の収益構造から、ストック型へと転換を図るべく、サブスクリプション型サービスの開発と運用を強化いたします。その推進にあたり、教務と技術の知見を融合させた「製品開発部」を新設し、開発力と提供体制を一体的に強化してまいります。当社は、こうした取組を支える基盤として、鉄人講師との良好な関係の維持、優秀な人材の確保と育成を重視し、収益構造の変革を推進してまいります。
③ アライアンスによる成長加速
当社は、NOVAホールディングス株式会社(以下「NOVAホールディングス」といいます。)との資本業務提携をはじめ、教育業界内外の多様な事業者との戦略的提携を積極的に推進してまいります。教育関連企業との連携においては、当社のサービスとの親和性を活かし、共同開発や顧客基盤の共有を通じたサービス拡充を図ってまいります。また、教育業界外の企業との提携についても、新たなユーザー層やサービス提供領域の拡大につながる可能性があることから、積極的に検討・実行してまいります。こうしたアライアンスの展開により、技術・ノウハウ・販路の相互補完を実現し、中長期的な成長の加速を図ってまいります。
④ 営業力と現場力の強化
当社が持続的な成長を遂げるためには、既存顧客との関係性を深化させるとともに、新規顧客の開拓を着実に進める営業体制の強化が不可欠であります。営業部門においては、学習塾をはじめとする教育関連事業者の経営課題に寄り添い、これまでの教育デジタル事業で培ったノウハウを活かした提案力のさらなる向上に取り組んでまいります。また、人材の採用・育成、ならびに業務提携等を通じた販路拡大にも注力してまいります。さらに、サービス開発や営業活動を支える現場の力を高めるべく、映像授業等の制作ノウハウを理論化・形式知化し、業務プロセスへの還元を図るとともに、教育業界の経験者のみならず、多様なバックグラウンドをもつ優秀な人材の確保と育成が重要な課題であると認識しております。積極的な人材採用活動を行い、全社一丸となって実行力と提案力を高め、事業の拡大と企業価値の向上を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の売上高は主に、主力サービスの「学びエイドマスター」、「学びエイドマスターforSchool」、「学びエイドforEnterprise」で構成されております。安定的な収益を通じて持続的な企業価値向上を目指すためには、これらのサービスの競争力を維持し、既存取引先との信頼関係を構築し、アップセルやクロスセルといった提案力を強化することで取引額が増加していくことが重要であると認識しております。こうしたことから、当社の経営指標は売上高成長率、営業利益率を使用し、参考指標として「顧客数」「顧客単価」を確認しております。各サービスの「顧客数」「顧客単価」の定義、及び経営指標等の推移は以下の通りです。
各サービスの「顧客数」「顧客単価」の定義
サービスの名称 | 顧客数の定義 | 顧客単価の定義 |
学びエイドマスター | 顧客数は契約教室数と定義しております。当社では、契約教室数の拡大は、利用生徒数の拡大につながること、契約教室数は、現在の売上だけでなく、今後学習塾向けに新たな機能やサービスを提供する際の基盤となるため、指標として設定しております。 | 学びエイドサービスの売上高を顧客数(契約教室数)で割って算出しております。当社では、学びエイドマスターの利用者数の増加、付帯サービスのアップセルが売上高の増加に必要となるため、指標として設定しております。 |
学びエイドマスターforSchool | 顧客数は契約法人数と定義しております。契約法人数の拡大は、利用生徒数の拡大につながることから当サービスの指標として設定しております。 | 学びエイドマスターforSchoolの売上高を顧客数(契約法人数)で割って算出しております。当社では、学びエイドマスターの継続利用に加えて、映像授業やシステムのカスタマイズ受注等のアップセルが売上高の増加に必要となるため、指標として設定しております。 |
学びエイドforEnterprise | 顧客数は契約法人数と定義しております。契約法人数の拡大は、案件数の増加につながることから、当サービスの指標として設定しております。 | 学びエイドforEnterpriseの売上高を顧客数(契約法人数)で割って算出しております。当社では、契約法人に対し既存の受注に加え、映像コンテンツやシステム開発のアップセル・クロスセルが売上高の増加に必要となるため、指標として設定しております。 |
経営指標等の推移
セグメントの名称 | 経営指標 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
教育デジタル事業 | 売上高成長率(%) | 25.4 | △53.9 |
営業利益率(%) | 23.3 | ― | |
サービスの名称 | 参考指標 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
学びエイドマスター | 顧客数(契約教室数) | 458 | 423 |
顧客単価(千円) | 213 | 200 | |
学びエイドマスター forSchool | 顧客数(契約法人数) | 7 | 7 |
顧客単価(千円) | 20,786 | 11,219 | |
学びエイドforEnterprise | 顧客数(契約法人数) | 30 | 27 |
顧客単価(千円) | 12,644 | 4,324 |
・「教育デジタル事業」
2025年4月期は、想定していた大型案件の受注見送りや既存顧客における案件規模の縮小に加え、新規受注活動の遅れが影響し、売上高および営業利益ともに減少いたしました。各サービスの状況は以下のとおりであります。
・「学びエイドマスター」
個人~中規模学習塾を取り巻く環境は、①経営環境の悪化、②少子化や後継者不在による閉業、③利用生徒の退塾といった要因に大きな変化は見られず、依然として厳しい状況が続いております。このような中においても、解約率は一定の下げ止まりを示したものの、顧客数は減少傾向にあります。引き続き、学習塾の新たな収益源となる「小論文・志望理由書 添削道場」や「テツヨビ」等のサービス提供を強化し、顧客単価および顧客数の回復を目指してまいります。
・「学びエイドマスターforSchool」
中~大手規模の学習塾においては、引き続きICT投資への意欲が高い傾向が見受けられます。2025年4月期においては、「学びエイドマスター」の継続的な利用はあったものの、大手既存顧客に対するコンテンツ制作やシステム開発に係るアップセル案件の受注が計画どおりに進まず、顧客数は前期と変動がなかったものの、売上高および顧客単価は減少いたしました。今後も新規顧客獲得に向けた営業活動を強化する一方で、安定的な収益基盤を確保するため、フロー型受注への依存を抑制し、「学びエイドマスター」や「小論文・志望理由書添削道場」、および「テツヨビ」など、ストック型サービスの導入拡大を通じて、安定的な成長を目指してまいります。
・「学びエイドforEnterprise」
2025年4月期は、想定していた大型案件の受注見送りや既存顧客における案件規模の縮小に加え、新規受注活動の遅れが影響し、売上高、顧客数および顧客単価が大きく減少いたしました。このような状況を受け、当社では既存の映像授業コンテンツを活用し、二次利用やライセンス提供による収益化を進めております。具体的には、継続的な利用料を得るストック型収益モデルとして、法人向けに映像授業のレンタル提供を開始し、安定的な収益基盤の構築を目指しています。
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