プログレス・テクノロジーズ グループ
【東証グロース:339A】「サービス業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、コーポレートスローガンとして「世界を進める、一歩を。」を掲げ、製造業界の変革に取り組んでいます。社名に含まれる「プログレス」は進歩や前進、発展といった意味を持っており、私たちの企業姿勢を表現するものとなっております。
当社グループは製品開発プロセスの上流工程である設計開発領域に特化し、事業展開を行っております。製造業界のデジタル化や提供価値の向上を実現するためには、当該分野における変革が不可欠であると考えております。製品要求の多様化、技術の高度化が進む中、人的・技術的リソースが不足しているという課題を有しているメーカーに対し、当社グループは、メーカーが自社の強みである「コア技術」に注力出来る環境を実現するための「ニアコア技術」を提供しています。
「ニアコア技術」の領域は多岐に渡りますが、当社グループにおいては、「デジタルツイン」「xILS」「AI」「UX」「RPA」の5つをPT専門技術として定義し、技術レベルの向上やノウハウの蓄積、スペシャリストの育成を行っております。
当社グループは、提供する技術領域の専門性やメーカーへの提供価値により一層磨きをかけ、QCD(品質・コスト・納期)の改善とイノベーションの創出を実現していく方針です。
PT専門技術 | 技術内容・当社グループの具体的な活用方法 |
デジタルツイン | 自動車や半導体装置、精密機器などの現実に存在するものをコンピューター内でデジタルな「双子」として作り出し、その物体の動きや状態をデジタル上で観察やシミュレーションを行う技術。 |
xILS | x-In-the-Loop Simulationの略称。シミュレーションループ内にxを介在させることの総称であり、具体的にはモデル(MILS)、ソフトウェア(SILS)、ハードウェア(HILS)などが挙げられる。制御システムの開発を支援する技術であり、制御ロジックやアルゴリズムのテスト、ソフトウェアを組み込んだ検証、ハードウェア連携による実機に近い環境でのテスト実施などを行う。 |
AI | 人工知能(Artificial Intelligence)の略称。当社グループの事業領域である設計開発プロセスにおいては、データ分析によるニーズ把握や分析、設計の最適化、シミュレーションによる不具合検出、製造工程の効率化、自動検査における品質管理等で活用される。 |
UX | ユーザー体験(User Experience)の略称。ユーザーの感情や体験を重視して製品を設計する方法を指しており、使いやすさや楽しさを追求し、ユーザー視点で機能やデザインを設計する技術。 |
RPA | ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略称。設計開発プロセスの自動化・効率化によって、手作業を減らして時間やコストを削減し、ヒューマンエラーを減少させて設計品質を向上させるための技術。 |
(2)経営戦略等
当社グループは、製品開発プロセスの上流工程である設計開発領域と5つの技術領域というプロセスフェーズとテクノロジーの双方の領域において、特化する分野を設け、強みを磨き込むことで、お客様に高い価値を提供しております。製品開発プロセスのデジタル化や製造業のDXを実現する上で、現場である設計開発部門のみならず、プロセス改革部門やIT部門との連携を行うことは不可欠ですが、多くの企業が各部門に対してピンポイントソリューションの提供をするに留まっているというのが実情です。当社グループは設計開発現場を熟知したコンサルタントや技術プロフェッショナルが部門横断のワンストップソリューションを提供し、お客様の真の課題解決を実現している点が大きな差別化のポイントであると認識しております。
ワンストップソリューションを提供し、お客様の真の課題解決を行うという経営方針・経営目標を評価していくにあたり、連結売上収益に占めるソリューション事業の売上収益の割合(または連結売上収益に占めるソリューション事業及びデジタルツイン事業の売上収益の割合)である「ソリューション比率」を重要なKPIとして設定し、「ソリューション化」のスローガンの元、同比率の向上に取り組んでいます。(ソリューション比率は、2024年2月期は50.0%であったのに対し、2025年2月期では52.9%まで上昇しております。デジタルツイン事業を含む同比率は、2024年2月期は51.7%であったのに対し、2025年2月期では55.8%となっております。)
ソリューション事業の強化のための具体的な戦略として、以下の3つの事項を掲げています。
① メーカーのデジタル化のニーズへの対応とサービス提供先の業種の拡大
当社は日本の最先端技術が集積する「自動車」、「半導体」、「精密機器」、「医療」、「重工業」の5つの業界に対して、様々なソリューションサービスを提供しています。特に自動車業界は最先端デジタル技術を活用した製品開発プロセス改革へのニーズが旺盛であり、当社グループに対して、多くの取引先から様々な案件の引き合いをいただいている状況にあります。
自動車業界で蓄積したノウハウや技術力を活用し、それ以外の業界に水平展開を行うことで、安定的な顧客基盤の構築と事業リスクの低減、更なる知見の獲得を行う方針であり、既存顧客の取引深耕や新規顧客への営業活動に注力しております。
② 専門技術領域毎の組織体制の強化と人材の育成
お客様の真の課題を解決するためには、設計開発現場における課題発見、デジタル化を実現するための各種データや業務フローの整理、最適なデジタルツールや活用技術の選定、現場への落とし込みと伴走が不可欠であり、設計開発の実務経験とデジタル技術やデジタルツールに対する深い知見を有したコンサルタント・エンジニアが必要となります。
当社グループは、専門技術領域毎にお客様とエンジニアの架け橋としての役割を果たすソリューションアーキテクトやプロジェクトの責任者としてチームを纏めるプロジェクトマネジャーを配置するなど、組織体制の強化に注力することで、品質の高いソリューションを提供していく方針です。
また、人材の育成・定着化にも注力をしており、ソリューション化のための人事制度改革を行っています。具体的には、エンジニアを起点としたキャリアパスの明確化、評価・報酬制度の見直し、働きやすさ向上施策の実施等に取り組んでいます。また、新卒の技術者については入社6年間を目途としてエンジニアリング事業にて設計開発経験を積んだ後に、自らの志向に応じたプロフェッショナルロールを選択できるキャリアパスを設定しています。加えて、従前の人数や工数・それに紐づく売上高で成果を測る手法からソリューションの質やチームとしての価値提供をベースとした形に評価制度の変更を行っています。
③採用強化やグループ内異動によるソリューション人員の確保
当社グループの人材確保において、新卒採用は最も重要な手段であり、年間80名~100名程度の採用を継続しております。工学部等を卒業した理系人材で設計開発領域の仕事をしたいと考える人材を主なターゲットとし、大学等の教育機関とも連携しながら、採用活動を進めています。
また、グループ内異動として、エンジニアリング事業からソリューション事業へ年間50名~70名程度の人事異動を行っています。能力や経験を見極めつつ、早いタイミングでソリューション事業のプロジェクトに関わることで、個人の専門性のベクトルやキャリアプランを決定しやすくなるよう制度を運用しています。
前述の人事制度改革や給与水準の引き上げ、福利厚生制度の充実等により、従業員が安心して働くことの出来る環境づくりを進め、ソリューション人材のリテンション強化を図っております。
(3)経営環境
現在、製造業は「モノづくりからコトづくりへ」という言葉で表現されるように、極めて大きな変化の局面を迎えています。環境の変化に伴って、製造業の価値も従来の多機能・高品質・高性能の製品を安価に提供するという点から、製品を用いて如何にして消費者に新しい体験を与えられるかという点に重点が置かれるようになってきています。
製品ニーズの多様化、製品サイクルの短期化への対応が製造業にとっての生命線となる中、ドイツにおいては、産学官連携のプロジェクトとして「インダストリー4.0」が提唱され、スマートファクトリーを中心としたエコシステムの構築が目指されています。製造業全体をデジタル化することで、ニーズが多様化・複雑化する市場に対応していくこと企図し、既存のバリューチェーンの改革や新たなビジネスモデル構築に向けた取り組みが加速しています。日本国内においても、大手メーカーを中心に製造プロセスそのもののデジタル化による変革の必要性が強く認識されつつありますが、改革は道半ばの状況です。
インダストリー4.0は、AIを活用したスマートファクトリーなど、製造現場での変革という視点で語られる場面が多くあります。一方、当社グループでは、製造現場のデジタル化を進めるためには、バーチャルエンジニアリングに代表される上流工程である設計開発のデジタル化が前提になるものと考えております。設計段階で細やかな仕様を決定し、その後の検証・テスト・製造の段階における不具合を極力抑えながら、短いリードタイムで市場に製品を投入するという流れを作ることで、デジタル化を推進するメーカーの競争力を向上させ、ひいては日本の製造業のグローバルマーケットでのプレゼンスを向上させることが可能になると考えております。
日本のGDPにおいて製造業は全体の20.6%を占めており、市場規模は121兆円と日本経済を支える非常に大きな中心的産業です(注1)。一方で、デジタル化という観点で日本と米国を比較した場合、1995年対比で2020年の日本の民間ICT投資額は+95.5%である一方、米国は+1,579.3%と大きな差が生じております(注2)。グローバルマーケットにおける競争環境の変化の中、製造プロセスのデジタル化や業務改革を伴うIT投資の積極化が避けて通ることの出来ない課題として認識されてきています。
上記の認識の元、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を重要な経営課題として捉えており、製造DXの国内市場は2030年度には9,060億円の規模となり、2023年度対比約2.3倍の成長が見込まれております(注3)。
注1 出所:内閣府「2023年度(令和5年度)国民経済計算年次推計」
注2 出所:総務省(2024)「令和5年度 ICTの経済分析に関する調査」
注3 出所:富士キメラ総研 2024デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、更なる成長を実現する上で、以下の事項を経営課題として重視しております。
① コンサルタント・エンジニアの採用・育成
当社グループは製造業の設計開発領域において様々なソリューションを提供しており、高度なデジタル技術や設計開発プロセスに関わる豊富な知見を有したコンサルタント・エンジニアを採用・育成していくことが、経営戦略を実行していく上で、極めて重要であると考えております。新卒採用・中途採用の強化を行うとともに、評価・報酬体系のブラッシュアップや専門性に応じたキャリアパスの設定、研修・教育体制の充実や働きやすい環境づくり等に注力し、コンサルタント・エンジニアの育成・定着化を図ってまいります。
② 技術力の向上、ノウハウ・ナレッジの蓄積
当社グループは国内トップメーカーに対して、製品開発プロセスの上流工程における様々なソリューションを提供しており、最先端技術のキャッチアップや新しい発想の元、既存の設計プロセスを改革することが必要となります。
また、特定の業種に限定せずにサービスを提供していることから、様々な設計開発現場におけるノウハウやナレッジを蓄積し、それらをお客様に還元する好循環を作り上げることが当社グループの成長を実現する上で重要であると考えております。
当社グループの特定技術領域である「デジタルツイン」「xILS」「AI」「UX」「RPA」を中心に、当該分野における技術レベルを向上させ、様々な業界の設計開発現場における経験やノウハウを組織として蓄積していくことで、お客様により高い品質のソリューションを提供し、当社グループの成長性・収益性を高めていく方針であります。
③ 組織体制の強化
当社グループは、事業成長を実現し、企業価値を向上させるためには、営業・技術・管理それぞれの組織体制を一層強化し、更なるオペレーションの効率化と内部管理体制の水準の向上を図っていく必要があると考えております。事業の成長スピードを制限することのない拡張性のある組織づくりと業務プロセスの構築、それらを実現することの出来る人材の採用と教育を重要な経営課題に据えて、取り組んでまいります。
④ 財務基盤の強化
当社グループは、現時点において財務上の課題は認識しておりませんが、継続的かつ安定的な事業の拡大を図る上では、手許資金の流動性確保や金融機関との良好な取引関係が重要であると考えております。このため、一定の内部留保の確保や費用対効果の検討による各種コストの見直しを継続的に行うことで、財務基盤の強化を図ってまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、主な経営指標として、連結売上収益成長率、連結売上高総利益率、連結営業利益率、ソリューション比率(連結売上収益に占めるソリューション事業の売上収益の割合、連結売上収益に占めるソリューション事業及びデジタルツイン事業の売上収益の割合)を重視しております。同事業は直近業績における売上高の成長ドライバーであるとともに、収益性の高い事業であることから、ソリューション比率の向上が当社グループの財務目標を達成する上で重要であると捉えております。
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