企業モンスターラボホールディングス東証グロース:5255】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

(1)経営方針

 当社グループは、「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとしております。

 世界の課題を解決するようなプロダクトやサービス、エコシステムをデジタルパートナーとしてクライアントと共に作り上げると同時に、世界中の多様で素晴らしい才能に満ち溢れた人々に、国境を越えて「働く機会」「成長する機会」「世界の問題を解決するようなプロジェクトに参画する機会」などの「機会」を提供することで、より良い世界を実現したいと考えております。

(2)経営戦略

 今後のデジタルコンサルティング事業の中長期的な方向性としてはクライアントの「デジタルトランスフォーメーションのパートナー」になることを目指しております。また、プロダクト事業に関しては既存プロダクトを成長させながら、デジタルコンサルティング事業で成功したプロジェクトにおいて、プロダクトマーケットフィットや市場規模、競争環境などを勘案した上で市場の共通課題を解決できると判断すれば新たなプロダクトの開発を行っていく予定です。

 今後の経営戦略の基本方針は、①データ・エンタープライズシステム領域強化、②ボーダレスな組織運営による独自の価値提供、③AIによる生産性革新、の3つの柱で構成されております。

①データ・エンタープライズシステム領域強化

 モンスターラボが得意とする「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーション領域は、今後も継続的にコア領域として事業展開を図りつつ、今後の成長に向け、より大規模かつ継続性の高いシステムである、データ・エンタープライズシステム領域のプロジェクト獲得を推進してまいります。

 特に、既にエンタープライズシステムコンサルティングで豊富な経験を有する製造業向けシステムに対しては、過去のプロジェクトで獲得した業務プロセス知見を梃子に、システム開発部分も含めた大規模プロジェクトの獲得を目指してまいります。

 また、モンスターラボが得意とする新たなテクノロジーによる独自ソリューションを活かした案件獲得も推進してまいります。具体的には、ブラックボックス化した古いシステム(レガシーシステム)を、新たなシステムアーキテクチャー及びコードに置き換えるモダナイゼーションを、生成AIで効果的かつ効率的に実現するソリューションである「Code Rebuild AI」を2023年に開発しておりますが、同様のソリューションを戦略的に展開することで、競争力強化を図ってまいります。

②ボーダレスな組織運営による独自の価値提供

 当社グループの大きな特徴として、世界12の国と地域にグローバルに展開していることがあげられます。これにより、世界の先進的なデジタルトランスフォーメーションの事例にアクセスできるのに加え、グローバルの多様な人材プールから、最適な人員によるチームを構築することができることで、クライアントに対してモンスターラボならではの価値提供ができると考えております。

 例えば、アメリカで強化しておりますペイメントプラットフォームソリューションの知見やネットワークを、成長の源泉となるAPACで活用したり、シンガポールで開発した金融ソリューションを日本に展開するといった事例が2024年においても生じております。また、アメリカのクライアントに対して、APACの豊富なエンジニアチームを組み込むことで、安定的かつ柔軟な体制構築も実現しております。こういった、地域をまたいだ価値提供を組織的に促進していくためにも、拠点間売上を社長室の重要KPIとして設定するといった仕組み構築を進めております。

 このように、グローバルで一体的な組織運営を実現することで、限定的な地域のみで事業を展開している企業には無い価値提供を図っていくことで、成長につなげてまいります。

③AIによる生産性革新

 システム開発プロセスは、AIによる生産性革新の余地が非常に大きい領域です。特に生成AIの発展により、市場調査や要件定義、ワイヤーフレーム作成といった上流工程においても、AIエージェントがその業務を担うことができる状況となっています。ここで、AIエージェントの品質は、学ぶデータの質と量に依存することから、グローバルで蓄積したモンスターラボの過去のプロジェクト知見を活用することで、高品質なAIエージェントを開発プロセスに導入し、モンスターラボならではの生産性革新を実現してまいります。

 具体的には、2023年12月にレガシーシステムのモダナイゼーションを可能とする「Code Rebuild AI」を皮切りに、自然言語でのデータ抽出/分析を可能とする「Data Analyze AI」を2024年10月に、UI/UXの課題整理の生産性を向上する「Expert Review AI」を2025年2月に開発しており、モンスターラボならではのAIソリューションを継続的に強化しております。

 また、2025年2月には、PoC/MVP開発の全てのプロセスでAIを活用することで、従来比1.7倍の開発スピードを実現するソリューションチームである『MonstarX』をシンガポールで立ち上げることを発表しております。当該チームはシンガポールで立ち上げておりますが、同様のチームを今後全拠点に展開していくことを目指しております。

 こういった、モンスターラボならではのAIによる生産性の抜本的な革新を継続的に目指していくことで、競争力の強化を図ってまいります。

(3)経営環境

 世界のデジタルトランスフォーメーション市場は2023年時点で約132兆円という巨大市場でありながら、2030年まで年率26.7%で成長し、約692兆円の市場になるとされております(上記「3 事業の内容 (注)6」参照)。一方、日本の人口は2008年をピークに今後100年で約4,300万人にまで減少していくというデータ(注1)も出ており、2030年には約79万人のIT人材が不足すると経済産業省が発表しております(注2)。この様に、デジタルトランスフォーメーションのニーズが高まる一方、デジタルトランスフォーメーションの担い手が不足するという環境に日本を含め多くの先進国が置かれており(注3)、デジタルトランスフォーメーションに関連するサービスへのニーズは今後も底堅く推移するものと考えております。

 特に、当社グループが得意とする領域である、新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革に関する領域は、デジタルをいかに活用することで差別化できるかが競争力(市場シェアや価格プレミアム等)に直結するものと考えております。そのため、新たなテクノロジーをどう取り入れるか、いかに優れたUXやUIをデザインできるのか、それをどう一連のプロセスに組み込むことができるのか、といった専門的サービスに対するニーズは、今後も一層高まっていくものと予想しております。

 デジタルトランスフォーメーション市場は、クライアントの属する業界、成長ステージ、競争上のポジション等に応じて求められるサービスニーズが大きく異なるため、同様の特徴を有するシステムインテグレーションやコンサルティング市場と同様、極めて細分化された競争環境であると捉えております。そのため、地域やサービスによって、多くの会社と競合することになる一方、少数の大企業による寡占が生じにくい市場であることから、当社グループの強み(上記「3 事業の内容 (3)事業の特徴」参照)を強化していくことで、高い成長率を今後も維持できるものと考えております。

(注1)データソース:内閣府“選択する未来-人口推計から見えてくる未来像–“

(注2)データソース:経済産業省“IT人材需給に関する調査”

(注3)データソース:Capgemini Digital Transformation Institute “The Digital Talent Gap”

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループは高い粗利率を維持した売上成長を重視して経営を行っております。

 当社グループのメイン事業であるデジタルコンサルティング事業において、クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーションをパートナーとして担うことで、同一クライアントからの売上が年々継続的に上昇することが重要であり、クライアントに対して提供している価値を図るものであると考えております。したがって、売上成長において、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数並びにこれらのクライアント群からの売上の増加率を重要指標としております。

 また、売上成長の中、粗利率を維持することは、高クオリティのサービスをクライアントに提供できているという指標となると同時に、財務的観点では営業利益率の上昇に大きく寄与すると考えております。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループはこれまで売上成長と粗利率を最重要KPIとして経営を行ってきております。売上収益については2016年から6年間で年率40%の成長を達成したものの、拠点管理、新規拠点開発コストのほか、迅速な意思決定とマネジメント及びオペレーションの最適化を実現するグループ経営チームの組成やグループ全体の統一基盤システムへの投資が先行し、販管費が高い構造になり赤字が継続する状態となっておりました。また、2024年度において実行した一連の構造改革により財務基盤が脆弱化しております。そのため、今後の成長基盤を盤石なものとするためにも、財務上の基盤強化及び利益体質への転換を優先的に進めてまいりたいと考えております。

1.財務上の基盤強化

 当社グループは、2024年度においてEMEA拠点の大規模な構造改革を実施したことに伴って、2024年度末時点で債務超過の状態となっていることから、財務上の基盤を強化するために、以下の施策で自己資本の増強を図ってまいります。

(ⅰ)MSワラント発行

 EVO FUNDを割当先として30,000,000株分の新株予約権の発行を2024年9月に発表しております。本新株予約権の行使によって、2025年2月末までに10億円の増資が実現しております。

(ⅱ)優先株式発行

 山陰合同銀行を引受先とした優先株式33億円分の発行を2025年1月に発表しております。本優先株式発行は、第19期定時株主総会の決議をもって発効しております。なお、本優先株式による増資額を借入金弁済に充てることで、有利子負債額の減少を企図しております。

2.利益体質の強化

 今後の継続的な売上成長の基盤構築のため、また財務上の基盤強化に資するためにも、以下の施策を推進し、適切な利益を創出できる事業モデル基盤の構築を図ってまいります。

(ⅰ)稼働率の向上

 2023年度までは、よりインパクトの大きいデジタルトランスフォーメーションを実現するために、事業戦略や体験設計といった上流案件の獲得に注力したことに伴って、人員構成の大半を占めるシステム開発エンジニアの稼働率が低下しておりました。2024年以降は、上流案件は維持しつつも、よりシステム開発に直結する案件獲得に軸足を移すことで、徐々にシステム開発エンジニアの稼働率が上がってきております。今後も、この方向性を堅持し、事業戦略や体験設計といったモンスターラボならではの強みを維持しつつ、全体としての稼働率向上による利益体質強化を図ってまいります。

(ⅱ)販管費のモニタリング

 売上に対する販管費率に関しては、戦略的コスト(営業&マーケティング費用、育成及びR&D費用)と、運用コスト(経営陣の人件費やバックオフィス人件費、グローバルチームの人件費など戦略的コスト以外の販管費)という2つの大項目にわけて管理しております。

 戦略的コストである営業&マーケティング、育成及びR&D費用は売上に対する比率がある程度一定の比率で推移する様に管理し、運用コストは先行投資が完了しており売上成長率よりも低い増加率で年々増加するため、売上に対する比率が年々減少する様に管理しております。

 これらの販管費を、売上水準に合わせて適切にコントロールすることで、利益体質強化を図ってまいります。

3.人材獲得競争

 昨今のデジタルトランスフォーメーション市場の成長は、人材獲得競争を熾烈なものにしています。当社のビジネスは売上の成長のために優秀な人材の獲得が至上命題となっております。当社は、以下に記載する当社の強みを生かした取り組みにより、優秀な人材の獲得を目指しております。

(ⅰ)人材獲得における競争優位性の確立

 当社の求めるコンサルタントやデザイナー、エンジニアの採用はスタートアップ企業からテック企業、コンサルティングファームなど様々な企業と競合します。

 当社は採用における以下の点において採用の競争優位性を有していると考えております。

・大手企業のコア事業や新規事業に企画から開発、グロースまで一貫して複数関わることができる(事業会社であれば、多くの場合一つのプロダクトにしか関われない)

・最先端の技術や新規領域に関わる案件が大半を占めるのでスキルアップの機会が多い(コンサルティングファームやSIerでは依然として業務システムの導入などの案件が大半を占める)

・ほぼ全ての案件でグローバルなチームを組成するため、グローバルな環境で働くことができる(コンサルティングファームやSIer、テック企業などほとんどの企業は国内で完結したチームでプロジェクトを行うことが多い)

・スタートアップ企業やテック企業の様な、自由で多様なカルチャーで働くことができる

(コンサルティングファームやSIerや事業会社は保守的なカルチャーである企業が多い)

 結果、幅広い業種から人材採用することで、基幹システム連携のノウハウや業界知見などの獲得にも繋がっております。

(ⅱ)12の国と地域での採用によるスケーラブルかつスピーディーな採用

 当社は12の国と地域、20都市で展開しているため、各国に採用担当を配置し、最適な人材を最適な場所でスピーディーに採用することに取り組んでいます。拠点の世界展開が世界中のタレントプールへのアクセスを可能としております。

(ⅲ)大学との連携

 より優秀な学生を獲得するため、ベトナムのハノイ工科大学などの大学と連携し、毎年インターン生を受け入れ、その中から優秀だと判断した学生の採用を行っております。

(ⅳ)パートナー企業やフリーランサーとの協業

 人材確保の緊急度が高い場合は、グローバルでパートナー企業やフリーランサーのリストを共有しており、パートナー企業やフリーランサーと協業することで対応しております。

4.新たな技術領域のスキル獲得

 IT業界は常に新しい技術が生まれ続ける上、クライアントのデジタルトランスフォーメーションのニーズも多様化していることから、当社も常に新しい技術やこれまで当社が強みとしていなかった技術にキャッチアップしていく必要があります。近年はAI、data、IoTなどのニーズが増えてきておりますが、以下の取り組みによって、新たな技術領域のスキル獲得を目指してまいります。

(ⅰ)グローバルCTOチームによるR&D及び教育

 グローバルでCTOチームを組織しており、市場のトレンド、クライアントのニーズを勘案し、必要な技術を特定し、グローバルレベルでR&Dや教育などを実行しております。

(注) R&DはResearch and Developmentの略称で研究開発活動を指しております。

(ⅱ)グローバルで最適な場所での採用及び拠点設立

 技術によっては、ある地域にハイスキルな人材が集まっていることがあります。そういった場合は、国や都市を限定して採用や拠点設立を行います。

5.デリバリーセンターのコスト上昇

 当社はベトナムやフィリピン、バングラデシュ、コロンビアといった国にデリバリーセンターを抱えております。現在、これらの国のインフレによる賃金等のコスト上昇が起こっており、この上昇は長期化すると考えております。

 過去においては、レベニューセンターにおいてインフレに応じてマーケット全体が単価を上昇させるということが起こっており、当社グループもマーケット同様インフレ上昇に応じて販売単価を上昇させることで対応してまいりました。そのため、デリバリーセンターのコスト上昇についても販売単価の上昇により対処していく方針です。

6.情報管理体制の更なる強化

 当社グループでは、国内外問わず多様な事業者様との案件を通じ、機微な情報を扱う事業内容であることを鑑み、情報セキュリティの国際規格であるISO/IEC 27001:2013の認証を取得しています。12の国と地域に事業展開、グローバル市場における多言語対応案件の増加と共に、より多様な顧客へのサービス提供の機会拡大が予測されます。情報資産の漏洩や不正アクセスの脅威に対し、業界や国境を問わず対策強化が求められる今、スピード感を持ってグローバル市場を広げている当社にとっても、対策の強化は最優先課題であり責務であると捉え、この度ISMS認証取得の運びとなりました。

 ISO/IEC 27001認証取得により、情報リスクの低減や回避、業務効率の改善や組織体制の強化、海外企業を含む取引要件の達成等の効果が見込まれます。今後もより一層、万一の緊急事態に際した対処を含む情報管理体制の維持、改善等のリスクマネジメントの実現により、組織内外両面の安心・安全の確保・提供に努めてまいります。

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