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【東証グロース:5258】「情報・通信業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(または本書提出日)現在において当社が判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社は、キャッシュレス決済サービス事業を取巻く経営環境が大きく変化する中、これまでに醸成されてきた社内文化や価値観を改めて明文化し、Corporate Identityである「ミッション(存在意義)・ビジョン(目指す姿)・バリュー(価値観)」を2020年12月に新たに制定いたしました。これらを、経営戦略の策定や経営の意思決定における根幹の考え方と位置づけ、全社一丸となって持続的成長を目指しております。
当社のキャッシュレス決済サービス事業は、社会インフラであり日本中の生活者の暮らしを支えるものとして高い倫理観を持ち続けながらも、「新しい生活を生み出す会社。」として、さらなる便利で安全な消費社会の創出を目指し、「ありえないを、やり遂げる。」の精神で今後もダイナミックにチャレンジを続けてまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、主な連結財務指標としては売上高、親会社株主に帰属する当期純損益を特に重視しておりますが、KPIとしては、①全社の売上高、②「情報プロセシング」分野の売上高、③定常的収益源であるストック収入売上、④加盟店に対する物理的な「ラストワンマイル」であり非財務指標における当社の事業規模を示す当社センターへの接続端末台数、⑤将来の利益源泉となる開発投資を経常的に実施していることから過年度の投資の影響の少ないEBITDAの5点を事業計画上定めております。また、9つのマテリアリティで構成されるサステナビリティ・ステートメントを定め、持続的な成長と企業価値の向上を目指しております。
(3)経営環境
2018年4月の経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」において、2025年にキャッシュレス決済比率40%の実現を目指す(将来的には世界最高水準の80%を目指す)ことがうたわれ、「国策」としてキャッシュレス決済が推進されております。この目標に対し経済産業省の発表(2025年3月31日)において、2024年のキャッシュレス決済比率が42.8%に達し、目標を前倒しで達成する等、堅調に上昇しております。これを追い風に、同業界においては、生活様式の変化を踏まえつつ、無人店舗やモバイルを起点とした新たなサービスやソリューションが増加しています。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会 「キャッシュレス・ロードマップ 2023」(2023/8)から当社作成
一方、政府の成長戦略により、業界全体の決済手数料減少が推進されることが見込まれているほか、決済手数料を主な収益源としないQR・バーコード決済サービス事業者は、これまでの新規参入段階を経て、現在では勢いを増し市場での存在感を高めています。また、既存の株式会社エヌ・ティ・ティ・データが運営する「CAFIS」及び株式会社日本カードネットワークが運営する「CARDNET」の決済ネットワークに加え、三井住友カード株式会社等が運営する「stera」も拡大しており、業界全体における競争が一層激化しています。このような状況を踏まえ、今後の市場構造や競争環境の動向を注視しております。当社は、決済業界における各プレイヤーと、一部では競合しながらも、競合の少ない電子マネーサービスを強みに、多くのプレイヤーと広く協業し、面を拡大するオープン戦略をとっていることから、市場再編や新規参入にも柔軟に対応していく方針です。
マクロでは、雇用人口減少に伴う自動化の発展、特に主な対面市場となっている小売業のニューリテイル(注)化の流れは新規プレイヤーの参入を促す脅威でもあると同時に、新たな市場機会と捉えております。
[ 決済業界の各プレイヤーと当社の関係性 ]
(注)小売業において、IT及びデータを活用することで、売上の拡大やコスト削減を図るとともに、消費者に対しオンラインとオフラインの融合等により新しい消費体験を提供するコンセプト
(4)経営戦略
当社は、これまで市場が求める全ての決済端末に接続しあらゆる決済サービスを高いセキュリティかつワンストップで提供するという方針のもと、クラウド型の電子決済処理で事業を拡大してまいりました。既に接続端末台数は110万台超(2025年3月末時点)、年間で4.9兆円(2025年3月期実績)を超える決済を処理する社会インフラとして拡大しております。
[短期成長戦略]
今後、短期経営戦略としては、「キャッシュレス決済サービス事業」の面的拡大・岩盤化を推進し、市場成長のフェーズにおいて、ダイレクト営業とホワイトレーベルによる幅広い営業ルートにより圧倒的な規模を追求する「①接続端末の増加戦略」と、汎用電子マネーをフックとしソリューションを複合的に提供することで加盟店に深く入り込む「②クロスセル(注1)戦略」により、ストック収入の成長カーブを引き上げる方針です。
①接続端末の増加戦略
決済事業者との協業による加盟店拡大に加え、金融機関・公共交通・物流事業者等、流通事業者以外の領域拡大により、新たな面の拡大を追求しております。
なお、自社端末としては、新たに新端末「UT-X20」「UT-P11」を市場へ投入するとともに、他社端末での電子マネー対応を支援し、当社決済処理センターでのプロセシングを行う等、引き続きセンター運用強化のために端末レイヤーはオープンに協業を進める戦略です。
②クロスセル戦略
直近では、キャッシュレス推進の追い風を捉え、QR・バーコード決済等の市場に導入される新決済サービスも取込みつつ、端末あたりの定額(決済手段やブランド数に依存するが、処理件数、金額に連動しない)サブスクリプション型の課金体系から一部(QR・バーコード決済精算業務等)の従量課金(GMV課金(注2)、処理件数課金)の導入を進めており、ストック収入による収益拡大と合わせて、定額型・従量型のベストミックスを追求していきます。
[中長期成長戦略]
中長期での経営戦略としては、決済インフラを梃に、店舗の高度化を目的とした「総合流通ソリューション」の提供を通じて、新たな収益基盤の構築を目指しております。その取り組みの一環として、特に決済と親和性の高い店舗業務のラストワンマイルであるPOS(販売時点情報管理システム)に着目し、POSのクラウド化およびIoT化サービスを開始しております。また、POSのクラウド化およびIoT化により、クラウドPOSから集約される決済データと非決済データや、その他の店舗ソリューションから集約されるデータの「保全」「連携」「分析」を一貫して提供するデータプラットフォーム「Xinfony Data Hub(シンフォニー データハブ)」の提供も開始しております。同サービスは、競争優位性をさらに高め、収益化の機会を創出する「情報プロセシング」の重要な要素と考えており、今後一層の展開を行ってまいります。
店舗を高度化する「総合流通ソリューション」としては、決済、プリペイド、ポイントサービスのほか、マーケティングや、画像認識をはじめとするIoT、広告、医療等、領域を拡大しています。
また、キャッシュレス決済サービス事業及び情報プロセシング事業の更なる拡大のため、業界のロールアップも視野に入れ、積極的にM&Aを行っていき、持続的、非連続的成長に努めてまいります。
(注)1. 契約済や検討中のサービスと併せて、他のサービスを販売すること
2.Gross Merchandise Value(流通取引総額)
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① セキュリティ体制の継続的強化及び決済システムの強化
電子決済サービスを提供している当社の事業には強固なセキュリティ、セキュアなシステムが求められており、それらを継続して強化していくことが当社の課題であると認識しております。具体的には、クレジットカード業界のセキュリティ基準協議団体(PCI SSC)が定めるPCI DSSの基準に則った運用をしており、決済端末で暗号化されたカード情報は、システムで復号化されるまで、決済処理の経路上でカード情報を取得できないようにしております。また、当社の事業がインターネットを介しての通信ネットワークに依存していることから、システム内の多層化・冗長化に取組んでおります。システム上の観点のみならず、情報セキュリティに関する規程に基づく管理の徹底と社内教育及び研修の実施によりセキュリティの強化に努めてまいります。
② データセンター移設の遂行
当社は2025年3月期にデータセンター移設完了を予定しておりましたが、データ移設工程を進めている段階において、一部不具合を検出したことを受け、複数の追加対策を講じたことから、移設完了予定を2025年6月に延期し、段階的に移行作業を確実に進めてきておりました。しかしながら、提出日現在において一部の取引先様において、ネットワーク環境の再調査が必要なことが判明したため、万全を期して追加検証を実施することといたしました。これにより2025年6月に予定していたデータセンター移設の完了時期を最長2025年9月末まで延期することといたしました。
移行作業において、一時的にサービスの停止等を余儀なくされるような予期せぬ事象の発生等が、サービス提供に影響を及ぼす可能性があります。なお今回の完了時期の延期による業績への影響は軽微となる見込みです。
③ 顧客満足度向上
当社のさらなる成長を実現していくために、より多くの顧客に継続的に選ばれるよう、顧客満足度向上に努めることが、当社の事業競争力の強化に資すると考えております。そのために、決済遅延やシステム障害を未然に防止し、常時安定したサービスを提供できるインフラの整備や、顧客の声を反映しながら機能や性能の向上を図る改善サイクルの確立、顧客からのご意見・ご要望に迅速かつ的確に対応できる体制の強化等、サービス品質向上に努めてまいります。
④ 一時的な赤字計上への対応
当期は、データセンター移設およびサービス品質向上に際し、システムの安全性確保やサービスの安定提供を目的に複数の対策を実施したことにより、一時的なコストが増加したほか、フロー収入である端末販売について一部端末にて次期機種の展開を見据えた買い控えや、顧客の計画見直しによる導入遅延や失注により当初計画を下回ったことも重なり、赤字計上する結果となりました。これらは将来的な事業基盤強化を目的とした先行投資および一過性の要因であると認識しており、データセンター移行の確実な遂行と販売施策の強化による売り上げ回復により、収益構造の早期改善に向け努めてまいります。
⑤ ストック収入による定常的な利益の創出
当社の収益モデルは、顧客端末が当社決済処理センターに接続され継続して利用されることで収益が積み上がっていくストック型の構造にありますが、収益を積み上げていくために先行して費用が計上されるインフラ事業的要素があります。顧客基盤の拡大と端末設置台数の増加に伴い、当社決済処理センターへの接続による売上のみで定常的な利益を創出することが課題となるため、コストマネジメントを徹底し利益の創出に取組んでまいります。
⑥ 「情報プロセシング」事業の拡大
当社は決済のみならず流通業が必要とするソリューションを総合的に提供する企業体、そしてデータを保存・分析・連携する「情報プロセシング」を提供する高度なインフラ事業体へと進化を遂げることが戦略的方向性であることから、「情報プロセシング」の安定的な収益化が課題であると認識しております。「情報プロセシング」の新サービスとなる「クラウドPOS」「Xinfony DataHub」「RXクラウド」の提供を開始し、今後はさらなる導入拡大を図るとともに、収益性向上の観点からは、スケールメリットを活かしたコスト効率の改善等利益体質の強化にも注力してまいります。その他のサービスにおいても、顧客等との実証実験などを通じ具体化を図り、取組みを加速させていくことで収益化を図ってまいります。
⑦ M&A及びアライアンスによる企業価値向上
当社は、当連結会計年度において、M&A及びアライアンスにより事業領域を拡大、新たな顧客基盤を獲得してまいりました。引き続き、当社グループの中長期的な持続的成長と企業価値向上のため、M&A及びアライアンスを推進してまいります。
⑧ 子会社との連携強化と子会社管理体制の確立
当社と経営統合した子会社との間で協業の体制を構築するとともに、相互に事業シナジーを創出し、当社グループの企業価値を向上させていくことが必要であると認識しております。当社の経営方針に沿った子会社の経営管理体制を整備し、子会社管理に関する規程等に基づき経営管理を行い子会社管理の体制を確立させ、当社と子会社のサービスの融合、相互送客によりグループシナジーを創出してまいります。
⑨ 人的資本経営の推進
当社の持続的な成長と企業価値の向上には、何事もやりきることができる強い「組織」とそれを構成するあらゆる「人材」が必要不可欠と考えております。事業の拡大に伴う、意欲の高い「人材」を確保し、戦略的な教育と成果に応じた評価と処遇の実行及び安心して働くことができる職場環境の向上をもって、より一層の人的資本経営の推進を行ってまいります。
⑩ 人件費・外部支出増加への対応
近年のIT分野の人材不足、円安や国内外の政情による経済への影響等により、外部委託コストを含む人件費およびサービス提供に必要となる機器やソフトウェアの価格が上昇しており、当社収益を圧迫する要因となっています。更なる事業成長のために、サービス品質を維持・向上させながら、持続可能な収益性を確保するために、引き続きコスト構造の見直しと最適化に努め、適正なコストコントロールを目指してまいります。
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