丸善CHIホールディングス
【東証スタンダード:3159】「小売業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは2010年2月1日にCHIグループ株式会社として、これからの日本の礎となる知の生成と流通に貢献することを共通の使命と考える丸善株式会社と株式会社図書館流通センターが、共同株式移転により経営統合し設立いたしました。その後、以下に掲げる価値観を共有する、株式会社ジュンク堂書店、株式会社雄松堂書店との株式交換による経営統合、各事業領域における体質強化を図るための分社化、さらには電子書籍事業へ対応するための新会社設立などを経て、2011年5月1日には、主要市場である出版流通市場における一層のブランド浸透のため、丸善CHIホールディングス株式会社に商号変更を行いました。
さらに、より効率的な運営とブランド力の発揮による成長と収益拡大を図るため、書店事業において、2015年2月1日付で丸善書店株式会社と株式会社ジュンク堂書店を合併(株式会社丸善ジュンク堂書店に商号変更)、大学等教育・研究機関及び研究者向け事業において、2016年2月1日付で丸善株式会社と株式会社雄松堂書店を合併(丸善雄松堂株式会社に商号変更)しております。
これらの体制のもと、当社グループでは、次のような経営理念を各事業会社が共有し、知を求めるすべての人々と、知を提供する出版流通の接点の拡大を目指します。
①価値観:知は社会の礎である
私たちは、知が人に与える力を信じます。そして時代に即した最良の知のグローバルな循環が21世紀の創発的な日本の社会の礎であると考えます。
②グループビジョン:知の生成と流通に革新をもたらす企業集団となる
私たちは、「知は社会の礎である」という価値観を共有し、教育・学術機関、図書館、出版業界等と連携し、最良な知の生成・流通と知的な環境づくりにおいて、革新的な仕組みを創出、提供することにより、業界の活性化をリードし、日本の社会に貢献する企業集団となることを目指します。
(2)中長期的な会社の経営戦略
「中期経営計画」では目標とする経営指標達成のために、「グループ資産の活用促進」、「成長領域の創出」、「収益構造の転換」の3点を基本方針とし、これらの取り組みを通じ、変化と多様性の時代においても持続的成長を可能とする経営基盤の構築を行ってまいります。戦略及び計画の詳細については、「(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題」及び2024年3月14日公表の「中期経営計画」をご参照ください。
(3)目標とする経営指標
当社グループは、2024年3月に2024年度を初年度とする5カ年の経営の指針として「中期経営計画」を公表いたしました。この中で当社は、経営理念である価値観及びグループビジョンのもと、「知の生成と流通に持続的に貢献するための成長力と資本効率の向上」を目指し事業変革に取り組むことで、2029年1月期には、売上高2,000億円、営業利益85億円、親会社株主に帰属する当期純利益50億円を目標としております。また、資本コストと株価についても、具体的な経営指標としてROE(自己資本利益率)は2029年1月期に7.5%以上を目標とし、PBR(株価純資産倍率)については早期に1倍以上を目指す計画としております。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題
当社グループを取り巻く市場環境は、企業による設備、人材への投資や、インバウンド消費の拡大により、ゆるやかな景気回復が見られる一方、金融市場における金利の上昇、エネルギー価格や物価の上昇により実質賃金が3年連続マイナスになるなど、厳しい環境が続いております。また、米国に端を発する保護主義的経済政策の台頭による世界経済の不確実性の高まりなど、市場環境はさらに不透明感を増していくことが想定されます。
このような状況下、中長期的な経営課題への対策、様々な経営リスクに対し、より積極的なグループマネジメント体制の充実が求められると捉え、当社グループでは、2024年度より「中期経営計画(2024年度~2028年度)」を開始しております。
計画2年目にあたる次期においても、グループ協業による事業構造の転換を目指し、新規事業の開発を中心に人的資本経営の推進など様々な取り組みを進めてまいります。
事業セグメント別の取り組みは次のとおりです。
・文教市場販売事業
文教市場販売事業セグメントでは、AI技術をはじめとするテクノロジーによる急激な技術革新が常態化するとともに、人口減少や環境問題をはじめ、様々な社会課題が輻輳化し先行きを見通すことが難しい時代において、一人一人が生涯にわたり主体的に学び続けることができる環境や機会の提供は、当社グループが注力すべき領域と捉えています。
当社グループでは、学校や研究機関、企業に対し、書籍やデジタルを活用した多様な学びの機会の提供を進めてまいります。GIGAスクール構想をはじめ学校教育分野で進むデジタル化に対し、電子書籍・電子教材・電子図書館システムを活用した個々の状況や多様なニーズに即した学びの機会の提供を進めてまいります。高等教育機関や研究機関、企業に対しては、急速に高度化していく学術専門情報へのニーズに対応し、学術論文や関連情報へのアクセスの利便性向上、教育・研究機関の運営や環境づくりへの支援、さらには人的資本経営の高まりに対応した企業研修のコンテンツ提供などに注力してまいります。
・店舗・ネット販売事業
店舗・ネット販売事業セグメントでは、リアル店舗とネットサービスを融合した顧客体験価値の充実を進めてまいります。
リアル店舗におきましては、これからも地域における大型書店として提供価値を守りつつ、書籍の持つ情報やコンテンツに対する幅広いニーズに応える商品やサービスを拡充し、リアル店舗の強みを活かした購買体験を提供してまいります。具体的には、当社オリジナルである絵本の世界をモチーフにしたグッズショップ「EHONS」やホビー関連グッズのリユースショップ「駿河屋」などのインショップによる複合業態化や、書店ならではのオンラインイベントの発信により、当社店舗ならではの魅力を打ち出し、新たな顧客層の獲得により、収益力を向上してまいります。
ネット販売事業では、当社グループの親会社である大日本印刷株式会社が運営するネット書店「honto」が紙の本の通信販売を終了したのを機に、自社運営による「丸善ジュンク堂書店ネットストア」を2024年7月に開設し、本の取り置き、取り寄せサービスから営業を開始いたしました。これにより、デジタル化された顧客接点を自社で確保することが可能となり、今後、購買情報を活用した生活者とのコミュニケーションを通じ、文具・雑貨などの商品開発や、新しいサービスの提供、店舗とネットの相互送客による新たな顧客接点を創出してまいります。
・図書館サポート事業
図書館サポート事業セグメントでは、地域の活性化や、社会課題、住民ニーズに即したサービスの充実など公共図書館に対する期待や役割に変化・拡大が求められる一方、業務効率化や、人件費の高騰、運営人材不足など様々な課題への対処が必要となっております。当社グループでは、業務の効率化だけにとどまらず、ロボットやAIを活用した図書館の運営についても、パートナー企業と連携した実証実験を進めておりますが、優秀な人材を継続的に確保していくことは、引き続き経営上の重要課題と認識し、採用の強化、働く環境の改善、人材育成の充実など多角的なアプローチにて取り組んでおります。さらに図書館受託運営で培ったノウハウを、他の公共文化施設の運営に活用するなど、サポート事業範囲の拡大を進めてまいります。
・出版事業
出版事業セグメントでは、児童書・絵本分野と専門書分野における当社グループの豊富なコンテンツを、デジタル技術やIP(Intellectual Property/知的財産)関連事業により、その利活用を拡大することで収益性の向上を引き続き進めてまいります。専門書におきましては、教育現場のデジタル活用に対応した、書籍とデジタルコンテンツの組み合わせなどメディアミックスの取り組みを積極的に進め、付加価値の高いコンテンツ開発・提供を進めてまいります。
・その他事業
その他事業セグメントでは、保育士派遣事業は子育て支援へのニーズを背景に堅調に推移し、今後も成長が見込まれております。また、2023年10月にサービスを開始した会計・税務書籍読み放題サービス「丸善リサーチ」は、1年足らずで会員数が5,000人を超え、利用者はもとより書籍を掲載する出版社からも高い評価を得ております。今後も、その他事業セグメントにおいては、当社グループの既存事業やブランドを活用しつつ、当社グループの成長に不可欠な新しい事業領域を開拓していくために、М&Aを含めた投資を継続してまいります。
・人的資本経営・サステナビリティの推進
これらの施策を通じて成長と拡大を進めるためには、その根幹となる人的資本のさらなる活性化に取り組み、誰もが活躍し成長しつづける環境づくりを継続していく必要があります。
そのため、当社グループでは、グループ横断型のプロジェクトや研修の充実、新規事業開発に取り組み、実践的に学ぶ場を積極的に生み出し、多様な資質や価値観を持つ人材を育成してまいります。
サステナビリティの推進については、当社グループの事業には地域と密接に関係するものが多く、地域社会のニーズを的確に捉えて事業を推進することが重要であると考えます。地域の社会課題に解決をもたらし、文化的な豊かさをもたらすことが継続的にできる企業集団として、これに取り組む責任を一人一人が理解し活動できるよう、「サステナビリティ基本方針」のもと「6つのマテリアリティ(重要課題)」を選定しております。経営理念として掲げる「知は社会の礎である」のもとに、あらゆる人に知や学びとの接点を提供できる環境づくりを推進してまいります。
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