企業兼大株主共英製鋼東証プライム:5440】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりです。

 なお、文中における将来の事項については、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものです。

 当社グループは、鉄鋼事業を中核とした資源循環型事業を通じて社会と共生し、日本経済と地域社会の発展に貢献することを経営理念に定めています。この理念の実現を目指し、安全とコンプライアンスを徹底する経営風土を作り出すこと、進取と変革に挑戦する企業風土を醸成すること、メーカーの原点である現場重視の経営体制を構築することを行動指針とし、グループ一丸となって取り組んでいます。

(1) 中期経営計画について

 当社グループは、2024年4月に、2026年度を最終年度とする3か年の中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」(以下、「本中期計画」)を策定・公表しました。

 前中期経営計画「NeXuS 2023」に続き、本中期計画のタイトルに用いている英単語“nexus”は、「つながり・連携」を意味しており、ここでは次の3つの意味を持たせています。

・「グループ内をつなぐ力」▶ グループ総合力の強化

・「外部とつなぐ力」   ▶ 外部との連携強化

・「次代につなぐ力」   ▶ 見えざる価値の向上

 この「3つのつなぐ力」の強化は、息の長い取り組みが必要であり、本中期計画においても、定性面の中核に据えて取り組んでまいります。

 当社は創業以来「鉄づくりを通じて社会に貢献する」ことを企業理念として、業容を拡大してきました。当社グループの中核である電炉事業は、鉄スクラップを鉄鋼製品に再生し、社会に送り出す資源循環型事業であり、持続可能な社会の実現に貢献しうる存在です。当社は「100年企業」に向け、創業の精神である“Spirit of Challenge”という経営理念の下、「世界のインフラづくりや地球の環境保全に貢献する企業」「すべてのステークホルダーに貢献する企業」「安全で働きやすい職場づくりを進める企業」「コンプライアンスや品質を重視する信頼性の高い企業」をありたい姿とし、社会の発展と地球環境との調和に貢献する「エッセンシャル・カンパニー」を目指します。

①重点方針

 本中期計画では、以下の6点を重点方針として取り組みます。

<事業の成長に向けた取り組み>

a.「海外鉄鋼事業」:北米事業の強化とベトナム事業の再構築

 当社グループの成長戦略は、強みである国内鉄鋼事業におけるコスト競争力と営業力を武器に、成長するグローバル市場への横展開を図ることと考え、「グローカル・ニッチ戦略」のもと、「世界3極体制の確立」に向けて取り組みを進めています。しかしながら、足元の海外鉄鋼事業の業績は、特にベトナムの事業環境悪化に伴い赤字に陥っており、世界3極体制の再構築が最優先課題と認識しています。そこで海外鉄鋼事業については、すでに大型投資が一巡したベトナム事業から北米事業に投資戦略をウエイトシフトすることとします。ベトナム事業については、北部では、すでに建設中の新圧延ラインの稼働開始(製鋼・圧延生産一貫体制の完成)によってコスト競争力を強化、また南部では、生産量を抑えた低在庫操業で業績の変動リスクを軽減させることにより、質の強化と事業の再構築を図ります。一方、北米事業については、米国・カナダともに堅調な需要を捕捉し拡販するため、約600億円の投資を行います。米国における設備老朽化への対応を主眼に、M&Aも視野に、コスト競争力の強化と生産性向上、生産量・出荷量の増加により、収益の拡大を目指します。

b.「国内鉄鋼事業」:国内4事業所体制による連携強化と質的向上

2024年3月に連結子会社の関東スチール株式会社を吸収合併、「共英製鋼株式会社関東事業所」としました。国内4事業所体制になったことで、さらなる連携強化による販売体制の効率化、製品の安定的な供給体制の構築を図るとともに、最大需要地である「関東圏」における当社の存在感を高めてまいります。さらに原材料である鉄スクラップ調達の多様化などの川上戦略や加工品など付加価値製品の強化を図る川下戦略、デリバリー機能の強化など質的向上に資する施策を講じ、安定した収益確保を図ります。

c.環境リサイクル事業および鉄鋼周辺事業

 環境リサイクル事業については、これまで35年にわたり鉄づくりと廃棄物処理を一体として行ってきた当社の強みを改めて訴求し、アフターコロナの反動で落ち込んでいる廃棄物処理量の改善を図ります。特に電炉溶融処理の先駆者としての処理実績と保有する多くの許認可を背景に、アスベスト処理など社会課題となっている難処理廃棄物の取扱い強化に努めます。また資源循環型社会の実現に向けたサーキュラーエコノミーへの取り組みも強化します。

 鉄鋼周辺事業については、国内とベトナムで展開する鋳物事業の安定した成長を図ります。

<成長を支える基盤強化>

d.無形資産投資に向けた取り組み強化

 財務資本や製造資本だけでなく「見えざる価値」である「人的資本」や「ブランド価値」など無形資産に対する投資を積極的に行い、企業価値の向上に努めます。人的資本投資については、「企業は人なり」の原点に立ち返り、従業員に対し「物質的メリット」「自己実現」「連帯感」「企業理念への共感」が感じられるような施策を実施し、エンゲージメントを高め「3つのつなぐ力」を強化します。具体的には、事務所・厚生棟の新設、省人化・安全対策投資の推進、多様な人材の確保、研修制度の充実、トレーニー制度の活性化、健康経営の促進などに取り組みます。ブランド価値については、「電炉を中核に鉄鋼事業と環境リサイクル事業を同時に行う資源循環型事業」である当社のビジネスモデルをブランディングし、幅広くステークホルダーの皆様への浸透を図り、企業価値向上につなげたいと考えます。

e.「100年企業」を目指したESG経営

「環境」に関する取り組みとして、「2050年のカーボンニュートラル」に向け、2030年度に国内生産拠点のCO₂排出量を2013年度対比50%削減します。具体的方策としては、引き続き、燃料転換や太陽光パネル設置、再エネ電力利用の検討など、CO₂削減への取り組みを推し進めます。また、鉄鋼副産物の資源循環に向けた取り組みも継続します。

「社会」に関する取り組みとして、「メスキュード医療安全基金」をはじめとする寄付活動や山口事業所近郊で行っているオリーブ植樹活動など地域社会に貢献する活動を推進し、それらの活動に対し連結当期純利益の0.5%程度を支出します。

「企業統治」に関する取り組みとしては、取締役会の多様性確保やリスクマネジメント委員会のさらなる充実によるリスク管理体制の強化、情報セキュリティ体制の強化などに取り組みます。

f.経営基盤の強化

 前中期計画中に発生した事故への対応として、安全・安定操業に向けた取り組みを強化します。具体的にはエンジニアリング部門を設置し、国内外の工場の定期診断によるトラブル防止や若手技術者への教育など技術伝承を進めます。

 また、前中期計画では営業業務改革として、業務フローの標準化やシステム化など営業面の基盤強化を図ってきましたが、本中期計画では、生産拠点のスマートファクトリー化も進展させ、製造、営業、管理の全方位でデータやデジタル技術を活用した「ものづくり起点のDX」に取り組みます。

 加えて、積極的な施策を実行するための投資計画を支えるため、資金調達の多様化を検討、財務規律を堅持し現状の格付水準を維持します。

②本中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」における定量目標

 本中期経営計画の最終年度である2026年度の定量目標・KPI(重要業績評価指標)は次のとおりです。

<財務KPI>

連結売上高

3,800億円

連結経常利益

250億円

出荷量

400万トン体制(国内160万トン・海外240万トン)

ROE

8.0%以上

自己資本比率

50%以上

ネットDEレシオ

0.5倍以下

配当性向

30~35%(1株当たり下限配当額30円)

投資計画

1,100億円/3か年

<非財務KPI>

CO₂排出量

50%削減

(2013年度対比2030年度目標:国内生産4拠点)

女性総合職比率

15%以上(単体)

女性管理職比率

3.0%以上(単体)

教育研修費/人

15万円(単体)※2022年度の1.5倍

社会貢献活動支出額

連結当期純利益の0.5%程度

 設備投資については、維持更新投資のほか、海外鉄鋼事業、特に北米事業の強化に向けての戦略投資、人的資本やブランド価値など無形資産への投資、CO₂削減に向けた環境投資などを中心に、前中期計画で実行が後ろ倒しとなった投資も含めて、3か年累計で約1,100億円を計画しています。

③資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応

 当社の2025年3月期のROE(自己資本利益率)は、5.4%と目標である8.0%には未達であり、また株主資本コスト(7%程度)も下回っている状況です。ベトナムの事業環境悪化に伴う海外鉄鋼事業の業績低迷などから、現状では市場からの評価は十分に得られておらず、PBR(株価純資産倍率)は1.0倍を下回る低水準で推移しています。

 こうした状況に対し当社は、ベトナム事業を含む海外鉄鋼事業の再構築を最優先課題とし、上記重点方針にある「事業の成長に向けた取り組み」を一つひとつ実現することで、ROE8.0%以上を達成し、安定した収益基盤を確立します。併せて、株主還元を強化するため配当方針を見直し、配当性向の目途を従来の「25~30%」から「30~35%」に引き上げました。また「成長を支える基盤強化」の取り組みである人的資本やブランディングなどの無形資産投資も積極的に行い、さらにIR活動の強化を図ることなどを通じ、PBRの改善に取り組んでまいります。その結果が、「100年企業」に向けた持続可能な経営、そして「資源循環型社会の実現に貢献するエッセンシャル・カンパニーになる」ことの実現につながると考えています。

(2) 2026年3月期(2025年度)の対処すべき課題

 中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」の2年目となる2026年3月期においては、成長のための布石として、大きく3つの取組みに注力していきます。1つ目は、ベトナム北部拠点ベトナム・イタリー・スチール社のハイフォン工場における新圧延工場の稼働開始です。これまではハイフォン(製鋼)とフンエン(圧延)に工場が分かれていた操業面の課題を解消し、ハイフォン工場は、競争力のある製鋼圧延一貫工場として新たなスタートを切ります。これを機に、ベトナムにおける競争力強化とブランド価値のさらなる向上に努めます。

2つ目は、北米における成長投資です。特に、米国拠点のビントン・スチール社は、老朽化対策として、製鋼工場の新設・圧延ラインの大規模リニューアルを実施します。この設備投資は日本円で380億円規模となる大規模投資であり、製造コストの抜本的な削減による増益効果を目的としています。2027年初頭の完成を目指し、当社技術陣の総力を挙げて計画を進めていきます。

3つ目は、2024年5月に公表した「エシカルスチール」を軸としたブランド戦略です。当社は35年以上にわたり、電気炉で鉄をつくる工程において、その高熱を活用して医療廃棄物・産業廃棄物の無害化溶融処理を行ってきました。CO₂削減のみならず、地球の資源を有効活用する資源循環型社会の実現に貢献する企業集団を目指していく、という思いと決意をブランド化し、廃棄物処理から鉄鋼製品の生産・出荷までトレーサビリティを確保した製品を「エシカルスチール」と銘打ち、様々な施策を通じて積極的に発信していきます。今後、環境意識の高い需要家に数多く利用されていくことを期待しています。

 当社グループは、今後も資源循環型社会に貢献するエッセンシャル・カンパニーを目指し、強い会社、安定した収益力を備えた企業集団となるべく努めてまいります。

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