企業兼大株主三菱重工業東証プライム:7011】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

(1)経営方針・経営戦略等

 ア.当連結会計年度の経営環境

 当社グループを取り巻く経営環境は、世界経済においてコロナ禍からの社会経済活動の正常化が進んで堅調な成長を続け、日本経済においても、ウィズコロナの下で個人消費と設備投資を中心に緩やかに持ち直した。

 一方、資源価格上昇を受けたインフレ圧力の強まりや、欧米での急速な金融引締め、ロシアによるウクライナ侵略、米中の対立をはじめとする国際情勢の緊張など、今後の先行きにはなお懸念が残る状況となっている。

 かかる経営環境下においても、当社グループは長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、サステナブルで安全・安心・快適な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献していく。

 イ.中期経営計画「2021事業計画」

2020年10月から開始した中期経営計画「2021事業計画」では、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を重点テーマとし、収益性、成長性、財務健全性及び株主還元の4つの指標を定めて各種施策に取り組んでいる。

「収益力の回復・強化」としては、固定費の削減や生産性の向上に加え、サービス比率の向上、業務プロセスの改善等、事業体質の変革に取り組み、2023年度末「事業利益率7%」、「ROE12%」を目指している。

 また、「成長領域の開拓」としては、エネルギー供給側で脱炭素化を目指す「エナジートランジション」とエネルギー需要側で省エネ・省人化・脱炭素化を実現する「社会インフラのスマート化(モビリティ等の新領域)」を強力に推し進めている。これらの成長分野には「2021事業計画」期間中に1,800億円を投資し、将来的には1兆円規模の事業への成長を目指す。

2年目となる当連結会計年度は、グループ一丸となって取り組んだ各種施策が奏功し、収益性は概ね想定どおり、財務健全性も想定以上の改善であった。2023年度は2021事業計画の最終年度であり、事業環境変化に臨機応変に適応しつつ各種施策の成果を更に拡大させ、総力を挙げて目標達成に取り組む。

 ウ.「MISSION NET ZERO」に向けた取組み

MISSION NET ZEROの実現に向けては省エネ化に継続して取り組んでおり、Scope1、2*1のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2022年で既に47%削減を実現した。これに加え、三原製作所をカーボンニュートラル工場とするための使用電力の100%グリーン化等、更なる取組みを実施している。また、Scope3*1については当社製品の使用に伴うCO2排出量削減(2019年比で、2025年に30%、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂製作所の高砂水素パーク建設をはじめとした様々なソリューションの開発・実証を進めている。

*1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、Scope2以外の当社グループバリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「2021事業計画」の最終年度である2023年度も、当社グループは「収益力回復・強化」に向けて目標の着実な達成に邁進する。また、サステナブルで安全・安心・快適な社会の実現に向け、「エネルギー供給側の脱炭素化」と、「エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化」を両面で進め、これら「成長領域の開拓」のための各種取組みを引き続き展開していく。

 ア.エネルギー供給側の脱炭素化(エナジートランジション)

 脱炭素化への取組みは、これまで欧州が先行していたが、今後はIRA*2の成立した米国を中心に一気に加速することが予想される。また、各国政府支援の対象も、再生可能エネルギーだけでなく、エネルギーの転換、水素の利用、CO2回収分野にも裾野が広がり、カーボンニュートラル社会の実現に向けた動きも現実味を帯びてきている。

 こうした中、当社グループは脱炭素化にCO2を「減らす」「回収する」「出さない」の3つの道筋で対応していく。高効率ガスタービンでは高いシェアを堅持し、老朽化した石炭火力の置き換えによって「減らす」に引き続き貢献する。また、ガスタービンにCO2回収装置を組み合わせる案件の機運が高まっており、「回収する」ことにも積極的に対応していく。そして、CO2を「出さない」水素ガスタービンは、既にEUの規制でガスタービンに課されている2023年以降のCO2排出目標値をクリアするとともに、大型ガスタービンの燃焼試験では50%水素混焼を達成するなど順調に開発が進捗しており、2030年の水素専焼での商用化を目指して引き続き実証を推進していく。

 さらに、CO2回収では、商談が旺盛な欧米の中でも顕著な拡大が予想される米国を中心にFS*3やFEED*4の受注を通じて市場の拡大に貢献し、実機の受注に繋げることで事業拡大を図る。また、CO2排出削減が容易でない産業分野向けでも、回収プロセス改良や設計標準化を進めるとともに、これらの実証をパートナーと一緒に推進し、具体的な商談に結び付けるよう取り組んでいく。加えて、貯留・利活用に関しても、エクソンモービル社との協業を通じて世界各国でのCO2回収案件の組成を進めるとともに、日本でも回収、輸送、貯留の各段階でパートナーと連携しながら、日本政府プロジェクトであるバリューチェーン事業の共同スタディにも参画し、将来の事業化を常に見据えて対応していく。

*2  Inflation Reduction Act(インフレ抑制法)

*3  Feasibility Study(事業化調査)

*4  Front End Engineering Design(基本設計)

 イ.エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化(社会インフラのスマート化)

 エネルギーの需要側では、省人化、最適化、高信頼性をワンストップ・ソリューションで提供して顧客ニーズに応える取組みを進めていく。当社グループでは機械設備や発電設備の制御、遠隔監視・保守、サイバー攻撃防御といった様々なデジタル製品をこれまでも開発、実装してきているが、これらをプラットフォーム「ΣSynX」でかしこくつなぎ、省人化、設計・設備の最適化、高い信頼性といった付加価値を提供していく。

 例えば、物流知能化としては、AGF*5や倉庫内統合制御システムを「ΣSynX」でつなぎ、ピッキングや入出荷、入出庫を自動化するための実証を引き続き進め、事業化を図っていく。また、既に納入実績のある冷凍冷蔵倉庫は、高冷却効率かつ低消費電力に加え、シミュレーション技術を蓄積して更なる最適化を図り、今後ニーズの拡大が見込まれる東南アジアも視野に入れて事業展開を図る。データセンターの分野では高密度・高集積が進む中で省エネ・脱炭素化が大きな課題となっているため、冷却電力の90%以上を削減する次世代冷却技術の実証を更に進めている。これに加えて、高信頼性かつ高効率の電源・冷却システムと監視・統合制御システムをワンストップで提供する体制を整え、今後の受注拡大に向けて取り組んでいく。

*5  Automated Guided Forklift(無人フォークリフト)

 ウ.新たな事業機会と収益力の回復・強化

 当社グループを取り巻く事業環境は、経済分断の進展、脱炭素に向けた各国政府支援の拡充、経済安全保障機運の高まりなどによって大きく変化しており、これまで述べてきた分野に加えて、特に原子力と防衛の分野で新たな事業機会が生じている。原子力発電システムは、カーボンフリーとエネルギーセキュリティを両立させる大規模・安定電源であり、国内での既設プラントの再稼働や燃料サイクル確立への支援を続けるとともに、革新軽水炉「SRZ-1200」の2030年代半ばの実用化に向けて開発・設計に着実に取り組んでいく。また、大量かつ安定的な水素製造を可能とする高温ガス炉の開発や、海外との高速炉開発に向けた協力などの多様な取組みを推進していく。防衛の分野は、昨今の国家安全保障強化の機運の高まりを受けて、国の防衛力整備計画が大きく拡充されている。当社グループは高い技術力で多様な装備品に対応できるリーディングカンパニーとして引き続き安全・安心な社会を支える役割を担っていく。

 また、今後の事業環境の変化に的確に対応しながら、事業ポートフォリオの見直し、成長領域へのリソースシフトの加速、構造改革やアセットマネジメント、コーポレート部門の業務効率化といった収益力の回復・強化に向けた取組みも、これまで同様、着実に進める。

 当社グループは、「MISSION NET ZERO」の活動を通じ、環境価値と経済価値を両立させながらカーボンニュートラルの達成に取り組み、事業を通じた社会課題解決によってサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来同様コンプライアンスが大前提であるとの認識の下で各種施策を進めていく。

有価証券報告書PDFより抜粋
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