文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針
当社は、企業理念に掲げるミッションである「ICTで世の中をもっと便利に」のもと「Update The World 変化し、変化させ、必要不可欠な会社に」を企業ビジョンとしており、インフラテック事業を推進することで、インフラ業界の抱えるデジタル化が遅れた非効率な現場作業や業界特有の多重下請けによる高コスト構造といった課題を解決し、より快適な社会の実現に貢献してまいります。
同時に、顧客へのサービス提供を通じて当社の社員が成長し続けることを支援し、結婚・出産といったライフステージの変化に合わせたテレワークやフレックス勤務の推進、多国籍な人材の登用などを促進するとともに、自律的でフラットな組織を構築し、顧客へ高い付加価値を提供できるプロフェッショナルの育成に努めます。
(2) 経営環境
当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルスの5類への移行もあり、人流が活性化するなど、経済が正常化してまいりました。モバイルエンジニアリングサービスにおきましては通信キャリアの設備投資は一時的に減少し、今後もコスト抑制要請は進むことが予想されます。また、基地局建設に関わるサプライチェーンにおいて、半導体不足や新型コロナウイルス等の影響により予定よりも工程が後ずれしている領域があります。IoTエンジニアリングサービスにおいては展開しているスマートメーター設置サービスでは生活インフラ業界を中心としたスマートメーター設置が進み、引き続き堅調に推移しております。加えて、2022年2月以降、ウクライナ情勢の動向、大幅な円安等、外部環境は更に急速に変化してまいりました。
このような環境の下、当社としてはより一層のインフラテック事業の拡大によるIoT社会の実現を推進してまいります。
(3) 中長期的な経営戦略
① モバイルエンジニアリングサービスのシェア維持
モバイルエンジニアリングサービスにおいては、各携帯キャリアの設備投資はピークアウトし、2022年は合計1兆7,770億円だった投資費用が、2025年に合計1兆4,000億円まで縮小することが予想されております(株式会社MCA「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測 2022年版」)。一方、通信キャリア各社は通信料金の値下げの影響から、経済圏サービス及び法人事業への注力を掲げています。
そのため、5Gのエリア構築から将来的な6Gエリア構築に向け、情報収集を行いながら体制を維持していきます。
② IoTシフトを進め第2の柱に
機器設置のフロー案件から監視・保守のストック案件に事業を拡大していきます。また、BLASを有償化し、SaaS※として提供していきます。これらにより新規顧客開拓、既存顧客深耕を進め、IoTエンジニアリングサービスを第2の柱に事業拡大していきます。また、IoTの顧客に対し、アップセル、クロスセルとなりうる商材・サービスを持っている企業のM&Aも積極的に検討していきます。
※SaaS(Software as a Service)は、クラウドを介して提供されるサブスクリプション型ソフトウェアサービスで、利用者はインターネット経由で柔軟にアクセス可能。BLASを有償化し、SaaSとして提供。
③ ITインフラ領域に事業拡大
これまでその他サービスはRPAのエンジニアリング等を行っておりましたが、サーバーやネットワーク関連のITインフラ領域にも事業拡大を進め、参入障壁の低い保守領域から参入し、より高単位な上流工程に事業拡大を計画しています。
▼事業ポートフォリオ図
(4) 経営上の目標の達成状況を判断させるための客観的な指標等
当社は売上高に影響する指標として下記を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な重要指標としています。
売上高に影響する指標
①稼働人員数(モバイルエンジニアリングサービス)
②平均単価(モバイルエンジニアリングサービス)
③設置台数(IoTエンジニアリングサービス)
④平均単価(IoTエンジニアリングサービス)
当社の売上高は主にモバイルエンジニアリングサービスとIoTエンジニアリングサービスで構成されております。モバイルエンジニアリングサービスはストック型案件の売上高が大半を締めており、その売上高は稼働人員数×平均単価で形成されております。そのため、①稼働人員数と②平均単価を事業拡大に係る重要な指標としております。また、IoTエンジニアリングサービスはフロー型案件の売上高が大半を締めており、その売上高は設置台数×平均単価で形成されております。そのため、③設置台数と④平均単価を事業拡大に係る重要な指標としております。
過年度の実績は下記となります。
KPI | 前事業年度実績 | 当事業年度実績 |
① 稼働人員数 | 4,939人 | 4,838人 |
② 平均単価 | 636千円 | 638千円 |
③ 設置台数 | 556千台 | 720千台 |
④ 平均単価 | 1,585円 | 1,593円 |
(注)1.ストック型案件とは顧客内でのプロジェクト支援など1ヶ月~3ヶ月の業務委任契約を継続的に更新する案件を指す。
2.フロー型案件とはIoT機器設置など単発契約の案件を指す。
3.稼働人員数とは、モバイルエンジニアリングサービスのプロジェクトに従事し、原価性のあるベイシス総稼働従業員数、パートナーエンジニアの総稼働人員数の合計を指す。
4.平均単価とは、モバイルエンジニアリングサービスではストック型案件の総売上高を総稼働人員数で割ったもの、IoTエンジニアリングサービスはフロー型案件の総売上高を設置台数で割ったものを指す。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 新規顧客及び協力会社の開拓
当社売上はソフトバンク株式会社に対する依存度が当事業年度において約41.6%となっており、その依存度を引き下げ安定的な事業基盤を構築するべく、5GやIoTの普及促進を前提とした新たな通信キャリアやIoT機器メーカーなど新規顧客との取引拡充が喫緊の課題と考えております。また、適正価格による高品質なインフラ構築・運用を全国規模へ拡大するため、国内を網羅するベイシスパートナーズの構築もあわせて拡充していく必要があると考えております。
② マーケティング強化
今までは携帯電話業界という限られた市場の中で、当社が保有するネットワークを軸に顧客を開拓してきましたが、今後広範な業界への事業拡大を進めるためにはそれに応じたマーケティングが必要となります。2019年からマーケティングや広報活動をテスト的に進めており、少しずつ効果が出始めているため、今後は更にマーケティング活動を強化します。
③ テクノロジーの強化
当社は、インフラテックによるビジネスモデルの変革を標榜しており、その根幹を担う業務のDX化を推進するため、自社内にシステム開発体制を保持しております。今後は、新しいテクノロジーを取り入れながらさらにDX化の対象となる領域を拡大し、競争優位なシステムの構築を図る必要があると考えております。
具体的には、まずは自社システムBLASの継続的な機能拡充、また将来的にはBLAS以外にも新たなシステムの開発が必要であると考えており、社内開発体制強化や他社との業務提携などを行います。そのため、DXにおける中長期ビジョンの策定やその推進担当者の選任、作業の標準化、社内システムの見直しを行い社内のDX化を推進します。
④ 人材の確保と育成
当社において、いかに人材を採用し育成するかは事業を拡大するうえでの重要な課題の一つであると考えております。安定的な採用を維持し人材の定着率を高めるために、積極的な採用を行っていくとともに、人事研修制度の充実、資格取得※の促進や多様な勤務形態の導入等により社員にとって働きがいのある働きやすい環境の整備も実施してまいります。また、生産キャパシティの拡大という観点より協力会社リソースの拡充も必要であり、ベイシスパートナーズの獲得と協力会社社員への指導、育成も進めてまいります。
※ 社内エンジニアの48%が国家資格を保有(2023年6月末時点)
⑤ 個人情報の取り扱い及び情報管理体制の強化
当社では、個宅へのIoT機器設置をはじめ、各事業で提供するサービスの特性上、住所・氏名等の個人情報を取り扱うことがあります。そのため、情報管理体制をさらに強化することが課題であると考えております。これらの情報の取り扱いについては、情報セキュリティマネジメントシステム国際規格(ISO27001)認証を取得し、個人情報や機密情報に関する取り扱いを社内規程に定めておりますが、今後も社内研修の継続実施等により、セキュリティ意識の喚起や情報リテラシーの向上に努めて参ります。
⑥ 法令遵守の体制強化
当社のサービスは、業務委託契約(準委任契約を含む)により事業を行う場合があります。その場合、労働者派遣事業との違いを明確に認識し、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(1986年4月17日 労働省告示第37号)に従って、事業を運営しております。また、一部の事業につきましては、建設業法、労働者派遣法の適用を受けており、法令遵守の体制をより一層強化することが必要であると考えております。社内においては、入社研修や講習を定期的に実施し、法令遵守の重要性につき継続的に周知徹底を行うなど、法令に則った事業運営に努めてまいります。
⑦ 内部管理体制、コーポレート・ガバナンスの強化
当社が今後の事業環境の変化に対応し、また新たに事業拡大を進めるためには、内部管理体制とコーポレート・ガバナンスを強化していくことが重要であると認識しており、その体制を整備し実効性を高めることでリスク管理の徹底や業務の効率化を図ってまいります。
⑧ 顧客、パートナー、従業員のエンゲージメントの可視化・向上
当社は顧客、パートナー、従業員のエンゲージメントや満足度の可視化を図るため各種サーベイを導入しております。まずは2019年より従業員エンゲージメントの可視化と改善アクションを開始しており、具体的にはサーベイの結果を従業員の様々な属性(雇用形態、所属部門、在籍年数、年齢層等)から多面的に分析し、従業員の期待度と満足度の乖離が高い事項を重点対策項目として改善活動に取り組んでおります。また、2020年からはネットプロモータースコアを導入し、顧客及びパートナーから自社の強み・課題並びにその要因をヒアリングして現場にフィードバックすることで日々の業務における改善へと繋げ、当社のステークホルダー全体に係るエンゲージメントの向上を図ってまいります。
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