リックソフト
【東証グロース:4429】「情報・通信業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは「イノベーションをおこして、あらゆる人の可能性を最大化する」をミッションとして掲げております。
そして、イノベーションをおこすことによってすべての人が新たな可能性をみいだし、社会が持続的に成長し続ける未来の実現を目指してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略等
当社グループの事業ドメインを、従来の事業ドメインである「価値ある道具(ツール)の提供」から「顧客に合わせた付加価値を提供」へ、事業ドメインを拡張し事業成長を目指してまいります。
この事業ドメインには、システムインテグレーションを行う大手SIer(注1)や業種特化したSIer、そしてコンサルティング会社など多くのプレイヤーが存在します。
これらのプレイヤーと同じ価値をお客様へ提供しても当社グループの存在価値が薄れるという考えより、国内では以下の差別化戦略を取っております。
・先進テクノロジ提供戦略
海外で評価の高い先進テクノロジを厳選し国内向けに提供します。ここで先進テクノロジとはAI等のテクノロジ自体だけでなく製品も含みます。
目利き力により筋の良い先進テクノロジを素早く発見し、他プレイヤーより先に顧客へ提案し差別化します。
ある程度の時間が経過すると、他プレイヤーも同じテクノロジを扱いはじめますが、当社グループは技術者集団から生まれたため、その先進性や本質を理解しています。よって顧客のビジネス課題を解決するために効果的に先進テクノロジを利用できます。また、日本顧客向けに追加機能の開発や利用しやすくサービス化した形でお客様へ提供し、他プレイヤーと差別化します。
・段階的拡大(ランド・アンド・エクスパンド)の販売戦略、顧客中心の営業戦略
当社の顧客は大企業が中心となっておりますが、当社の販売戦略として、最初は組織の一部に導入し、当該部署での成功体験を足掛かりとして、他部署への展開や全社的な標準システムとして顧客内での利用拡大を進めます。これを段階的拡大(ランド・アンド・エクスパンド)戦略と呼びます。大企業においては、ひとたび業務システムを導入すると、当該システム上で数千規模のプロジェクトが管理されることとなるため、簡単にはリプレイスすることができず、継続率が高いという傾向があります。結果的に顧客とは長いお付き合いとなり顧客を中心に考えた営業戦略を取ることができます。
今後はコンサルティングサービスを提供することで、より多くの大企業向けに標準ツールとして採用されるよう取り組みを進めてまいります。
・顧客専門チーム戦略
新しいシステム導入に際し、業界の独自の文化や商習慣など顧客自身では対処が難しい課題があります。当社は顧客ごとにプロジェクトチームを組んで、お客様自身では対処が難しい課題に対し、一緒に考え、解決策を企画し、実際に解決していくところまで一緒に行います。
実際に解決していくことを伴走支援やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)と呼びます。当社の伴走支援チームやBPOチームは、顧客の一員として顧客のビジネス課題の解決に顧客と一緒に取り組みます。
当社グループでは海外展開も実施しており、日本を除いた全ての国を市場としたグローバル市場に対し以下の戦略を取っております。
・Atlassianエコシステムを活用できる市場から攻める
グローバル市場では国内市場とは異なる営業戦略や商品戦略が必要です。つまり対象とする市場に対する知識、ノウハウが無いと全く戦えません。
幸いなことに、当社グループはグローバル市場においてAtlassian社のパートナーランキング上位をキープしており、Atlassian社に関連する市場(以下、Atlassianエコシステムと記載する)に詳しく、Atlassianエコシステムではリックソフトという名前が良く知られています。この有利な状況を利用し、Atlassianエコシステムから自社開発したプロダクトを海外展開する戦略をとってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
顧客への提案に係るライセンス販売、コンサルティング・環境構築・カスタマイズ・運用支援等のSI、システムの稼働環境を提供するマネージドサービス、自社開発したプロダクトから構成される「売上高」を重要な指標と位置付けております。
そして、事業拡大を推進し、継続的な成長及び企業価値の向上を実現していく上で利益を確保することは重要であり、「顧客数」「認定技術獲得数」及び「EBITDA」を重要な指標と考えております。
(4) 経営環境
昨今のデジタルトランスフォーメーション(注2)の流れの中で、製造業、金融・保険業、そして卸売・小売業など多くの業種にAI(注3)、IoT(注4)、AR/VR(注5)という新技術の波が押し寄せております。この流れの中で、このような新技術のソフトウェア開発においては、従来のウォーターフォール型開発(ソフトウェア開発にあたり、要件定義、設計、実装、テスト、リリースまでのサイクルを一回で行う開発手法。サイクルは一年以上に及ぶケースが多い。)から、アジャイル型開発(要件定義、設計、実装、テストのサイクルを短く設定し、市場環境の変化を受けて要件定義を柔軟に変更する前提で順次開発する手法。サイクルは通常2週間程度。)へと、ソフトウェア開発手法のトレンドが変化しつつあります。ウォーターフォール型開発においては、開発開始から開発完了までの作業工程を最初に確定できるため、要件定義が変わらない前提においては効率的な開発が可能となりますが、新技術の開発という領域においては、ライバル製品の出現等、市場環境の変化のスピードが速いため、ウォーターフォール型開発では開発したソフトウェアの競争力が損なわれる恐れがあります。これに対応する開発手法がアジャイル開発であり、敢えてサイクルを短く設定することによって市場環境に応じた臨機応変な開発を可能とするものであります。また、短いサイクルで臨機応変に開発を進めていくアジャイル開発が更に発展した概念として、開発チームだけではなく運用チームまで巻き込んで組織的にPDCAサイクルを回していくDevOpsという概念も近年広がっております。
当社グループが主に取り扱うAtlassian製品は、先進テクノロジの代表格となるもので、アジャイル開発やDevOpsを支える管理システムであります。
また、日本国内における先進テクノロジ導入は海外に対して遅れており、調査会社の調査によると、日本におけるアジャイル開発の浸透は、海外と比較して5年程度のタイムラグがあるものと推察され、アジャイル開発が国内に浸透していく流れの中で、国内におけるAtlassian社のソフトウェア導入は今後も進展していくものと認識しております。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは継続的な成長を目指すため、対処すべき課題を以下のとおり設け、その実現のための施策を実施してまいります。
①事業基盤の強化、優秀人材の確保
会社の全体的な収益拡大を行うために、Atlassian製品及びWorkato製品やMiro製品などAtlassian製品以外の先進テクノロジの活用を促すことのできる優秀な営業部員に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)といった先進テクノロジを積極的に取り入れ、これまでにない新たな顧客体験と価値創造を実現していくためにはコンサルティングや自社開発したプロダクトの製品ラインナップを拡充も含めた開発を担うことのできる高い技術力を伴う人材の確保が急務となっております。
当社グループは2023年8月にミッション・ビジョン・バリューを刷新いたしました。新しいミッションに紐づいた新人事制度は2024年3月より運用を開始しており、会社の成長とともに従業員の成長が実現できることを確信しております。また、従業員の多様な働き方に対応するためリモートワーク、フレックスタイム制や時短勤務制度といった制度を導入済みであり、個々人の成長とワークライフバランスを同時に実現をさせることにより、引き続き優秀な人材の獲得に努めてまいります。また、事業の安定化とお客様からの信頼度を高めることを兼ね、認定資格(「Atlassian Accreditations 」をはじめAWS等)の取得については、さらなる認定技術獲得数のアップに努めます。その他、要員規模の拡大に伴い法令対応してきた、産業医・衛生委員会の設置、メンタルヘルス対策をはじめ、適切な対策を施し従業員が安心して働ける健康的・衛生的な職場環境を築いてまいります。
②海外での売上拡大に向けてのマーケティング強化とブランド力の向上
自社開発したプロダクトに関しては、日本のみならず海外への売上拡大も見据えた製品開発(各種言語に対応等)を行っています。海外のライバル会社に負けない製品を開発するためクラウド技術とUI/UX力を強化させてまいります。海外子会社は当社の製品を「価値あるツール」として世界に広めるというブランド力の向上も担っております。
③収益基盤の多様化
当社グループは、Atlassian関連事業に特化し、Atlassianの担うプロジェクト管理ツール・コミュニケーションツール市場にて拡大するビジネススタイルを着実に実行し、今日の成長につなげてまいりました。同市場への依存度は当面の間高水準で推移していくと予測されます。従って、Atlassianの担う同市場に変化が生じた場合には、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。中長期的にはAtlassian製品以外(Workato製品、Miro製品等)の最先端のツールや新たな顧客体験の提供、価値創造を提案できるコンサルティング等、Atlassian製品に直接依存しない売上を高めていく必要があると考えております。あわせてグローバル市場で成長を続ける自社開発プロダクトについても、引き続き力を入れていきます。
④経営管理体制の強化
当社グループは、市場動向、競合企業、顧客ニーズ等の変化に対して素早くかつ柔軟な対応が可能な組織運営をするため、経営管理体制のさらなる強化を図ってまいります。また、企業価値を継続的に向上させるため、内部統制の構築、セキュリティ対策の強化、企業コンプライアンスなど全役員・従業員が高いレベルの意識を持って取組めるように努めてまいります。
注1.SIer
システムインテグレーターの略で、企業のシステム開発をコンサルティングから運用・保守まで一貫して請け負う企業を指します。主に顧客の経営課題をITで解決するサービスを提供します。
注2.デジタルトランスフォーメーション
2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」。IoT、AI(人工知能)、ビッグデータ・アナリティクス(解析)など、デジタル技術を活用することで、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。
注3.AI
人工知能(artificial intelligence)。人工的にコンピューター上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指す。
注4.IoT
モノのインターネット(Internet of Things)。センサーやデバイスといった「モノ」がインターネットを通じてクラウドやサーバーに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。
注5.AR/VR
ARとは「拡張現実感」「Augmented Reality(オーグメンテッドリアリティ)」のことで、周囲を取り巻く現実環境に、情報を付加・削除・強調・減衰させることによって、人から見た現実世界を拡張するものと定義されている。
VRとは「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」のことで、「表面上は現実ではないけれど、その本質的な部分では現実」という意味で、実体験に限りなく近い体験を得ることができる。
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