ビジュアル・プロセッシング・ジャパン
【東証:334A】「情報・通信業」
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企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、経営理念に「ビジネスの自立と継続」を掲げております。「ビジネスの自立と継続」を実現するためには、顧客との長期的な信頼関係に基づく安定したビジネスが必要であり、「自社ブランドとして自立できるプロダクト」と「成長が見込まれる十分なサイズのマーケット」、そしてその結果として「継続的な収益」が必要であると考えております。
当社はあらゆる業種業態が必要とするDAMというマーケットに向けて、開発からサポートそしてメンテナンスまで全てを完結できるDXソリューション「CIERTO DAM」を開発・提供してまいりました。
DAMマーケットは、世界的に見ても約30年という歴史が浅い分野であり、日本国内においても認知され始めている段階であります。当社は、当マーケットにおける黎明期からDAMの販売、開発に取り組み、知見とノウハウを蓄積してまいりました。今後もこの分野の国内先駆者として「CIERTO DAM」の付加価値をさらに高め、顧客との継続的なビジネスを構築し、マーケットのニーズに応えていける業界リーダーを目指すとともに、顧客のビジネスに貢献し、サスティナブルな社会の実現に関わっていきたいと考えております。
(2)経営環境
DAMの歴史は浅く、1990年代に米国で始まり、2000年代に欧米で広がりを見せております。日本市場においても、当社が1997年に米国Archetype,Inc.の「MediaBank」を販売開始したことで今日に至っております。世界のDAMマーケットは、インターネットの高速化やスマートフォンやタブレット等の新デバイスの登場により、最近30年の間に大きな変化と成長を遂げております。また、現在世界のDAMマーケットでは、ECやWebそしてSNSなどのデジタル媒体との連携強化が急速に進んでおり、PIMとのインテグレーションのニーズも高まっております。そして注目すべき点として、ChatGPTで盛り上がりを見せているAI技術を模索する動きが多く確認されております。
調査会社Marketsandmarkets Research Private Ltd.の調査レポートによれば、世界市場におけるDAMの世界市場規模は、2028年に87億800万米ドルに達すると推定され、年平均成長率は13.0%で成長すると予測されております。また、アジア・パシフィック(APAC)市場については、2028年に21億4,100万米ドルに達すると推定され、年平均成長率は15.7%で成長すると予測されております。さらに、日本市場については、市場規模が2028年に2億6,100万米ドルに達すると推定され、年平均成長率は13.7%で成長すると予測されております。
以下は、調査会社Marketsandmarkets Research Private Ltd.による2024年4月の調査レポート「DIGITAL ASSET MANAGEMENT MARKERT-GLOBAL FORECAST TO 2028」より引用しております。
世界市場のDAM平均成長率 APAC市場のDAM平均成長率
日本市場におけるDAM平均成長率
なお、当社のCIERTOは米国調査会社G2.comの2024年度秋版Digital Asset Management Software部門において、アジア圏におけるDAMソフトウェアTop16のランキングにて1位の評価を受けて「Asia Pacific Leader」の称号を得ております。以下はG2.comのWebサイトより引用しております。
G2.com「Asia Pacific Leader」
G2.com Webサイト Digital Asset Management Software in Asia / Highest Rated(2024年10月時点)
(3)当社の強み
①DAMに係る知見とノウハウ
DAMマーケットに参入しているプレイヤーは多岐にわたり、欧米では大手ベンダーから中小ベンダーまで数十社に及んでおります。一部の海外大手ベンダーは、自社プロダクトであるCMSを中心に据えたDAMシステムを提供しており、日本国内でも展開しておりますが、CMSのサポート領域は非常に広域であることから、DAMシステムに対するサポート体制が十分に追いついていない状況にあります。また、国内ベンダーでは、DAMサービスを提供している企業はあるものの、ほとんどがオンラインストレージサービス(注1)の拡張機能という位置づけであり、DAMが必要とするワークフロー機能等は整備されていない状況にあります。
このような状況のもと、当社では1994年の創業以来、顧客や社内メンバー間での対話を通し、現場の生の声を拾い続けることでDAMに係る知見とノウハウを蓄積してまいりました。特にDAMはコンテンツ制作を行うアプリケーションやシステムの環境で活用されることになるため、コンピュータグラフィックスや映像技術そして印刷技術などの特殊な経験とノウハウが必要になります。これらは当社が創業時から持ち合わせている重要な要素であり、当社の強みであると認識しております。
②自社開発のDAMシステム「CIERTO DAM」
「CIERTO DAM」は2016年にリリースされて以来順調に販売ライセンス数を増加させております。2021年には国内開発としては初となるDAMと連携する商品情報管理システム「CIERTO PIM」を発表し、販売活動の範囲を拡げてまいりました。世界的に見てもDAMとPIMを一体化した自社製品は稀であり、顧客の要望に迅速かつ柔軟に応えることが可能となっております。
特に当社の顧客においては、「CIERTO DAM|PIM」を活用して社内の営業活動や販促活動におけるデジタル資産を、ECサイトやWebサイトの構築・サポートの支援システムとして導入する事例が増加しております。そのため、当社では企業のeコマースを実現する各種ECサイト構築ツールやWebサイトの構築・運用サービスを支援する各種CMSに注目し、連携を強化しております。世界的なECサイト構築ツールである「Shopify」や国内で高いシェアを誇るCMSである「HeartCore CMS」、世界的に利用されているオープンソースのブログソフトウェアである「WordPress」とのAPI連携が可能となっております。
また2024年には、多くの企業で利用されているオンラインストレージの中で「BOX」とAPI連携し、コンテンツ制作・管理・配信業務で「CIERTO DAM|PIM」を活用し、長期保管データを「BOX」に送稿して管理することが可能となっております。今後も顧客の要望に応じてさらに多くの外部ベンダーと連携を強化してまいります。
③顧客ファーストのコンサルティング・サポート体制
当社は、30年にわたるDAMサービスの提供から得た知見とノウハウをもとに、「CIERTO」導入時の十分なコンサルティングと導入後の万全なサポート体制を構築しております。DAMシステムをDXソリューションと位置づけ、顧客の持つ個別のニーズに柔軟かつ迅速に対応していくことが、デジタル資産の有効な管理・運用の重要な要素であると認識しております。
当社では、DAMの専業メーカーとして開発者、コンサルティング担当者及びサポート技術者による役割分担をしております。今後も顧客のニーズに応えるべく、「CIERTO」のバージョンアップを進めていくと同時に、さらなる開発・コンサルティング・サポート体制の強化を行ってまいります。
④顧客のニーズに添った柔軟なシステム構築
「CIERTO」の導入形態は、サブスクリプション型によるクラウドタイプ、ライセンス型によるオンプレミスタイプを主力とし、顧客ニーズによっては、両者の中間をなすハイブリッド型も用意しております。コンテンツプロダクションの環境を自社内に持つ導入企業は、直接社内LAN経由でアクセスできるファイルサーバーとしての活用も目的として「CIERTO」のサーバーを自社内に設置するオンプレミスタイプを選択するケースも多くあります。また、「CIERTO」のクラウドサービスを利用しつつローカルのファイルサーバーを活用したい顧客は、ハイブリッド型を選択することができます。ファイルサーバーとして活用する場合は、当社の特許技術である「FSモニター(注2)」によりファイルシステムとデータベースの整合性を保ちます。
(注1) インターネット上にデータを保存できるディスクスペースのことで、データの保管や共有を簡単に行うことができます。オンラインストレージは利用する各ユーザーを主体に設計されており、個々のユーザー間のデータ共有に主軸が置かれております。一方で、DAMはデジタル資産を主体に設計されており、デジタル資産の効率的な管理・運用を目的とした技術です。
(注2) ファイルシステムで操作された動き(フォルダ間の移動、削除、リネイム等)を監視することにより「CIERTO DAM」のデータベースと常に一貫性を維持することが可能になります。当社は「FSモニター」について、2022年5月に特許を取得しております。
(4)経営戦略
当社は、創業以来30年にわたり、海外DAMベンダーとの協業や自社開発システム「CIERTO」の提供等を通じ、日本市場における先駆けとして、DAMに係るサービスを提供してまいりました。今後も引き続き、DAMマーケットの拡大、日本国内におけるDAMの浸透、当社の市場競争力の維持・強化に向け、以下の事項に注力してまいります。
①販売パートナーの拡充
DAMマーケットの拡大に伴い、ターゲットとなる業界や業種が今後も増加していく傾向にあると想定しております。それに伴い、各業界について専門的な知見を有する販売代理店の拡充が重要であると認識しております。近年では、CMSパッケージである「HeartCore CMS」を国内約700社以上へ導入している国内大手CMSメーカーのハートコア株式会社に対し、CIERTO DAMをOEM供給する販売協力体制が実現するなど、一定の成果をあげております。引き続き販売代理店等の販売パートナーの拡充に努めてまいります。
②APAC地域での調査活動
当社は海外展開の可能性も視野に入れており、特にAPAC地域を中心に市場調査を行っております。欧米とは異なり、APAC地域でのDAMマーケットは黎明期にあたり、当社の海外展開における重要販売拠点と位置づけております。また、当社の「CIERTO」は米国調査会社G2.comの2024年度秋版において、アジア圏におけるDAMソフトウェアTop16のランキングにて1位の評価を受けて「Asia Pacific Leader」の称号を得ており、欧米のDAMベンダーに先駆けて展開すべく、当該地域におけるビジネスパートナーの発掘を継続してまいります。
③連携ソリューションの拡充
当社は、DAMの有用性向上にむけ、これまでにAproove SAの「APROOVE WM」、WoodWing Sdn.Bhd.の「WoodWing Studio」等の海外ビジネスパートナーとの連携強化、そして国内においてはハートコア株式会社の「HeartCore CMS」やECプラットフォーム「Shopify」、オンラインストレージサービスの「BOX」など、様々なソリューションとの連携強化に取り組んでまいりました。今後も更なるDAMの有用性を幅広い分野に拡充すべく、「CIERTO」と様々な外部ソリューションとの連携開発を推進し、媒体・コンテンツ制作・管理・配信におけるDXソリューションとしての競争力を高めてまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営理念である「ビジネスの自立と継続性」を実現するために、重要な要素である「継続的な収益」を柱に、重要な経営指標を以下のとおり定めております。
①ARR
当社のサービスのうち、クラウドタイプ「CIERTO」の利用収入、オンプレミスタイプ「CIERTO」の保守サービス収入等は、契約期間にわたり月次で収益を計上する主なサブスクリプション型のサービスであり、「継続的な収益」をあげるための基盤となることから、MRR(Monthly Recurring Revenue)の年間分(12ヵ月分)に相当する年間計上収益であるARR(Annual Recurring revenue)を重要な経営指標として定めております。
②新規CIERTOライセンス数
「CIERTO DAM|PIM」は、当社の主要サービスであり、新規CIERTOライセンス数(サブスクリプション型、ライセンス型の合計)の拡大が重要であると考えております。また、「継続的な収益」をあげるための重要な指標であるARRの向上にもつながることから、新規CIERTOライセンス数を重要な経営指標として定めております。
③CIERTO解約率
クラウドタイプ「CIERTO」の利用収入、オンプレミスタイプ「CIERTO」の保守サービス収入等は、主なサブスクリプション型のサービスであり、これらの維持には、満足度の向上(解約率の低減)が重要であると考えております。また、「継続的な収益」をあげるための重要な指標であるARRの向上にもつながることから、「CIERTO
DAM|PIM」のサブスクリプション解約額をCIERTO全体のサブスクリプション収入で除する解約率をCIERTO解約率と称して、重要な経営指標として定めております。
重要な経営指標を事業年度ごとに示すと、以下のとおりであります。
| 前事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) | 当事業年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
ARR | 675,691千円 | 822,901千円 |
新規CIERTOライセンス数 | 26本 | 31本 |
CIERTO解約率 | 2.40% | 1.74% |
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①的確なマーケティング活動と販売力の強化
当社は現在、販売代理店の拡充に注力しているものの、2024年12月期における売上のほとんどは顧客への直接販売で構成されております。そのため、見込み顧客へのアプローチ数増加が販売力強化のための重要な課題と認識しております。
当社における見込み顧客開拓のための重要なマーケティング活動は、SEOの強化と展示会イベントでの広告宣伝、そして「CIERTO」導入企業を招いての導入事例セミナーであります。これらマーケティング活動は、案件獲得に多大な影響を与えており、今後も積極的に取り組んでまいります。
一方で、「CIERTO」をはじめとした当社サービスは、直感的に理解できるものではなく、十分な時間と詳細な説明を必要とする特性があります。そのため、マーケティングオートメーション(MA)(注)を活用し、これらの顧客との接点を継続的に維持しながら営業活動を進めていく仕組みの構築が、的確なマーケティング活動と販売力の強化に不可欠であると考えております。
(注) 獲得した顧客情報を一元管理し、主にデジタルチャネルを通じたマーケティング活動を自動化する概念ツールであります。多くの顧客へのアプローチが必要な業務で作業効率を高めるために活用されます。
②商品力の強化
「CIERTO」は、国産のDAMソリューションとして、当社が30年にわたって蓄積してきた知見とノウハウを基に開発しております。そのため、経験豊富な海外DAMベンダーの製品とも十分に競争優位性を発揮していると考えておりますが、急速に発展している情報社会に対応すべく、DAMに係る機能の追加・更新に日々取り組んでおります。今後はさらなる差別化のためにAIの機能強化をはじめ、EC、Web、CMSそして普及が進むオンラインストレージとの連携が不可欠であると考えております。
現在世界のDAMマーケットでは、ChatGPTをはじめとしたAIとの連携を模索する動きが多く確認されております。当社は、2017年からMicrosoft Corp.のAzureのAIサービスと連携し、AI技術を取り入れてまいりました。また、2024年より「CIERTO」内部にAIの学習機能150以上の学習済みモデルを搭載した汎用AIのSDK(注)を組み込むことにより、すでに自然言語検索、類似画像検索、自動タグ付け、OCR自動認識、音声認識テキスト生成等を提供しており、今後も、あらゆる自動化ニーズに対応してまいります。
また、「CIERTO」とオンラインストレージの連携に係る仕組み作りに取り組んでまいります。この連携により、販促媒体やコンテンツ制作に必要とするデータを、オンラインストレージと「CIERTO」が共有することで「CIERTO」の環境下で一貫したコンテンツ制作のプロジェクトを進めることが可能です。そして、「CIERTO」での作業後はアーカイブ先としてオンラインストレージ内に保存できるようになるためコスト削減につながります。
(注) Software Development Kitの略称で、Webサイトやアプリケーションの開発に必要なツール一式が含まれております。 SDK ツールには、開発者が使用して独自のアプリに統合できるライブラリ、ドキュメント、コード サンプル、プロセス、ガイドなど、様々なものが含まれます。
③組織力の強化
当社は、事業拡大に伴う人員及び組織力の強化を重要な課題としております。当社は、新卒採用及び中途採用に注力しており、今後も引き続き人材採用活動を推進してまいります。また、必要な人員を確保していくと同時に、さらなる労働環境の整備が必要であると考えております。具体的には、運用中の職務職階制度に基づいた人事評価制度の改善、組織構成の再検討、社内教育制度の拡充、社内外研修への参加等の施策を実施していく予定です。全従業員が一枚岩となって働くことができる環境を再整備することで、さらなる組織力強化に努めてまいります。
④財務基盤の強化
当社は、さらなる事業拡大のために、営業・技術・サポート・マーケティング・商品開発等様々な観点から戦略を策定しておりますが、当該戦略を遅滞なく実行し、経営理念として掲げている「ビジネスの自立と継続」の実現を図るために、安定した財務基盤を確立・維持することが重要であると捉え、主力製品「CIERTO」のサブスクリプションビジネス拡大に努めてまいりました。今後は引き続き、CIERTOの受注数拡大のみならず、開発コスト、販売価格等の見直しを定期的に実施することで、健全な財務基盤の構築・強化に努めてまいります。
⑤内部管理体制の強化
当社は、順調に業容が拡大している状況のもと、企業としての社会的責任は益々高まっているとの認識を強めております。これまでも経営管理体制の強化を図ってまいりましたが、コーポレート・ガバナンス強化のための積極的な取り組みは、事業経営に対するステークホルダーの理解を促進し、企業価値向上のために必須のものであると考えております。そのため、引き続きよりよい組織体制の整備及び社内規程・業務マニュアルの見直しを推進し、さらなる管理体制強化及び統制強化による事業リスク低減に努めてまいります。
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