文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
「大幸薬品は『自立』『共生』『創造』を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します。」という企業理念を実現するに当たり、「健康社会の『ないと困る』を追求する。」をスローガンとして掲げすべての企業活動の指針としております。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは事業の持続的成長を図る観点より、売上高及び営業利益の成長性を重視しております。また、資本の効率化による株主利益の最大化を目指し、自己資本利益率(ROE)も重視しております。
しかしながら、当連結会計年度は大幅な赤字を計上するに至りました。当連結会計年度より進めております構造改革の成果を発揮し、まずは黒字化を早期に達成できるよう目指してまいりたいと考えております。
(3) 経営環境、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 医薬品事業
国内市場においては、人口の高齢化等に伴う医療費の高騰が社会問題化する中で、セルフケアとしてのセルフメディケーションの推進により、一般用医薬品の市場はさらに拡大するものと予測されます。一方で、当社の主力製品「正露丸」が属する止瀉薬市場は、多数のメーカーによる厳しい競争環境下にあり、国内人口の減少による市場規模の縮小等と相まって、当社製品のシェアは45.2%と5割を切り、低下傾向にあります。<出所:株式会社インテージ>。
新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響により、下落傾向にあった国内及び海外の需要は当連結会計年度に入り、着実に持ち直してきている中、当社においては一時的な生産量の減少により当該需要に応えることができず、一部で店頭欠品になる等安定供給が喫緊の課題となっております。
このような厳しい環境が続きますが、当社グループでは研究開発活動を継続し、「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」の主成分「木クレオソート」の新たな知見と成果の探求に努めてまいります。近年では、「木クレオソート」がヒトの腸内細菌に対して作用しないことを臨床的に実証し、日本薬局方ではかつて「化学薬品等」の分類でありましたが、「生薬等」に改正されました。これを受けて一般薬承認基準(胃腸薬)でも同様に、「殺菌剤」から「生薬」に分類が改められました。さらには、アニサキス症に対する効果検証やメトホルミン等の薬物による下痢への効果、安全性として他のお薬との飲み合わせに対する影響の調査等、複数の研究も進めており、引き続き胃腸内環境改善による“健全な体内環境”を実現するための実績と信頼を培ってまいります。
国内の顧客基盤強化策については、明確なポジショニングとわかりやすいストーリー展開で、若年層を中心とした新規ユーザーの製品理解の深耕に努め、市場シェア拡大を図ってまいります。
海外市場においては、特に当社グループの主要市場である中国本土、香港、台湾を含むアジア地域で、所得水準の向上等に伴う潜在的な消費需要の拡大が見込まれています。また、日本製品は安全性、信頼性、高品質の点で高く評価されていることもあり、当社製品への需要拡大の期待が持たれます。引き続き、現地の販売代理店と連携を強化し、営業・マーケティング体制を整備し、国内で蓄積した経験・ノウハウ等を活かしながら、主力製品「正露丸」、「セイロガン糖衣A」の販売を強化してまいります。
生産体制につきましては、上述した通り増加傾向にある需要に対する安定供給が課題であり、吹田工場を中心に適切な増産体制を構築するとともに、京都工場・研究開発センターにおける医薬品生産への本格的な移行時期を検討してまいります。
② 感染管理事業
感染管理事業においては、世界的な感染症の脅威により、医療・生活等に関わるあらゆる場面で、感染予防と衛生対策への重要性が高まっております。特に2019年末頃に確認された新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は未だ沈静化には至っておりません。
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の流行拡大時に想定した衛生管理製品のその後の需要が計画よりも大きく下回ったことに加え、2022年1月20日及び4月15日に「クレベリン」6品目に対し、消費者庁より景品表示法に基づく措置命令を受けたこと等により2期連続の大幅な赤字を計上することになりました。
今後の衛生管理製品の市場環境につきましては、非常に予測が難しいものとなりますが、新型コロナウイルス感染症は未だ収束段階には至っておらず、また人類の敵となる新たな未知のウイルスは今後も発生し得るものと当社グループは考えており、その感染予防に備える製品として当社の衛生管理製品の存在感を発揮させていきたいと考えております。今後はコストを抑制しながら、主要製品の供給可能な体制を維持し、また製品ラインナップも当社の強みである商品に絞りつつ、その研究やマーケティングにリソースを集中してまいりたいと考えております。
今後の感染管理事業の回復に向けては、消費者の皆様の安心感の醸成が重要と考え、そのためにも当社の強みである研究開発活動への注力とその結果である論文発表や特許取得等を効果的に消費者の皆様へ発信してまいります。現在、大阪大学大学院医学研究科に「空間感染制御学共同研究講座」を設置し、低濃度二酸化塩素ガスによる空間除菌システムを中心に、細胞レベルでの安全性及び有用性研究を行うことで再生医療分野での利用やさらには医学分野での臨床試験に向けての研究を進めております。また、順天堂大学大学院医学研究科に「集団感染予防学講座」を設置し、医療及び社会環境での感染対策における二酸化塩素の有用性と応用についての臨床的な検証も進めてまいりました。
海外市場につきましては、当社製品は主に現地の販売代理店を通じ、小売店やECサイト等で消費者に販売されております。世界的な感染予防意識の高まりを背景に、さらなる潜在需要が見込まれることから、中国、香港、台湾、メキシコの子会社等を拠点に現地での拡販を目指すとともに、その他の国でも代理店を通じた拡販により海外の消費者にも当社製品の需要喚起、認知度向上を図ってまいります。
生産体制につきましては、需要が伸び悩む中、当連結会計年度中の稼働は極めて少ない状況となっております。当面は生産体制の維持とコスト抑制を重要な課題と認識し、取り組んでまいります。
③ 財務体質の改善、資金繰り
前連結会計年度からの感染管理事業の需要減少による各種損失や事業構造、組織の再構築に係るコスト等により運転資金が不足し、前連結会計年度において金融機関より長期借入において50億円を調達しており、期末時点で約37億円の残高となっております。今後措置命令による課徴金納付等も予定していることから財務体質の改善と資金繰りは重要な課題と考えております。
当連結会計年度においてコスト圧縮を含む事業再構築に係る取り組みは概ね目途が立ち、希望退職の実施により組織のスリム化もおこなったことから、今後財務体質は一定改善されていくものと考えておりますが、引き続き更なる体質改善に取り組んでまいります。
なお、資金繰りと致しましては、運転資金の安定的な確保を目的に当連結会計年度において、取引銀行4行とシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結し、50億円分の融資枠を確保する等の対策を取っております。
④SDGsへの取り組み
当社グループでは、事業活動を通じて、環境・エネルギー問題や社会課題に対応していくことを経営課題のひとつに掲げております。世界では新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症のような新たな未知の感染症の発生やそれらによるパンデミックの脅威への対応、さらには薬剤耐性(AMR)菌による院内感染等への対応が急務になっております。感染症の流行下では室内空間の換気が推奨されますが、一方で空調等に係るエネルギー消費が伴います。当社が提唱する低濃度二酸化塩素による衛生対策を普及させることで、脱炭素社会の実現にも寄与できればと考えております。
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