文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年12月31日現在)において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
協和キリングループは、経営理念「ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。」を掲げております。
この経営理念に謳う「新しい価値」を社会と共有できる価値(CSV:Creating Shared Value)と捉え、当社グループは、社会課題への取組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現するCSV経営を実践しております。
また、協和キリングループで働く全ての人々が、行動の拠り所となる考え方や姿勢を示す中心概念の“Commitment to Life”と3つのキーワードで構成される価値観を、全員で共有、実践することで、社会から信頼される企業グループであり続けることを目指しております。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
近年の製薬業界を取り巻く環境は、継続的な薬剤費抑制、後発品の使用促進施策の浸透、新薬開発におけるコストの増加とプロセスの複雑化など、厳しい変化がある一方で、画期的新薬の優先審査制度等のイノベーションを評価する制度の拡充や、科学技術の進歩により革新的な治療を可能にする新たな創薬手法の開発を後押しする動きもあります。また、アンメットメディカルニーズに対する画期的な医薬品は、依然として世界中で待ち望まれております。さらには、デジタル技術の進展と浸透、顧客との接点の多様化等、社会全体の環境が大きく変化する中で、新しい医療ニーズも生まれております。
このような環境の中、当社は、Crysvita(日本製品名:クリースビータ)、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)等のグローバル戦略品の価値最大化、特に米国では2023年からのCrysvitaの自社販売に向けた整備を、着実に推進しております。同時に、次世代グローバル戦略品であるKHK4083(一般名:rocatinlimab)、日本市場向けのKHK7791(一般名:テナパノル塩酸塩)、RTA 402(一般名:バルドキソロンメチル)等の開発の推進、並びにパイプライン充実に向けたKHK4951(一般名:tivozanib)など初期開発品の研究開発及び新たなパイプラインの獲得のための活動強化等を通して、画期的な医薬品の継続的創出に向けた戦略を実行してまいります。
2021年2月に5か年の中期経営計画と合わせて公表した、2030年に向けたビジョン及びその達成に向けた戦略に沿って、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして成長を実現してまいります。
<2021-2025年中期経営計画>
(アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供)
グローバル戦略品の価値最大化に向けては、欧米を中心とした市場浸透施策等により事業地域の拡大を進めてまいります。グローバルレベルで各部門や関係会社間の密接な連携を可能にする体制を引き続き強化し、KYOWA KIRINブランドの新薬を、世界の患者さんにお届けしてまいります。
一方、研究開発では、今まで培った技術に関する蓄積と疾患に関する知見を融合することにより、新たな医療価値の創造と創薬の更なるスピードアップを目指してまいります。技術軸では、次世代の抗体技術など、様々なモダリティ*¹を活用したプラットフォームを着実に築いてまいります。また、疾患軸では、これまで蓄えた疾患サイエンスの知見と技術との融合により、アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供に挑戦し続けます。これに加え、オープンイノベーションを積極的に活用した創薬技術や新規標的の獲得、更には2022年から開始したCVC(Corporate Venture Capital)活動を通じて、イノベーションの加速と強化を推し進め、引き続きLife-changingな価値*²の創出を目指してまいります。
*¹ モダリティ
構想した治療コンセプトを実現するための創薬技術(方法・手段)の分類
*² Life-changingな価値
病気と向き合う人々の満たされていない医療ニーズを見出し、その課題を解決するための新たな薬やサービスを創造し、提供することで、患者さんが「生活が劇的に良くなった」と感じ笑顔になること
(患者さんを中心においた医療ニーズへの対応)
病気と向き合う人々に笑顔をもたらすために「ペイシェントアドボカシー活動*³」をグローバルで連携して進めることで、患者さんを中心においた医療ニーズへの対応を実現します。疾患啓発活動や患者さん支援ツールの提供などを通じて、アンメットメディカルニーズの解決に取組みます。希少・難治性疾患の支援団体である特定非営利活動法人ASridが運営する「STEPコミュニティ」への参画や、各国の患者支援団体等との関係維持強化を通して、国内外で積極的に活動を推進し、患者さんや医療従事者の方々が解決すべきと感じている課題や医療ニーズを収集して、病気と向き合う人々に笑顔をもたらすための活動を強化してまいります。
さらには、患者さんに笑顔を届けるために、より長期的な視点で、医薬品にとどまらない価値の創出についても取組みを進めます。当社の強みを活かせる領域で、蓄積されたデータの活用や、患者さんへの理解を深めることで、自社医薬品回りの課題解決に取組むと共に、キリングループが取組むヘルスサイエンスとの接点を活かし、患者さんのQOL向上に向けた新たな価値創造にも取組んでまいります。
*³ ペイシェントアドボカシー活動
患者コミュニティ及び医師コミュニティとの対話と連携により、社会の疾患に関する正しい理解を促進する活動。さらに、当社事業のバリューチェーン全体を通じてアンメットメディカルニーズの解決に取組み、病気と向き合う人々に笑顔をもたらす活動
(社会からの信頼獲得)
当社は、医薬品という高い品質が求められる製品をグローバルに安定的に供給するために、強固な生産体制を確立すると共に、品質保証体制及びサプライチェーンマネジメントの強化に努め、自社や委託先での生産における安定供給体制の課題についても引き続き適切に対処してまいります。
また、世界規模の気候変動に対し、当社は「キリングループ環境ビジョン2050」と連携し、設備投資を含む継続的な省エネの推進、再生可能エネルギーの導入・拡大などにより、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量ネットゼロを目指し、次世代に引き継ぐ地球環境の保護に積極的に取組んでまいります。
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言を踏まえ、気候変動に関連するリスクと機会の管理や評価を行い、引き続き適切な情報開示を行ってまいります。
当社は、企業のビジネスと人権への取組みの礎となるグループ人権基本方針*⁴を、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき制定しました。人権尊重に向けた取組みを更に推進してまいります。
また、コーポレートガバナンスの更なる強化を目指し、取締役の過半数を社外取締役としました。引き続き、ガバナンスの強化に取組んでまいります。
*⁴ 人権基本方針
当社ウェブサイト https://www.kyowakirin.co.jp/csr/human_rights/index.html
(Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化)
グローバルにビジネスを展開する中で事業基盤を確立し、製品価値の最大化・開発パイプラインの充実、製品安定供給など、グローバルに持続的な成長を実現できる体制を整えます。
具体的には、既に着手しているリスクマネジメントの強化や企業文化改革の取組みに加え、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての成長に必要なデジタル基盤の整備、人材への積極的な投資など、グローバルでの機能強化に引き続き取組んでまいります。また、2022年に策定したグローバルDE&I宣言(D:ダイバーシティ(多様性)、E:エクイティ(公平性)、I:インクルージョン(受容))に基づき、多様な個性を持つ人材がワンチームとなり、Life-changingな価値の創出へとつなげてまいります。
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