企業兼大株主三菱化工機東証プライム:6331】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

当社グループの研究開発活動は、既存技術・各種装置の高度化並びに技術の差別化・競争力の向上を目指し、開発を行っております。また、新分野への積極的展開及び新技術・新製品開発を行っており、当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発費は、エンジニアリング事業219百万円、単体機械事業290百万円の総額510百万円であります。主な研究開発は次のとおりであります。

(エンジニアリング事業)

「廃プラスチックのガス化及びメタノール化実証事業」

 世界では海洋プラスチック問題が社会問題化するなど環境保護等の観点から、プラスチックのリサイクル方法確立の必要性が急速に高まっており、本事業はこれまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システム構築を目指すものです。

 現在、実用化されている廃プラスチックのリサイクル技術は、リサイクル品の品質を確保するため、原料に一定の純度・清浄度が求められております。

 純度・清浄度が低く、リサイクルが困難な雑多なプラスチック(以下、雑多な廃プラ)は、単純焼却・熱利用焼却・埋立てにより処理されておりますが、プラスチック資源の循環と脱炭素化をいかに両立していくかが大きな課題となっております。

 上記のような課題に対し、流動床ガス化技術を有する神鋼環境ソリューション、廃プラスチックのケミカルリサイクルを推進する大栄環境及びDINS関西、水素製造・合成ガス製造技術を有する当社及び環境循環型メタノール構想を推進する三菱ガス化学は、循環型社会の構築に貢献するために、廃プラスチックの有効資源化を進めたいという共通の思いのもと、雑多な廃プラであっても処理可能な流動床式ガス化技術をベースに、雑多な廃プラをガス化して得られた合成ガスからメタノールを合成する、国内初のケミカルリサイクル技術を構築する共同実証プロジェクトを実施しました。当社は、水素製造技術等で培った触媒技術・ガス改質技術を活用し、廃プラスチック等のガス化炉から得られる合成ガスをケミカルリサイクル可能なガスに改質するプロセスの検証を行い、メタノール合成に適した改質ガスを製造することに成功致しました。今後はスケールアップ検討を実施し、商用化に向けた取り組みを継続してまいります。

「高効率消化システムによる地産地消エネルギー活用化技術」

B-DASH実証事業として、唐津市浄水センターに建設した実証施設は、2019年度より自主研究として実負荷運転を継続してまいりました。2020年3月には、国土交通省及び国土技術政策総合研究所(国総研)より本技術に関するガイドラインが公表され、技術的な方向性が明確化されました。昨年度2024年度(自主研究6年目)は、国総研との契約に基づく最終年度として、自主研究の最終報告を2025年3月に完了しております。

 また、唐津市浄水センターにおいては、2023年3月に既設の消化タンク(容量:1,860m³)の機械設備改修に伴い、当社の可溶化装置を加温設備として導入しております。本装置は、自治体向けとしては初の導入事例となります。

 この導入により、当浄水センターで発生する汚泥の全量を高効率消化システム(熱可溶化方式)により処理するシステムが整い、導入効果の継続的な調査を実施しております。

2024年度の調査結果として、以下の成果が確認されました。

·排出汚泥量:約45%削減

·放流水質への悪影響:確認されず

 これらの成果は、2025年8月に開催予定の「第62回下水道研究発表会」において報告を予定しております。

 別途、今後の市場拡大が見込まれる汚泥集約処理に向け、外部汚泥の受け入れに対応した可溶化装置の適用に関する研究も進行中です。

国内の各自治体においても脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速する中、引き続き本システムの導入促進及び拡販を積極的に推進してまいります。

(単体機械事業)

「iFactory®の開発」

NEDO(*)が取り組む「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/テーマ設定型事業者連携スキーム」の一環で、当社は現在のバッチ式製造法にかわり、連続生産方式を採用した再構成可能なモジュール型の医薬品製造設備「iFactory®」(アイファクトリー)の開発に参画しております。

 当社は連続真空ろ過機「CURUPO®」(クルポ)と連続棚段乾燥機「プレートドライヤ―」を、プロセスに応じて組み換え可能なモジュール「iCube」内へ組み込み、制御システムの動作検証、自動運転調整を行った後、2022年10月に株式会社高砂ケミカル様の掛川工場iFactoryに納入致しました。その後、iFactoryを構成する前後段のiCube、ユーティリティを構成する「iConnect」と連結され、消防検査を経て、2023年2月、掛川工場iFactoryの竣工式が執り行われ、iFactory全体の運転検証を開始しております。

2023年4月より開始した実証試験では3種類の化合物を連続生産し、バッチ生産と同等の品質が確保されていることを確認しました。更に本開発の功績が特に顕著であると認められ、2023年度「NEDO省エネルギー技術開発賞」最優秀事業者として「理事長賞」を受賞致しました。

また、最新の実証結果から、連続晶析したスラリーの濃縮装置として回転式セラミック膜ろ過機「DyF(ダイナフィルタ)」が新たなラインナップに加わりました。当社は「iFactory®」の普及により、生産性の向上とCO2排出量の大幅な削減を目指してまいります。

* NEDOは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称。本内容成果の一部は、NEDOの助成事業の結果得られたものです。

(その他)

「微細藻類によるカーボンニュートラル社会の実現を目指した研究開発」

 当社は、製造機能を兼ね備えたエンジニアリング会社として、カーボンニュートラルな社会を実現できるよう取り組んでおります。その1つとして、微細藻類を原料としたバイオジェット燃料開発への研究協力など、微細藻類に関連する取り組みを進めております。

2022年度に国立研究開発法人科学技術振興機構「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)・共創分野(本格型)」に採択された、「バイオDX産学共創コンソーシアム(代表機関:国立大学法人 広島大学)」の『Bio-Digital Transformation(バイオDX)産学共創拠点』に当社も参画し、東京科学大学太田啓之名誉教授のもと「カーボンゼロを推進するバイオものづくり」を目標に、「微細藻類および植物による有用物質生産プラットフォームの開発」として、当社川崎製作所敷地内の実証エリア(200㎡)に、当社製品である都市型フォトバイオリアクターとレースウェイ培養装置を複数基設置し、多角的な微細藻類の研究開発を実施しております。藻類培養に必要な二酸化炭素は、隣接する当社の水素製造装置「HyGeia-A」の排ガスを供給源とし、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)をはかっています。

 また、ちとせグループが運営する『MATSURI(まつり)』の活動に賛同し、ゴールドパートナー契約を締結しています。『MATSURI』は多様な業界から様々な企業が参加している藻類を活用した企業連携型プロジェクトで、光合成を活用した藻類の生産を通じてカーボンニュートラル実現を推進すると同時に、パートナー企業間で連携して事業開発を行い、再生燃料をはじめプラスチックや食品、化粧品など人々の生活を支える藻類製品を社会に普及させることを目指します。

 ちとせグループの中核法人である株式会社ちとせ研究所は、2023年3月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術による二酸化炭素を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に「光合成によるCO2直接利用を基盤とした日本発グローバル産業構築」のテーマで採択され、マレーシアでの大規模実証が進められています。当社は微細藻類ソリューション技術やエンジニアリング技術を応用して、新規事業を見据えた新たなソリューションの開発・提案に取り組み、サステナブルな社会づくりに貢献してまいります。

「電界フィルターEle-Fil®の開発」

 膜分離をはじめとする従来のろ過法は、微粒子をろ材が濾し取る直接ろ過方式です。ろ過はケーク形成や目詰まりによる性能低下という恒久的な問題を有しています。ケーク形成や目詰まりが進行すると、ろ液が流れにくくなり、処理量が低下していきます。この問題の解決に取り組んでいた際に、ろ液中の粒子は弱いマイナスの電荷を帯びていることに着目し、荷電粒子間に働く反発を利用する「電界ろ過法」を開発しました。本装置は電気を利用したろ過方法をイメージして、Electric Filter の略称「Ele-Fil®」と命名しました。

 電界ろ過法とは、積層構造の電極ろ板に形成された電界バリアの電気的反発作用を利用した非接触ろ過方法です。ろ過室に供給されたスラリー液(原液)を、電界ろ過法によって精密にろ液と濃縮液に分離できます。ナノ(nm)レベルの細かい粒子のろ過が適応できます。

 電界ろ過法は従来困難とされていた精密分離や、分離時間の短縮、メンテナンス性の向上など、様々な可能性が期待されます。社会実装に向けて、多くの用途開発を実施してまいります。

「CO2分離膜を利用したCO2分離回収型水素製造装置とCO2有効利用技術の開発」

 当社と次世代型膜モジュール技術研究組合(以下、MGM組合という)は、両者が共同提案した「高圧用CO2分離膜の水素製造システムへの適用性検討」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)が公募した、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2分離・回収技術の研究開発/二酸化炭素分離膜システム実用化研究開発」の助成事業として、2024年5月に採択されました。

MGM組合が開発しているCO2分離用分子ゲート膜は、二酸化炭素を選択的に透過する特性があります。この分離膜を水素製造工程に適用するため、同組合は分圧・濃度が低い中圧水素製造工程ガスからでも安定的に高効率に二酸化炭素を分離・回収できるよう、分子ゲート膜をチューニングし、商用サイズの膜エレメントを提供します。当社は、水素製造装置に分離膜を組み込んで、高純度水素製造と二酸化炭素回収機能を有する実証機を設計・製作し、2026年度に実証試験を行う計画です。2024年度は水素とCO2の精製に関する要素試験を実施、またCO2分離膜の特性に適合した運転条件と制御方法を検討し、高効率なCO2分離回収型水素製造装置の基本設計を行いました。

 当社では別途PSA法による二酸化炭素回収技術にも取り組んでいますが、分離膜を適用する本技術は、二酸化炭素を分離しやすい水素製造工程で分離するため、コスト低減が期待できます。

 当社とMGM組合は、実証試験の結果をもとに二酸化炭素分離回収コスト、低炭素水素製造コストの評価を行い、2030年に予想される低炭素水素市場価格や二酸化炭素市場価格に経済的に見合った製造コストとするための課題を洗い出し、早期の社会実装を目指します。

 また、二酸化炭素回収装置を普及させるためには、回収した二酸化炭素の有効利用方法も重要な課題です。当社ではその一つとして、メタネーション装置の開発に取り組んでいます。同装置は分離回収した二酸化炭素と水素を反応させメタンを合成する技術で、反応させる水素が再生可能エネルギー由来の場合には、カーボンニュートラルなメタンが製造可能となるため、カーボンニュートラルに貢献できる技術として期待されています。現在、ベンチスケールでの試験を行っており、今後実証機を製作し、当社川崎製作所内の実証水素ステーションで、実証試験を行う計画です。

「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステムの研究開発」

 当社は、東海国立大学機構 岐阜大学、株式会社レゾナックと共同で、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」の研究開発テーマ「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」に取組んでおります。

 アンモニアは早期に社会実装可能な脱炭素エネルギー及び水素キャリアとして期待されておりますが、現状産業・運輸・民生分野でのアンモニア利用の用途は非常に少なく、アンモニア・水素利用の拡大を可能とする技術開発が喫緊の課題であり、2030年社会実装を目指して早急に取り組む必要があります。

SIPの研究開発テーマ「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」は、アンモニアの使用先として期待の高い、工業炉、ボイラー、ガスエンジン及び燃料電池発電システム、コミュニティ内水素搬送・利用システムの要素研究と実証研究を目的としており、当社はボイラー等の燃焼器向けアンモニア改質器ユニットと、燃料電池向けアンモニア改質器ユニットの研究開発を行っております。2024年度は、燃焼器向けアンモニア改質器ユニットの実証試験装置について設計を完了し、機器調達、製作に着手、加えて燃焼器向けアンモニア改質器ユニット用触媒(ATR触媒)のスクリーニングを実施しました。また、燃料電池向けアンモニア改質ユニットは全体システム検討と燃料電池向けアンモニア改質ユニット用触媒(分解触媒)のスクリーニングを行いました。

 研究開発期間は2028年3月までを予定しており、今後は実用機設計・製作を進め、早期の社会実装を目指します。

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