メンバーズ
【東証プライム:2130】「サービス業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
・ミッション
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」
当社では、マーケティングの基本概念を「人の心を動かすもの」と捉えており、インターネット/デジタルテクノロジーは企業と人々のエンゲージメントを高めるものと考えています。メンバーズは企業と人々の自発的貢献意欲を持って組織活動に参加する“MEMBERSHIP”による協力関係づくりを支援し、マーケティングの在り方・企業活動の在り方を「社会をより良くするもの」へと転換することで、世界の人々に心の豊かさ、幸せを広げ、社会をより良くすることに貢献します。
・経営指針
当社の経営指針である「超会社」コンセプトのもと、「社会への貢献」「社員の幸せ」「会社の発展」を同時に実現することを目指し、妥協することなく追求します。
(2)経営戦略等
当社はミッション「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、顧客企業へのDX現場支援を通じGXを実現させ、顧客企業とともに経営スタイルやマーケティング活動、サービスおよびプロダクトを「地球と社会を持続可能なもの」へと転換させることを目指しております。
2024年4月より、顧客企業のDXニーズに合わせ、各本部および専門カンパニーを「制作/UIUX」「デジタルマーケティング」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」の4つの事業領域に再編しました。各事業領域においては、様々な専門スキルを持ったデジタルクリエイター(以下、「DC」という。)が3名以上で顧客専任チームを編成し、顧客企業のDXプロジェクトの現場を顧客とともに実際に手を動かしながら改善する伴走支援型モデル「Digital Growth Team(以下「DGT」という。)」を提供し、顧客企業一社あたりの取引規模拡大を図ります。
加えて2024年4月より、「中期的な成長に向けた戦略」に基づき事業を推進しており、2025年3月期は、2027年3月期までに高収益ならびに高成長率体制を実現するべく、その土台を固めるための初年度と位置付け、事業基盤を再構築してまいりました。
「中期的な成長に向けた戦略」で掲げる当事業年度における主要戦略等は「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりです。
デジタルテクノロジーの更なる進化や世界的な脱炭素への取組み、および日本の人口減少の影響等を受け、企業のデジタル投資は一段と加速すると同時にIT/デジタル人材の不足は更に深刻化するものと捉えております。そのような環境において、当社は引き続き専門スキル育成等への人材投資を通じて、顧客企業への価値創造の源泉であるDCのスキルの向上ならびに社員エンゲージメントの向上等、人的資本の拡充に取組み、顧客企業へのDX支援を通じ、顧客企業とともに社会変革をリードすることを目指してまいります。
(3)経営環境
地球温暖化が引き起こす気候変動問題に対し、第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では、二酸化炭素などの温室効果ガス排出を2019年対比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要があることが示されました。
世界的に脱炭素化の重要性は高まっており、我が国においては2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルに向け、2013年度比で2035年度に60%、2040年度に73%の温室効果ガス削減目標を掲げています。目標達成に向け、2023年2月には「GX実現に向けた基本方針」が策定されエネルギー安定供給確保、経済成長、脱炭素を同時実現するためGX(※1)の取組みが日本で始動しています。また2025年2月には、国際情勢の不安定化や電力需要の拡大などの不確実性の高まりを背景に、脱炭素や産業政策の中長期的な方向性を示す「GX2040ビジョン」が策定されました。企業はGXを成長の機会と捉え、持続的な価値創造を実現するためにデジタルを活用し、組織構造やビジネスモデルそのものを抜本的に脱炭素型・社会課題解決型へと変革させることが求められています。
国内DX(デジタルトランスフォーメーション)市場は企業のDX投資の活況を背景に2023年度4兆5,309億円(実績)から2030年度には9兆2,666億円に拡大すると予測されています(株式会社富士キメラ総研 2025 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、2025年3月7日発刊)。
一方、企業がインターネットやデジタルテクノロジーに精通したクリエイター人材を自社で採用・育成することは難しい状況であり、人材不足が企業のDX化を阻む大きな壁となっています。DX動向2024によると、日本企業の8割以上が、DXを推進する人材は質・量ともに不足していると回答しています。特に、人材の質ないし量が「大幅に不足している」と回答した割合が前年度と比較し増加しており、DX化が進む中で人材不足は深刻化していると言えます(独立行政法人情報処理推進機構 DX動向2024、2024年6月27日発行)。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
参考情報としてIFRSに準拠した数値を記載しております。当社は2024年11月1日を効力発生日として、当社の完全子会社である株式会社メンバーズエナジーを吸収合併したことに伴い、非連結決算に移行しました。そのため、当期は組織再編後のIFRS個別決算の数値、比較情報は組織再編前の従来のIFRS連結決算の数値を掲載しております。
当社では、社会や企業のDXが進展することでデジタル投資は加速度的に拡大し、企業は高度な専門スキルを有したDX人材によるサービスやビジネスモデルの確立に向けた組織変革が求められていると捉えております。加えて、気候変動問題の解決を目指す世界的な潮流を受け、あらゆる企業が利益の創出と社会課題の解決を同時に実現するCSV(※2)経営へと転換する必要があると考えております。
2026年3月期においても引き続き「中期的な成長に向けた戦略」に基づき、人材育成、サービス/営業、将来への投資の3つを重要戦略とし、2027年3月期における高収益ならびに高成長事業の確立へ向け、DX現場支援ポジションへの転換加速と現場中心の全員参加型経営の確立を目指してまいります。主要戦略とKPI、今後の見通しにつきましては下記の通りです。
1.DX現場支援ポジションへの転換加速
顧客企業のDX内製化の取組みが大きく進む中で、当社ではプロジェクトの「実行企画・推進」フェーズにおけるサービスにより注力し、以下の人材育成ならびにサービス/営業戦略を推進し、DCが顧客企業専任チームでDXプロジェクトの内製化を伴走支援する体制へポジションの転換を加速させてまいります。
①人材育成
PMO(※3)人材をはじめ、UXデザイナーやマーケティングDX人材など顧客企業のDXプロジェクトを伴走支援するDX人材の育成を強化いたします。2027年3月期に全社の90%以上のDCをDX人材として育成することを目指す「SINCA90」プロジェクトを推進し、専門スキル育成の強化だけでなく案件稼働を見据えたプログラムを展開することで、業界一、顧客企業の現場改善に伴走できるDX人材を数多く輩出することを目指します。
また、AI活用を全社規模で本格化させ、業務プロセスの抜本的な効率化と生産性向上を追求するとともに、競争優位性の確立に向けたAIの戦略的な利活用を強力に推進してまいります。
これらにより2026年3月期末においてDX人材の比率を65%に引き上げ、新卒1、2年目を除くDCの平均稼働率85%以上を目指してまいります。
KPI | ・新卒1、2年目を除くDCの稼働率 ・売上総利益率 ・DX人材比率 |
②サービス/営業
4つの事業領域ごとに目指すサービスポートフォリオを設計し、専門カンパニーを中心としたDX領域のサービスをクロスセルし、Web運用領域が中心である顧客企業へのサービスを進化させることで、顧客企業からの高い支持獲得と取引規模の拡大につなげます。
DXプロジェクト領域を拡大するため、①で育成したPMO人材の提供およびPMOサービスを拡充します。
主要顧客に対しては事業領域を跨いだアカウントマネジメントを強化することでDX領域の拡張を更に加速させ、顧客企業一社あたり売上収益を最大化し年間売上収益1億円以上を基準とする大口取引社数を増加させてまいります。
これらの取組みにより、2026年3月期末において全社の付加価値売上高(※4)に占めるDX領域の比率55%(2025年3月期末実績41.5%)、新卒1、2年目を除くDCの売上単価を前期比10%向上、顧客企業NPS®(※5)を前期比2ポイント改善させることを目指してまいります。
KPI | ・DGT一社あたり付加価値売上高 ・年間売上収益1億円以上の取引社数 ・DX売上比率 ・売上単価 ・NPS® |
2.将来への投資
当社のミッションおよびビジョンの実現に向けて、脱炭素DX(※6)を軸として、関連する複数のサービスを展開し事業基盤を構築することで、顧客企業のサステナブル経営の基盤確立を支援してまいります。そのために、2027年3月期において脱炭素DX人材1,000名の育成・輩出を目指し、GXリテラシーとデジタルスキルを兼ね備えた脱炭素DX人材の育成を推進いたします。
顧客企業のDX現場支援におけるチームマネジメント、およびチームビジョンやDC個人のビジョンを軸にアカウントマネジメントやチーム運営を行う現場中心の全員参加型経営の在り方を確立し、挑戦的な文化と社員の幸せを追求いたします。DCの多様なキャリア形成を支援し報酬の引き上げを目指すとともに、当社が掲げる全員参加型経営を推進することで離職率の改善および社員エンゲージメントの向上を図ります。
これらにより、2026年3月期における社員エンゲージメントスコアの前回比0.1ポイント改善を目指してまいります。
KPI | ・社員エンゲージメントスコア |
これらの方針・取組みを着実に実行することにより、2026年3月期の業績予想は売上収益24,318百万円(前期比8.9%増)、営業利益1,214百万円(前期比146.2%増)、税引前利益1,194百万円(前期比152.5%増)、当期利益800百万円(前期比128.7%増)を見込んでおります。
また、2027年3月期における付加価値売上高成長率の引き上げ、ならびに営業利益率目標10%の達成を目指してまいります。
(※1)GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用するための変革やその実現に向けた活動のこと。経済産業省では、「2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革」と定義。
(※2)CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造):社会的課題の解決と企業の利益、競争力向上を同時に実現させ、社会と企業の両方に価値を生み出す経営概念。企業の競争戦略論の世界的第一人者として知られる米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が米ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2011年1月・2月合併号(日本語版はダイヤモンド社「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2011年6月号)に寄稿した論文で提唱した概念。
(※3)PMO(Project Management Office):企業や各組織のプロジェクトを円滑に進めるために、部署の枠をこえて横断的にプロジェクトマネジメントを統括する部門や体制を指す。プロジェクトを統括し、様々な意思決定を担う立場であるPM(Project Manager)に対し、PMOはPMが円滑に意思決定できるよう情報収集や関係各所との調整を行い、PMのプロジェクトマネジメントを支援する立場。
(※4)付加価値売上高:売上収益から社外原価(外注や仕入) を差し引いた社内リソースによる売上高。
(※5)NPS(Net Promoter Score):顧客が企業の製品やサービスを他の人に薦める意欲を指数で表したもの。サービスに対する顧客企業の総合的な満足度やロイヤリティを測る指標として利用される。なお、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
(※6)脱炭素DX:GHG(Greenhouse Gas=二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス)排出量を減らしながら経済成長を続ける「デカップリング・モデル」をデジタルテクノロジーの力で実現することを指す。
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