企業兼大株主三菱マテリアル東証プライム:5711】「非鉄金属 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2023年6月23日)現在において判断したものであります。

1.全社課題

 当社グループは、2020年度から2022年度までを対象とする中期経営戦略において、2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標である「豊かな社会」、「循環型社会」及び「脱炭素社会」の構築に貢献するという会社の目指す姿の実現に向け、「事業ポートフォリオの最適化」、「事業競争力の徹底追求」及び「新製品・新事業の創出」という3つの全社方針を掲げて取り組みを進めてまいりました。「事業ポートフォリオの最適化」については、事業の整理を進めたことにより、事業の選択は概ね完了いたしましたが、財務目標については、売上高及び営業利益は目標を達成したものの、エネルギー価格や原材料価格高騰などの影響や持分法による投資損失の計上等により、経常利益及びROICは目標未達となり、事業競争力の強化や収益性の改善に課題が残っております。

 こうしたなか、当社グループは、2023年2月10日付で、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略(以下「中経2030」といいます。)を新たに策定いたしました。中経2030においては、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「循環をデザインする」という新たなビジョンを掲げ、「持続可能な社会(豊かな社会、循環型社会、脱炭素社会)を実現する」ことをミッションとしており、今後、企業価値の向上に向けて、中経2030に基づく諸施策を実施してまいります。中経2030の概要は以下のとおりです。

①目指す姿

(イ)私たちの目指す姿

 当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを私たちの目指す姿とし、自社の持つ強みをもとに金属資源の循環を強化し、対象範囲、展開地域、規模の拡大によりバリューチェーン全体での成長実現に取り組んでまいります。

(ロ)戦略ロードマップ

 中経2030においては、2023年度から2025年度までの3年間をPhase1、2026年度から2030年度までの5年間をPhase2とし、私たちの目指す姿の実現を図ります。Phase1においては、プロダクト型事業を中心にコスト競争力強化に基づく利益成長・収益性改善を進めるとともに、資源循環などの中長期の成長領域への投資を実行します。Phase2においては、対象領域の拡大や海外を含む地域展開により事業拡大を図ってまいります。

(ハ)財務目標

Phase1の最終年度である2025年度では、売上高1兆9,400億円、営業利益700億円、経常利益870億円、ROIC 5.5%、ROE 10.0%、EBITDA 1,500億円、ネットD/Eレシオ 0.7倍、ネット有利子負債/EBITDA倍率 3.5倍を計画しています。

Phase2の最終年度である2030年度では、売上高2兆円、営業利益1,300億円、経常利益1,800億円、ROIC 9.0%、ROE 13.6%、EBITDA 2,600億円、ネットD/Eレシオ 0.5倍以下、ネット有利子負債/EBITDA倍率 2.0倍以下を目標としています。

(ニ)キャピタルアロケーション

Phase1においては、対象期間累計キャッシュイン4,200億円に対して、成長投資2,300億円、維持更新投資1,300億円、配当など600億円のキャッシュアウトを計画しております。Phase2においては、対象期間累計キャッシュイン7,900億円に対して、成長投資3,300億円、維持更新投資2,100億円、配当など1,800億円、有利子負債削減700億円のキャッシュアウトを計画しています。

(ホ)株主還元

 当社は、株主に対する利益還元が経営の最重要目的の一つであるという認識のもと、利益配分については、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、決定する方針としております。

 中経2030期間中の利益配分については、Phase1の2023年度から2025年度の期間において、配当性向30%を目途に利益還元を行います。また、Phase2の2026年度から2030年度の期間においても株主還元の充実を図ります。なお、自己株式取得については、キャッシュフローの状況、株価、及びネットD/Eレシオ等の財務規律を踏まえ、引き続き機動的に行うことを検討してまいります。

②企業価値向上に向けた取り組み

(イ)事業ポートフォリオ経営

Phase1ではコスト削減・プロセス最適化などの施策を実施し、ROIC改善による収益性の向上を目指してまいります。Phase2では長期の先行投資を要する資源事業も含め全事業でROICと事業別WACCの差となるROICスプレッドがプラスとなり、投下資本を乗じたエコノミックプロフィット(=ROICスプレッド×投下資本、以下「EP」)の最大化を目指してまいります。

 事業ポートフォリオ経営の方針は次のとおりです。

・ 成長性と収益性の2軸で事業ポートフォリオを管理、経営資源の配分を最適化

・ 事業の成長性をEBITDA成長率で評価し、市場の成長率で補完

・ 企業価値向上に向け、ROICスプレッドの維持・向上を図りつつ、EPの増加を目指す

・ 金属事業カンパニーと環境リサイクル事業の統合(製錬・資源循環)による効率化を図り、事業価値向上を

 加速

(ロ)投資配分と利益貢献

2030年度までの成長投資総額5,600億円のうち、鉱山投資やタングステン事業への投資など循環型社会貢献に2,500億円、高機能製品カンパニー及び加工事業カンパニーの競争力強化に2,800億円、地熱発電事業強化など脱炭素社会への貢献に300億円の投資を計画しています。

 投資配分の考え方は次のとおりです。

・ ミッションへの適合、及び、維持更新と成長投資のバランスを考慮し投資対象を選定

・ 事業特性に応じたリターンを評価し、事業間で適正に配分

・ 事業毎の財務健全性を保ちつつ、全体のネットD/Eレシオ 1倍以下の財務規律を維持

(ハ)コスト競争力強化

 中経2030では、コスト競争力強化にも取り組み、総額約240億円(Phase1:約90億円、Phase2:約150億円)のコスト削減をいたします。

 営業利益に対するコスト削減累計額の比率は、2025年度で約13%、2030年度で約19%を見込んでいます。

③事業戦略

 中経2030における事業別の目標及び事業戦略は次のとおりです。

・金属事業カンパニー

 目標:非鉄金属の資源循環におけるリーダー

事業戦略

資源事業

●銅鉱床に含まれる希少資源の確保・回収に向けた技術開発の推進

●継続的な鉱山投資による権益の獲得と銅精鉱の安定確保

●銅鉱山でのSX-EWによる銅供給量の拡大

製錬・資源循環

事業

●資源循環の推進に向けたネットワーク強化・規模拡大

●電気銅生産能力の拡大

●E-Scrap類の処理拡大によるリサイクル率アップ

●レアアース、レアメタルリサイクル事業の創出

●国内及び海外展開の加速(E-Scrap、家電、自動車リサイクル)

※SX-EW:Solvent extraction and electrowinning 溶媒抽出と電解採取の2段階からなる湿式製錬プロセス

・高機能製品カンパニー

 目標:グローバル・ファースト・サプライヤー

事業戦略

銅加工

事業

●伸銅品リサイクル率を向上し、スクラップのプラットフォーム基盤を確立

●海外(ルバタ社):成長市場(xEV、医療、環境)への迅速な参入

●国内工場をマザー工場と位置づけ、海外に新たな川下工場を検討し、海外顧客への拡販、サービスを強化

電子材料

事業

●事業ポートフォリオの継続的な組み換えによる高資本効率経営

●成長領域の注力製品への戦略投資

●新規事業創出や事業提携の推進及びそのための人材育成と確保

●ものづくり力とDXの強化による生産高度化、稼ぐ力の追求

●カーボンニュートラルに向けた事業、社会的価値(SDGs)の提供

・加工事業カンパニー

 目標:グローバルで顧客が認めるタングステン製品のリーディングカンパニー

事業戦略

加工事業

戦略市場で自律した事業展開を目指し、真のグローバル企業へ変革する

<超硬工具事業>

●素材とコーティング技術の強みを活かした高効率製品を世界No.1品質で安定的に提供

<タングステン事業>

●超硬工具向けに加え、二次電池向け等に事業規模を拡大

●環境対応力の強化

<ソリューション事業>

●ものづくり現場へのコト売りを事業化

・再生可能エネルギー事業

 目標:再エネ電力自給率100%に向けた再エネ発電の拡大

事業戦略

再生可能

エネルギー

事業

再生可能エネルギー事業を全社的な取り組みとして戦略本社に集約し、長期的な視野で事業の拡大を推進

●地熱事業の拡大に向け、3年に1箇所のペースで新規開発を実施

●将来的に発電コスト低下が見込まれる風力発電への新規参入

●新規バイオガスプラントの更なる拠点の展開

 なお、当社は2023年4月1日付で、従来の環境・エネルギー事業カンパニーが所管する「環境リサイクル事業」を金属事業カンパニーに統合し、「再生可能エネルギー事業」を戦略本社に新設する「再生可能エネルギー事業部」に移管する組織変更を実施いたしました。(これにより、同日付で環境・エネルギー事業カンパニーは廃止となりました。)

④カーボンニュートラル

 当社グループの温室効果ガス排出量のうち、事業者自らによる直接排出であるScope1及び供給されたエネルギー利用に伴う間接排出であるScope2を2030年度に47%以上(2020年度比)削減し、2045年度までにカーボンニュートラル実現を目指します。また、Scope1とScope2以外の事業者の活動に関連する他社の排出であるScope3を2030年度に13%以上(2020年度比)削減します。さらに、2050年度までに当社の再生可能エネルギー由来の電力自給率100%を目指します。

⑤経営基盤強化

 次のとおり、グループ共通の課題に対する取り組みを強化するとともに、経営基盤の強化も引き続き行い、企業価値向上を図ってまいります。

ものづくり戦略

●中経2030に基づく工場ビジョンの策定、及び工場実力評価と課題設定・解決を追求

●ボトムアップ活動、ものづくり基盤強化、技術開発・改善による「ものづくり力の別格化」

研究開発戦略

●新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現

人事戦略

●人材の価値最大化と「勝ち」にこだわる組織づくり

●共創と成長を生み出す基盤の構築

DX戦略

●データとデジタル技術を活用し、ビジネス付加価値向上、オペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を推進

●開始から2年以上が経過する中で、ものづくりの強化と従来テーマの着実な実行を行うべく、テーマ再編成、体制強化等を行い、「MMDX2.0」として新たなフェーズへ

IT戦略

●MMCグループIT WAYを実現するため、データ活用・働き方・セキュリティの観点から事業を支えるITモダナイゼーションの推進

●100億円規模の投資を行い、2030年度におけるITコストは売上高比率1.0%以下

2.事業別課題

●金属事業

 主要製品である銅地金は、中長期的には需要の増加が見込まれ、短期的にも中国経済の回復が需要を牽引することが見込まれます。また、主要原料である銅精鉱の調達は、大規模新規鉱山における生産開始が予定されている一方、製錬能力の拡大は限定的であることから、需給バランスは緩和することが見込まれます。他方で、E-Scrap市場の競争激化やエネルギーコストの高騰等への対応が急務となっております。

 このような状況のもと、資源事業では、権益を保有する鉱山において、着実にプロジェクトを遂行するほか、継続的な鉱山投資による権益の獲得と銅精鉱の安定確保のため、中規模銅鉱山への新規参画に向けた検討を進めてまいります。また、銅鉱山におけるSX-EW(湿式製錬)への参画による電気銅の供給能力拡大や、銅鉱床に含まれる希少資源の確保・回収に向けた技術開発を推進してまいります。

 製錬・資源循環事業では、当社独自の三菱プロセスの環境的優位性を最大限に活かしつつ、有価金属の回収技術を一層発展させ、廃棄された製品を分解・分離して、銅製錬プロセスへ投入可能な原料を取り出し、有価金属を抽出するリサイクルプロセスの効率的な運営に取り組んでまいります。E-Scrap類の処理能力拡大に向け、小名浜製錬所への前処理設備の導入や直島製錬所の銅精鉱処理能力の増強を図るとともに、Exurban社への出資を通じた米国におけるE-Scrapビジネスの拡大や廃自動車等からのLIBリサイクルの事業化を推進してまいります。

●高機能製品

 高機能製品の市場環境は、自動車関連需要についてはEV化による高電圧化、大電流化及び車載関連製品の高度化により、半導体関連需要についてはEV化やIoT化の進展等により、それぞれ中長期的な成長が期待されます。しかしながら、足許では、自動車関連では半導体や各種部材等の調達不安があるほか、半導体関連では市況に減速感がみられるなど、主要顧客やサプライヤーの生産活動の動向等が懸念されることから、経済情勢や市場環境を注視してまいります。

 このような状況のもと、銅加工品は、次世代自動車、半導体などの成長市場を中心に高性能な製品を提供してまいりましたが、更なる需要の増加に応えるべく、生産能力を現行から約3割増強させる総額約300億円の設備投資を着実に進めております。さらに、マーケティングや研究開発、販売体制の強化を進め、開発・製造・販売が一体となって高付加価値製品を提供することにより、収益力を強化してまいります。

 電子材料は、半導体、次世代自動車などの成長市場向けの注力製品に対して、M&Aを含む積極的な投資を行い、新事業の創出や既存事業の拡大を進めてまいります。2023年度より、新たに事業部横断の開発組織を設置し、新事業・新製品の開発を加速させるとともに既存事業間のシナジー強化を目指してまいります。さらに、事業ポートフォリオの継続的な組み替えにより高資本効率経営に取り組んでまいります。これらにより、持続的に成長する高収益事業体となることを目指してまいります。

●加工事業

 超硬製品の市場環境は、中長期的には安定成長が見込まれ、また、短期的には、航空宇宙産業等の需要が牽引し、緩やかな回復基調となることが見込まれます。しかしながら、足許では、新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナ情勢によるサプライチェーンの混乱、エネルギーや原材料価格の高騰等の影響が残るほか、国内を中心とした自動車の生産回復の遅れによる需要後退等のリスクも懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。

 このような状況のもと、超硬工具事業では、海外販売強化による売上拡大、スマートファクトリー化によるコストダウン及びDX活用による販管費削減等により、収益改善を進めてまいります。タングステン事業では、超硬工具向けに加え、マサン・ハイテック・マテリアルズ社との協業による二次電池市場へのタングステン供給とリサイクル基盤を構築し、事業規模拡大を行います。ソリューション事業では、ものづくり現場へのコト売りの事業化を目指し、M&Aやテクニカルセンターの活用のほか、事業会社の設立も視野に検討を深めてまいります。そのために、まずはデジタル技術による切削加工ソリューション提供の拡充を進めてまいります。

●再生可能エネルギー事業

 再生可能エネルギー事業の事業環境は、中長期的な社会課題として、都市型廃棄物の効率的処理やエネルギー資源の効率的な活用、温室効果ガスの排出削減要請といった環境問題への対応を強化することが強く求められております。

 このような状況のもと、昨年12月に運転を開始した小又川新水力発電所の効率最大化に取り組むほか、進行中の安比地熱発電所(2024年4月に運転開始予定)の建設をスケジュールどおりに進めてまいります。また、食品廃棄物のバイオガス化事業においては、集荷量の確保及び安定操業に注力するとともに、新規拠点の展開に向けた検討を進めてまいります。また、人材育成にも注力するほか、事業拡大に向けて、新規の地熱地域及び風力発電事業の調査を行うとともに、海外展開についても検討を深めてまいります。

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