フレクト
【東証グロース:4414】「情報・通信業」
へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「あるべき未来をクラウドでカタチにする」というコーポレートビジョンのもと、クラウド先端テクノロジーとデザインで企業のDXを支援する、マルチクラウド・インテグレーターです。あらゆるヒト、モノがデジタルでつながる社会において、企業やその先にいるユーザーのあるべき姿を当社自身で考え、そのモノ作りまで行い、デジタルに最適化された新しい顧客体験をカタチにすることで、顧客中心型のビジネス変革を支援していきます。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、売上総利益率、四半期契約顧客数(注1)及び顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)(注2)を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでまいります。売上総利益率については、サービス付加価値の源泉として重視しており、当該指標を向上させてまいります。また、クラウドインテグレーションサービスの売上高については、四半期契約顧客数及び顧客当たりの四半期平均売上高に分解することができますが、顧客数が増加しているか、また、顧客当たりの売上高が増加しているか測る指標として四半期契約顧客数及び顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)を重視しております。
(注)
1.四半期契約顧客数:再販案件及び四半期売上高が1百万円以下の顧客を除いた四半期会計期間における契約顧客数。再販案件とは当社が仕入れたライセンスを顧客に再販売するリセールにあたり、当社においては金額が僅少なため、当該顧客は除く
2.顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA):Average Revenue per Accountの略(顧客当たりの平均売上高)で、再販案件及び四半期売上高が1百万円以下の顧客を除いた顧客当たりの四半期平均売上高。再販案件及び四半期売上高が1百万円以下の顧客からの売上高を除いた四半期売上高÷四半期契約顧客数により算出
(3)経営環境
当社のクラウドインテグレーションサービスが属する国内DX市場の規模は、2022年度の3兆4,838億円から2030年度には8兆350億円に拡大すると予測されております(出典:株式会社富士キメラ総研「2024 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」)。これはデジタル技術の進展により社会が急激に変化する中、各企業は優位性・競争力の維持・強化のため、DXによるビジネス変革が求められていることが背景にあります。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響により、各企業においてはリモートコミュニケーションを含めた業務のオンラインへのサービス転換や柔軟な労働環境への急速なシフト等の取り組みが加速し、DXは喫緊の経営課題となっております。また、DX実現を支える国内パブリッククラウドサービス市場は2023年~2028年にかけて15.7%の年平均成長率で推移し、2028年の市場規模は2023年比2.1倍の6兆5,146億円になることが予測されております(出典: IDCJapan株式会社「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2024年~2028年」)。
(国内DX市場) | (国内パブリッククラウドサービス市場) |
|
(4)当社の強みと特徴
① 高成長が期待されるDX/クラウド市場におけるユニークなポジショニング
当社は創業以来、一般消費者向け(B2C)の顧客接点(フロントエンド)となるWebモバイルアプリケーションを20年以上にわたり開発、また株式会社セールスフォース・ドットコムパートナー(現 株式会社セールスフォース・ジャパン)、Heroku,inc.パートナー、Amazon Web Services,Inc.パートナーとなり、Salesforceを中心にAmazon Web ServicesやHerokuなど複数のクラウドプラットフォームを活用したマルチクラウドインテグレーションで16年以上にわたり開発してきた豊富な実績を持っています。
また当社は2019年11月にsalesforce.com,inc.(現 Salesforce,Inc.)よりSalesforce Einstein(AI)(注1)導入事例において、日本企業として初めて「Salesforce Partner Innovation Awards 2019」の表彰を受けました。評価された点として①Salesforceテクノロジーを使用して、革新的で最先端のソリューションの開発を行った点。②お客様が抱えるビジネス上の課題を克服できるように、設計から構築まで支援し、技術的に貢献した点。③お客様にとって魅力的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援したことが挙げられます。更に2020年5月にはSalesforceを活用したマルチクラウド開発導入事例を評価され、「Innovation Partner of the Year 2020」の表彰を受けました。また、2022年から2025年かけて4年連続で、MuleSoftビジネスにおける実績が評価され、MuleSoftに関する表彰を受けております。なお、セールスフォース・ジャパン及びMuleSoft Japanから国内最上位パートナーの認定を受けた実績があり、国内でもグローバルでも評価されております。
「攻めのDX」のステップのうち「顧客接点の変革」から「サービス商品の変革」までを実現するには、「クリエイティビティ」と「マルチクラウド・エンジニアリング」の全てをカバーする必要があります。「クリエイティビティ」はサービスの企画からUI(画面)やUX(顧客体験)のデザイン、「マルチクラウド・エンジニアリング」は顧客アプリケーション、業務アプリケーション、IoTやAIといった先端テクノロジー、そしてプラットフォーム、インフラまでの開発が必要となり、当社はこれらをワンストップで提供しております。一般的にはサービスデザイン(企画設計)、UI/UXデザイン、システムなどの各段階を異なる企業に分散して依頼することになりますが、当社はこれらをワンストップで提供が可能なため、クラウド開発とその後のサービス運用までを高いアジリティ(俊敏性)をもって継続的に支援することができます。
更に、「攻めのDX」の最後のステップである「ビジネスモデルの変革」を実現するには、1つのデジタルサービスをつくって終わりではなく、複数のデジタルサービスを束ね、企業の基幹システムも含む様々なシステムをシームレスに連携させることが必要となり、そのためにもマルチクラウドの高い技術力が求められます。顧客接点の変革、サービス商品の変革にとどまらず、ビジネスモデルの変革までを含めた「攻めのDX」支援に必要な組織的能力(ケイパビリティ)を有することが、当社の競争優位性に繋がっているものと認識しております。
デジタルサービスにおいては、技術や競合の急速な進化に対して、高いアジリティ(俊敏性)をもってサービスを継続的に発展させていく必要があります。当社ではプロジェクト期間は平均約3ヶ月、短期間でのデリバリを実現しています。また、初期サービス構築で終わらず、繰り返しデリバリ・サイクルを回すことでデジタルサービスの継続的発展を支援しております。具体的にはデザインから、マルチクラウドでの開発、そして運用を通してサービスを育てるエンハンス対応(システム改善・改良)までをアジャイルで進めています。初期サービス構築以降も、フェーズ2やフェーズ3といった単位での機能追加や性能向上、サービス適用範囲の拡大などエンハンス開発を継続的に受注し、提供していきます。また、複数のサービスを並行で開発することでのクロスセルによる受注規模の拡大も実現します。
(注)
1. Salesforce Einstein(アインシュタイン):Salesforce,Inc.が提供するAI(人工知能)サービスの名称
② 優良な顧客基盤を有する収益性の高いクラウドインテグレーションサービス
クラウドインテグレーションサービスの顧客基盤は積極的にDXを推進する大手企業(注1)が中心となり、2025年3月期における大手企業の売上高構成比は92%となっております。大手企業の高い要求難度に応えるサービス品質を提供し、継続的な契約獲得を実現しております。
2025年3月期においては、旺盛なDX支援の引き合いを背景に売上高は過去最高となりました。売上総利益率に関しては、マルチクラウドや先端技術を活用した高付加価値のサービス提供により高い水準で推移しております。クラウドインテグレーションサービスの売上総利益率の推移は下記の通りとなっております。
クラウドインテグレーションサービス売上総利益率
| 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
売上総利益率 | 43.0% | 44.9% | 38.8% | 43.6% | 44.5% |
2025年3月期第4四半期における大手企業の四半期契約顧客数は55社となり、前年同期比で12社増加しました。大手企業の顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)は33.3百万円となり、前年同期比で7.2百万円減少しました。これは、新規顧客は少額取引から開始する傾向があるため、新規顧客が増加した場合、ARPAが低下する傾向があることに加え、獲得した顧客の取引拡大が想定よりも緩やかとなったことが背景となります。四半期契約顧客数及び顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)の推移は下記の通りとなっております。
四半期契約顧客数(単位:社数)
| 2021年3月期 第4四半期 | 2022年3月期 第4四半期 | 2023年3月期 第4四半期 | 2024年3月期 第4四半期 | 2025年3月期 第4四半期 |
大手企業 | 28 | 32 | 32 | 43 | 55 |
中小企業 | 5 | 6 | 5 | 7 | 10 |
合計 | 33 | 38 | 37 | 50 | 65 |
※四半期契約顧客数:再販案件及び四半期売上高が1百万円以下の顧客を除いた四半期会計期間における契約顧
客数。再販案件とは当社が仕入れたライセンスを顧客に再販売するリセールにあたり、当社においては金額が僅
少なため、当該顧客は除く
顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)(単位:百万円)
| 2021年3月期 第4四半期 | 2022年3月期 第4四半期 | 2023年3月期 第4四半期 | 2024年3月期 第4四半期 | 2025年3月期 第4四半期 |
大手企業 | 23.0 | 30.0 | 43.0 | 40.5 | 33.3 |
中小企業 | 14.6 | 11.9 | 16.4 | 24.4 | 13.3 |
顧客全体 | 21.7 | 27.1 | 39.4 | 38.3 | 30.2 |
※顧客当たりの四半期平均売上高は(ARPA):Average Revenue per Accountの略(顧客当たりの平均売上高)
で、再販案件及び四半期売上高が1百万円以下の顧客を除いた顧客当たりの四半期平均売上高。再販案件及び四
半期売上高が1百万円以下の顧客からの売上高を除いた四半期売上高÷四半期契約顧客数により算出
(注)
1.大手企業:日経225、日経400、日経500のいずれかに採用されている企業、または当該企業のグループ企業や当該企業に準ずる売上(1,000億円以上)規模の企業
③ 技術力ある人材育成とクラウド先端テクノロジーを活用した成長戦略
当社はクラウドエンジニアの採用と教育を事業上の重要テーマとして注力しています。
採用に関しては、クラウドエンジニア等の専門職従業員を中心に堅調な組織拡大を実現しています。クラウドインテグレーションサービスにおけるクラウドエンジニア等の専門職従業員(注1)は下記の通り推移しており、今後も採用は成長戦略の重要テーマとして取り組んでまいります。
クラウドインテグレーションサービスにおけるクラウドエンジニア等の専門職従業員(人)
2021年3月 | 2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | 2025年3月 |
99 | 118 | 192 | 275 | 359 |
教育に関しては、マルチな専門性を育む仕組みと人づくりを推進しております。当社クラウドエンジニアの特徴として、Salesforce、Amazon Web Services、Heroku、MuleSoft、Okta、Databricksといったクラウドプラットフォームを活用したマルチクラウドエンジニアリング、サービス企画からUI/UXといったクリエイティビティ、IoT/AI等のクラウド先端テクノロジー等のマルチな専門性を有しております。また、コンピューターを用いた情報処理を学んだエンジニアで構成されており、当社への入社時の約8割はクラウド未経験者です。クラウドを学習する仕組みとして、教育専門のイネーブルメント組織を設け、オンボーディング(注2)、トレーナー/メンター制度と合わせて教育をサポートしています。またEラーニング(自社コンテンツ)を運用し、当社オリジナルの学習コンテンツを教育に活用しています。クラウドの資格取得も報奨金制度と合わせて活発に行い、Salesforceを中心に、Amazon Web Services、Heroku、MuleSoft等における有資格者を多数輩出しております(注3)。なお、資格保有者が国内において僅かな人数となっているSalesforceの最上位資格「認定テクニカルアーキテクト(CTA)」資格取得者についても1名輩出しております。社内における勉強会や事例紹介など個のナレッジをシェアする活動は創業以来行われており、これらの活動を経てマルチな専門性をもったエンジニアづくりを組織的に取り組んでいる結果、クラウド未経験の入社者がクラウド専門知識を身につけてプロジェクトにアサインされるまでの期間は約1ヶ月と短期間で戦力化、そして実践からのフィードバックサイクルを回して継続的な改善を行う体制を実現しております。
これら取り組みに加えて、従業員のエンゲージメント向上にも注力しております。スキルアップ・キャリアアップによる給与水準の引き上げ、定期的なエンゲージメントスコアの測定、従業員アンケートの実施、1on1面談によるフォロー等、従業員一人ひとりの働きがいのケアを徹底しております。
また、当社には、研究開発を起点としたクラウド先端テクノロジーによる高付加価値を創出する事業サイクルがあります。研究開発で得たクラウド先端テクノロジーを、企業や社会で発生するイシューに対して一早く適用していきます。このノウハウを蓄積し、クラウド先端テクノロジーをパッケージ化することで、同様なイシューへ横展開し、他の企業が知見を持たない特定領域において先行して競争優位性を確立していきます。またそこから自社プロダクトに進化させることで新規事業を創出していくサイクルをつくり上げ、今後も新規事業を輩出していくことを目指しています。
(注)
1. 専門職:事務職を除いたエンジニア、マネージャー等の専門職
2. オンボーディング:キャリア採用者を組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の受け入れプロセス
3. 2025年4月20日時点の主な資格保有者数(のべ資格取得者数の集計)は以下の通りです。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、当社が認識している対処すべき課題は次の通りです。
① 人材の確保及び育成
当社が属するクラウド市場では、殊にエンジニアの人材不足が深刻化しております。当社が提供するサービスは、エンジニアの技術力によるところが大きく、今後も市場拡大が見込まれる中で当社が成長を持続していくためには、専門性を獲得できるエンジニアを安定的に確保し続けることが重要な課題であると認識しております。こうした課題に対処するため、経験者採用では、入社者の実に8割以上のエンジニアがクラウド開発未経験者であり、その代わりにコンピューターを用いた情報処理について学んだエンジニアを積極的に採用しております。クラウドの高い専門性については、教育イネーブルメントの専門チームによる入社後のオンボーディングや技術研修のスキームを構築しており、マルチな専門性を持つエンジニアに育成する仕組みがあります。そのほか、社内外研修への参加、資格取得の推奨、自社独自のEラーニングシステムの運用を行っており、継続的に人材の確保及び育成に注力してまいります。
② マルチクラウド強化
当社のクラウドインテグレーションサービスにおいては、クラウドパートナーであるSalesforceを中心にAmazon Web ServicesやHeroku、MuleSoft、Tableau、Okta、Databricksなどより、プロジェクトの引き合いをいただくことで、効率的な案件獲得体制を実現しております。更なる契約顧客数の増加及び既存顧客のクロスセルによるARPAの増加に向け、マルチクラウドの強化を推進してまいります。
③ クラウド先端テクノロジーへの研究開発
当社には、研究開発を起点としたクラウド先端テクノロジーによる高付加価値を創出する事業サイクルがあり、研究開発で得たクラウド先端テクノロジーを、企業や社会で発生するイシューに対して一早く適用していきます。このノウハウを蓄積し、クラウド先端テクノロジーをパッケージ化することで、同様なイシューへ横展開し、他の企業が知見を持たない特定領域において先行して競争優位性を確立していきます。この競争優位性を維持・向上させていくために、継続的に研究開発に取り組んでまいります。
④ 情報管理体制について
当社は、顧客の機密情報や個人情報を多く預かっており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、個人情報保護方針及び社内規程に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備等を継続して行ってまいります。
- 検索
- 業種別業績ランキング