井関農機
【東証プライム:6310】「機械」
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企業概要
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「農家を過酷な労働から解放したい」という熱い想いから始まり、多くの方々に支えていただきながら、その想いを連綿と受け継ぎ、2025年に創立100周年を迎えることとなりました。コロナ禍・ウクライナ侵攻などから、食料安全保障や食への関心は高まっており、食を支える農業や、人々の暮らしを支える景観整備事業は、エッセンシャルビジネスとして重要度が再認識されています。
当社グループの基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」としております。また、長期ビジョンを「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」とし、これらに関連する課題を解決するとともに、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE(自己資本利益率)8%以上・DOE(株主資本配当率)2%以上を達成し、PBR(株価純資産倍率)1倍以上とすることを目標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
①経営課題
当社グループは、2025年までに連結営業利益率5%を達成すべく取組を進めてまいりましたが、激変する環境への対応策と実行力の不足により計画からは大きく乖離し、目指していた「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換」は未達の状況です。また、ROEについても当期純利益率と総資産回転率の低さにより目標とする8%を下回る水準で推移しております。
以上の状況より、当社グループの課題を収益性と資産効率と捉え、これらに対して、聖域なき事業構造改革を実行し強靭な経営基盤を構築すべく、2023年11月14日付で「プロジェクトZ」を設置しました。また、2024年2月にはプロジェクトZ施策の骨子を公表し、同7月には施策を確かなものとするための具体的な取組を公表しました。
②課題解決に向けた具体的施策
a.プロジェクトZ施策
プロジェクトZでは抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行してまいります。抜本的構造改革では、「生産最適化」「開発最適化」「国内営業深化」の3テーマを軸に短期集中的に施策を実行します。また、成長戦略では、国内外の成長市場へ経営資源を集中し事業拡大を図ります。
■抜本的構造改革
・生産最適化
生産拠点と機種の再編や将来を見据えた設備投資を実行してまいります。2024年の㈱ISEKI M&Dの設立を皮切りに、コンバインや田植機の最終組立工程を㈱ISEKI M&D(松山)に移管するなど、季節性の高い当社製品の生産を集約することで生産の効率化や平準化を図ります。併せて間接業務の効率化や在庫の圧縮と効率運用に繋げてまいります。これにより、次の100年の礎となる強靭な製造所の体制を作ってまいります。
㈱ISEKI M&D(松山)では製品組立を集約するための建屋新設に着手し、㈱ISEKI M&D(熊本)からのコンバイン生産移管プロセスは計画通り進んでおります。また、生産拠点の再編に係る投資については、生産効率を改善しつつ投資抑制に努め、2024年7月に発表しておりました当初総投資計画460億円から380億円に圧縮しました。
・開発最適化
商品の成長性や収益性を分析したうえで、機種・型式を30%以上集約するとともに、成長分野へ開発リソースを集中してまいります。また、開発手法についても全地域共通の母体とするグローバル設計を進め、効率化を図ってまいります。開発の効率化とリソースの集中による組織のスリム化に加え、製品利益率改善を短期集中的に実施してまいります。
開発の効率化は機種・型式削減計画を確定次第、実行に移しており、計画通り進捗しております。また、製品利益率の改善は当初計画より一部遅延しているものの、リソースを追加投入し回復を図ってまいります。その改善効果は2025年下期より順次発現し、2027年に改善目標の達成を目指します。
・国内営業深化
国内販売会社7社の経営統合を行い、2025年1月に㈱ISEKI Japanを設立するとともに、営業組織体制も変更しました。中でも新設した「大規模企画室」では、地域毎の特性を勘案した大規模農家へのソリューションの提供を通じ、新規大規模顧客の獲得を目指します。そして、地域を越えた人材交流を積極的に行い、旧販売会社それぞれが持っている強み・ノウハウの水平展開により、更なるレベルアップを図ってまいります。
また、統合を機に、在庫拠点や運用、物流体制の見直し、重複する間接業務の集約により、経営効率の向上を図り、成長戦略への基盤を構築してまいります。
■成長戦略
・海外地域別戦略と商品戦略の展開
地域別戦略と環境対応型商品の投入を含む商品の拡充など商品戦略の展開により海外事業の拡大を図ります。地域別戦略では特にプレゼンスがあり収益力の高い欧州での事業拡大を加速させてまいります。また、英国販売代理店「PREMIUM TURF-CARE LIMITED」を株式追加取得により2025年1月に連結子会社化いたしました。これにより販売テリトリーの拡大や取扱商材の拡充、欧州域内での在庫一元管理等による効率化を図るとともに、多様な人材交流によるイノベーションを創出してまいります。
・国内成長分野への経営資源集中
成長分野である「大型」「先端」「環境」「畑作」への集中・販売強化により、安定した利益を確保するとともに、全国規模でのノウハウ共有により収益性の高い事業を拡大してまいります。これらを「大規模企画室」が中心となって推進し、井関グループの強みを増幅させながら、「ヒト」「モノ」「ノウハウ」で価値ある農業ソリューションを提供します。
b.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
■現状分析
当社のPBRは1倍を下回る水準が継続し、2024年12月末時点で0.30倍に留まっております。PBRを構成要素であるROEとPER(株価収益率)に分解し、それぞれの項目について「同業他社との経年比較」及び「当社と接点のある投資家からの意見収集」等を通じ、その要因を整理しました。
・ROE
目標数値である8%に届かず、その要因は、当期純利益率と総資産回転率の低さにあると認識しております。当期純利益率は製品利益率や販管費率、総資産回転率は在庫量や設備稼働率などが原因と考えております。なお、現状分析・評価に際し実施したヒアリングにより、日頃接点のある機関投資家が把握する当社株主資本コストの水準は概ね8%程度と認識しております。
・PER
10倍に満たない水準とみており、その要因は、成長率の低さや、成長戦略・強み・収益性などの情報開示不足、計画と実績の乖離などが原因と捉えております。
■PBR改善に向けて
現状分析による課題を踏まえ、「プロジェクトZ」の諸施策を着実に進めることに加え、IR活動・ESG取組強化により、2027年までにPBR1倍以上の実現を目指します。
■株主・投資家との対話状況
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、経営方針の丁寧な説明や、建設的な対話の実施などにより、株主・投資家の皆さまと信頼関係を構築することが重要であると考えております。
対話については、経営管理部門(IR・広報室、総合企画部、財務部、総務部)の担当役員が統轄し、決算説明会をはじめとしたさまざまな機会を通じた積極的な対応に努めてまいります。今後は特に個人投資家の皆さまに向けての情報発信や説明会などの取組を強化し、認知度の向上に努めてまいります。
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