住友重機械工業
【東証プライム:6302】「機械」
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企業概要
事業を取り巻く経済環境は依然として複雑に変化しており、厳しさが継続しております。国内は業種により景気動向の差が大きく、製造業においても同様の状況です。自動車産業では、EV化の波が一時的に減速しております。産業のインフラともいえる半導体産業では、生成AIに関係する企業のみが恩恵を受けている状況から、回復局面を経て再び成長局面に入っていくと想定しております。海外においては、米国のみが堅調に推移し、積極的なインフラ整備投資が期待されておりますが、新政権による不確実性が残る状況であります。欧州はドイツにおいて製造業の低迷が長期化しており、利下げにより緩やかに持ち直す見込みも出てきていますが、依然低下傾向が続いております。また、中国は米中貿易戦争の影響を受け、成長の鈍化が続くなど、不透明な状況が続いております。
(1) 会社の経営の基本方針
住友重機械グループは、1888年(明治21年)、住友グループの祖業である別子銅山の工作方として創業以来、社会と産業の発展とともに歩んできました。住友グループ各社に共通の理念と位置付けられる「住友の事業精神」は、社会性が重要視される現在の環境との親和性も高く、当社グループにとっても経営の基本であり、この精神に則り企業活動を実践していきます。
また当社グループは、住友の事業精神のもと、従来の経営理念(企業使命+私たちの価値観)に加え、このたび企業の存在意義となるパーパスを次のとおり制定し、理念体系を整備いたしました。
パーパス
こだわりの心と、共に先を見据える力で、人と社会を優しさで満たします
Enhance society and those within it with compassion through our ownership and vision
当社グループはこれら理念に則り、製品及びサービスのさらなる深化を図り、顧客の声に応え続けるとともに、持続可能な社会実現に向けて、イノベーションにより社会課題解決へのソリューションとなる製品及びサービスを提供していくことで、社会価値及び企業価値の拡大に引き続き取り組んでいきます。
(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題
「中期経営計画2026」の概要と進捗、今後の施策等
「中期経営計画2026」は、「あるべき姿」からバックキャストして社会課題を導き、「製品・サービスによる社会課題解決を通じて持続的に企業価値を拡大する」という方針を継続しつつ、新たにパーパスを策定し、当社グループとして何を目指していくのかを共通認識として持つ、大事な道標といたしました。2030年の「あるべき姿」を「コア技術で豊かな社会を支え、CSV*を実現する企業」とし、成長力、収益力、信用力といった「企業価値」と、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点で示される「社会価値」をバランスさせ、環境に左右されない、変化に強い、「強靭な事業体の構築」を基本方針としております。本基本方針のもと、「収益力の改善」、「資本効率の向上」、「新事業探索の強化」を重点課題と位置付け、コーポレートとセグメントの両面から遂行する基本戦略とし、「深化による稼ぐ力の強化、利益にこだわる経営」、「ROIC経営の徹底」及び「探索による事業機会の発掘」を推進しております。〔図1〕
「中期経営計画2026」では、2026年度に売上高12,500億円、営業利益1,000億円、ROIC8.0%を達成することを財務目標としてスタートしましたが、欧州市況の低迷長期化など、当社グループを取りまく外部環境の変化に起因した2024年度の受注、営業利益の低迷を受け、2026年目標値を売上高11,730億円、営業利益800億円、ROIC7.0%へ修正いたしました。「中期経営計画2026」では「強靭な事業体の構築」を基本方針としており、重点課題の「収益力の改善」に注力して取り組み「稼ぐ力」の強化を図ってまいります。
また、非財務目標としてESGの各項目に分類したサステナビリティ重要課題(E:環境負荷の低減、S:よりよい暮らし・働き方の実現、従業員の安全・健康・育成、地域との共存・共栄、持続可能なサプライチェーンの構築、G:ガバナンスの強化、製品品質の確保)の各目標値を設定しており、当初の計画どおり進捗しております。
図1「中期経営計画2026」基本方針及び骨子
コーポレート戦略
a.事業ポートフォリオ改革の推進〔図2〕
成長を見込む重点領域事業へ経営資源を集中し事業の拡大を図り、事業ポートフォリオ改革を推進してまいります。当社グループ製品を支える技術が多岐にわたるなかで、外部環境や当社グループの強みを踏まえて、コア技術をベースに、「ロボティクス・自動化」分野、「半導体」分野、「先端医療機器」分野及び「環境・エネルギー」分野の4つの「重点投資領域」を設けております。これらの「重点投資領域」へ「中期経営計画2023」を上回る積極的な投資を行うことで、事業を伸長し新たな価値創造と企業価値向上を目指してまいります。
また、今後、収益低迷事業については収益力強化のための施策を実行してまいります。また、低成長・低収益事業の戦略再構築を行い、成長を見込む4つの「重点投資領域」事業へ経営資源を集中し事業の拡大を図ってまいります。
図2 コーポレート戦略:事業ポートフォリオ改革の推進
b.資本政策
「中期経営計画2026」ではROIC向上施策の推進によりキャッシュ・フロー創出力を強化するとともに、財務の健全性を損なわない範囲で有利子負債も活用し、重点投資領域を中心に投資へ1,900億円、研究開発費へ900億円、株主の皆様へ800億円の還元を計画しておりましたが、2024年度業績を受けて見直しを検討させていただいております。
2024年度は100億円の自社株買いを実施し、1株当たり配当を5円増配の125円としました。今後の還元は中長期的にDOE**3.5%以上、最低配当125円、自社株買いを含めた総還元性向40%以上を基本方針とし、安定的かつ継続的な配当の実現と柔軟な自己株式の取得により、株主還元の充実を図ってまいります。
c.新事業探索の強化
2023年に設置した新事業探索室を中心に、4つのセグメント及び本社部門と連携をとりながら、セグメントをまたぐ横断的な探索テーマの調整と推進、コーポレート視点でのテーマ発掘と事業化推進を行ってまいります。
新事業探索室では先進技術の調査、及び新規事業の探索・創出を目的に、マサチューセッツ工科大学(MIT)の近隣にボストンオフィスを設立し、鋭意活動を展開中です。また、新事業テーマを創出する社内ピッチコンテストを実施しました。また、社内企業家人材の育成と事業化へ向けた活動プログラムなども実施し、計画に沿って実行している状況であります。
d.経営基盤強化
「中期経営計画2026」では、上記の取組みを支える経営基盤(サステナビリティ、人的資本、DX***)の強化を進めております。
サステナビリティでは、SDGs、当社グループの2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた対応を強化し、社会環境変化のリスクをチャンスへ変えて、企業価値向上を目指しております。具体的には、機械メーカーに対応が求められるサステナビリティ課題を抽出し、7つの重要課題を特定して、事業を通じた社会課題解決への貢献や、気候変動リスクをはじめとする中長期的なリスクへの対応に取り組んでおります。特定した7つのサステナビリティ重要課題及び関連する主な指標・目標の詳細は、表1のとおりです。また2024年度の実績については、2025年7月発表の統合報告書にて公表予定としております。
人的資本では、「人材育成基盤の強化」と「組織能力の強化」が事業の持続的成長を支えるとの人的資本経営の考え方のもと、人材確保、人材育成基盤の強化、グローバル人材マネジメントの基盤整備、組織能力強化、ダイバーシティ推進を重点課題と位置付け、人材戦略を遂行しております。
DXでは、デジタライゼーションを継続し、強靭な事業体実現を支えるDX推進基盤を構築してまいります。同時に、新たな顧客価値を創出する、一流の商品・サービスづくり及び設計・製造バリューチェーンなどの業務プロセスの変革を加速させ、DXを用いたサービス事業の強化も行ってまいります。また、SDGs実現に向けて、環境・安全対策に取り組み、社会課題の解決を推進しております。
表1 特定した7つのサステナビリティ重要課題及び関連する主な指標・目標
セグメント戦略
「中期経営計画2026」では、メカトロニクスセグメント、インダストリアル マシナリーセグメント、ロジスティックス&コンストラクションセグメント及びエネルギー&ライフラインセグメントのそれぞれの役割を以下のように位置付け、セグメントごとにROIC目標を設定し、成長戦略を遂行する計画としております。
メカトロニクス : 高収益で成長牽引セグメント
インダストリアル マシナリー : 高収益で成長牽引セグメント
ロジスティックス&コンストラクション : 安定収益を確保する基盤セグメント
エネルギー&ライフライン : 将来成長のための育成セグメント
各セグメントは、コーポレート戦略で設定された「重点投資領域」の4つの分野を踏まえ、深化による稼ぐ力の強化、探索による事業機会の発掘を行ってまいります。メカトロニクスセグメントは「ロボティクス・自動化」と「半導体」分野、インダストリアル マシナリーセグメントは「半導体」と「先端医療機器」分野、ロジスティックス&コンストラクションセグメントは「ロボティクス・自動化」分野、エネルギー&ライフラインセグメントは「環境・エネルギー」分野を軸に実行してまいります。
2024年度には、セグメント運営の効率化とシナジー推進を目的として、2025年度にセグメント間の事業の組替えを実施することとしました。具体的には、本年1月にメカトロニクスセグメントのレーザ関連装置についてインダストリアル マシナリーセグメントへ、またインダストリアル マシナリーセグメントの極低温冷凍機についてメカトロニクスセグメントへの組替えを実施しました。
4つのセグメントは、2024年度業績を受けて、「重点投資領域」の課題のみならず、「基盤事業領域」の課題へ、より注力し、「収益力の改善」を行ってまいります。
表2 「中期経営計画2026」セグメント別 基本戦略
それぞれのセグメントは、セグメント内だけにとどまらず、セグメント間でシナジーを追求しつつ、同時にセグメント組織の効率化を図り、強靭な事業体の構築を目指し、目標達成へ向けて取り組んでまいります。
「中期経営計画2026」の最終年度となる2026年12月期の数値目標について、直近の業績動向を踏まえ、見直すことを決議いたしました。2024年度決算概要・中期経営計画の見直しは当社ウェブサイトに掲載しております。
https://www.shi.co.jp/ir/library/presentation/pdf/zaimu_kessan24_12.pdf
*CSV(共有価値の創造 Creating Shared Value)とは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで
自社の持続的成長につなげるという考え方です。
**DOE(株主資本配当率 Dividend on Equity Ratio)とは、年間の配当総額を株主資本で割って算出する
財務指標を指します。
***DX(デジタルトランスフォーメーション Digital Transformation)とは、ITの活用により、あらゆる
活動をより良い方向に変化させることを指します。
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