企業兼大株主住友化学東証プライム:4005】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

(1) 住友化学の目指す姿

 当社は、別子銅山の煙害という環境問題の克服と農産物の増産を、ともに図ることから誕生した起源を持ちます。創業以来100年以上にわたり、絶えざる技術革新と事業の変革を遂げながら、事業を通じて人々の豊かな生活を支えてまいりました。
 住友には「自利利他公私一如」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)という言葉がありますが、当社はその事業精神を体現し、経済価値と社会価値を一体的に創出してまいりました。
 近年、気候変動のみならず、生態系保全、健康促進といったサステナビリティの意識が世界中で高まっています。当社はこれを広い意味でのグリーントランスフォーメーション(GX)と定義し、自らの変革と社会への貢献の機会と捉えております。今後、GXの視点で事業ポートフォリオを長期的に変革することで、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを目指します。

(2) 2022-24年度中期経営計画

 このような考えのもと、当社グループは、2022年度を初年度とする中期経営計画「Change & Innovation with the Power of Chemistry」に取り組んでおり下記の7つの基本方針を掲げております。

ROI志向経営の徹底と全社横断プロジェクトの遂行により、個々の事業の強化や、GXを背景としたポートフォリオの変革、事業の新陳代謝の促進を行い、競争優位性の確立を目指します。


グリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)

 当社グループは、最大の強みである事業・技術・地域・人材の多様性と、GXやDXといった環境変化がもたらす成長機会とをかけあわせることで、総合化学の「Power」を最大限に発揮したいと考えております。

GXの大きな流れの一つが、カーボンニュートラルに向けた動きの加速であります。当社は、当社グループのGHG排出量をゼロに近づける「責務」と、炭素資源循環技術・製品を通じて世界の温室効果ガス(GHG)を削減する「貢献」の両面から取り組みを推進しております。まずは2030年までに、LNGへの燃料転換や製造プロセスの徹底的な省エネ・合理化等により当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度比で50%削減するとともに、新しい技術の開発を進めます。そして2030年以降、その新技術を次々に社会実装していくことで、2050年のカーボンニュートラルを実現したいと考えております。

 また、DXの流れは、IoT、5G、AIなど新たな技術により年々その勢いを増しています。当社は、DX戦略1.0で実施してきた研究開発、プラント、サプライチェーンマネジメント、オフィスの4領域における生産性向上の取り組みと並行して、事業特性に応じたDX課題に取り組み、各事業での競争力強化につながるDX戦略2.0、そして新たなビジネスモデルの創出を目指すDX戦略3.0に注力します。


各事業部門の戦略と取り組み

各事業部門における、事業内容と本中期経営計画での主な取り組みは、以下のとおりであります。


(エッセンシャルケミカルズ部門)

 エッセンシャルケミカルズ部門は、日本・シンガポール・サウジアラビアに製造拠点を有し、それぞれの拠点の強みを活かして、ポリエチレン・ポリプロピレン・メタアクリル等を製造し、自動車・家電・食品など幅広い産業に供給しております。

日本およびシンガポールの拠点では、顧客の要望を先取りした高付加価値製品を開発するとともに、高品質な製品を安定供給しております。また、これまでアジア市場の優良顧客と長年かけて培ってきた信頼関係も当社グループの大きな強みとなっております。サウジアラビアの拠点では、安価な原燃料を活用し、コスト競争力のある製品を製造しております。

 本中期経営計画においては、GXを意識した事業ポートフォリオの変革を図り、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルをはじめとした、カーボンニュートラルの技術の開発を行い、社会実装を加速させます。また、既存事業を高付加価値品へシフトするとともに、日本・シンガポールの生産最適化を行い、カーボンニュートラルを見据えた社外連携にも取り組みます。サウジアラビアでの事業については、いわゆるキャッシュ・カウとして、引き続き安定稼働に努めてまいります。

当連結会計年度の取り組み実績として、使用済み自動車から得られる廃プラスチックを用いたマテリアルリサイクルの事業化に向け、パイロット設備の導入を決定したほか、愛媛工場においてアクリル樹脂のケミカルリサイクル実証設備を稼働させ、循環型社会の実現に向けた取り組みを推進しました。また、MMA事業部を新たに発足させ、日本・シンガポールを一元管理することで、機動的な製造販売体制を確立しました。一方、カプロラクタム事業から撤退する等、事業構造の改善にも取り組んでおります。

2022年4月、石油化学部門の名称を「エッセンシャルケミカルズ部門」へ変更いたしました。

新たな名称には、2050年カーボンニュートラルをはじめ大きな転換期を迎えている時代の要請に応じたエッセンシャルな化学製品・技術を提供し続けるという使命の下、事業改革を目指す強い決意を込めております。また、CO2排出産業である化学企業がカーボンニュートラルに貢献するには、当事業部門が長年蓄積してきた触媒や生産プロセス等の技術が不可欠であることから、社会のみならず、当社グループにとってもこの事業部門がエッセンシャルであるという想いも込めております。

(エネルギー・機能材料部門)

 エネルギー・機能材料部門は、電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックス等の高機能材料の販売により、エコカー等の環境調和製品の性能向上に貢献するソリューションを提供しております。

 世界最高水準の高耐熱性を持つリチウムイオン二次電池用セパレータや、電子部品をはじめ様々な用途に使用されるスーパーエンジニアリングプラスチックス、また高純度アルミナやレゾルシンのように世界トップシェアを維持する製品等、多様化する顧客ニーズを捉えた製品ラインナップと、これらの製品群を生み出す研究開発力や評価・製造・プロセス技術が当社の強みであると考えております。

 本中期経営計画においては、電池部材およびスーパーエンジニアリングプラスチックスを成長事業と位置づけ、集中的に資源を投下します。リチウムイオン二次電池用セパレータでは、高安全性、長寿命化等の強みを活かし、多様化する顧客ニーズに対応してまいります。正極材では、生産性が高い焼成プロセスの事業化を目指します。一方、低採算事業については、縮小・撤退も視野に方向性を見極めてまいります。また、次世代事業として、固体型電池や分離膜等の新規技術の開発促進に取り組みます。

当連結会計年度の取り組み実績として、愛媛工場において、高純度アルミナの新規高性能グレード品の新設備の建設に着手しました。また、5GやEVの普及等を背景に需要が拡大しているLCPについて、愛媛工場での生産能力増強を進めております。いずれも2023年度中に稼働を開始する予定であります。また、京都大学との産学共同講座において「柔固体」型電池の共同開発に成功し、安全性の高い固体型電池の早期実用化に向けて大きく前進しました。

一方、今後の安定的な収益確保が難しいことから、大阪工場にある染料の製造設備を停止し、当事業から撤退しました。さらに、シンガポールのS-SBR事業からの撤退を決定したほか、千葉工場のEPDM事業も生産を終了し、2023年度に撤退予定であります。競争力のある分野に経営資源を振り向け、事業のポートフォリオ高度化を図ります。

(情報電子化学部門)

 情報電子化学部門では、高機能なディスプレイ関連材料や高品質な半導体材料を提供することで、ディスプレイや半導体の性能および生産性の向上に貢献しております。

 当社グループはこれまで、マーケットインのグローバルサプライチェーン構築に努め、製品の開発・供給に活かしてまいりました。こうした開発供給体制に加え、総合化学メーカーならではの複数の素材や技術の組み合わせによる、高付加価値製品を提供することが可能です。また、ディスプレイ・半導体双方の領域における技術や品質対応により蓄積してきたノウハウを駆使し、境界領域の製品を開発できることも当社の強みとなっています。

 本中期経営計画においては、ディスプレイ関連材料事業では、当社核心技術を活かした有機ELディスプレイ向け材料等の高付加価値品比率をさらに高めつつ、次世代ディスプレイ向け材料の開発・上市に取り組みます。

 半導体関連材料事業では、シリコン半導体向けに、拡大する需要を確実に取り込みつつ、顧客プロセスの革新に応える先端材料の開発・拡販を進めます。また、化合物半導体向けに、省エネ等社会課題解決に貢献する次世代パワーデバイス材料の事業化を目指します。

 また、新規事業開拓のため、社外とも積極的に連携しながら、次世代高速通信や高感度イメージセンサーに対応した材料等の開発に注力します。

当連結会計年度の取り組み実績として、米国に半導体用プロセスケミカルの新工場を建設することを決定しました。同事業の米国市場における戦略的な拠点として、旺盛な需要を確実に取り込み、事業拡大を目指します。新工場の稼働開始は、2024年度を予定しております。半導体用プロセスケミカルの生産体制をグローバルに拡充し、高品質な製品を安定供給することにより、スマート社会やスマートモビリティの実現に貢献してまいります。

(健康・農業関連事業部門)

 健康・農業関連事業部門では、特長ある農薬・農業資材やメチオニン(飼料添加物)、医薬品原薬等をグローバルに提供することで、食糧の生産性向上や人々の健康促進等に寄与しております。

 当社グループは、自社開発の優れた化学農薬に加え、バイオラショナルやポストハーベストなど高いシェアを持つユニークな農薬や農業資材を品揃えし、グローバルに販売しております。当社グループの農薬事業の強みは、特長ある農薬の品揃えとそれを生み出す研究開発力、グローバルな販売網であります。また、メチオニン事業では、高い生産技術を活かし、製品を原料から一貫生産し安定供給しております。

 本中期経営計画においては、当社グループが強みを持つバイオラショナル・ボタニカル事業においては、引き続き、各地域での更なる事業拡大およびグローバルな製販研の機能強化に取り組みます。化学農薬の製品群については、インディフリン等の大型新規剤の販売最大化に注力するとともに、より環境負荷低減効果を重視した製品の開発・上市に取り組んでまいります。また、南米での事業買収等により拡大したサプライチェーンを強化するとともに、投資成果を着実に回収し資本効率の向上を目指します。研究開発では、強みのある事業領域に重点的に資源を投入し、オープンイノベーション等も積極的に活用してまいります。

 当連結会計年度の取り組み実績として、世界最大の大豆生産国であるブラジルにおいて、新規有効成分インディフリンを含む大豆用殺菌剤エクスカリア マックスの農薬登録を取得し、本格的に販売を開始しました。世界最大の農薬市場である南米地域にて、今後さらに本剤の販売を拡大してまいります。また、バイオラショナル事業においては、研究所の拡張や米国工場の増強に加えて、米国に新組織を設立して一部の顧客に対して直接販売を行うなど、製販研の各機能を強化しました。さらに、天然物由来の農業資材であるバイオスティミュラントを手掛ける米国のFBサイエンス ホールディングス インコーポレーテッド(以下「FBサイエンス社」という。)の買収をきっかけに、この分野にも本格的に参入しており、今後も事業拡大を進めてまいります。

(医薬品部門)

 医薬品部門では、医療用医薬品や診断用医薬品等の開発・販売を行うことで、人々の健康で豊かな暮らしを支えております。現在、医療用医薬品は住友ファーマ株式会社(以下「住友ファーマ」という。)、診断用医薬品は日本メジフィジックス株式会社(いずれも当社の連結子会社)で事業を展開しております。

住友ファーマでは、ラツーダの米国での独占販売期間終了後の再成長および「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」の地位確立に向けた足場を築く期間として、持続的な成長を支える収益基盤の確立ならびに自社起源のイノベーションを事業として結実させるための研究開発に取り組み、事業構造の転換を図っております。同時に、米国グループ会社の再編を契機にグループ経営体制を再編し、しなやかで効率的な経営基盤への変革に取り組んでまいります。日本メジフィジックス株式会社は、核医学という極めて専門性の高い医療分野における日本のリーディングカンパニーとして、新たな診断薬の開発に取り組んでおります。

本中期経営計画においては、ラツーダの北米における独占販売期間終了後の収益基盤確立が最優先課題であります。オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)を基幹3製品と位置づけラツーダを上回る販売を目指すとともに、他社との提携や適応症の拡大など剤のポテンシャルの最大化を図ります。また、中長期的な成長を見据え、精神神経領域の新製品の創出や再生・細胞医薬品等にも注力し、成長が見込まれるCDMO事業(製法開発・製造等の受託事業)も一層強化してまいります。

 当連結会計年度の取り組み実績として、住友ファーマの連結子会社であるマイオバント サイエンシズ リミテッド(以下「マイオバント社」という。)がファイザー社と提携して取り組む子宮筋腫治療剤マイフェンブリーについて、子宮内膜症への適応追加承認を米国で取得しました。また、そのマイオバント社を完全子会社化することで、収益基盤の強化と経営スピードの加速を図りました。同社が扱うオルゴビクス、マイフェンブリーを今後の成長エンジンの一つとして、米国でのさらなる販売拡大に取り組んでまいります。

事業環境及び今後の業績の見通しについて

(2022年度実績)

 中期経営計画の初年度である2022年度は、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻を背景とする経済の低迷、それらに端を発した世界的な需要減退、原燃料価格の上昇等、当社の事業環境に想定を超える多くの逆風が吹いた結果、コア営業利益は928億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は70億円という厳しい水準に留まりました。

(2023年度以降の見通し)

2023年度の業績は、エッセンシャルケミカルズ部門での石油化学品市況が最悪期を脱することや、健康・農業関連事業部門での農薬の販売拡大等の効果による増益要因はあるものの、医薬品部門におけるラツーダの独占販売期間終了の影響が大きく、コア営業利益は400億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は100億円と、引き続き低水準に留まる見込みです。しかしながら、2024年度に向けては、医薬品の基幹3製品(オルゴビクス、マイフェンブリー、ジェムテサ)を含む複数の成長ドライバーの販売伸長や、低収益事業の再編・撤退等により事業ポートフォリオ高度化を進めることで、コア営業利益2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,000億円を目指します。

 中長期的には、ROE10%以上、ROI7%以上、D/Eレシオ(有利子負債/純資産)0.7倍程度等の財務指標を安定的に達成することを目指します。当社の財務KPIであるROE10%は、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するという考えのもと、社会課題の解決に重要な貢献ができると判断した事業を一定の収益性が見込める限り実施していくという方針に基づき設定したものであります。またROIについては、WACC(加重平均資本コスト)を上回るレベルを求め、7%をハードルとしております。D/Eレシオについては、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、0.7倍程度を目安としております。


■2022-24年度業績予想及び計画


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