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【東証グロース:148A】「情報・通信業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「温故×創新」を企業哲学、「社会に可能性の卵を。」をパーパスとして定めており、「CREATE FUTURE BASE」をミッションとして掲げ、管理会社向け月極駐車場オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」及び貸会議室ビジネスを起点として、まだ世の中にない独自の発想から遊休資産に新たな価値を生み出し、その仕組みを創造することで社会に貢献してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略
当社の主要事業の一つである月極イノベーション事業においては、従来、店舗型の管理会社にて月極駐車場を探していた利用者が、インターネット上の検索ポータルサイト経由で検索・申込をするケースが徐々に増えてきていると考えております。当社が2020年に正式にリリースした管理会社向けの月極駐車場オンライン管理支援サービスである「アットパーキングクラウド」は対面手続きが不要であり、申込、契約、決済まで全てオンラインで完結できることが月極駐車場利用者のニーズに合致していると考えており、契約件数は増加傾向にあります。なお、我が国における自動車保有台数から推定される月極駐車場のうち、オンライン契約可能な月極駐車場の拡大余地はまだまだ大きいと考えており、当社のサービスを導入する管理会社の獲得とそれに伴う駐車場利用者拡大のために経営資源を集中しております。
もう一つの主要事業であるビルディングイノベーション事業は、労働市場の流動化および勤務形態の多様化等により、固定費である家賃を変動費化することができる貸会議室の利用機会は増加すると考えており、貸会議室の需要は伸長の余地があるものと判断しております。
こうした事業環境の中、経営の基本方針を達成するため、月極イノベーション事業のAPクラウドサービスを中核として、営業体制の強化及び営業効率の向上、月極駐車場管理システムの機能追加による利便性の向上により顧客である管理会社との契約数を拡大し、また、ポータルサイト「アットパーキング」のリニューアルによる駐車場利用者の利便性向上、広報活動等によるブランディング、対話型AIによる顧客対応の自動化等により顧客満足度を向上させることで駐車場利用者を拡大し売上高成長率を高めるとともに、絶えざる業務フローの見直しと再構築による業務効率化を推進することで営業利益率の改善も図り、企業価値を高めてまいります。さらに、APクラウドサービスの展開により蓄積される月極駐車場のデータや満空情報、利用者及びその保有する自動車に関するデータを利用し、EV充電設備付駐車場「アットパーキングEV」や短期貸し「アットパーキングウィークリー」といった月極駐車場内の未稼働区画の有効活用など、管理会社の収益改善、駐車場利用者の利便性向上につながる多様な高付加価値サービスを開発・提供することで、月極駐車場の利用価値最大化を推進します。将来的には、当社に蓄積された月極駐車場に関連するあらゆるデータと他企業の有効なデータを掛け合わせることで新たな収益機会を創出し、月極駐車場の利用価値をさらに高め、住宅地内の月極駐車場がモビリティ関連サービスのハブとなる「ファーストワンマイルステーション」構想と、これを実現するプラットフォームとしての「Space Platform for Mobility」の確立を目指します。また、ビルディングイノベーション事業のうち、会議室サービスにおいては、大都市圏を中心に新規会場の開発も進めてまいります。
当社は、遊休資産の有効活用から収益を生み出すビジネスモデルとして貸会議室運営サービス、月極駐車場検索ポータルサイト「アットパーキング」によるマッチングサービス、月極駐車場オンライン管理システムである「アットパーキングクラウド」を創出してきました。これらのサービスから派生するニーズにも対応すべく顧客にとってより付加価値の高いサービスの実現と原価低減の両立を目指します。具体的には以下「(4) 経営環境」及び「(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の解決に取組み、空間にまつわるあらゆるニーズの取り込みを図ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、売上高の拡大に注力するとともにコストの削減を図り、利益体質の強化を図ってまいります。これらの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営上重要な指標として「売上高および成長率」、「経常利益および成長率」、「当期純利益および成長率」を掲げ、長期的な目標を設定し活動をしております。また、月極イノベーション事業のAPクラウドサービスにおいて、「アットパーキングクラウド」へのシステム登録台数(以下、「APクラウド登録台数」といいます。)をKPIとしており、その算定方法とKPIとしている理由は以下のとおりです。
「APクラウド登録台数」
当社の顧客である管理会社が管理する駐車場の全てが当社に管理委託されるとは限らず、段階的に管理委託される場合もあることから、当社の管理システムへ登録された、すなわち当社が管理委託された駐車場が「APクラウド登録台数」になります。
当社がこの「APクラウド登録台数」をKPIとしている理由は、「APクラウド登録台数」が駐車場利用者からの収益の発生源泉となっている、すなわち、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1) 月極イノベーション事業 ② APクラウドサービス」に記載した収益化のポイント(「イ システム利用料」を除く)が、「APクラウド登録台数」として管理システムに登録されることで初めて実現可能となり、また駐車場台数ベースでの将来の収益獲得余地を適切に表すと考えるためです。
その他、収益化のポイントは、「ロ 決済手数料」に対応した「決済代行台数」、「ハ 初回保証料」及び「ニ 月額保証料」に対応した「滞納保証台数」があり、これらも「APクラウド登録台数」に準じた指標としてモニタリングを行っております。
以下に各台数の推移に関する図を示しております。
(4) 経営環境
① 経営環境
主要事業である「アットパーキングクラウド」については、上記「(2) 中長期的な会社の経営戦略」でも記載のとおり、月極駐車場利用者はインターネット上の検索ポータルサイト経由で検索・申込を行うという行動変容もあり順調に推移しております。また、当サービスの収益の源泉は月極駐車場ですが、その市場規模を図る日本全国にある月極駐車場数について公にされている調査報告が存在せず、その実態を把握することは困難と考えております。一方で、「自動車保有台数の推移」(「一般社団法人自動車検査登録情報協会」公表)によると、乗用車に関しては2024年3月末時点でおよそ6,197万台と10年前の6,005万台から3.2%増加しており、若者のクルマ離れやカーシェアリングサービスの登場などがありますが、乗用車の保有台数は堅調に推移しております。乗用車には「保管場所」が必要であることから、乗用車6,197万台分の「保管場所」が存在すると考えられ、これは自己敷地とそれ以外(月極駐車場含む)に大別されます。通常、自己敷地以外では月極駐車場が乗用車の「保管場所」となり、乗用車6,197万台のうち、「建て方別住宅数」(総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査)のうち「共同住宅比率」分の「保管場所」が概ね全国の月極駐車場数に該当し、当社のターゲットになると推定しております。なお、「建て方別住宅数」における「共同住宅比率」は2003年で40.0%、2013年で42.4%、2023年で44.9%と上昇傾向にあります。
当社が管理を委託されている「APクラウド登録台数」は2024年12月末時点で374,032台であり、サービス開発力の向上と顧客獲得努力によって将来の市場開拓余地は大きく、かつAPクラウドサービス収益化の起点となるものと考えております。
また、オンラインによる月極駐車場管理支援サービスという新たな事業領域には競合企業も参入し始めておりますが、以下「(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ・月極イノベーション事業における事業上の課題 a.駐車場利用者の利便性向上」及び「b.管理業務の省力化及び収益性の向上」に記載の当社の強みをコア・コンピタンスと捉え競争優位の源泉とすることで、さらなる事業の拡大を継続していきたいと考えております。
もう一つの主要事業であるビルディングイノベーション事業が属する貸会議室市場全般においては、労働市場の流動化および勤務形態の多様化等により、固定費である家賃を変動費化することができる貸会議室の利用機会は増加すると考えており、貸会議室の需要は伸長の余地があるものと判断しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
・月極イノベーション事業における対処すべき課題
当社が運営する月極駐車場検索ポータルサイト「アットパーキング」においては掲載物件の拡大、情報の精度及び認知度の向上が重要であり、サイトの掲載情報収集、契約や審査手続の簡素化による利便性の向上、オンラインで契約が完結できる取扱い物件数の拡大に注力してまいります。また、「アットパーキングクラウド」においてはサービス内容の浸透と営業体制の強化が重要であると認識しており、広告宣伝活動・広報活動及び採用活動の強化と既存社員の教育に注力してまいります。
当社は月極イノベーション事業の拡大により月極駐車場の従来の貸し方、借り方の概念を根本から変え、ホテル予約と同じようにオンラインで契約手続きが完結できる仕組みを提供し、またモビリティ分野における月極駐車場関連のサービスにおいて「アットパーキングクラウド」の拡大により月極駐車場の空き埋まりに関するリアルタイム情報を効率的に収集し、自動車関連業界との連携を進めることで同分野において有益なサービスを構築してまいります。
具体的には以下の課題に取組んでまいります。
a.駐車場利用者の利便性向上
駐車場利用者は、「アットパーキング」でエリア・区画・料金等の条件をもとに検索することで手間なく希望の月極駐車場を探すことができ、また「アットパーキングクラウド」を導入している月極駐車場についてはオンライン上で空き情報の確認・申込・審査・契約手続・決済までが可能であり、さらに契約中はマイページが発行され、契約情報の閲覧や更新、解約もオンライン上で可能であることなど、駐車場利用者にとって利便性の高いサービスとなっております。また、当社と駐車場利用者との継続的な接点となるマイページの視認性及び操作性の向上やカスタマーサービスの拡充により、さらなるサービスの質の向上と、「アットパーキングクラウド」を導入する駐車場の拡大に努めてまいります。
b.管理業務の省力化及び収益性の向上
駐車場料金は首都圏等都心部以外では安価な地域も多く、その一方で管理会社の手間は相応にかかっております。管理会社にとっては煩雑な割に収益性の低い業務とも言えるため、「アットパーキングクラウド」を導入することにより契約や解約を含めた駐車場管理業務の省力化が可能となります。また、当社が決済代行をしていることから駐車場利用者の利用料の入金情報を適時に捕捉でき、入金されなかった場合も管理会社に対して滞納保証をしていることから、管理会社にとっては再請求の手間が省けるとともに未回収リスクが軽減されます。
さらに、「アットパーキングクラウド」にシステム登録された駐車場に関する契約・解約情報は、当社が運営する月極駐車場検索ポータルサイト「アットパーキング」と連動することで、満空情報の適時な提供と契約済みの駐車場でも解約となった場合に、その情報が登録者に適時に送信される「アキマチ」という機能も付帯していることから、解約から次の契約までの期間が短縮化されることで稼働率が上がる仕組みとなっており、月極駐車場オーナーや管理会社としては利便性・効率性・収益性の向上に繋がると考えます。また、管理会社に対する導入時のエントリーハードルを下げ、導入後においていかに当社サービスを必要として頂けるかが継続的な拡大のポイントであると考えており、サービス導入時点で稼働している区画では、既存利用者からの保証料は収受せず、導入後においては、管理会社のインターフェースによる「アットパーキング」をOEM提供するなど、継続的にサービスを利用頂く施策を実施し利便性・収益性の向上に努めております。これらの取組により管理会社の駐車場開発へのハードルが下がり、管理会社が新しい駐車場を開発することで管理会社の収益の向上に繋がると考えます。管理会社にとってさらなる管理業務の省力化のため、顧客接点を増やすための人員を拡大し、継続的な管理画面の改善や、料金改定の通知代行等新たなニーズへ対応を柔軟かつ迅速に実施してまいります。
c.マーケティング及び営業力の強化
当社のマーケティング及び営業に関する課題は、データ(KPI)に基づいて的確に捉えてまいります。ここで言うデータ(KPI)とは、「アットパーキングクラウド」における「APクラウド登録台数」、「決済代行台数」、「滞納保証台数」であり、これらのKPIを増加させるには、当社の顧客対象である管理会社との新規契約を獲得することが予算策定の前提となることから、新規商談数、新規契約社数(導入社数)も含まれます。また、「アットパーキング」においては、顧客への提案数・契約数(マッチング数)・成約率になります。マーケティングの面では、住宅系ポータルサイトやハトマーク支援機構を始めとする各種不動産関連協会の会員名簿、展示会等のイベント出展等により収集したターゲットリストから、各社の管理する駐車場管理台数やエリア等の属性で絞り込み、ターゲット設定・優先順位・アポイント取得方法・担当者を明確にすることで、新規契約獲得の効率化を図っております。そして、これらの数値や関連情報をチームや担当者別に月次で集計し、計画との差異とその発生原因を分析することで、チーム・担当者への改善指導や改善施策の立案・実施を進めます。さらに一人ひとりの担当者が当社のマーケティング・営業方針やデータ(KPI)に基づいて自律自走する体制を構築するとともに、営業手法や提案内容、社内・社外のリソース配分を事業環境の変化に応じて随時見直すことで、マーケティング及び営業力が強化され全体最適が達成されるよう努めてまいります。
d.オペレーションスキルの向上及び業務フローの効率化
オペレーションスキルの質を高め、業務フローを効率化するには、次の項目が挙げられると考えております。
・日々のOJT、自己研修、及び大規模事故を想定した初動対応訓練によるスキル向上
・各業務フローをたな卸しすることで、業務の中にある「ムダ、ムリ、ムラ」を的確に抽出
・ミスや事故の発生頻度の集計、発生頻度の高い作業の特定、発生した場合の対応時間・対応コストの集計
・ITを利用した自動化等による業務工数の削減
以上を踏まえ、一定の高いクオリティを保った最適な業務フローの構築に努めてまいります。
・ビルディングイノベーション事業における対処すべき課題
働き方改革およびコロナ禍を経て働くスタイルは多様化しつつあり、不動産に求められる価値が変化しています。会議室、シェアオフィス等の各サービスについては、災害等の外的要因や空室率・賃料相場等の不動産市況の影響を強く受けることから、中長期的には、不動産市況や競合企業の出店状況に応じ随時新規出店を進める方針です。また、既存の運営物件においては、顧客ニーズの取り込みによる収益力の強化、ノウハウの蓄積を行いながら、新しい働き方に対応する新たなサービス開発を進めてまいります。具体的には以下の課題に取組んでまいります。
a.効率的な出退店戦略の実施
不採算店舗(貸会議室)の退店、売上高好調店舗の改装、新規出店については開発担当者をアサインし、空室率・賃料相場といった賃貸オフィスのマクロ情報をモニタリングしつつ、当社のターゲットとなるような個別物件の空き情報・賃料等の収集や、周辺エリアにおける競合企業の出店状況・価格帯・サービス内容・集客状況等を適宜把握しながら、適切なタイミングで新規出店を進めてまいります。
b.付加価値サービスの見直し・拡充による利益率の向上
単に貸会議室の提供のみに留まらず、各種割引サービスの拡大やキャンペーンの実施、ケータリングサービスの拡充、利用可能時間帯の拡大等顧客ニーズを的確にとらえたサービスを提供しております。
c.システムを駆使した営業・予約の最適化
予約システムである「MICE Platform」システムを継続的に改善し、利用者にとってより高い利便性の向上と、会議室予約の重複、また利用のキャンセルを極力減少させてまいります。
・全社に共通する対処すべき課題
a.人材の確保と育成、ダイバーシティ(多様性)の実現
当社の持続的な成長には、事業拡大に応じた優秀な人材を採用するとともに、組織体制の整備と福利厚生施策を実現していくことが非常に重要であると考えており、そのための根本思想として「人的資本経営」を標榜しております。当社のパーパス、ヴィジョン、ミッションに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行うとともに、従業員が働きやすい環境の整備や公平性・透明性・納得性の高い人事評価制度の構築を行ってまいります。また、採用後も、当社で存分に力を発揮することを後押しするために、業務を通じたトレーニングの他、リスキリングや専門領域をより深く掘り下げるための各種研修制度の充実にも努めてまいります。さらに、ダイバーシティ(多様性)の実現のために、女性管理職比率等の中長期的なKPIを設定し、その実現に努めてまいります。
b.コンプライアンスの徹底
法令遵守の徹底や高い倫理観、人権意識に基づく企業活動の実践により、社会から信頼され続ける企業として、社会的使命を果たしてまいります。そのためにも、定期的なコンプライアンス研修の開催等役職員一丸となって公正な事業活動を推進してまいります。
c.財務上の課題について
当社では、感染症の影響によるビルディングイノベーション事業の売上減少や、月極イノベーション事業の「アットパーキングクラウド」における新規顧客獲得のための広告宣伝費や営業代行費用、社内の営業人員の拡充といった先行投資により、2020年12月期から2022年12月期まで当期純損失を計上しております。一方で、ビルディングイノベーション事業においては、コロナ禍収束後は貸会議室の需要の回復により、売上高も回復しております。また、月極イノベーション事業の先行投資に関しては、今後の資金繰りに支障がないように取引金融機関と連携するとともに新株発行による資金調達も実施し、当該先行投資の結果として「アットパーキングクラウド」の売上高も伸長しており、収益力も高まっております。そのため、現時点で財務上の課題は認識しておりません。
今後も売上高の継続的な成長と業務の効率化を通じて当期純利益の伸長を図るとともに、営業活動によるキャッシュ・フローの水準と投資とのバランスを注視し、金融機関との協議を継続することで引き続き十分な運転資金を確保できるものと判断しております。
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