住友理工
【東証プライム:5191】「ゴム製品」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは2029年に創立100周年を迎えます。次の100年も社会から選ばれ続ける企業であるために、「2029年 住友理工グループVision」(2029V)及び、3ヶ年の事業計画として「2025年 住友理工グループ中期経営計画」(2025P)を策定し、2023年5月30日に公表しました。
2029Vで定めているとおり、当社グループは住友事業精神を根幹として、「素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える」というパーパスのもと、コアコンピタンスである「高分子材料技術」「総合評価技術」を磨き続け、グループ内だけではなく、外部との共創による既存事業領域の深化と融合分野の事業探索によって、2029年のありたい姿「理工のチカラを起点に、社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続ける、リーディングカンパニー」への変革を目指します。
2029年 住友理工グループVision
住友事業精神 | 萬事入精・信用確実・不趨浮利 | ||
目指すべき企業像 | Global Excellent Manufacturing Company | ||
存在意義 | 素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える | ||
2029年のありたい姿 | 理工のチカラを起点に、社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続ける、リーディングカンパニー | ||
ありたい姿実現に | 未来を開拓する人・仲間づくり | 個々の成長を促す、育成機会の提供と働きがい溢れる 企業風土の醸成 | |
柔軟かつ強固な組織づくり | 気候変動・自然資本に配慮した事業活動 | ||
持続可能な社会に向けた価値づくり | 次世代モビリティ進化への対応と環境配慮型製品の提供 | ||
企業価値 | 連結売上高 | 7,000億円規模 | |
ROIC(投下資本事業利益率) (注)1 | 10%以上 | ROE(親会社所有者帰属持分利益率) (注)2 | 10%以上 |
公益価値 | エンゲージメント | 経営理念やビジョンへの共感を高め、従業員と会社が お互いに選び・選ばれる、自律的な関係構築 | |
ダイバーシティ&インクルージョン | 多様な人材が安心して働き、新たな価値を創造 | ||
コンプライアンス | サプライチェーンを含めた、グループ・グローバルでの法令・企業倫理の遵守徹底 | ||
人材育成 | 高い志を持ち、未来を切り拓く自律型人材の育成 | ||
地球環境保全 | CO2排出量削減(2018年度比) Scope1+2 -30% Scope3 -15% |
(注)1. 投下資本事業利益率(ROIC)=事業利益/(純資産+有利子負債)
2. 親会社所有者帰属持分利益率(ROE)=親会社の所有者に帰属する当期利益/自己資本
2025Pについては、2029Vからのバックキャストによって、「未来を開拓する人・仲間づくり」「柔軟かつ強固な組織づくり」「持続可能な社会に向けた価値づくり」という、ありたい姿実現に向けた3つの方向性への取り組みを強化していきます。
また、「さらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤強化」のテーマのもと、事業を推進している中、コロナ禍からの自動車生産台数の回復に伴う生産性改善に加え、構造改革や原価低減活動等が当初想定を上回るペースで進んだことによる2024年3月期の業績と2025年3月期の業績予想を踏まえ、「事業利益」「ROIC」「ROE」の数値目標を修正することとしました。配当については、当初計画通り継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針とし、2026年3月期での配当性向30%以上を目指してまいります。
なお、2025Pにおける、上記以外の企業価値(財務目標)・公益価値(非財務目標)、及び「2029年 住友理工グループVision」(2029V)の目標については、2023年5月の発表内容から変更はありません。
2025年 住友理工グループ中期経営計画(2025P) ※2024年5月末に修正し公表
テーマ | さらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤強化 | ||
企業価値 | 連結売上高 | 6,200億円 | |
事業利益 | 320億円 | ||
ROIC(投下資本事業利益率) | 10%以上 | ROE(親会社所有者帰属持分利益率) | 9%以上 |
配当性向 | 30%以上 | ||
投資額(3ヶ年累計) | 研究開発費 550億円 | ||
設備投資額 900億円 | |||
公益価値 | エンゲージメント | グローバル幹部への理念教育及び全従業員への 理念・ビジョン周知活動推進 | |
人材育成 | 研修プログラムの拡充(3ヶ年累計) ・経営幹部研修 参加者 100人 ・DX コア人材(注)3の育成 200人 ・DX データ分析人材(注)4の育成 700人 | ||
地球環境保全 | CO2排出量削減(2018年度比) Scope1+2 -20% | ||
廃棄物の削減(2022年度原単位比) -3% |
(注)3. DXコア人材:自部門でIoT・AI活用の企画から実用導入に主導的に取り組む人材
4. DXデータ分析人材:自部門でIoT・AI など専門的ITツールを業務に使用する人材
(2) 経営環境及び対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループを取り巻く環境は、サステナブルな社会実現に向けた世界的な潮流や「CASE」といった自動車業界の大変革に加え、足元では主要国における選挙結果を受けた政策変更リスクの顕在化、地政学的リスクの長期化、中国経済の減速、さらには政策金利の変更による為替の急激な変動リスクがあります。これらの要因が複雑に絡み合い、経済環境の不確実性が一段と高まっている状況ではあるものの、経済活動は緩やかな成長を継続することが期待されます。
このような中、当社グループでは3ヶ年の事業計画である2025Pに基づき事業活動を推進しています。
当社グループの強みであるコアコンピタンス「高分子材料技術」「総合評価技術」を駆使した製品開発と、グローバルでの生産体制を生かした受注の拡大、原価低減活動及び間接費抑制を継続して推進することで、収益性を高め、経営基盤を強化していきます。また財務目標の達成と、ESG経営や資本コスト・株価を意識した経営の推進により、幅広いステークホルダーの皆様と共に持続的な成長と豊かな社会実現を目指していきます。
新製品の開発については、親会社である住友電気工業株式会社との連携を強化し、これまで以上にシナジーを創出できるように進めていきます。
米国の相互関税の影響については、追加関税等の状況も注視しつつ、顧客との適切な協議や原価低減・調達体制の見直し等の自助努力を通じて、収益への影響を最小限に抑えるべく取り組んでまいります。
〔自動車用品部門〕
自動車業界においては、技術革新の波が進行し、企業はこれらへの迅速な対応にとどまらず、カーボンニュートラルに象徴されるような社会課題解決への積極的な関与が求められています。
当社グループにおいては、創業以来培ってきたコアコンピタンスをもとに、CASEにおける「A:Autonomous(自動運転)」「E:Electric(電動化)」2領域を中心に、これからの自動車(モビリティ)に新たな価値を提供する製品の創出と開発を進めています。
また、当社のコア技術より生まれた薄膜高断熱材「ファインシュライト」や放熱する吸音材「MIF®」は、電気自動車(EV)のネックとされる電費や航続距離問題、また更なる静粛性の向上といった様々な課題解決に寄与すると考えています。
防振ゴム事業については、EV時代にあわせ、エンジンマウントから振動制御をより高度化させたモーターマウントやeAxleマウントといった製品へ進化させ、日系自動車メーカーのみならず、海外自動車メーカーへの拡販を進めています。自動車用ホース事業については、EV用の電池やモーターをはじめとする部品の熱マネジメントのニーズの高まりに合わせ、他の製品で培った流体搬送技術を生かした冷却系ホースやバッテリー冷却プレート「クールフィットプレート」などの開発にも注力しています。また、各国の環境規制に対応した燃料ホースやバイオ燃料用の燃料ホースなどの拡販を継続しています。
水素社会の実現に向けては、当社の燃料電池自動車(FCEV)向けの基幹部品がトヨタ自動車株式会社のMIRAIに採用されているほか、燃料電池トラック向け等にも水素タンクマウントや水素ホース、FCセル用ガスケットなどの部品を供給しています。
さらに、一般産業用品部門の製品である「リフレシャイン」は、高透明遮熱・断熱窓用フィルムで、主に建物用としての展開を行ってきましたが、当社グループが2029Vで目指す、技術・事業領域の深化・融合を進めるなかで、車載用フィルムとしての用途を拡大させました。2023年度からマレーシアを中心に採用が進み、今後も東南アジア各国・インドなどへの拡販活動の強化や、用途の拡大に向けた共創やシナジーを広げていく計画です。
当社グループにおける欧州の業績低迷については、先行で構造改革を実施した米州事業やエレクトロニクス事業と同様に、早急に対処すべき経営課題として認識しています。欧州においては、EVをはじめとする市場やOEMの動向の見極めを行うとともに、売価改善や受注活動、工程改善等によるロス低減に継続して取り組むことで、収益性の改善を進めていきます。
今後も課題拠点の構造改革の完遂、売上拡大と原価低減の三本柱によって、2025Pのテーマである「さらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤強化」の達成と筋肉質な体質への転換を進めていきます。加えて、他社との協業も通じた付加価値の高い製品や技術の開発により、企業価値の向上と持続的な成長を目指していきます。
〔一般産業用品部門・新規事業部門〕
当社グループは、主力事業の「自動車(モビリティ)」分野に加えて、「インフラ・住環境」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」といった、社会環境基盤の構築に不可欠な分野へも事業展開しています。
一般産業用品部門のうち、住環境分野においては、ビル用制振システム・TRCダンパーが新規開業した第2名古屋三交ビル(愛知県名古屋市)に採用されました。同システムのさらなる採用の広がりによって、地震が多い我が国を中心に防災・減災への貢献が期待されます。インフラ分野における高圧ホースについては、原価低減とともに補修品市場への積極的な参入や未進出エリアを中心にグローバル拡販を進め、収益性向上を目指します。エレクトロニクス分野では、事務機器市場の成熟や働き方の変化による需要変動に対して、柔軟に対応できる体制への転換を目的とした構造改革を実施したことで、収益性が改善してきました。ヘルスケア分野では、SRセンサを応用した「モニライフシリーズ」が㈱ナインアワーズの経営するナインアワーズ品川駅スリープラボ等に採用され、宿泊者の睡眠状態を可視化するサービスに活用されています。本製品を通じて、宿泊利用者への睡眠解析サービスや質の高い睡眠環境を提供することで、人々の暮らしと健康への貢献を目指していきます。
新規事業部門では、社会の要請に応えられるよう投資すべき重点事業分野を見極め、事業基盤の強化と新たな収益の柱となる事業の創出を進めていきます。特に、2029Vに沿って、当社グループの技術領域の融合と他社との共創や新領域への挑戦をより一層強化しており、2024年度においてはインテグリカルチャー㈱と共同で開発を進めていた細胞農業向けの細胞培養バッグや生態模倣システムといった分野にて、特許出願の完了や試験販売を開始しています。また、㈱ギンレイラボと共同開発を行っている動物実験代替ツール「生体模倣システム(MPS)」についても、エントリーモデルの販売を開始予定です。
「ファインシュライト」は、その高いレベルでの保温・保冷機能から、食品や医薬品などの定温輸送に活用されてきたほか、アウトドア用品にも採用されています。また、工場設備に取り付けることで、熱効率が向上し省エネにつながったという実証結果も得られており、カーボンニュートラルを目指す社会ニーズにマッチし採用が進んでいます。引き続きファインシュライトの応用性を模索し、新事業展開や更なる用途拡大に向けた協業先探索を行っていきます。
これら以外にも、サーキュラーエコノミーへの取り組みとして、ランザテック社及び住友ゴム工業株式会社・住友電気工業株式会社との協業が進んでいます。製品を供給するだけではなく、廃棄物の回収・再利用といった循環型社会の実現を目指して、長期的な目線をもった取り組みを進めています。
私たちはこれまで、モノづくり企業として90年以上にわたって培ってきたコアコンピタンスを軸に、住友事業精神が謳う「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」を忠実に守りながら、「安全・環境・コンプライアンス・品質(S.E.C.Q.)」の取り組みを積み重ねてきました。これからも世界中で必要とされる“Global Excellent Manufacturing Company”への成長を目指して、創立100周年に向け着実な歩みを続けていきます。
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