パーソルホールディングス
【東証プライム:2181】「サービス業」
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企業概要
(1)市場環境の変化と全体像
雇用の流動化やはたらき方・はたらく価値観の多様化など、個人のパワーシフトを背景に、個人が自らのキャリアを主体的に描き、仕事だけでなく人生もキャリアの一部と捉えた上で、はたらくことを通じてその人自身が感じる幸せや満足感“はたらくWell-being”を求める時代へと変化しております。また、生成AI、業務のリモート化、自動化・省人化、データによる分析・最適化などの急速なテクノロジーの進化により、人とテクノロジーの共創による経営進化が求められる時代となっております。
当社は、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を掲げ、多様なはたらき方や学びの機会の提供を通じて、一人ひとりの選択肢を広げ、はたらく自由を広げることで、個人と社会の幸せを広げる「“はたらくWell-being”創造カンパニー」となることを目指しております。さらに、これらの社会変化や多様化する個人のニーズに応えるため、当社は「人」による介在価値を重視しつつ、プロダクトとデジタル化で非連続な成長を実現する「テクノロジードリブンの人材サービス企業」へ進化することを、経営の方向性として定めております。
「はたらく」に関するさまざまな事業・サービス、多様な人的資本を強みとし、未来に向けた価値創出に取り組んでいます。なお、世界の地政学情勢等により経済活動に影響が及んだ場合、景気連動性の強い当社の一部事業にも影響が及ぶ可能性があります。
(2)価値創造ゴール
当社は、「人の可能性を広げることで、2030年に100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを価値創造ゴールとして設定しています。「多様なはたらき方の提供」や「学びの機会の提供」等を通じて、「グループ中期経営計画2026(2024年3月期~2026年3月期)」では50万人、2030年には100万人のより良い“はたらく機会”の創出を目指します。2024年度は約46万人のはたらく機会を創出することができました。
(注)"はたらく機会“の創出の実績には、全SBU及びFUの人材派遣、アウトソーシング等における稼働人数、人材紹介事業の就職件数を含む。
(3)当社グループのサステナビリティに関する重要課題
当社は、2030年に向けた「グループ中期経営計画2026」において、「事業を通じた社会課題の解決」「持続的成長を実現するための基盤」の2つの領域で、以下8つのサステナビリティに関する重要課題(以下、「マテリアリティ」という。)を特定し、それぞれ目標を設定し、進捗状況のモニタリングを行っております。
<事業を通じた社会課題の解決>
①はたらく機会の創出 :「人を集めるチカラ」「人と組織を結ぶチカラ」「業務をデザインするチカラ」を通じて、2030年に100万人のはたらく人の可能性を広げ、より良い“はたらく機会”を創出する
②多様なはたらき方の提供:フレキシブルなはたらき方や雇用のあり方を提案・提供することで、個人のニーズに見合うはたらき方の実現に貢献する
③学びの機会の提供 :就業、リスキリングやアップスキリングにつながる学びの機会を提供することで、はたらく人の選択肢を広げ、個人のキャリアの可能性を最大化する
④企業の生産性向上 :生産性向上に資するサービスを提供することで、企業活動の効率化、労働力不足の解消に貢献する
<持続的成長を実現するための基盤>
⑤多様な人材の活躍 :多様性を活かす企業文化の醸成、環境の整備を通じて、グループビジョンを実現する
⑥データガバナンスの強化:パーソナルデータの利活用に関する当社グループにおける共通の方針・ルールの策定や管理・保護体制の整備を行い、さらなる強化を図ることで、ユーザーの利用環境を整えるとともに、信頼を確保する
⑦人権の尊重 :責任ある企業として国際規範に沿った取り組みを推進することで、人権への負の影響を軽減するとともに、社員を含むすべてのステークホルダーの信頼を獲得する
⑧気候変動への対応 :カーボンニュートラルに取り組むとともに、環境関連(GX: Green Transformation)人材サービス等を通じて脱炭素社会の実現に貢献する
(4)グループ中期経営計画2026について
①全体方針
2030年に向けたありたい姿「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を目指した、グループ中期経営計画2026(2024年3月期~2026年3月期)の全体方針及び進捗は下記のとおりです。
・グループ中期経営計画2026
事業の位置づけ | ・Staffing SBU/BPO SBU/Technology SBU/Career SBU/Asia Pacific SBUの5つのSBU体制へ ・Staffing SBUを「グループの屋台骨(グループの成長基盤)」と位置付けつつ、Career SBU/BPO SBU/Technology SBUを「利益成長の柱」とする ・Asia Pacific SBUは、将来の飛躍へ向けた基盤強化(収益性改善)を行う ・将来に向け事業の探索・創造を行う、R&D Function Unitを設立 |
強化すべき競争優位性 | ・「人を集めるチカラ」「人と組織を結ぶチカラ」「業務をデザインするチカラ」を継続強化する強みとする |
事業成長のエンジン | ・事業成長を加速させるグループ共通の下記3つの取り組みを「事業成長のエンジン」とする 人的資本 :「“はたらくWell-being”の体現/テクノロジー人材の拡充/多様な人材が活躍する基盤構築」に取り組む
テクノロジー:「テクノロジー人材と組織の進化/はたらく環境のデジタル化推進/コア事業の価値向上/新たな価値創造」に取り組む
ラーニング :より良い“はたらく”に繋がる“学び”を各事業に実装することで個人とともに、各事業の成長を加速させる |
・グループ中期経営計画2026の進捗
事業の位置づけ | ・Staffing SBUは、“はたらく人に軸足を置く経営”に取り組み、派遣スタッフが選ぶ 派遣会社満足度ランキング2024で2年連続2冠獲得(総合満足度ランキング6年連続1位、継続就業意向度ランキング2年連続1位、出典:派遣の働き方研究所調査より)。人材紹介の伸長や賃金交渉を通じた単価向上による粗利益の改善やコスト管理による販管費削減等により、2027年度調整後EBITDAマージン6%を目指す ・Career SBUは、継続して二桁成長を達成。高成長が期待できるハイクラス領域doda Xを引き続き強化 ・BPO SBUは、事業会社の統合が完了。加えて、IT系BPOの成長加速に向けてパーソルコミュニケーションサービス(旧:富士通コミュニケーションサービス)株の全株式を取得。クロスセルやコスト最適化を推進し、2028年度調整後EBITDAマージン8%を目指す ・Technology SBUは、採用強化やエンゲージメント向上による退職率低減、請求単価の上昇を実現し、二桁成長を継続。請負比率を上昇させることで、2028年度調整後EBITDAマージン10%を目指す ・Asia Pacific SBUは、ファシリティマネジメント事業の契約残高が対前期末比で20%程度増加し好調、加えてコスト最適化を推進 ・R&D Function Unitは、短期間・短時間の仕事に特化し、柔軟な働き方を望む個人と必要な時に必要な分だけ人材を活用したい企業をつなぐデジタルマッチングプラットフォーム「シェアフル」を積極拡大 |
強化すべき競争優位性 | 「人を集めるチカラ」: ・グループビジョンを核とした統合的なブランドコミュニケーションの展開 ・共通CIによる各サービスブランドとのリンケージ強化 ・継続的なマーケティング投資による認知度向上 ・各サイトやアプリのUI/UX向上などを通じた個人の利便性・満足度向上 「人と組織を結ぶチカラ」: ・ハイクラス転職「doda X」とスカウトサービス「doda ダイレクト」を連携し、「doda X」では企業から直接スカウトが届く企業スカウトサービスを、「doda ダイレクトでは「doda X」の登録者に直接スカウトを送ることができるプランを提供 ・業界最大級の求人数を誇る派遣求人サイト「ジョブチェキ」の運営 ・人材派遣や人材紹介への接続を視野に入れた、シェアフルの構築、拡大 「業務をデザインするチカラ」: ・BPO事業の統合やM&A、アライアンスによるケイパビリティ(人材力、顧客接点、規模)強化、市場におけるプレゼンスを向上 |
事業成長のエンジン | 人的資本: ・グループ中核会社が健康経営優良法人に2年連続で認定 ・人的資本レポートの日本語版・英語版を発行
テクノロジー: ・持株会社でのテクノロジー人材を集約した組織及び、事業へのAI適用を推進する組織によるSBU技術支援 ・テクノロジー人材向け人事制度の運用、生成AIの導入 ・DX注目企業2025に選定
ラーニング: ・派遣スタッフへの教育・研修コンテンツを拡充 ・人材紹介において、IT・ハイクラス領域を中心に、仕事に結びつけた学習提案をすることで、個人と繋がり続けるサービスを展開 |
②財務戦略
当社は、「パーソルグループ中期経営計画2026」において、企業価値の向上を図るため、財務戦略を「主要な財務戦略指標」「キャッシュアロケーション」「株主還元」の3つに分け、それぞれ達成すべき目標を明確にしております。
<主要な財務戦略指標>
成長性 | 調整後EBITDA | 年平均成長率は10%超 |
効率性 | ROIC(投下資本利益率) | 15%以上 |
ROE(自己資本利益率) | 20%以上 | |
健全性 | Net Debt/Equity | 1倍以内 |
Net Debt/EBITDA | 2倍以内 |
それぞれの指標についての実績及び予想は下記のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
・成長性指標
調整後EBITDAは、「グループ中期経営計画2026」における3カ年の年平均成長率10%超の目標は未達成の見込みですが、2026年3月期の成長率は10.4%と、単年度では10%を超える成長を計画しております。
・効率性指標
当社は、取締役会において資本コスト及び資本効率性のモニタリング等を継続して実施しており、現在の資本コストを約8%と認識しております。2025年3月期のROIC実績は資本コストを大きく上回る16.6%であり、2026年3月期はさらに高い約18%と、「グループ中期経営計画2026」の3カ年において、継続して目標である15%を超える見込みです。今後も中長期的に「ROIC-資本コスト」(ROICスプレッド)を拡大することに努めるとともに、資本コストの低減に向けた取り組みを行ってまいります。
ROEにつきましては、2025年3月期までは目標未達でありましたが、2026年3月期は約20%と、目標を達成する見込みです。
なお、当社では、資本効率性の向上を役員報酬制度の指標の一つとして既に導入しております。
(参考)
ROIC及びROEの推移グラフ
ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本(資本合計+有利子負債(リース除く))の期首・期末平均
(2024年3月期)
税引後営業利益 361億円
投下資本の期首・期末平均 2,386億円(資本合計1,959億円+有利子負債(リース除く)427億円)
(2025年3月期)
税引後営業利益 398億円
投下資本の期首・期末平均 2,395億円(資本合計2,073億円+有利子負債(リース除く)322億円)
ROE = 親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 親会社の所有者に帰属する持分の期首・期末平均
(2024年3月期)
親会社の所有者に帰属する当期利益 299億円
親会社の所有者に帰属する持分の期首・期末平均 1,810億円
(2025年3月期)
親会社の所有者に帰属する当期利益 358億円
親会社の所有者に帰属する持分の期首・期末平均 1,909億円
・健全性指標
Net Debt/Equity、Net Debt/EBITDAはそれぞれ「グループ中期経営計画2026」の目標である1倍以内、2倍以内を恒常的に達成しております。
<キャッシュアロケーション>
「グループ中期経営計画2026」における3カ年合計の税引後の調整後EBITDA2,000億円は未達成となる見込みであるものの、成長投資と株主還元については、それぞれ750億円の当初想定に対し、概ね計画通りのアロケーションを予定しております。
<株主還元>
当社は、株主還元を重視しており、「グループ中期経営計画2026」においては調整後EPSに対して配当性向を約50%にすることを定めております。各連結会計年度の調整後EPSに対する配当性向は以下のとおりです。
2024年3月期 50.5%
2025年3月期 51.4%
2026年3月期 54.0%(予想)
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