日本酸素ホールディングス
【東証プライム:4091】「化学」
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企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営方針
当社グループは、企業理念として「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げております。「私たちは、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」このような思いを企業活動の基本方針とし、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。
(2) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
当社では、グループビジョンの実現に向けた中期経営計画として2023年3月期から2026年3月期までの4ヶ年を対象期間とした「NS Vision 2026 - Enabling the Future」(以下、「NS Vision 2026」という。)を策定し、現在この中期経営計画に基づいた事業運営を行っております。
当社グループを取り巻く事業環境においては、世界的な物価上昇圧力や地政学リスクの長期化、さらには主要国における選挙に伴う政策変動の不確実性といった、多様で複雑なマクロ経済環境の変化に直面いたしました。こうした外部要因によるコストの増加に対して、当社はグループ全体での製品の価格マネジメントの推進と生産性向上活動などの施策を積極的に行い対応してまいりました。
今後は、長期化する地政学リスクやサプライチェーンの混乱、エネルギー価格の変動に加えて、主要国における政策転換による通商政策の再構築や関税措置の強化といった構造的な変化に加え、それを起因とした全世界的な景気後退懸念による当社事業への影響について注視しながら、適切に対処してまいります。また、生成AIの活用促進などによるデジタル化のさらなる進展や、カーボンニュートラルへの取組みが地域によってその推進速度に変動がでる可能性なども想定され、中長期的視点に立った新たな事業機会の獲得や食品・飲料、医療、環境関連などのレジリエンス市場への取組みの強化、ガバナンス体制整備にも対処していく必要があります。
NS Vision 2026では、以下5点を重点戦略として設定しておりますが、以上のような環境認識を踏まえ、個別の施策については、各々適宜見直しを行いながら中期経営計画の達成に向けて計画を遂行してまいります。
① サステナビリティ経営の推進:2024年8月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムへ参画及び、TNFD提言の採用者として登録しました。環境分野では、引き続き当社グループの事業活動で排出される温室効果ガス削減に努めるほか、顧客への環境貢献製商品、サービス拡充に注力してまいります。また、保安・安全の確保、製品・サービスの品質向上、さらに社会から信頼される企業であり続けるための人権尊重の取組みや人財の多様性確保、コンプライアンス推進活動の充実と浸透に努め、持続可能な事業運営を推進しております。
② カーボンニュートラル社会に向けた新事業の探求:当社グループは、環境貢献製商品やソリューションの提供により、顧客の温室効果ガス排出削減に貢献いたします。当期も引き続き、工業炉プロセスへの酸素燃焼技術適用に向けた技術開発を継続することに加え、新たに“CO2分離回収/貯蔵・貯留”(CCS)のバリューチェーン構築に欠かせないCCS用出荷タンク設備を新たに開発するなど、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する技術開発の促進を行っております。さらに、当社グループの取組みをまとめた専用のウェブサイトの拡充を継続しており、カーボンニュートラル社会に向けた当社グループの取組みのさらなる対外発信の強化に努めてまいります。
③ エレクトロニクス事業の拡大:需要の回復とさらなる需要の拡大が期待される中、半導体材料ガス及び関連機器などの生産能力の拡充を図っております。また、日本での最先端半導体製造の量産化を目指す顧客のパイロットラインへのガス関連工事施工及びバルクガス供給を進めており、これらの旺盛な大規模半導体工場の新設に必要となる超高純度空気分離装置の製品化に向けた取組みも進めております。
④ オペレーショナル・エクセレンスの追求:各事業会社では業務の生産性向上活動を強く推進し、利益の最大化を図ることに取り組んでおります。また当社のグローバル化を前進させ、グループ全体で生産性向上プログラムやベストプラクティスを共有させるため、推進プロジェクトのプロジェクトリーダーを指名し活動を推進しています。具体的には、各事業会社のベストプラクティスをオペレーショナル・エクセレンス・デイというイベントで紹介し、各社の生産性向上の意識を高めており、併せてプロジェクトの水平展開をより活性化するために個別のワーキンググループを設けてグループ一丸で活動を推進しております。ワーキンググループは今後拡張を図ってまいります。
⑤ 新しい価値創出へとつながるDX戦略:各事業会社では、各生産性向上活動や、製品価格マネジメントを推進するためにデジタルデータを活用した事業モデルの高度化に取り組んでおります。今後さらにグループ全体としても各事業会社の取組みを統括して強化してまいります。
4極の産業ガス事業では上記5つの重点戦略に共通して取り組む一方、地域固有の経営課題にも取り組んでおります。
・日本:収益性向上を重要施策として推進すべく、事業ポートフォリオの見直しや各種収益率向上プログラムを実施するとともに、国内エレクトロニクス産業の拡大を受けた各種需要の獲得と安定供給に向けた設備拡張を進め、トータルソリューションの提供で力強い成長の実現を図ってまいります。また、顧客のGHG排出量削減や生産性向上に資するガスアプリケーションを基点としたイノベーションを実現し、新たな事業領域の探索・拡大を目指してまいります。
・米国:新政権による相互関税発動などの政策が米国内産業に及ぼす影響など不確実性が増す中ではありますが、引き続き新規オンサイト事業の探索、物価の上昇に伴うプライシング活動の継続、コールドチェーンにおけるドライアイス需要獲得に向けた生産拠点の拡充などによる事業密度向上を目指します。また既に立ち上げている大型プロジェクトについては円滑な遂行を図ってまいります。
・欧州:食品・飲料、医療、環境関連などのレジリエンス市場に注力するとともに、欧州エレクトロニクス市場の拡大を受け、関連製品の需要獲得に向けた対応を進めます。当期においては、エンジニアリング会社への戦略的投資を実行し、スペインにおける在宅医療事業の拡充を発表しました。今後もグループのエンジニアリング能力の強化を図るとともに、引き続き環境関連でのビジネス機会の獲得や酸素燃焼技術領域の拡大とバイオメタン市場の拡大に向けた案件獲得活動を促進してまいります。
・アジア・オセアニア:当期は豪州において産業ガス、LPガスの販売を拡大するため、2件の買収について合意いたしました。豪州における当社のプレセンスの向上に加えて、アジア各国における大型オンサイト案件の獲得や空気分離装置の能力増強、成長拡大余地の大きいエレクトロニクス市場に対する製品の拡充に取り組んでおります。同地域の今後の経済成長を前提に、引き続き新商材や事業エリアの拡大に注力するとともに、各事業会社の収益力強化に向けた生産性向上活動の浸透を図ってまいります。
また、当社グループ唯一のB to Cビジネスであるサーモス事業では、新商品を積極的に投入するとともに、機動的な広告宣伝並びに店頭プロモーションを実施することにより需要の拡大を目指します。また、販売チャネルの多角化を図るため、直営店拡大と電子商取引を拡大しており、メンバーズサイトの拡充やお客様サポートにおけるAI活用など、顧客満足度、従業員満足度を向上する取組みにおいてDXを推進しております。
財務目標
| 実績 (2025年3月期) | NS Vision 2026最終年度目標 (2026年3月期) |
売上収益 | 1兆3,080億円 | 9,750億~1兆円 |
コア営業利益 | 1,891億円 | 1,250~1,350億円 |
EBITDAマージン(注1) | グループ:23.3% 各セグメント:15.1~31.3% | グループ:≧24% 各セグメント:≧17~33% |
調整後ネットD/Eレシオ(注2) | 0.71倍 | ≦0.7倍 |
ROCE after Tax(注3) | 7.2% | ≧6% |
(注)1.EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)
コア営業利益に減価償却費及び償却費を加えて算出される利益です。国・地域により、金利水準、税率、減価償却費などに差異がありますが、この指標ではその差異を最小限に抑え、利益額を表示します。
2.調整後ネットD/Eレシオ
財務の安全性を示す指標であり、(純有利子負債-資本性負債)÷(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)で算出する比率です。
なお、格付機関により、ハイブリッドファイナンスで調達した金額(調達時2,500億円)のうち各連結会計年度末における残高の50%を「資本」として認められており、当社内ではこれを資本性負債と呼称しております。
3.ROCE after Tax(Return on Capital Employed after Tax:使用資本税引き後利益率)
[NOPAT:税引き後コア営業利益(+受取配当金)]((コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益)×(1-実効税率)+コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+受取配当金)÷[使用資本](有利子負債+親会社の所有者に帰属する持分)で算出する資本効率性指標です。
非財務目標
| 実績 (2024年3月期) | NS Vision 2026 最終年度目標 (2026年3月期) | ご参考:長期目標 (2031年3月期) |
GHG総排出量削減(注4) | 15.3% | 18% | 32% |
GHG排出量に関する考え方 | 7,454>5,667千t-CO2e | 当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量 | - |
休業度数率(連結)(注5) | 2.09 | ≦1.6 | - |
女性従業員比率 | 20.2% | ≧22% | 25% |
女性管理職比率 | 15.4% | ≧18% | 22% |
コンプライアンス研修受講率 | 99.4% | 100% | - |
(注)4.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として、該当年度の削減目標を設定しま
す。
5.休業度数率
労働災害の発生頻度を表す指標であり、休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。
6.詳細については、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ全般 ④ 指標及び目標」をご参照ください。2025年3月期実績は、2025年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する「統合報告書2025」をご参照ください。
当社はグループ理念に「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げており、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現に貢献することを目標にしています。その実現の第一歩として、上記に掲げた課題に取り組んでまいります。
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