三谷産業
【東証スタンダード:8285】「卸売業」
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企業概要
当企業集団の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業集団が判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社および当社連結子会社(当企業集団)は、以下の方針を掲げ経営目標を達成すべく取り組んでまいりました。
・お客様とのビジネスを軸に、仕入先、地域社会、株主、社員・役員といった関係者間で調和を作り上げていくこと。
・お客様からの要望にそのまま応えるのではなく、当企業集団の知識や技術を活かし、短期的な課題解決と中長期的な価値創出、さらに社会の持続的な発展においてバランスのとれた真の最適を追求すること。
・分野と分野、あるいは業界と業界の交差点に立つことによって、お客様のイノベーションを促進する役割を担い、さまざまな業界をつなぐネットワークの中で、重要な結び目になること。
・複数の事業セグメントにわたって、それも単なる商社ではなく、時にはメーカーであったり、時にはコンサルタントであったりと、複数のレイヤーでビジネスを展開すること。
また、当社は財務的な経営指標との両輪をなす非財務的な側面における経営指標として「Company Well-being Index(カンパニー・ウェルビーイング・インデックス)」を策定しております。長期的視野で持続的に事業を成長させながら価値創出・社会貢献する“良い会社”であり続けることを目指して、財務的側面と非財務的側面からバランスのとれた経営を推進してまいります。
なお、「Company Well-being Index」については、以下の当社ウェブサイトにて詳細を開示しております。
< https://www.mitani.co.jp/company/cwi/ >
(2)経営環境
わが国経済は、物価や金利の上昇等の懸念があるものの、賃上げによる個人消費拡大から生じる景気への好循環影響に対する期待もある中、緩やかな回復基調が続いています。一方で、最近の為替市場の変動、人口減少に伴う労働力不足、物流コストの上昇、地政学的リスクに対応したサプライチェーンの変化等の多様な要素が複雑に絡みあい、先行きが不透明な状況になっています。
当企業集団を取り巻く経営環境において特に重要な観点は、米国の新しい通商政策による変化です。当企業集団から米国への輸出は軽微であるものの、当該通商政策により当企業集団の事業が属する業界の動向に大きな影響が生じる可能性があります。
このような不確実性が増す経営環境においても、商社機能とメーカー機能を併せ持つ当企業集団としては、これらの変化をチャンスと捉え、当企業集団の6つの事業セグメントによる複合力を最大限に発揮し、より一層の企業価値向上に努めてまいります。
(3)次期(2026年3月期)の業績見通し
当企業集団の経営上の目標を達成するための客観的な指標は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益であります。
次期の連結業績については、売上高は1,100億円(前期比6.7%増)、営業利益は22億50百万円(前期比8.5%増)、経常利益は29億50百万円(前期比11.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は24億50百万円(前期比0.4%増)と予想しております。
なお、売上高は6期連続の増収、各段階利益は3期連続の増益を見込むとともに、売上高および親会社株主に帰属する当期純利益は、2期連続で1988年7月の上場以来過去最高を更新する見込みです。
次にセグメント別の今後の重点施策について説明申しあげます。
<空調設備工事関連事業>
当事業が属する建設業界では、マンションやビルの新築需要が旺盛な中、省エネ・脱炭素化の潮流や人手不足、時間外労働の上限規制といった影響を受け、事業環境が大きく変化しています。そのような中、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への対応やICT・IoTを活用した高効率な空調設備の提案等、当社の総合力や複合力を活かした付加価値の高い提案に努めることで競争優位性を高めてまいります。また、現場作業が中心のためデジタル化が難しいと言われている建設業界において、DX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組んでおります。ICTを活用した合理化・効率化による働きやすい職場環境を実現するとともに、知見やノウハウ等の蓄積を進め、これらの利活用をさらに推進することで新たな付加価値の創出につなげてまいります。
①北陸地区においては、長年培ってきた建築設備ノウハウと幅広いソリューションの複合提案を強みに受注拡大を図ってまいります。また、修理や点検に関するお客様の課題解決につながる保守サービスの提案を拡充し、安定した受注の確保に努めてまいります。
②首都圏においては、建築・設備・電気のトータル施工が可能な総合力を強みに、高付加価値な提案に注力してまいります。また、当企業集団の複合力を発揮できる案件の発掘・獲得に努めることで収益力の向上に取り組んでまいります。
③建設業の設計・積算を行うベトナム子会社のAureole Construction Software Development Inc.は、ベトナムにおいて最大規模の700名を超える技術者集団として、BIM関連業務を中心に各種データ作成業務の受注拡大を図ってまいります。BIM関連業務においては、昨年4月にBIMエンジニアリングセンターを設立し、所属する200名を超える経験豊富なBIM技術者のもと、高い技術力と組織力を活かしたBIM全工程での包括的な提言・提案に取り組んでまいりました。その成果として、再開発事業や国内主要空港での設計案件等、受注活動が順調に進捗するとともに、複数のプロジェクトへの参画によりBIM対応力が着実に向上しております。今後も当社の強みを訴求する提案を継続し、市場での優位性の向上に努めることで、建設業界の変革を先導するリーディングカンパニーとして選ばれ続ける会社を目指してまいります。
次期の業績については、前期において大型案件の進捗が大きかったことから、売上高は前期比5.3%減の186億61百万円、営業利益は前期比35.0%減の14億59百万円と予想しております。
<情報システム関連事業>
当事業においては、生成AIやクラウドの進化、セキュリティリスクの増大、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった事業環境の変化の中で成長機会が広がっております。一方で、IT人材の不足やベンチャー企業の参入等、競争環境は厳しさを増しています。このような中、これまでに当企業集団で培ってきたノウハウやオリジナルソリューションを活かし、業務効率化のみならず、業務改革や事業モデル改革に関わる提言・提案を推進することで、お客様の持続的成長を実現するとともに、人手不足等の社会的課題の解決にも貢献してまいります。
①新事業として、お客様のデジタル技術の実装やICTの整備を伴走支援する「バーチャルCxOサービス」を開始し、全国から複数の引き合いを頂戴しております。近年、多くの企業で人手不足への対応や業務効率化を図るために、デジタル技術やAIの活用が重要な経営課題として危機感をもって認識されているものの、それらを駆使してビジネスモデルや組織、業務プロセスの変革を推進する経営人材が不足しています。そこで当社が、お客様のCDO(Chief Digital Officer)やCIO(Chief Information Officer)の役割の一部を担い、デジタル化に関する課題の設定から、解決に向けたソリューションの提案までを包括的にサポートすることでお客様の変革を先導してまいります。
②DXソリューション「POWER EGG®」は、お客様の業務をより円滑化するための機能強化版を継続してリリースするとともに、よりよいUI/UXを提供するためのメジャーバージョンアップにも取り組むことで、製品競争力の強化を図ってまいります。また、金融機関や民間企業等1,500社を超えるお客様への導入を通じて、経営意思決定迅速化や業務効率化の事例が当社には数多く蓄積されております。蓄積した事例をユーザ会で横展開し既存のお客様のさらなる生産性向上を支援するとともに、新規のお客様への提案にも活用することで売上拡大を図ってまいります。加えて、特に労働力不足が社会課題となっている生活維持サービス産業(建設業/物流業/製造業等)に対しては、当該社会課題解決の一助となるべく、業務生産性向上に資する提案を販売パートナー企業と共に取り組んでまいります。
③プログラム開発不要でさまざまなクラウドサービスを効率的に連携させるFaaSインテグレーター「Chalaza®(カラザ)」は、人事労務分野のクラウド事業者が必要とするモデルを集中的に開発し、クラウド事業者から顧客への販売を促進することで、受注拡大に努めてまいります。さらに、人事労務分野以外の新たな連携モデルの開発を推進し、安定した受注基盤の形成に取り組んでまいります。
④印刷業向け基幹業務クラウドサービス「BRAIN」は、全国でのセミナー開催および業界紙への広告掲載等のプロモーションを通じ、認知度向上を図ることで、新たな商談発掘に努めてまいります。
⑤クラウド関連事業では、子会社のコンフィデンシャルサービス㈱において、情報セキュリティ格付の最高位「AAAis(トリプルA)」を継続取得し、強固な地盤に立地した災害に強いデータセンターを最大限に活用してまいります。サイバー攻撃に対するセキュリティ対策や自然災害からの早期復旧への対応が課題となる今日において、お客様の事業継続性を向上させる安心安全で高品質なサービスの提供に注力してまいります。
⑥ベトナム子会社のAureole Information Technology Inc.においては、「mcframe」の開発元であるビジネスエンジニアリング㈱とのパートナー関係を深化させ、さらなる営業力・技術力の強化を図ることで、ベトナム国内でのパッケージソリューションの導入拡大に努めてまいります。また、グループ各社へのシステム導入を通じ、システムインテグレーションのノウハウ蓄積にも取り組み、お客様への外部展開につなげることで、ベトナム国内におけるソリューションビジネスの拡大を図ってまいります。なお、日本市場向けのオフショア開発事業においては、エンジニアのマルチスキル化に取り組み、安定した受注の確保に努めてまいります。
次期の業績については、売上高は前期比40.0%増の148億87百万円、営業利益は前期比20.0%増の11億54百万円と予想しております。
<樹脂・エレクトロニクス関連事業>
当事業の主要顧客が属する自動車業界では、環境問題に対する意識の高まりや国際的な規制強化を背景に、電動化をはじめとする新たな技術への対応が必要となっています。また、原材料価格やエネルギーコストの高騰、人手不足等の課題に対応するため、効率的な生産プロセスの確立が求められています。このような中、当事業ではこれらの変化をビジネスチャンスと捉え、新たな技術の習得と既存ビジネスで培った経験を融合させることで、成長が見込まれる市場での差別化を図り、技術とアイデアを活かした付加価値の高い提案を行うことにより、お客様に驚きと感動を提供してまいります。
①自動車関連ビジネスでは、お客様の仕様に沿った製品製造だけでなく、製品開発段階からお客様と協働し、課題解決に向けた画期的かつ斬新な提案を実施することで競争優位性を高めてまいります。また、これまで培ってきたノウハウや電動化対応への長年の経験を活かし、より高難度の成形技術の確立に取り組むことで、高付加価値ビジネスを創出してまいります。さらに、ベトナム製造拠点においては、原価低減活動を推進するとともに、高難度の電動化関連部品の量産を推進してまいります。
新たな技術領域として、検品作業にかかる工数削減と高精度な品質管理を同時に実現することを目指し、AIを活用した自動外観検査機の量産工程への適用検証を進めてまいります。
②自動車関連以外のビジネスでは、自動車関連ビジネスで培ったノウハウを基盤とし、新たに獲得した技術を融合させることで、密封性の求められる検知器部品や自動インサート成形による空圧機器部品等の製造において、成形後の組み立て作業を含めた多段階工程の自動化を図ってまいります。また、これらの技術の適用範囲を広げ、当事業における新たなビジネスを拡大してまいります。
次期の業績については、売上高は前期比8.1%増の124億37百万円、営業利益は前期比34.4%増の10億16百万円と予想しております。
<化学品関連事業>
当事業が属する化学品業界は、地政学リスクの高まりによる原材料価格の変動、サプライチェーンの不安定化が懸念されています。また、脱炭素化の潮流や環境規制強化により、資源のリサイクルや有効活用等、循環型社会の実現に向けた取り組みも重要な課題となっています。このような中、当事業では、需給バランスの変化を敏感に捉え、長年の経験とこれまで培ってきた国内外の調達力を活かすことで化学品の安定供給に努めるとともに、環境との調和を目指し、独自技術の開発・確立に取り組んでまいります。
①国内における化成品販売については、既存顧客に対する取扱品目の拡大および新規エリア・分野の開拓による新規顧客獲得を図ってまいります。また、当企業集団の調達力を活用し化成品の安定供給を継続するとともに、顧客ニーズに対応できるパートナー企業を増やすことで顧客の課題解決を図ってまいります。
②医薬品原薬については、品質管理を最優先し、GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)遵守に対する監視・牽制体制の維持、GMP教育の徹底、さらにはクオリティカルチャーの醸成や組織風土の改善活動を継続してまいります。このような活動により、高品質な医薬品原薬を安定的に供給するというメーカーとしての責務を果たしてまいります。
また、連続フロー法については、反応装置を連結することで原料の投入と同時に目的化合物を取り出せる効率性と、製造工程における危険性の高い物質に接触する機会を減らすことのできる作業安全性、加えて、省スペースで化学合成が可能で目的化合物を取り出すまでに必要なエネルギーまでも抑制できる環境調和性に優位性があることから、同製法の適用品目を増やすべく、産学官およびグループ内の他セグメントとの連携に取り組んでまいります。
③機能性素材の受託製造については、当企業集団の調達力を活かし、食品原料のラインナップを拡充することで他社との差別化を図り、優位性を高めてまいります。また、今後の受注拡大を見据え、ベトナム子会社のAureole Fine Chemical Products Inc.が保有する工場の生産能力増強を図ってまいります。さらに、ベトナム天産物を活用した自社製品の開発にも努めてまいります。
④環境ビジネスについては、環境保全と持続可能な社会の実現を目指し、以下の取り組みを進めてまいります。
有価金属回収事業では、環境省や業界団体が提唱する社会的課題の解決に向けて、廃棄物や廃液に含まれる貴金属を最適に回収するための技術構築に取り組んでおります。また、有価金属回収事業における豊富な経験やノウハウを活かし、その他の資源回収技術の開発にも取り組んでおります。これらの取り組みにより、新たな市場機会を創出し、資源循環性と収益性を向上させるとともに、パートナー企業と協力しながら事業のさらなる発展を目指してまいります。
ブラスト処理事業では、老朽化したインフラ設備や建造物の壁面解体時の塗膜除去作業において、有害物質の飛散を抑えるとともにロボットの活用により遠隔操作で行う技術を確立しております。これにより、従来の作業と比べ、安全面に配慮した作業環境を確保しながら、効率的で高品質な施工を実現してまいります。さらに、今後はパートナー企業との連携によりビジネス拡大を図ってまいります。
水処理事業では、排水処理基準の遵守が求められる中、化学品・排水処理剤・設備等の提案および他セグメントとの協業により総合的な課題解決にも努めてまいります。
子会社の㈱ミライ化成は、リサイクル炭素繊維事業において、青森県に当該事業専用の新たな拠点を開設し、事業拡大に向けた技術開発を進めることで、リサイクル炭素繊維の需要に応えてまいります。
⑤ベトナムにおける化成品販売については、現地商社との協業を図り、自社製造の高付加価値品の拡販に努めてまいります。また、日本の化成品ビジネスで培ったノウハウをベトナムにも展開し優位性を高めてまいります。
次期の業績については、売上高は前期比3.5%増の415億73百万円、営業利益は前期比71.9%増の7億95百万円と予想しております。
<エネルギー関連事業>
エネルギー消費と環境負荷の低減のバランスが求められる現在、災害時における迅速な復旧力や社会全体における負担コストの適切性等、より広い視野に基づいたエネルギー源の選択が重要視されています。当事業は、「さまざまなエネルギー源の特性を踏まえ、地域における最適なエネルギー供給を実現する」という方針のもと、以下の取り組みを進めてまいります。
①石油製品は、引き続き元売り会社との連携を図り、新規顧客獲得および既存顧客への提案活動を継続してまいります。また、パートナー企業や当企業集団内での協業を通じ、環境負荷の低減を目的としたエネルギー源の最適な組み合わせを提案するとともに、これに関連した機器設備の拡販に取り組んでまいります。
②民生用LPガスは、賃貸住宅オーナーや賃貸管理会社、ハウスメーカー等を対象としたイベントの開催や定期的な情報共有を通じて、さらなる関係の強化を図り、集合住宅および戸建住宅での新規顧客獲得を推進してまいります。また、ガス販売にとどまらず、周辺機器の販売や工事受注の拡大、さらには販売エリアの拡大を図るとともに、独自サービス等を活用した付加価値の高い提案にも取り組んでまいります。
③再生可能エネルギーは、パートナー企業との協業により展開している豊富なバリエーションのソーラーカーポートの全国での販売拡大に向け、展示会への出展やグループ間での連携を活かした提案活動等、新たな受注獲得につながる取り組みを継続してまいります。
次期の業績については、売上高は前期比0.1%増の75億24百万円、営業利益は前期比11.7%増の4億4百万円と予想しております。
<住宅設備機器関連事業>
当事業においては、長年にわたり培ってきたディベロッパー、ゼネコン、設計事務所との信頼関係を活かし、マンション・ホテル・老健施設等の数多くの新築・リニューアル案件を獲得してまいりました。これに加えて、卓越した品質と独自性を兼ね備えたオリジナルブランドを軸とした新たな成長戦略を遂行し、高付加価値が期待できる高級・中高級市場での受注活動を推進することで、収益力の向上を目指すとともに、お客様に「唯一無二の高い空間価値」を提供してまいります。
オリジナルブランドでは、バスタブの『JAXSON』『HIDEO』、システムキッチンやシステム収納の『INTENZA®』、モジュラーファニチャーの『Tesera®』といった、高級物件に納入実績を多く持つ製品群のブランド力強化に引き続き注力してまいります。それぞれのブランドアイデンティティ、デザイン、クラフトマンシップを相互に組み合わせることで、各ブランド間でのコラボレーション商品の展開や、ヨーロッパの一流インテリアブランドとのタイアップによる空間の総合提案にも取り組んでまいります。また、海外からの評価が高い一部のオリジナルブランドについては、海外市場での販売開始を視野に入れ、グローバル展開を進めてまいります。さらに、当社グループのオリジナルブランドのほか海外高級ブランド商品のラインナップを拡充することで、今後成長が見込まれる高級・中高級市場をターゲットに、住宅設備機器に関する総合的なブランドビジネスを展開してまいります。
次期の業績については、売上高は前期比8.4%増の142億15百万円、営業損失は5億32百万円(前期の営業損失は4億69百万円)と予想しております。
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