企業ブルーイノベーション東証グロース:5597】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

1.経営方針

(1)当社が目指す社会

 近年、わが国では、高度成長期以降に整備されたインフラ施設の老朽化が進む中で、老朽化による維持管理の負担増、インフラ維持・点検監視を行う労働力についても少子高齢化に伴う減少、ノウハウの属人化による技術のばらつきなど複数の課題解決が急務であり、新しいシステムによる社会活動の解決が必要となっております。

 当社は2030年ビジョンとして、インフラ等の強靭な社会システムを構築すべく、当社のBEPを自律分散(※1)型システムへと拡張し、新しい世界の社会インフラを支えるリーディングカンパニーになることを掲げました。具体的には、ドローン、ロボット、AGV等の新しい自律移動ロボットを繋ぐシステムのインフラとなり、スマートで新しいまちづくりに貢献することを目指してまいります。当該ビジョンの実現に向けて、産官学の垣根を越えた新たなソリューションを創出してまいります。

(2)経営理念

 当社は、「新しい発想(アイデア)・創造・技術革新(イノベーション)によって、世界中の人々に安心、安全、便利、楽しさを提供し、人々の豊かな生活の実現に貢献する。」を経営理念として掲げております。

 常にクリエイティブな技術者集団として、世界中の人々の生活の豊かさを実現すべく、イノベーションを起こし続け、人々の喜びである「楽しさ」を感じていただけるようなサービスを提供し続けることを実現してまいります。

2.経営環境及び経営戦略

(1)経営環境

 前述の「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、当社はBEPを基軸に、ドローンの適用拡大を進めながらロボットとの連携を実現し、ビジネスを拡大することを推進しております。

 当社の事業領域にあたる国内IoT市場の市場規模は、2022年度で6兆818億円(支出額ベース)であり、年間平均8.6%の伸長が想定され、2027年度には9兆1,877億円になることが見込まれております。(出所:IDC「国内IoT市場 産業分野別 テクノロジー別予測、2023年~2027年」)

 また、現在の当社の中核事業にあたるドローン事業に係る国内市場は、2022年度で3,086億円と推測され、2021年度の2,308億円から778億円増加(前年度比33.7%増)しております。2023年度には前年度比24.0%増の3,828億円に拡大し、2028年度には9,340億円(2022年度の約3.0倍)に達するものと見込まれております。(出所:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2023」)

 ドローンの社会活動への活用については、官民協議会においても導入に向けたロードマップが提示されており、操縦者の育成、ISOへの取組み、インフラ・プラント点検に関する取組み並びに運航管理システムの開発等が推進されている状況であり、ドローンの利用はますます拡大するものと当社は考えております。

 また、当社の現時点の主要領域である点検ソリューションの潜在市場規模については、ドローンの点検分野の市場規模は2022年度で602億円であり、2028年度までに2,145億円となり、点検分野全体の年平均成長率は24%とドローン全体の成長率(年平均成長率20%)よりも高い有望な市場となっております(出所:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2023」)。高度成長期に多数作られたインフラ設備の多くが老朽化したこと、さらにインフラの多くが高高度や狭小空間という人力では危険を伴う負荷の大きい作業であることが要因となっていると当社では考えております。

 当社のもう一つの主要領域である教育ソリューションの市場については、2022年12月に開始されたドローンの国家ライセンス制度の導入という大きな契機もあり、ドローンライセンスに注目が集まっている状況にあります。国家ライセンスについては、一等と二等が存在するものの、当社が連携しているJUIDA等の民間のドローンライセンス取得保持者には国家ライセンスの取得における負荷が小さくなる優遇処置があり、また、引き続き一定の申請手続きを行えば、民間ライセンスでも飛行は認められる等、継続して需要は見込めるものと考えております。

 ドローン飛行における許可承認申請件数については、2016年度から2022年度で年平均37%増加しており(出所:国土交通省ホームページ)、ドローンに関する教育のニーズは今後も高いものと当社では考えております。また、許可承認申請件数の増加に合わせて、ドローンの登録機体数及びパイロット数についても拡大していくものと考えております。

(2)経営戦略

 当社は、短期の経営戦略については、ドローンの「領域」と「機能」を拡大することで、高い成長を継続してまいります。また、中長期的には、BEPに蓄積されたフライトデータに関するビッグデータを活用して、ドローン市場における強固な地位を確立しつつ、ドローンやAGV等が自律して動くサービスを提供するプラットフォーマーとなることを目指してまいります。

① 領域の拡大

 今までに取り組んできた教育、点検ソリューションで着実に経営基盤を固め、2025年度に開催される大阪・関西万博を皮切りに、国際標準化に向けて活動してきたBEPポートを軸に、物流ソリューションを展開していく方針です。また、オフィスソリューション等のネクストソリューションを創造し、新しい領域のソリューション開発へ挑戦し続けます。

 現状の主要事業である点検ソリューションにおいては、橋梁等の公共インフラの老朽化や2024年1月に起きた石川県能登半島地震等の災害後の点検ニーズが拡大しているものと認識していることから、当該領域の顧客開拓を推進して成長を実現してまいります。併せて、点検市場の拡大が進む中で教育ソリューションにおけるニーズも高まっていくことが想定されるため、基礎教育及び応用教育の拡大も目指してまいります。

② 機能の拡大

 当社は、「BEPパッケージ」を以下の4段階に区分して開発し、サービス提供を進めております。

 手動でドローン等を動かす(1)Standalone solutions、単体のドローンやロボット等がBEPと接続する (2)Connected solutions、ドローンやロボットの複数機種、複数台がBEPと接続する (3)Integrated solutions、BEPに接続されたドローンやロボット等が自律して動く (4)Network-based solutionsの4段階に分けて順に開発、サービス提供しております。

3.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の収益構造は、実証実験等のフロー型売上の積上から、ドローン等のハードウェアのリースやBEPを軸としたソフトウェア、保守メンテナンス等のストック型売上を継続的に拡大することで、収益性を高めつつ、安定した売上成長を重視した経営を行っております。なお、安定した売上成長の観点では年間取引企業数及びストック型売上比率を意識し、また収益性を高めるためには、売上総利益率の高いソフトウェアサービスの売上(=BEPユーザーの利用料)及びBEPユーザー数(法人・個人)を伸ばしていくことが、客観的で重要な経営指標と考えております。

KPI

定義

採用理由

①年間取引企業数

当該年度に取引実績のある企業数

・法人顧客との取引の積み上げが売上につながる。

・年間取引企業の内訳は、新規顧客、既存顧客(リピート)で構成されている。既存顧客は、知見の蓄積並びにトラックレコードとして新規顧客の獲得につながる。また、同一顧客においてもサービス領域の拡張によるアップセルの基盤となる。

②ストック型売上比率

継続的な収益をもたらす契約による売上が全体に占める比率

・継続的、安定的な収益の比率を示す。

・ストック型の売上として、ドローン機体やAGV等のリース契約、BEPを軸としたソフトウェア、保守メンテナンスの月額課金形態により継続的に提供するサービスで構成。

③BEPユーザー数(法人)

BEPを利用している法人数(のべ数)

・BEPを活用している法人数が、利益率の高いソフトウェアサービス売上の源になる。

・知見の蓄積並びにトラックレコードの積上げが新たな顧客の獲得につながるため、のべ数をKPIとしている。

③BEPユーザー数(個人)

BEPを利用している個人数(累計)

・BEPを活用している人数が、利益率の高いソフトウェアサービス売上の源になる。

④BEPユーザー利用料(ソフトウェア売上高)

BEPユーザーのBEP利用に伴うソフトウェアライセンス利用料

・利益率の高いソフトウェアサービス売上の拡大が会社全体の収益性の向上につながる。

4.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(1)顧客の拡大

 特に現在の主要事業である点検ソリューションでは、既存顧客からのアップセル及び新規顧客の開拓を両輪として成長を目指してまいります。具体的には各既存顧客へのアップセルは、BEPインスペクション、BEPライン、BEPサーベイランスについて、主に各電力会社といずれかの契約を締結している状況であるため、BEPインスペクションからBEPラインへ、BEPラインからBEPサーベイランスへというように、他のソリューションへの契約拡大を行う方針であります。また、各ソリューションにおいてPoC段階の顧客も存在することから、本サービスにつなげることで、売上の拡大につなげてまいります。また、新規顧客の拡大については、橋梁及び水管橋という新たな業界がターゲットになるものと考えております。当業界は、非GPSかつ非常に複雑で狭小である特殊な環境下であることから当社の強みとなるセンシングの技術を活かせる領域と認識しております。橋梁向けの新BEPパッケージを提供して、顧客の拡大を推進してまいります。

 また、教育ソリューションでは、国家ライセンスの導入が後押しになり、JUIDAと連携した民間ライセンス取得の優位性がより明確になると共に、そのニーズは堅調に推移すると当社は考えております。その中で基礎教育におけるスクール運営の受託事業を中心に売上が安定的に成長するものと考えております。加えて、ドローン業界が拡大する中で、各業界におけるドローン利用が進み、応用教育における講習のニーズが拡大するものと考えております。国や大手企業との実績のある当社が当該ニーズを獲得して、売上成長につながるものと考えております。

(2)優秀な人材の獲得

 当社は、導入コンサルティングからアジャイル型のソリューション開発、運用・サポートまで一気通貫で提供することに強みがあり、それを支える最先端の技術者として今までに世界10ヵ国・地域以上から参加しており、高い技術水準を維持しています。エンジニアの獲得が世間一般で逼迫しており、優秀なエンジニアの獲得は重要な経営課題です。さらに、国内にはセンシングの開発可能なエンジニアの数が少ないため、当社は日本のみならず世界中から人材採用しております。当社のカルチャーは、多様性を重視しており、海外エンジニア社員の当社への評価も高く、社員紹介制度等を導入し、引き続き日本に限らず海外も含めて積極的に人材採用し、優秀なエンジニアを確保しつつ、次のステップへの開発体制を引き続き強化してまいります。

(3)新しい領域への参入

 2016年に開催された小型無人機(ドローン)に係る環境整備に向けた官民協議会の中で「無人航空機(ドローン)の利活用と技術開発のロードマップ」案が示され、この中で、小型無人機の将来的な利用形態の本格化に際し必要となる技術開発や環境整備に向け、飛行技術に応じたレベル分けが示されました(出所:経済産業省「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」)。わが国は、今まで、無人地帯での目視外飛行が可能な「レベル3」の段階にありましたが、2022年12月5日には、都市部を含む有人地帯での目視外飛行(第三者上空)が可能になる「レベル4」が解禁されました。

 今後、レベル4解禁で求められるドローンの自動化技術として、社会実装に不可欠な充電などを可能とするドローンの離発着場「ドローンポート」があらゆるソリューションで重要になると当社は考え、今までにドローンポートのシステム部分(Vertiport information system)の開発と国際標準化を進めてきました。レベル4では、人々の頭上を複数ドローンが自動飛行するようになり、安全で確実なドローンの自動離発着や自動充電が重要となり、また物流ソリューションでは、他モビリティとの自動連携、物流のハブ機能としての役割も重要となります。さらに、荷物の受け渡しにおけるセキュリティ向上の観点から、着荷と荷物の一時保管(宅配ボックス機能)も重要になることが予想され、当社はレベル4における新たな社会インフラとなるドローンポートの開発を推進していきます。

 当社は、先行的に仙台市において、レベル3ではありますが、東日本大震災の教訓を踏まえ、津波からの避難を呼び掛けるための新たな広報手段として、津波避難広報ドローンポートのシステムの開発を行い、2022年10月17日から本格運用を開始し社会実装しております(複数社との共同企業体による開発)。津波警報等(津波注意報、津波警報及び大津波警報)の発表とともに、全自動で2機のドローンが常設されたドローンポートから離陸・飛行し、沿岸部を訪れている方に対して、搭載するスピーカーから避難を呼びかける音声とサイレンを流すことにより、人の手を介さずに、自動で避難広報を行います。常設されたドローンポートの自動化事例では国内初であり、さらに「自動運航のドローンにより津波避難広報を行うこと」及び「専用のLTE通信網でドローンの制御等を行うこと」の2点において世界初の事例となります。また、2024年1月に、石川県能登半島地震に伴い、輪島市内を流れる牛尾川(鈴屋川の支流)にできた土砂ダムの状況を、当社が開発したドローンポートシステム「BEPポート」を活用し、自動かつ定期的に離発着するドローンにより撮影・監視し、決壊の危険性有無を常時把握することで、二次災害による被害を未然に防ぐことに貢献しました。なお、実災害現場でのドローンポートの社会実装は国内初となります。

(4)新しい機能の拡大

 現在は、手動でドローン等を動かす(1)Standalone solutions、単体のドローンやロボット等がBEPと接続する (2)Connected solutions、ドローンやロボットの複数機種、複数台がBEPと接続する (3)Integrated solutionsの開発まで完了し、サービスを提供しております。

 今後は、(4)Network-based solutions(自律分散)の開発を進め、サービス提供に必要な高度150m以下の空のインフラにおいて、完全なる自律型空間を創るクラウドモビリティ構想(※2)の実現に向けて、グリッドベースナビゲーション(※3)、ブロックチェーン(※4)、確率論的AIモデル(※5)の技術を活用し、BEPのさらなる拡張を目指します。

(5)蓄積されたデータの活用

 レベル4に向けて、自動化が加速する中、ますます重要になるのが飛行の安全性であり、その源になるのがフライトログ等の「ビッグデータ」のリアルタイム収集・解析となります。当社のBLUE SKYは、フライトログ、映像・解析データなどをBEPのクラウドに格納し、ビッグデータ化を進めております。さらにAIとも連携し、今後様々なサービスを提供する計画であり、当社は多くのパイロットのビッグデータを保有することで、今後、飛行の安全性の観点で大きく市場へ貢献すると共に、当社サービスの永続性を担保します。近年、社会及び企業のサステナビリティ(持続可能性)をより重視した経営を行う、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)という考え方があり、この考え方が追い風になり、より企業の永続性を考慮する上でも、当社のビッグデータは大きく貢献するものと考えております。

(6)組織体制の整備及び内部管理体制の強化

 当社を取り巻く事業環境が急速に変化する中で、安定的かつ継続的に成長していくためには、組織体制の整備・強化を行うことが不可欠であります。このため、事業規模や成長ステージに合わせバックオフィス機能を拡充していくとともに、経営の公正性・透明性を確保するための組織体制の整備や内部管理体制強化に取り組んでまいります。

 具体的には、監査等委員や社外取締役によるコーポレート・ガバナンス機能の充実、事業運営上のリスク管理や定期的な内部監査の実施による内部統制システムの強化を行っております。今後も会社の規模に合わせた適正な統制強化を行ってまいります。

(7)収益性の向上

 当社の売上高は2020年より37%成長(年平均成長率)で推移していますが、当社のコストの大半は人件費と研究開発費が占めており、先行して人員と研究開発を増強しているため営業損失を計上しています。先行投資の実行により売上高は成長しており先行投資の影響で今までに継続的に営業損失を計上しているものの、赤字幅は2021年以降毎年縮小しております。今後、長期的に高い成長を維持するための先行投資(重点施策)として、主に「BEP新規ユーザーの獲得」と「BEPの機能拡大」を考えており、実現のために①セールス・開発の強化(人件費)、②マーケティングの強化(広告宣伝費)に投資する計画です。なお、当社ビジネスモデルはソフトウェアの開発(BEPの機能拡大)・提供が中心であることから、ハードウェアの開発・提供を行う他社と比較して研究開発費等の事業上の必要経費は少ないものと当社は考えており、利益率の高いソフトウェアによる売上(=BEPユーザー利用料)を拡大(=BEPユーザー数の拡大)することで、収益性の向上を進めております。また、当社は実証実験からスタートして、トライアル、本格導入に至ることが多いことから、既存顧客との継続取引も多い状況であります。今後についても、既存顧客への最適なソリューションの提供により、契約が継続するように推進し、契約として継続収益形態(ドローン機体のリース契約又はソフトウェアの月額課金形態)の拡大を推進して、さらなる収益性の向上及び黒字化の実現を目指してまいります。

<用語解説>

 本項「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において使用しております用語の定義については、以下のとおりであります。

No.

用語

用語の定義

※1

自律分散

全体を統合する中枢機能を持たず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能すること。

※2

クラウドモビリティ構想

全てのモビリティは、BEPで創られたグリッド空間と繋がり、グリッド内の情報がリアルタイムで取得でき、結果として時々刻々と変化する最適な飛行ルートを提供可能な世界。

※3

グリッドベースナビゲーション

モビリティ(自律移動ロボット)が移動する空間を格子状に分割し、モビリティの移動経路を動的に算出する計算手法。

※4

ブロックチェーン

分散型ネットワークを構成する複数のコンピューターに、暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法。

※5

確率論的AIモデル

モビリティの位置を確率分布で扱い、そのデータを元に将来の位置をディープラーニングで算出する手法。

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