大日本印刷
【東証プライム:7912】「その他製品」
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企業概要
DNPグループは、新規事業の創出・新製品開発から生産技術の開発に至るまで、幅広い研究開発活動を続けており、その活動は事業活動の原動力として機能しております。
DNPグループの研究開発は、研究開発・事業化推進センター、技術開発センター、AB(アドバンストビジネス)センター及び各事業分野の開発部門を中心に推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は37,561百万円、3つのセグメントに関する研究開発費が15,934百万円、各セグメントに配分することができない本社開発部門等の費用が21,626百万円であります。
当連結会計年度における各セグメントごとの主な研究開発とその成果は次のとおりです。
(1) スマートコミュニケーション部門
マーケティング分野では、小売業が新店舗をオープンする際の地域特性等に合わせた宣伝予算配分の効率化が求められています。そこで、AIを活用して宣伝手段の予算配分を最適化する「DNP販促最適化AI」を開発しました。これにより、企業はより効果的な宣伝活動を行い、費用対効果を最大化することが可能になります。店舗を持つ小売業を中心にサービスを展開し、精度向上や機能拡張を行っていきます。
認証・セキュリティ分野では、データの改ざんや漏洩、なりすましなどのプライバシーリスクが社会的な課題となっているため、より安全・安心なデータ流通が求められています。そこで、個人が管理しているアイデンティティ情報を保証するデジタル証明書の発行・検証を行う「DNP分散型ID管理プラットフォーム」を開発しました。金融・通信・旅行・自動車・教育などの業界を中心にプラットフォームを提供し、関連する製品・サービスの展開を目指します。
BPO(Business Process Outsourcing)分野では、郵便料金や人件費の増加、利用者の利便性向上のため、通知物のデジタル化が求められています。そこで、取引明細書や契約内容確認書などの通知物をWebサイト上で閲覧可能にする「DNP電子交付・web通知サービス」を開発しました。金融業界をはじめ幅広い業界へサービスを展開し、機能拡充を進めて企業の業務効率化を支援していきます。
XRコミュニケーション分野では、少子高齢化による人口減少や労働力不足が公共サービスの維持を困難にしているため、デジタル技術を活用した効率化が求められています。そこで、生活者が自治体の各種サービスをインターネット上の仮想空間「メタバース役所」で利用できるサービスを開発しました。継続的にサービスの機能を改善・強化することで、自治体のデジタルトランスフォーメーション推進を支援していきます。
イメージングコミュニケーション分野では、昇華型熱転写方式の8インチ両面フォトプリンターで最軽量クラスの「DP-DS820DX」を開発しました。折り目加工機構や縦横カッターを搭載することで、フォトブックやグリーティングカード等の多様なフォト関連製品を様々なサイズでオンデマンドプリントすることができます。今後も、生活者の体験や感動をより楽しく、より印象的にする「写真」の価値を高める事業を展開していきます。
当部門に係る研究開発費は2,786百万円であります。
(2) ライフ&ヘルスケア部門
包装分野では、水分を吸収する「吸湿剤」を樹脂に混ぜてフィルムにして、パッケージの内部で湿度を一定にすることができる「DNP吸湿包材」を開発しました。経口剤や温湿度影響を受けやすいセンサー等の機器をターゲットとしています。本開発により、パッケージ内部に乾燥剤を入れる必要がなくなり、従来、乾燥剤が入れることができなかった小さいパッケージの内容物も水分から守ることができます。また、最適な寸法で製品を提供できるため、包装全体の省資源化に寄与します。今後も持続可能な社会に向けて環境に優しい製品を開発していきます。
生活空間分野では、マンションや各種施設等の室内ドアや収納・内装向けの化粧シート「DNP EBオレフィンシート サフマーレ」を展開しています。この製品には、シート基材に塗布する各種機能性材料に電子線(Electron Beam)を照射し、耐傷性・耐汚染性・加工性等を高めるDNP独自のEBコーティング技術を用いています。生活者の環境意識が高まり、社会や企業等の環境配慮の取り組みが強化される中、表面コーティング層のコート剤に植物由来(バイオマス)原料を一部使用したバイオマス仕様を開発しました。植物由来のバイオマス原料により、環境負荷の低減につながるとともに、EBコーティングによって従来品と変わらない機能を実現することで長期間の使用に対応します。今後も環境に配慮した製品を開発し、建装材メーカー等に提供して、カーボンニュートラルと持続可能な社会の実現に貢献していきます。
モビリティ分野では、リサイクルに貢献するポリプロピレン(PP)をベースとした自動車用加飾フィルムの量産技術を確立しました。DNPが長年培ったPPフィルムへの印刷・加工技術を活かして高い意匠性・成形性を実現したこの新製品は、温室効果ガス排出量の削減も期待できます。
また、自動車部品や産業機器向けの加飾部品等の多くの成形品製造技術を保有する株式会社光金属工業所の完全親会社であるHKホールディング株式会社の全株式を2025年1月31日に取得しました。両社の技術、ネットワークを組み合わせることで、顧客への対応力を強化するとともに、大きく変化する市場に対し、先進的な商材の開発・提供を推進していきます。
高機能マテリアル分野では、2017年から提供している真空断熱材を用いた「DNP多機能断熱ボックス」の重量を従来から約27%削減した軽量の新製品を開発、提供を開始しました。電源を使わずに内部の温度を長時間一定に保ち、長距離の輸送も可能な「DNP多機能断熱ボックス」の新製品は、一般的な発泡断熱材を用いた製品と比べ、保冷剤の使用量を大幅に削減でき、4時間は保冷剤なしでの保冷維持が可能です。また、保冷材量が同じ場合は、保冷時間を約2.2倍向上しました。保冷剤の使用量を大幅に削減することで、多くの荷物の搭載と配送の効率化につなげることができます。DNPは本製品の主なターゲットとして、冷凍・冷蔵食品、チルド食肉類、医薬品、化学薬品類等を想定しており、これらの輸送を手掛ける流通・小売業を中心に本製品を販売し、輸送に関する課題解決と環境負荷の低減に貢献していきます。
メディカル・ヘルスケア分野では、医療・医薬分野における新たな価値創出を目的として、iPSC(人工多能性幹細胞)専門の韓国バイオ企業であるNEXEL Co.,Ltd.(本社:韓国ソウル特別市)と、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞の培養に関する技術提携を行いました。本提携により、当社の細胞培養技術とNEXEL社のiPS細胞分化技術を融合し、新薬の研究開発に使用される高品質な心筋細胞の大量製造法の確立と販売を目指します。さらに、ヒトの臓器細胞をチップ上に模擬的に再現する生体模倣システム(Microphysiological System:MPS)の開発にも取り組んでいます。これらの取り組みは、動物実験の代替技術としての需要拡大が見込まれる中、当社のメディカル・ヘルスケア分野における事業拡大と収益基盤の強化に寄与するものと考えています。
当部門に係る研究開発費は2,022百万円であります。
(3) エレクトロニクス部門
福岡県北九州市の黒崎工場で有機EL(OLED)ディスプレイ製造用メタルマスクの新しい生産ラインを稼働開始しました。この新ラインは、第8世代(G8)サイズのガラス基板に対応し、生産能力が従来の2倍になります。またDNPが進める事業継続計画(BCP)の一環として既存工場(広島県三原市)のバックアップ機能を果たします。新ラインはOLEDディスプレイの大型化ニーズに対応し、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどのIT製品向けに高品質なメタルマスクを供給します。この新ラインの稼働により、DNPはOLEDディスプレイ市場での競争力をさらに強化し、事業の拡大を目指します。
最先端のロジック半導体では極端紫外線(EUV)光源を用いる生産が進み、国内でもRapidus株式会社が最新露光装置を導入し4月から試作を開始しています。DNPは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、Rapidus株式会社の再委託先として参画しています。DNPは2ナノメートル世代のロジック半導体向けフォトマスク製造プロセスの開発を本格的に開始し、製造プロセスおよび保証にかかわる技術を提供します。また次世代の露光装置の高開口数(High-Numerical Aperture:高NA)に対応したフォトマスクの基礎評価を完了しました。2025年度までに製造プロセスの開発を完了し2027年度の量産開始を目指します。また、1ナノメートル世代も見据えた技術開発を推進します。
ミニLEDディスプレイ向けの光拡散フィルムを開発しました。本フィルムは、従来の拡散板と比較して約40分の1の50μmの薄さにも関わらず、LED素子(ドット)の映り込みを効果的に抑えディスプレイの厚みや重量を低減することができます。また、光の透過率が高く、消費電力を抑えながら高輝度を維持します。ミニLEDディスプレイだけでなく、今後拡大が見込まれるマイクロLEDなどの次世代ディスプレイにも対応します。この新技術により、ディスプレイ市場での競争力をさらに強化し事業の拡大を目指します。
当部門に係る研究開発費は11,124百万円であります。
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