企業ハリマ化成グループ東証プライム:4410】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

当社グループは、松から得られる再生可能な植物資源であり、特性が異なるトールロジンとガムロジンを、日本国内をはじめブラジル、アルゼンチン、ニュージーランド等においてグローバルに生産する唯一のメーカーです。当社グループでは、この強みをさらに活かすために、各種誘導体製品の開発はもとより、ロジンや脂肪酸の組成や純度をコントロールする技術開発や、松やにに含まれる天然資源の生成に関する代謝経路の解明とその仕組みを活かした生産技術開発等を推進しております。

また、昨今の環境対応への関心の高まりを受けて、化学素材のバイオリニューアブル化への流れを意識した製品開発を進めるとともに、有機溶剤を媒体とした製品から水を媒体とする乳化・分散技術を利用した製品の研究開発に取り組んでおります。

先端技術分野では、当社グループの保有技術である樹脂合成や界面制御技術、金属接合技術を応用し、半導体製造工程に使用されるレジスト用樹脂、光学フィルム向け各種材料、導電性材料などの研究を推進しております
 当連結会計年度の研究開発費は、2,731百万円、特許の登録件数は国内6件、海外が16件、国内の出願件数は2件、海外の出願件数は4件でした。

(1)樹脂化成品

当事業においては、塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂、機能性樹脂、合成ゴム用乳化剤および脂肪酸誘導体などの研究開発を行っております。

印刷インキ用樹脂については、主力市場である平版インキ市場の縮小が続いていますが、当期は印刷適性に優れた複数の新製品を上市するに至りました。これら新たな価値を提供する新製品開発に注力するとともに、当社の材料や技術で、印刷業界における環境保全の取り組みに貢献できる新製品の開発にも注力しております。

塗料用樹脂については、建築外壁用の環境配慮型弱溶剤系樹脂の開発を進めるとともに、より環境に配慮した水系塗料用の樹脂開発に取り組んでおります。水系塗料用樹脂では高光沢で高密着性と耐水性を併せ持ち、建築外装だけでなく鉄部等の塗装に適した耐久性を持つ樹脂を開発し、拡販活動を開始しております。

粘接着剤用樹脂については、高温使用環境下でも粘着力を維持できる耐熱性を重視した新規タッキファイヤーを開発中です。また、この分野では使用が限定的であったトールロジンを使用した新製品開発を進めており、トレーサビリティの観点からもトールロジンを原料とする粘着剤用樹脂は注目を集めつつあります。

ゴム用添加剤については、建物を守る制振ゴム用添加剤の販売を開始しました。この技術を用いて制振、防振分野に投入できる新製品の開発を進めております。また、各ゴム製品に求められる性能を最大化するように機能発現のメカニズムを踏まえながら新しい添加剤の開発を進めており、タイヤ用添加剤の分野では顧客評価へと進んでおります。

機能性樹脂分野では、光学フィルム用の屈折率調整ハードコート剤の製品開発を進めるとともに、新規用途展開を図っており、複数の開発テーマを推進しております。加えて、ナノ粒子を分散する技術を光学用途以外に展開する検討を進めており、顧客での評価を進めながら製品の高機能化に挑戦しております。また、当社の基盤技術である表面・界面制御技術を応用し、離型フィルムや帯電防止コート剤などの新規開発を進めております。

当事業における研究開発費の金額は395百万円でありました。

(2)製紙用薬品

当事業においては、水性樹脂の合成をコア技術とし、段ボール等に使用される板紙の強度を高めるポリアクリルアミド(PAM)系紙力増強剤、紙や板紙の吸水性を制御して水性インクのにじみ防止や耐水性を付与するロジン系サイズ剤、紙や板紙の表面に塗ることで印刷適性や撥水性を付与する表面紙力増強剤や表面サイズ剤といった、主に製紙工程で使用される機能性薬剤の開発を行っております。

日本国内における紙・板紙の内需は、2011年以降、マイナス傾向で推移していますが、当期は、4月からプラスチック資源循環促進法が施行されたことや、これまでのコロナ禍による行動規制が緩和されたことより、包装用紙や段ボールといったパッケージング用紙の需要が2年連続で増加となりました。

このような業界の動向を踏まえ、PAM系紙力増強剤やロジン系サイズ剤を中心に、日本国内、紙板紙生産量の約50%を占める中国と米国、板紙の生産量が増加している東南アジアに適用できる製品やアプリケーションの開発を進めております。また、紙の原料となるパルプを生産する工程には操業性や生産性を改善する工程(改善)薬剤であるピッチコントロール剤、脱プラスチックの動きの中で紙製素材の利用を推進できるバリアコート剤の開発も進めております。バリアコート剤では、耐水性や耐油性に加え、ヒートシール性等を付与できるコート剤の開発により、紙化を望む顧客のニーズに応え、紙製素材の普及に貢献していきます。

紙板紙製品の世界的な輸出入、脱プラで需要が高まりつつある食品包装用紙向けとしては、米国食品医薬品局(FDA)、ドイツ・BfR、中国・GB9685の三法規制に対応可能な安心で安全な製品(間接食品添加物として海外法規制に対応可能な製品)の拡充を進めております。アニオン性のロジン系エマルジョンサイズ剤「NeuRoz」全シリーズとPAM系乾燥紙力増強剤「ハーマイドC-10」に加え、両イオン性のPAM系乾燥紙力増強剤「ハーマイドT2」が新たに三法規制に対応可能となりました。FDAとGB9685に対応する「ハーマイドKS」シリーズと併せて、多様化する国内外の顧客ニーズに応えていきます。また、ピッチコントロール剤のASシリーズはFDAとGB9685、バリアコート剤のハイコートBCシリーズもFDAとBfRに対応しております。

海外市場においては、中国、北米、東南アジア地域における市場拡大に注力しており、紙・板紙の生産量が世界一位の中国では三拠点で事業展開を進めております。昨年は、PAM系紙力増強剤の添加率上昇によって頭打ちとなる効果を高めるために開発した助剤を実績化しており、今後は、成長する東南アジア市場等、他の地域へも展開したいと考えております。また、米国では、Plasmine Technology,Inc.によるFDA認証取得製品を軸とした事業を展開しております。古紙利用による強度低下や操業性改善に加え、これまで紙力増強剤として使用されてきた澱粉をPAM系紙力増強剤に置換する動きが出てきており、主要製品であるサイズ剤と共に、これまでに得たノウハウを基に展開を進めていきます。

当事業における研究開発費の金額は739百万円でありました。

(3)電子材料

当事業においては、主として自動車業界と電子機器・情報産業向けのはんだ付け材料、自動車用熱交換器等の組み立てに用いるろう付け材料、半導体製造に用いられるレジスト用樹脂を展開し、顧客が安心して利用いただけるように地球環境への配慮と信頼性を重視した製品開発を行っております。

はんだ材料については、鉛フリーペーストや高耐久ペーストを通して、より一層の車載電子機器の高機能化や精細な電子制御の実現と、大きなストレスでも壊れない接合耐久性など、安全で快適な運転に貢献しております。  

また、ヘンケル社のはんだ事業の買収により、各々が保有する技術の統合と革新による新製品開発と商品力強化を図っております。

ろう付け材料については、自動車用アルミニウム熱交換器接合用材料の海外展開推進と、給湯器などへの搭載が拡大しているステンレス熱交換器を接合するろう付け材料の開発に注力しております。熱交換器の更なる軽量化、熱効率化だけでなく顧客での生産各工程における使用エネルギーの削減提案にも取り組んでおります。

レジスト用樹脂については、コロナ禍で加速したデジタル化の動きが一服して足元の半導体市況は調整局面にあるものの、次世代の半導体パッケージを中心とした材料開発は一層加速しております。当社の得意とする高分子合成技術や有機合成技術に更に磨きをかけ、今後も半導体産業の進歩に貢献する開発を進めていきます

当事業における研究開発費の金額は520百万円でありました。

(4)パインケミカル

 当事業においては、当社の強みである粗トール油精留事業をさらに活かすため、その精留能力を高める技術を開発しております。粗トール油は、製紙に用いられる松材から工業的に得られるバイオマス資源です。バイオマス資源は温室効果ガスの排出量削減に貢献できるため、そのニーズが世界的にかつ急激に高まっております。そのような環境のもと、当社グループでは、特性の異なる世界中の粗トール油を余りなく精留して活用できる技術構築に取り組んでおります。さらに、粗トール油から得られるロジンや脂肪酸を使った商品開発においては、トール油製品の価値向上のため、トレーサビリティに関わる認証取得を進めております。

当社グループでは、グローバルな生産体制と独自の購買ルートで世界中の多彩なロジンや脂肪酸が活用できます。それらの松種の違いによる性能への影響の解明、顧客における事業継続計画(BCP)への貢献、またその特性を活かした製品価値の向上に注力しております。

環境問題への取り組みについては、精留プラントで分離した製品原料にならない成分もバイオマス発電プラントの燃料とすることで、環境にやさしい電力や熱源を発生させ、活用しております。現在、さらにそこから排出される二酸化炭素まで低減でき、カーボンニュートラル実現に一層の貢献ができる生産技術開発を行っております

 当事業における研究開発費の金額は430百万円であり、報告セグメントに帰属しない全社費用であります。

(5)ローター

 当事業においては、サステナビリティをキーワードとして粘接着剤用樹脂、道路標識塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤およびアロマケミカルなどの研究開発を行っております。

 粘接着剤用樹脂の分野では、水系粘着付与剤樹脂(商品名:SnowTackTM)の高いグローバルシェアを維持しつつ、得意とするラベル・シール用途だけでなく、産業用テープ向け粘着付与剤樹脂市場への用途拡大をめざしております。また、省エネルギーの観点から水系粘着付与剤樹脂の高濃度化、熱乾燥工程を必要としないUV粘着剤向け粘着付与剤樹脂の開発も進んでおり、量産準備段階に入っております。さらに、自動車部品などに使用される当分野の製品については、顧客から事業継続計画(BCP)の策定を強く求められるようになっており、ハリマ化成の日本国内拠点とローターのグローバル拠点で共通の製品づくりができる体制へ向けた研究開発も推進しております。

 印刷インキ用樹脂の分野では、印刷のデジタル化、小ロット化に伴い、紫外線硬化型インキが伸長しております。当社開発品(商品名:ReactolTM UVシリーズ)は、紫外線硬化型インキに優れた顔料分散性、耐乳化性を付与できることから大手印刷インキメーカーで採用となり、欧州、米国、アジアへのグローバル展開を進めております。水系フレキソインキ市場では、持続可能な社会の創造をめざす顧客が掲げる温室効果ガス削減目標を達成するために、包装容器に使用されるインキ、コーティング剤の原料を従来の石油由来から植物由来に置換したいという需要が高まっております。その需要に対応すべく開発したロジンをベースにした水系フレキソインキ用樹脂(商品名:SnowpackTM)は一部の顧客に採用され、商業化の段階に入りました。

 アロマケミカルの分野では、テレピン油から派生する香料原料の開発を進めております。香料市場においては、昨今の環境志向の高まりにより、石油由来香料から植物由来香料への原料置換ニーズが高まっております。ローターでは、ニュージーランドで、松材を原料としたパルプ製造工程で副生する粗サルフェートテレピン油を蒸留し得られた成分から香料原料の製造を行っておりますが、今後の需要拡大に対応すべく生産効率向上をめざした製造技術の開発を進めております。

さらに、ローターでは中長期的な視野で研究開発を行う部門を設け、ロジンや脂肪酸などバイオマス原料の機能を追求し、石油化学品を代替できるグリーンな製品の開発を行っております。今後、市場伸長が見込める事業への新規開発投資を推し進め、ハリマ化成の研究開発カンパニーと連携の上、戦略的な技術開発、マーケティングを進めております。
 当事業における研究開発費の金額は645百万円でありました。

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