ミンカブ・ジ・インフォノイド
【東証グロース:4436】「情報・通信業」
へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、設立時より「情報の価値を具現化する仕組みを提供する」を企業理念に掲げ、グループにおいてこれを共有し、経営判断の拠り所としております。当社は現在、この理念の下、メディア事業・ソリューション事業を展開しており、持続可能な社会・経済環境構築に関する関心や社会的多様性を尊重する意識の高まりを始めとした様々な社会環境の変化と同時に、テクノロジーの進化やデジタル化が更に加速する現在、「情報の価値を具現化する仕組みを提供する」当社グループの社会的課題に対する役割も今後進化すると考えております。
こうした中当社は、高成長と株主への高還元を併行して実施することを志向し、市場環境や社会環境の変化に強い体制を早期に実現すべく、収益の多様化の投資を推進し売上高の拡大を実現してまいりました。しかしながら、積極化した収益多様化策は結果として3期連続の経常損失を計上、財務基盤を大きく脆弱化することとなり、当期連結会計年度には継続企業の前提に関する重要な疑義が付されるに至りました。当社はこのような事態を厳粛に受け止め、再び同様の状況を招くことの無いよう、選択と集中へと方針を大きく転換いたしました。安定収益化に向けた、事業戦略・財務体質の見直し・強化、ガバナンス体制の更なる高度化を重要課題と認識し、取り組んでまいります。また、安定収益の基礎となるコアアセットの競争力維持向上に向けた取り組みにつきましても、継続して重要課題と認識し実施してまいります。
(2)経営環境の認識及び今後の事業戦略
当社グループの経営環境に関する認識及び再成長に向けた今後の事業戦略等は次のとおりであります。
2023年3月期以降、3期連続での業績下方修正並びに損失計上となった結果を踏まえ、株主資本の今後の毀損を避けるため、これまでの高い売上成長率を重視した売上高拡大の事業方針から「選択と集中」に方針転換し、大規模な事業・資産整理策を講じました。具体的に、多額の損失を発生させたコンテンツ事業からは撤退し、その影響を一過性とした他、収益貢献開始に時間を要する新規事業からも撤退し、継続する事業は、成長ドライバーとしてのSaaS系や月額課金等のサブスクリプションサービス系事業と、コストコントロールにより安定収益エンジン化が可能な事業の2つに集中いたします。
当社は創業来、国内における個人投資家の投資活動を直接的、間接的に支える情報インフラを提供しており、その顧客基盤は個人投資家で約1,000万人、間接的に個人投資家への情報提供のルートとなっている金融機関は170社を超えます。これらの国内金融市場における競争優位なユーザー基盤に加え、国内約1億人のインターネットユーザーへの情報配信により、90億円規模の売上を創出する既存事業アセットは赤字の新規事業からの撤退後も残存いたします。
2026年3月期は、選択と集中による安定収益体質回帰への過渡期となりますが、予定していた費用削減施策はその大半を完了しており、連結売上高は8,700百万円と当連結会計年度比減少の見込みであるものの、連結営業利益は300百万円、連結経常利益は150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は200百万円と黒字回復の見通しであり、またEBITDAは1,200百万円と二桁億円台となる見通しです。また事業セグメント別の見通しは以下のとおりです。
(メディア事業)
約1億人のユーザー基盤を活用する収益多様化策は着実に進展しており、外部環境の低迷による広告単価の下落とトラフィックの減少の影響は受けつつも、株式会社ライブドアの買収をはじめとするメディア事業への投資回収は毎年進んでいる状況にあります。
しかしながら、これまで手掛けた収益源多様化策のうち、クリエイターズエコノミー等、既に結果を出しているものがある一方、収益貢献までリスクを伴う積極投資を中長期的に継続する必要があるものも存在したことから、当連結会計年度において、選択と集中への方針転換のもと、サービスの終了も含めた抜本的な事業・資産の見直しを行いました。今後は収益性の改善に重点を置き、当社のキャッシュ・フローの基盤となる「安定収益エンジン」としての役割を追求してまいります。
こうした事業戦略のもと、2026年3月期は、クリエイターズエコノミー関連売上の拡大を見込む一方、ネットワーク広告市況については軟調な市況の継続を想定し、売上高は当連結会計年度比減収の5,000百万円を見込みます。一方、選択と集中の方針に基づくサービスの終了も含めた抜本的な事業・資産の見直し等の費用削減とグループ共通費用の削減により、メディア事業のセグメント利益は430百万円と黒字転換、EBITDAにつきましても890百万円と回復の見通しです。また、開発投資は、中期的には、株式会社ライブドアの買収時に合意している時限的なLINEヤフー株式会社からのシステム移管開発の他、運用の効率化、成長ドライバーとなり得るサブスクリプションサービスの開発等を厳選し、年間総額約3億円の計画です。これら費用削減と設備投資の総額管理を徹底し、安定的にフリーキャッシュフローを創出可能な基盤を整備してまいります。
(ソリューション事業)
ソリューション事業は、国内個人投資家の投資活動を直接的・間接的に支援する情報サービスをB2C・B2Bで提供すべく、金融情報分野で競争優位な当該事業の強みを活かし、当該事業を改めて当社の成長ドライバーと位置付けます。このため、現状の課題を再認識し、その改善策に向けたリソースを集中配分してまいります。
情報ソリューションサービスの当面の売上見通しにつきましては、受注済や契約手続き中等、確度の高い案件に見込みを限定するとともに、「Kabutan(株探)プレミアム」につきましては、今後のマーケット状況をやや保守的に捉え、次年度以降は年率10%成長と見込み、多言語展開等による増収加速は2027年3月以降に見込みます。
同時に、収益化に至っていない新規ビジネスの売却(投資助言・代理業の株式会社ミンカブアセットパートナーズは2025年3月31日付にて株式会社トレードワークスに株式譲渡を完了)や外注費の見直し、一部資産の除却による償却費の削減等により、2億円強の費用を削減し、事業のスリム化を実施いたします。
また、SI・パッケージソリューションサービスにつきましては、顧客からの依頼に即応するための待機人員が運転資金を圧迫することから現状の受注残と、引き続き高条件案件のみを取り扱う方針で、次年度は当連結会計年度比20%の減収を想定し、2027年3月期以降に一定の増収に転じるべく、体制整備を図ります。
以上から、売上高は4,000百万円と堅調に推移する見通しです。またソリューション事業におきましても、選択と集中の方針に基づくサービスの終了も含めた抜本的な事業・資産の見直しを行い、2026年3月期にはおよそ2億円の費用削減とグループ共通費用の削減により、ソリューション事業のセグメント利益は770百万円と前連結会計年度からほぼ倍増の見通しです。またEBITDAにつきましても1,150百万円に達する見通しです。またソリューション事業の設備投資は、主にSaaS型の情報ソリューションと個人向け課金サービス「Kabutan(株探)プレミアム」といった成長事業を中心に年間約3億円と、メディア事業における時限的な開発投資を除く通常開発投資予算の3倍程度を割り振る方針です。
(3)優先的に対処すべき事業上、財務上の課題
前掲(1)経営方針のもと、優先的に対処すべき事業上、財務上の課題は以下のとおりであります。
① 選択と集中による安定収益化への回帰
当社は、これまでの高い売上成長率を目指した早期拡大重視の事業方針から、選択と集中へと転換し、当連結会計年度において、大規模な事業・資産整理を実施いたしました。今後はこれらの施策が継続的に確実に収支改善に寄与していることを適時的確に把握し、必要な施策については柔軟かつ機動的に対応することで、安定収益体制への回帰を確実なものとすることが必要であると認識しております。そのため、情報の可視化を強化することで経営層によるモニタリング機能を強化してまいります。また、既存の週次経営会議を軸としたPDCAに加え、開発等重要プロジェクトを審議・モニタリングするプロジェクト審議会を設置し、管理機能を強化してまいります。
② 財務体質の強化
継続企業の前提に関する重要な疑義の解消は最優先課題であると認識しております。そのため、安定収益体制の構築と、資金繰りの安定化に取り組んでおります。当社は当連結会計年度において大規模な事業・資産整理を実施いたしました。加えて、継続事業につきましても固定費の見直しを行い、その大半について実行を完了しており、これらの施策により損益分岐点は改善しております。自己資本の回復に向けましては、資本政策の再構築を含む選択肢を検討し、将来的な資本増強手段についても業績の安定化と市場環境を見極めつつ、適切に判断してまいります。
③ ガバナンス体制の再整備
当社は会社の状況に応じた実効性のあるガバナンス体制の構築が不可欠であると認識しております。今般、事業の選択と集中へと方針転換を行ったことを踏まえ、取締役会をスリム化することとし、より迅速かつ柔軟に意思決定を可能にするとともに、各取締役の役割と責任をより明確化することにより、経営の実効性と説明責任の強化を図ってまいります。また、併せて事業執行とガバナンスのバランス、並びに経営上のリスクを適切に把握しコントロールするための内部管理体制の強化を図り、社外取締役や監査等委員への報告体制の強化、監査等委員会と内部監査室並びに会計監査人による実効性ある三様監査を推進するとともに、グループ役職員向けコンプライアンス研修の実施等を通じた個々人への意識づけ並びに内部監査室による定期的監査を継続的に実施してまいります。更に、グループや部門を横断したプロジェクトを通じ、様々なレイヤーでの連携を活性化させるとともに規律とけん制を統一化していくことで、組織の活性化を図ってまいります。
④ コアアセットの品質維持及び環境変化に対応した事業の継続的推進
当社グループは選択と集中も方針の下、継続する既存サービスと、その基盤となるコアアセットの競争優位の維持向上は今後の当社グループの安定収益化と再成長に不可欠であると認識しております。そのため、特に、技術、ユーザーニーズ、情報管理を重要課題と位置づけ、取り組んでまいります。その具体的内容は以下の通りであります。
(ア) 先端技術の急速な進化や変化への対応
当社が属する業界においては、AI・クラウド・セキュリティとった先端技術の急速な進展が日々進んでいます。AIによる自動化による費用削減はもとより、予測モデルによるユーザーニーズに即したコンテンツの大量生成等、サービスの向上に資する他、定型業務の効率化等、サービス・業務の最適化を図ることが可能です。また先端のITインフラの利活用による保守・運用コストの削減やセキュリティリスクの向上により事故対応コストの抑制を図ることができます。そのため当社では、これらの進化や変化に迅速に対応し、情報収集や外部パートナーとのアライアンス、内製開発力・プロジェクトマネジメント力の向上に取り組んでおります。
(イ) 顧客ニーズの多様化と短サイクル化への対応
ライフスタイルや働き方の多様化、情報源の多様化やパーソナライズ化、さらには様々な価値感の変化によりユーザーのニーズは個別化・細分化が進展しています。またトレンドの高速化やデジタルデバイスの進化によりユーザーニーズは短サイクル化も進展しています。当社は、サービスの競争優位性維持には、こうした顧客ニーズの多様化やサイクルの短期化に即応する機動性が重要であると認識しております。そのため当社は、先端技術の利活用等により、1億人規模のメディアユーザーベースを基盤とした様々な属性データや行動データから、ユーザーニーズの動向を的確に分析し、よりニーズに沿った情報やコンテンツ、サービスを柔軟かつ機動的に提供する仕組みを構築してまいります。
(ウ) 情報管理の品質の維持向上
当社グループはユーザー情報を含む各種情報資産を保有しております。これら情報資産の適切な管理は、サービスを安心して利用頂くための基本であると認識し、情報管理の品質の維持向上を図ってまいります。また、メディア事業においては多くのUGC(User Generated Content)を提供すること、更にユーザー同士のコミュニケーションが発生すること、また若年層の利用も多いこと等に鑑み、情報モラルの維持に配慮したモニタリングを行い、コンテンツ提供者及び利用者双方の保護のための適切な措置を随時講じる等、サービスの安全性及び健全性の確保に努めてまいります。
⑤ 人材の確保及び育成
当社グループは、持続的かつ自律的な成長のためには、当社の理念に共感し高い意欲を持つとともに、自律的成長が可能な優秀な人材の確保、並びにその育成は重要であると認識しております。そのため、コミュニケーションの活性化や人事評価制度の再整備等従業員が高いモチベーションを持って自律的に働くことのできる環境の整備を継続して推進してまいります。
⑥ ESGへの取組の強化
当社グループは、ESGへの継続的取り組み及び強化は持続的成長を遂げるための経営課題であると認識しております。そのため、サステナビリティ委員会を設置し、ESGを含むサステナビリティ経営に対する基本方針、施策の決定等を行うこととしております。環境に対しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言への賛同を表明し、TCFDコンソーシアムへ加入しています。
- 検索
- 業種別業績ランキング

