大垣共立銀行
【東証プライム:8361】「銀行業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「地域に愛され、親しまれ、信頼される銀行」を経営の基本理念に掲げ、地域社会の発展に貢献していくことを何にもまして重要な社会的使命としてまいりました。
今後も、今日まで積み上げてきた地域社会との密接な繋がりを礎として、お客さまのニーズに的確かつ迅速にお応えできるようサービスの提供に努めてまいります。また、地域と共に歩む銀行として地域社会の発展に貢献していくとともに、株主ならびに投資家の皆さまにとって魅力ある企業集団を目指してまいります。
(2)経営環境及び対処すべき課題
当連結会計年度の日本経済は、個人消費の持ち直しや堅調な設備投資を背景に緩やかな回復が続き、長期デフレ環境から着実な変化がありました。一方で、米国の関税政策を巡る不確実性の高まりに加え、物価高の長期化を受けた家計の節約志向が強まり、先行きに不透明感が残る1年となりました。
個人消費については、賃金上昇や定額減税等による所得環境の改善を受けて持ち直す場面もありましたが、食料品を中心とした物価高により、本格的な回復には至りませんでした。
企業部門では、好調な業績を背景にデジタル化・脱炭素化・サプライチェーン強靭化に向けた取り組みに加え、人手不足への対応等課題解決を目的とする設備投資が堅調に推移しました。
東海地方の経済においては、主要産業である自動車産業における認証不正問題や災害による一時的な生産停止の影響があったものの、その後の生産においては計画通りの推移となったことから、緩やかに持ち直しました。
金融市場を振り返りますと、昨年7月と今年1月に日本銀行の金融政策決定会合において利上げの実施が決定され、政策金利は0.50%となり、本格的に「金利のある世界」に移行しつつあります。ドル円相場では、日米金利差を背景に、昨年7月に1ドル161円台後半の歴史的な円安水準となりましたが、米国の景気減速懸念の強まりや日本銀行の追加利上げにより、一転円高ドル安の動きが強まる等、日米の金利差を背景に大きく揺れる展開となりました。日経平均株価は、好調な企業業績や米国の株高等を背景に7月には終値として初めて42,000円台をつけ史上最高値を更新しました。その後、日本銀行の利上げに伴う急速な円高と米国経済の景気後退懸念が強まったことが重なり、8月に過去最大の下げ幅を記録する場面もありましたが、米景気の底堅さが示されたことや、連邦準備制度理事会が利下げに着手したこと等から、金融市場は落ち着きを取り戻し、総じて堅調な展開となりました。
当社を取り巻く事業環境は、日本銀行の政策金利の段階的な引き上げにより大きく変化しております。いわゆる「金利のある世界」への対応は、当社の業績や企業価値に影響を与える重要事項と認識しております。
また、地域経済の担い手として、お客さまや地域のサステナビリティに関するニーズにお応えし続けることで、持続可能な地域社会の実現に貢献する使命があると考えております。
このような課題認識のもと、中期経営計画の基本戦略である“成長戦略”“人財戦略”“経営基盤強化”“DX戦略”をさらに進めることで、東京証券取引所から求められる企業価値向上に向けた取り組みである、持続的な収益力の向上、株主との建設的な対話、適切な株主還元に努め、課題とするPBR(株価純資産倍率)の早期改善を図ってまいります。
①「金利のある世界」への対応
本格的な「金利のある世界」の到来により、当社の持続的な企業価値向上には預貸ビジネスの強化が必須の取り組みであると考えております。リソースの最適化やデジタル技術の利用による効率化により、従業員数が減少する中でも営業推進に必要なリソースを確保し、預金獲得や融資の増強に取り組むことで「金利のある世界」に対応してまいります。
また、金利上昇がお客さまへ与える影響や課題を十分な対話により確認し、最適なソリューションの提供によりお客さまの企業価値向上に貢献してまいります。
②資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
当社は、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」として、情報の適時・適切な開示や投資家との建設的な対話を進めるとともに、PBR改善に資するROEの改善を通して企業価値の向上を目指してまいります。
③株主還元
当社は、業績の成果に応じた弾力的な株主還元を行っていく「株主還元方針」を策定しております。
地域のお客さまの信頼にお応えすべく持続可能な経営基盤を確保するため、内部留保の充実に努めてまいります。それを前提としたうえで、安定配当を基本的な株主還元とし、今後の自己資本比率の水準や業績の見通し、外部環境等を総合的に判断し「配当拡大」や「自己株式の取得」による追加的な株主還元を実施し、総還元性向30%程度を目標としております。
④持続可能な社会の実現に向けた取り組み
当社はサステナビリティを巡る地域課題への対応として、脱炭素の分野では「OKBソーラーパーク養老」を稼働させるとともに、地域の再生可能エネルギーを積極的に活用し、エネルギーの地産地消を推進することでカーボンニュートラルに向けた取り組みを加速してまいります。また、サステナブルセミナーや脱炭素に関するサービス、サステナブルファイナンス等の提供を通じて地域の脱炭素化の取り組みをサポートしております。
地域循環型社会の担い手として、地域経済基盤を発展させることを地域との共有課題とし、自治体向けのコンサルティングチーム「ローカル共Co‐プロジェクト」や「OKBサステナブルビジネスサポートデスク」等の活動を通じて、サステナビリティを巡る課題や問題に対するコンサルティングをさらに強化することで、お客さまのサステナビリティに関する問題解決に迅速に対応し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(3)経営戦略及び目標とする経営指標と達成度
このような金融経済環境のもと、2024年度は計画期間を3か年とする中期経営計画「Always ~変わらぬ想いで、明日を変える~」をスタートさせました。サステナビリティ基本方針の6つの重点課題(マテリアリティ)を土台とし、“成長戦略”“人財戦略”“経営基盤強化”の3つの基本戦略を柱に据え、収益性や生産性の向上を図るとともに人財への投資を強力に進め、持続的な成長を支える強固な経営基盤を構築することで豊かな地域社会の発展に貢献してまいりました。加えて、“DX戦略”ではデジタル技術の積極的な活用により、経営計画の進捗を加速させるとともに地域のデジタルイノベーションをサポートすることで地域の成長につなげてまいりました。
また、多様化・高度化するお客さまのニーズに本部と営業店が一体となって迅速にお応えするため、役員体制の見直しを実施し、経営の質とスピードの向上に努めました。取締役(経営の意思決定・監督)と執行役員(業務執行)の役割・機能を明確に分け、これまで取締役が担ってきた地区担当業務を執行役員が担うことで、意思決定の迅速化及び業務執行の効率化を実現し、より「強い組織」の構築に取り組みました。
「地域と社員を幸せにするOKBグループ」の実現に向けて、OKBグループ役職員が一体となって展開してまいりました施策は次のとおりであります。
①成長戦略~まち・ひと・しごとをつなぎ、新たな価値を創造~
当社は限られた経営資源の最適な配分により収益性の向上を図るため、人的リソースを中小・中堅企業向けビジネスに重点的に配分し、企業価値の向上に努めてまいりました。
法人部門においては、「金利のある世界」へ移行する中、単純な金利競争による貸出金残高の積み増しとは一線を画した質にこだわった推進を実施したことから、貸出金利回りが上昇しました。また、地域課題解決に資する事業にリソースを配分し、地域のイノベーション創出に注力しました。具体的には、岐阜大学内に拠点を置いたオープンイノベーション創出支援拠点「OKB SCLAMB」を通じた地域との連携の中で、地元企業にスタートアップ企業との連携ニーズがあることが明確となり、地元スタートアップ企業の育成と起業家の創出を地域一体となって目指す「OKB SCLAMB オープンイノベーション創出ファンド」を創設しました。地域経済の活性化や新規事業の創出等をともに目指す地元企業等からの出資を募集することで、ファンド規模の拡大を図り、持続的な地域経済の発展に貢献してまいります。
個人部門においては、ライフサポーターがお客さまのライフステージに応じた最適な商品・サービスを最適なタイミングで提案することで、お客さまに安心・安全をお届けしてまいりました。
②人財戦略~人のつながりにより、社員の幸せと活力ある組織へ~
人的資本経営による「高活力・自律型組織」を実現するため、人的資本への投資を積極的に実施するとともに、社員の自律的な能力開発をサポートしました。
具体的には、社内の求人に応募できる「ジョブリクエスト制度」やすべての配属先・役職に応募できる「FA制度」の積極的な活用や外部研修費、資格取得費等の費用のサポートを拡充することで、社員の自律的なキャリア形成の機会拡大を図りました。
また、多様な視点を組み入れたDE&I(ダイバーシティ〔多様性〕・エクイティ〔公平性〕&インクルージョン〔受容〕)を推進し、全従業員が自律的にいきいきと働くことができる活力ある組織を目指すプロジェクトチームを発足させました。
その他、限られた経営資源で持続的な成長を実現するため、管理職全員に対しマネジメント研修を実施し、管理職のマネジメント力強化を図りました。
これらの施策等により、長期ビジョンである「地域と社員を幸せにするOKBグループ」を実現する取り組みを進めてまいります。
③経営基盤強化~強固な経営基盤で未来へつなぐ~
時代の変遷によりお客さまのニーズに合致しなくなった商品・サービスの聖域なき改廃を進めてまいりました。商品・サービスの改廃により生み出されたリソースを、お客さまのニーズに合致した次の時代の商品・サービスの開発に投資するため、アイデアコンテストを実施し、社員のアイデアからイノベーションを起こす取り組みを進めております。
営業店においては、「事務処理の場」から「営業推進の場」へ変革する施策を継続し、相続手続きのWEB受付の取り扱い開始、ローン事務の本部集中化等、営業店事務の効率化・削減により営業推進時間の創出に努めてまいりました。
店舗改革においては、効率的な営業体制の構築を図るため、新たに長浜、池田、岐南、桑名、八幡の5エリアで「エリア制」を導入しました。エリア制では点在する周辺店舗の経営資源を集約することで営業力・サービスの質を高めるとともに、エリア内の店舗が一体となって営業を行う体制を構築しております。今後もさらなる営業体制の効率化を図るため、エリア制の全店展開を進めてまいります。
④DX戦略
コロナ禍以降、急速にデジタル社会への移行が進んでおり、当社においてもデジタル技術の活用によるビジネスモデルの変革に取り組んでおります。
法人のお客さまが自社のDX進捗度を手軽に診断できる「OKB DX診断」の取り扱いを開始したほか、無担保ローンのWEB契約方式の対象商品の拡大、事業性融資での電子契約サービスの導入、営業店窓口での受付事務負担軽減・後方事務の削減・ペーパーレス化を目的とした窓口タブレットの導入等お客さまの利便性の向上と社内の省力化の両輪でデジタル化を進めてまいりました。
また、大垣市から「デジタル地域通貨導入・運営支援業務」を受託し、大垣市のスマホアプリ「ガキペイ」の導入及びプレミアム付商品券の電子化をサポートし、地域のDX支援を実施しました。
今後とも、DXの推進を通じお客さまへ新たな価値を提供することで豊かな地域社会の発展に貢献してまいります。
⑤サステナビリティへの取り組み
当社はサステナビリティを巡る地域課題への対応を重要な経営課題と認識しております。地域課題の解決を通じて生み出される社会的価値は、地域経済を発展へと導き、当社の経済的価値につながるとの考えのもと、中期経営計画にて設定した非財務目標についても取り組みを進めてまいりました。カーボンニュートラルに向けたCO₂排出量削減目標について、2030年度までの削減目標(2013年度比)を「50%削減」から「75%削減」へ上方修正するとともに、中部電力ミライズ株式会社との間で「オフサイトPPAサービス契約」を締結し、当社が所有する岐阜県養老町の遊休地に「OKBソーラーパーク養老」を設置いたします。本施設は再生可能エネルギーを導入しカーボンニュートラルの推進やエネルギーの地産地消に貢献することを目的としたもので、2026年3月の運転開始を予定しております。
また、社会課題の解決を含む社員主導型のSDGs活動を通じ、社員の自己成長と当社の企業価値向上を目指すことを目的として、社員主導型サークル活動「OKBサステナブルサークル」を発足させました。社員の自主的な活動を会社が後押しする仕組みとすることで、自律型人財を育成するとともに失敗を恐れず挑戦する組織風土を醸成しながら、地域課題の解決にも努めてまいりました。
計数目標:次の計数目標を掲げており、各目標に対する達成度は次の通りであります。
[財務目標]基本戦略の実行度合いを評価する指標
項目 | 計数目標 (2027年3月期) | 実績 (2025年3月期) |
[連結] ROE | 3.5%以上 | 4.4% |
[連結] 当期純利益 | 120億円以上 | 147億円 |
[連結] コアOHR | 75%以下 | 71.5% |
[連結] 自己資本比率 | 9.0%以上(※1) | 9.99% |
(※1)バーゼルⅢ最終化経過措置ベース
[非財務目標]地域課題の解決を通じ生み出される社会的価値の創出が将来の経済的価値につながるよう、重点的に取り組む指標
テーマ | 項目 | 計数目標 | 実績 (2025年3月期) | 達成年度 |
Environment 環境 | CO₂排出量削減(2013年度比) ・当社グループ目標(Scope1、2) | 75%減 | 40.7% | 2030年度 |
Social 社会 | サステナブルファイナンスの実行金額 ・当社グループ目標 (2022年度~2030年度実行累計額) | 1兆2,000億円 | 4,385億円 | 2030年度 |
M&A支援先数(年間) 事業承継支援先数(年間) | 600件 1,300件 | 790件 1,180件 | 2026年度 | |
Governance ガバナンス | エンゲージメントスコア | 68以上 | 69 | 2026年度 |
多様性向上 女性リーダー職(主任以上)比率 | 30%以上 | 29% | 2030年度 | |
投資家等との深度ある対話(年間) | 20回以上 | 34回 | 2030年度 |
中期経営計画「Always ~変わらぬ想いで、明日を変える~」の1年目である2024年度の財務目標の達成状況は、金融環境が中期経営計画策定時の想定以上に好転していることも追い風となり、連結当期純利益をはじめとする財務指標について、最終年度の目標を上回る結果となりました。
引き続き、環境の変化に柔軟に対応し、適切な経営戦略を展開することで、当社グループの企業価値向上をさらに加速させてまいります。
当社は「地域に愛され、親しまれ、信頼されるOKBグループ」という経営理念のもと、地域とともに歩んでまいりました。日本銀行による金融政策の転換により「金利のある世界」という新たなステージを迎えた今、この新たなステージをチャンスと捉え、地域とともに持続的に成長することで、豊かな地域社会の発展に貢献できるよう、役職員が一体となって努力してまいります。
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