大同特殊鋼
【東証プライム:5471】「鉄鋼」
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企業概要
文中における将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」が大同特殊鋼グループの経営理念です。高機能素材を追求するMissionを達成し、人と社会の未来に貢献していくことが当社グループの存在意義(Purpose)であると認識しております。高機能素材の価値を極め、顧客ベネフィットを創造し、サステナブル社会の実現に貢献することで持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
今後は、米国における関税政策を含む通商政策の変動にともなって様々な影響が想定されます。さらに、米国通商政策に対する中国における対抗措置の動向、国際貿易の不安定化など国際的なサプライチェーンの分断リスクが増大しております。また、各国物価変動にともなう個人消費の変化、企業活動における生産、販売戦略への影響、各国の金利政策、為替変動にともなう影響など世界経済へ様々な影響があると考えられ、不確実性が増加しております。これらに加え、ウクライナ情勢、台湾をめぐる米中対立など地政学リスクも内包した経営環境となっております。
当社の主要需要先である自動車関連の需要は、中国を中心とした日系自動車メーカーのシェアの低迷などを受けて需要が減少しております。また、産業機械関連においても2024年度にかけて緩やかに回復してきましたが、日系メーカーの生産活動水準は低迷しており2025年度にかけて大幅な需要の回復は想定しづらい環境と考えております。半導体製造装置関連需要においても2024年度にかけて一部ユーザーでは在庫調整が進展してきたものの、2025年度後半まで調整が継続するものと考えております。
このような状況の中、コスト面においては、引き続き徹底したコスト削減努力を継続するとともに、労務コストや物価などのコストプッシュに対し価格転嫁を適切に進めることにより適正マージンの確保に努めてまいります。また、ベースとなる鋼材売上数量が低迷する中で、数量変化に応じた生産体制の検討、設備投資案件の厳選など生産数量変化に柔軟に対応するとともに、当社にとって競争力の高い成長市場製品の拡販に取り組んでまいります。
中長期的な視点では、国際情勢が一段と不安定化し不確実性が高まる中、世界経済は低い成長率に留まるものと想定されます。また日本国内における人口減少・少子高齢化の進展、脱炭素社会や循環型社会への転換など、暮らしの中の社会基盤にも大きな変化が起こるものと想定されます。
一方、当社の事業環境においては、自動車における電動化の進展、情報・通信分野におけるAI用途拡大・高度化などを背景とした半導体市場の成長、宇宙など通信衛星開発市場の拡大、世界的な人口増加を背景とした航空需要の増加、再生可能なクリーンエネルギー需要の拡大、高齢化社会の到来にともなう高度医療市場の拡大など産業構造の変化が予想されます。
このように当社を取り巻く外部環境が大きく変化していく中、2024年6月に2026年度までの3ヵ年を計画期間とする2026中期経営計画を公表しました。当社は、この2026中期計画を、2030年の“ありたい姿”「高機能素材の価値を極め、顧客ベネフィットを創造し、サステナブル社会の実現に貢献する」を達成するための変革の時期“トランジション・マネジメント”であると位置づけ、以下の経営方針に沿った行動を全力で推進してまいりたいと考えております。
[2026中期計画 経営方針]-トランジション・マネジメント- 社会経済・産業構造の変化を事業好機とし、事業ポートフォリオの変革を遂行し、 新たなビジネス・ドメイン(顧客×提供価値×手段)で持続的な利益成長を実現する |
<行動方針>
① 事業ポートフォリオの変革
今後の成長市場である半導体関連分野、CASE*(自動車)、クリーンエネルギー分野、航空宇宙分野、医療分野の需要を捕捉するための取り組みを進めてまいります。お客様との密接なコミュニケーションを通じた顧客ニーズの把握、新たな生産技術の開発、市場拡大にともなう需要増加を捕捉するための適時適切な設備投資、海外を含めたサプライチェーンの構築を進めることで、高収益製品を生み出し成長市場に提供していきます。情報・通信分野で成長が期待される半導体関連については高耐食材料開発を進めるとともに、グローバルにサプライチェーンを強化していきます。2024年度には中長期的な市場拡大に対応していくために、知多第2工場に特殊溶解設備の真空アーク再溶解炉の導入を行いました。e-Axle用特殊鋼製品に関しましては、これまでの製造技術に関する知見を活かし、さらに信頼性の高いソリューションを提供してまいります。また、主機、補機、センサー用磁石については、重希土類フリーなど特長ある製品を提供するための戦略的な投資を実施してまいります。クリーンエネルギー分野においては、高温・高圧水素環境下で耐え得る耐水素脆化用鋼の開発、工業炉用水素バーナーの実用化を進めることなどでお客様のニーズに応えてまいります。より一層の拡大が期待される航空宇宙分野における自由鍛造品や医療分野のチタン製品に関し、将来的な需要増加を見据え、戦略的に設備投資を行ってまいります。なお、足元の状況も踏まえ、投資効果については十分に精査を行い、中長期的に企業価値向上が見込める案件への投資を実行し、事業ポートフォリオ変革を進めてまいります。
*CASE:Connected (コネクテッド) Autonomous (自動運転) Shared & Services (シェアリングとサービス) Electric (電動化)
② 経営基盤の強靭化
長期的な成長を支える経営基盤の強靭化を進めてまいります。事業基盤においては、製品の高付加価値化、成長市場に向けた新規製品の開発、既存事業の品質向上およびコスト競争力の強化を目的に、ヒト・モノ・カネの経営資源の最適配分を行うことで、生産アロケーションの最適化を進めてまいります。体制面では、2023年度にCQM部を発足しており、品質マネジメントのさらなる強化も進めてまいります。
人的資本に関しましては、事業成長に必要なグローバル人材および高度専門人材の確保、グループを含めた次世代経営人材の育成、さらに高度技術人材およびDX推進人材の育成などにより従業員のスキル向上を図り、労働生産性を高めてまいります。なお、2024年度においてエンゲージメントスコアとして「安心して働ける職場」「働きやすい職場」「働きがいのある職場」の肯定回答率を可視化しました。2024年度調査では肯定回答率は78.5%であり、2026年度に向け80%以上という基準を新しいKPIとして設定しました。これを目指しエンゲージメント向上施策を進めてまいります。
財務基盤としましては、マイナス金利政策の解除など今後の緩やかな金利上昇を背景に借入金利の上昇が想定される中、事業ポートフォリオ変革にともなう設備投資資金、運転資金の増加が見込まれます。一方で、安定的にPBR1倍以上を確保するための資本効率向上も求められ「財務健全性の維持」「資本効率の向上」を両立させる必要があります。これらに対応するため、運転資金、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)管理強化やROICによる投資判断を導入するなど、財務基盤の強靭化にも取り組んでまいります。なお、2024年11月には、資本効率の向上と経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を可能とすること、および株主還元の拡充を図ることを目的とし、自己株式の取得(取得株式数7,398,900株)を実施いたしました。
③ ESG経営の高度化
持続的な企業価値向上を目指し、ESG経営を推進するため、「ESG推進統括部」主導のもと、地球環境の保護、社会への責任と貢献、ガバナンスの各種取り組みを強化してまいりました。
今後におきましても、長期的な視点でステークホルダーの期待を上回る「特殊を超える価値」=“Beyond the Special”を創造する企業であり続けるため、自律的なサステナビリティ活動を推進するとともに、サプライチェーンへの展開を進めてまいります。気候変動に関しましては、「2030年でのCO2排出量を2013年対比で50%削減、2050年でのカーボンニュートラル実現」に向け、CO2排出量の削減を着実に実行しており、2024年度は30%削減を達成いたしました。社会への責任と貢献に関しましては、特に人的資本投資の加速、ダイバーシティの推進、健康経営の推進、ウェルビーイングの追求とエンゲージメント向上などの人的資本戦略を推進してまいります。ガバナンス面としては、政策保有株式に関して、2024年度に6銘柄241億円の売却を行い、みなし保有株式を含めた純資産に対する比率を17.7%まで引き下げました。今後については2026年度までに15%、長期的には10%以下の水準を目指し継続的に縮減を進めてまいります。
<政策保有株式(みなし保有株式を含む)純資産比率>
| 2023年度末 | 2024年度末 | 2026 中期計画 | 2030年 目標 |
政策保有株式 純資産比率 | 23.9% | 17.7% | 15%以下 | 10%目安 |
<2026中期経営目標>
2026年度“めざす姿”
営業利益 | ROE (親会社所有者帰属持分当期利益率) | D/Eレシオ | 投資額 (3年累計決裁額) | 株主還元 (一過性損益を除く) |
600億円以上 | 9%以上 | 0.5目安 | 2024-2026年累計 1,500億円 | 配当性向 30%以上 |
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