企業兼大株主デンカ東証プライム:4061】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(経営方針、経営環境及び対処すべき課題)

 当社グループは、2023年度より「事業価値創造」「人財価値創造」「経営価値創造」の3つの成長戦略により企業価値を向上させる、経営計画「Mission 2030」を推進してまいりました。

 しかしながら、世界情勢のうねりの中で、計画策定時と比べ当社を取り巻く事業環境が想定以上に変化したこともあり、業績が低迷しております。2024年度は、この状況を打開すべく3つの施策に注力いたしました。

1つ目は、「事業価値創造」におけるポートフォリオ改革の着実な実行です。最優先事項のクロロプレンゴム事業の抜本的対策については、米国クロロプレン製造子会社デンカパフォーマンスエラストマー社(以下DPEという)における関連固定資産の減損損失を計上するとともに、同社はクロロプレンゴム製造設備を暫定停止することとなりました。

DPEは、コストの上昇、生産数量の減少、要員面の問題や世界的な需要後退の影響により、当面の収益性の改善は困難な状況にあります。コスト面については、2015年にDuPont社から当該製造設備を取得した時点では必要と想定されなかった、クロロプレンモノマーの排出削減設備の導入・運用に係る多額の費用が発生していることに加え、近年の米国内におけるインフレにより主要原材料費や修繕費の上昇が加速し、コストが増大状態にあります。生産面では、排出削減対策に伴う操業上の制約やサプライチェーンの寸断、自然災害に伴う計画外停止等による生産数量の減少のほか、要員の維持・確保の困難化といった問題にも直面しております。さらに、世界経済環境の変化によるクロロプレンゴムの需要後退の影響も相まって、当社グループの収益を大きく圧迫しております。

 このような状況に鑑み、当社はDPEの関連固定資産の減損損失を計上するとともに、同社はクロロプレンゴム製造設備を暫定的に停止することとなりました。今後、同社では、同事業について事業譲渡や資産の譲渡の可能性を含め、あらゆる選択肢を検討することとしており、クロロプレンゴム事業の抜本的対策を着実に進めてまいります。なお、現時点で製造設備の恒久停止は決定しておりませんが、DPE生産品の需要家に対しては、現有在庫に加え当社の青海工場生産品の供給を開始いたしました。

 また、大船工場の稼働停止を決定いたしました。同工場の主力製品である合繊かつら用原糸「Toyokalon®」はシンガポール子会社に事業を集約し、構造改革によるコストの削減と新製品へのシフトで収益の向上を図り、高収益事業への転換を進めてまいります。同じく大船工場で生産しております「カラリヤン®テープ」は、販売数量が減少しており、今後の事業の維持・成長が見込まれず、同テープの原料の一部である「カラリヤン® Y フィルム」も単独での事業継続は困難との結論に至り、事業撤退する予定です。なお、工場用地については、グループ内での有効な活用方法がないことから、譲渡することで資本効率の改善を図ることといたしました。

 事業の縮小や撤退等を推進する一方で、注力分野である「ICT & Energy」分野の新製品として、次世代高速通信において、電気信号の伝送損失を低減させるために素材に要求される電気特性を備えた低誘電有機絶縁樹脂「スネクトン®」を上市いたしました。各種高速通信機器の銅張積層板向けでの販売を開始したほか、フレキシブル銅張積層板や各種層間絶縁材用途での採用検討が進んでおり、PC、スマートフォン、データセンター、携帯電話基地局、ウェアラブル端末、自動車など幅広い分野への展開が期待されており、新たな事業の柱に成長させていきます。また、当社は、世界各国の最先端の技術を持つスタートアップ企業への出資や提携による新規事業創出を推進しております。2024年度はウェアラブル電子聴診器に関するスタートアップ企業と高性能光学フィルムの技術を保有するスタートアップ企業へ出資しており、既存事業の改革のほか、新規事業の開発にも注力いたしました。

2つ目は、投資計画の見直しです。経営計画「Mission2030」では、当初8カ年累計で戦略投資3,600億円を含む合計5,400億円の投資を計画しておりましたが、これを見直し投資支出1,000億円の削減を目指すことといたしました。投資案件の優先順位明確化や投資計画の更なる厳選、不急案件のスケジュール見直し等、投資額の削減を図る一方で、当社の成長に不可欠な重要投資については、案件を厳選することで、経営資源を集中させております。

2024年度は、注力分野のうち「ICT & Energy」分野では、過年度に投資を決定している次世代高機能球状フィラーや窒化ケイ素の生産能力増強工事、タイの連結子会社でのアセチレンブラック生産プラント建設工事等に加え、新製品である低誘電有機絶縁材料「スネクトン®」の製造プラント建設工事を決定し設備投資を実施いたしました。また、「Healthcare」分野では、抗原迅速診断キットおよび検査試薬の生産能力増強工事等の設備投資を実施しておりますが、これらの投資は、当社の成長に必要不可欠であり、拡大する市場をしっかりと捉えた事業展開を図ってまいります。

3つ目は、2024年4月からスタートした全社をあげたコストダウンプロジェクト/ベストプラクティスプロジェクトです。これまで、コストダウンは社内の知見で実施してきましたが、このプロジェクトでは「コストベンチマーク」や「最適なコストダウン手法」など社外の知見を全面的に活用し、経営トップ直轄体制で徹底的なコストダウン活動を強力に推進いたしました。2024年度は原価低減や販売経費低減、投資の適正化等により、当初目標の10億円に対して、約13億円のコストダウンを実現しております。最終目標である2026年度の100億円のコストダウン達成へ向け、引き続き、やり抜く力を発揮して実績化につなげます。

 以上の通り、2024年度は、経営計画策定時の前提条件が変動し業績が低迷していることへの打開策として、3つの施策に注力いたしましたが、DPEの固定資産の減損と製造設備の暫定停止や大船工場の稼働停止等、構造改革を推し進めた結果、特別損失を計上し大幅な赤字決算を余儀なくされました。今後、前提条件の変動をふまえて経営計画の見直しを行うこととしておりますが、基本的な方針や長期的な戦略等に変更はありません。諸施策を確実に成果につなげるべく、当社のコアバリューである「挑戦」を促進するための風土醸成や組織作りを進め、スピード感をもって取り組み業績を成長軌道に回帰させてまいります。

 当社は、1915年にカーバイドおよび石灰窒素の製造販売を目的に設立され、本年5月に110周年を迎えました。会社設立以降、先人たちが、モノづくりを通じて社会に貢献することをモットーに、果敢に新しい事業に挑戦し続け、現在では、電子材料から合成ゴム、合成樹脂、そしてワクチンや検査試薬といった医療分野まで幅広い事業を展開しております。この様に、環境変化にしなやかに対応し、社会に有益なものを生み出して貢献することは110年続く当社グループの歴史そのものであり、DNAであると考えております。

 そして110年後の現在、当社は、先人から受け継いだ「挑戦」「誠実」「共感」の3つのコアバリューを土台に、「化学の力で世界をよりよくするスペシャリストになる。」ことを道しるべであるパーパスと位置付けました。そして、「2030年までに、人財・経営価値を高めスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた事業価値創造に集中する。」というミッションを加え、ビジョンといたしました。今一度、「安全」「品質」「環境」は企業活動を継続するための絶対条件であることを肝に銘じながら、「One Denka」で臨むことで、業績を早期に成長軌道に回帰させ、ビジョンの実現に挑戦してまいります。

◇新たなビジョンと新経営計画「Mission 2030」 ~OUR "NEW" VISION & Mission 2030~

2023年4月、デンカグループは新たな挑戦をはじめました。これまで指針としてきた「The Denka Value」(企業理念)、Denkaの使命、Denkaの行動指針は、従業員の声をふまえ、より未来のデンカを見据えた新たな「ビジョン」へと進化。同時に、2023~2030年度の8ヵ年を対象とする新経営計画「Mission 2030」が始動しました。

デンカの新たなビジョン

 新たなビジョンは、デンカのDNAであるコアバリューを土台とし、デンカを導く北極星となるパーパス、2030年に成し遂げたい務めとしてのミッションを重ねた構成とすることで、文字の域を超え、全従業員が自分ごと化できる新しいデンカの未来像を表しました。


コアバリュー

「コアバリュー」とは、デンカのDNA。さまざまな判断をする上での拠り所にもなります。「挑戦」「誠実」「共感」は、デンカが脈々と受け継いできた姿勢を改めて言語化したものです。これからも一層大切にしていくべき信条です。

パーパス

「パーパス」とは、デンカを導く北極星。デンカが存在する根本的理由です。デンカは世界でどのような存在でありたいのか、デンカだからこそできることは何かを突き詰めて考え、「化学の力」「世界をよりよくする」「スペシャリスト」といった言葉一つひとつを選び出しました。

ミッション

「ミッション」は、デンカの務め。大胆で説得力のある野心的目標です。「コアバリュー」や「パーパス」が普遍性を持つものであるのに対して「ミッション」は明確なゴールと期限があり、例えるならば“登るべき山”です。2030年に、その頂上にたどり着くことを目指し、具体的な戦略を経営計画「Mission 2030」に落とし込んでいます。

コーポレートメッセージ

 このデンカのビジョンを社内外に分かりやすく伝達する言葉としてコーポレートメッセージ「世界に誇れる、化学を。」を創りました。世界に誇れる唯一無二の存在(=スペシャリスト)として、化学の力で世界をよりよくすることを目指すという想いを込めました。

(ご参考)

経営計画「Mission 2030」

 新たなビジョンの実現に向けて、2030年をゴールに取り組む経営計画が「Mission 2030」です。

 事業価値創造、人財価値創造、経営価値創造の3つを成長戦略として、企業価値向上に取り組みます。事業価値創造では、デンカの全ての事業を、スペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」とすることを目指します。


2030年の主なKPI目標

事業価値創造

 

人財価値創造

 

経営価値創造

売上高

6,000億円以上

 

平均研修金額(21年度比)

2倍

 

プロセス革新投資

23-30年度 500億円

3つ星事業

100%

 

 

営業利益

1,000億円以上

 

 

人権リスク特定と
対応プロセス確立 

営業利益率

15%以上

 

 

ROE

15%以上

 

女性/外国籍/経験者採用者の
管理職比率

50%

 

労働災害度数率(21年度 1.1)

0.2以下

ROIC

10%以上

 

 

投資決裁額

23-30年度 5,400億円

 

 

高リスクサプライヤー数

0件

総還元性向

50%水準

 

 

CO2排出量
 (13年度比)

60%削減

 

従業員エンゲージメント
可視化と継続的な改善

 

重大品質事故発生件数

0件

再生可能エネルギー
 発電最大出力
  (21年度 133MW)

150MW

 

 

重大コンプライアンス違反件数

0件

3つの成長戦略

<事業価値創造>

 事業価値創造では、想定される未来世界とメガトレンドから導き出された「3つの注力分野」である、ICT & Energy(アイシーティー・アンド・エナジー)、Healthcare(ヘルスケア)、Sustainable Living(サステナブル・リビング)に重点を置きます。そして、2030年までにスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」を100%にしていきます。また、「3つ星事業」への転換が困難な事業については、売却・撤退を含め、ポートフォリオ変革を進めていきます。そのために、8年間合計で戦略投資3,600億円、研究開発費1,800億円をかけて、2030年に営業利益1,000億円以上を目指します。

 並行して、地球への貢献と、企業のさらなる社会的価値向上を目指し、8年間合計で850億円の環境投資を行い、サステナビリティを追求します。

3つの注力分野

ICT & Energy

 

2030年
営業利益目標

 

450億円

 

メガ

トレンド

再生可能エネルギー

モビリティー大変革

半導体やデバイス需要拡大

製品

次世代高速通信

xEV・再生可能
エネルギー

 

球状シリカ、球状アルミナ、キャリアテープ用シート・トップカバーテープ、放熱材料、エミッター、低誘電有機絶縁材料

アセチレンブラック、窒化ケイ素、セラミックス基板、球状シリカ、球状アルミナ

 

方針

最先端素材を供給し、
よりよい社会を実現

Healthcare

 

2030年
営業利益目標

 

400億円

 

メガ

トレンド

医療ニーズ高度化

革新的な医療技術

製品

予防

診断

治療

 

インフルエンザワクチン

自動分析装置用試薬

抗原検査キット

がん治療用ウイルスG47Δ製剤

 

方針

予防・診断・治療の領域で
世界の人々のクオリティ・
オブ・ライフ向上

Sustainable Living

 

2030年
営業利益目標

 

150億円

 

メガ

トレンド

食料・水資源枯渇

インフラ需要増大

製品

食糧

インフラ

生活用品

 

バイオスティミュラント

特殊混和材
LEAF 

高機能スチレン系樹脂

サステナブルプラスチック「PLATIECO®」

 

方針

安全・安心・快適な
日々の暮らしの実現

サステナビリティの追求

方針

カーボンニュートラルの実現

施策

・低炭素アセチレンチェーンの確立を含むポートフォリオ変革実施

・CO2分離・回収・利用技術の開発と実装化

・水力発電増強、太陽光発電所新設によるグリーンエネルギー拡大

サステナブルな都市と暮らしの充実

・スチレン系包装材料のサーキュラーエコノミー推進

・CO2コンクリート固定化技術の確立

環境の保全・環境負荷の最小化

・廃棄物ゼロエミッション継続

・自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づく生物多様性・水資源保全等の自然関連リスクへの対応


<人財価値創造>

 社員一人ひとりが自己実現と成長を実感できる企業を目指し、人財投資と制度改革を実現します。

方針

戦略

人財育成体制の強化

将来の経営層育成と、全社一貫の教育体系の構築および自ら学ぶ文化の醸成

ダイバーシティ、
エクイティ&
インクルージョンの推進

多様な考え方を持った人間が活躍できる職場環境・制度・文化の醸成

健康経営と働き方改革

「明日も来たくなる職場」のための制度改革の推進

<経営価値創造>

ESG経営の観点から、企業存続の前提となる経営基盤の強化に取り組みます。

方針

戦略

プロセス革新

ビジネスモデル・組織の変革と生産性向上、社内デジタル人財の育成

人権の尊重

国連ビジネスと人権に関する指導原則および国連グローバルコンパクトに基づく、人権方針制定と人権尊重の徹底

安全最優先

グループ全体で本質安全化、ルールの整備と安全な職場環境づくりの推進

サプライチェーン・
 マネジメント

サプライチェーン一体となった持続的な付加価値向上

製品安全

信頼される製品とサービスを提供し、社会と環境の持続的成長に貢献

コーポレートガバナンス
高度化 

高い倫理観に基づく透明性・公平性を確保した、より高度で実効性のあるコーポレートガバナンス体制の構築

財務戦略

ROEとROICの改善

 下記施策を通じて、ROE(株主資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を改善させ、企業価値向上を図ります。

 

18-22年度平均

30年度目標

施策

ROE

8.4%

15%以上

・3つの価値創造による収益性と効率性向上

・ROIC評価による事業の選択と集中

・最適資本構成の追求(財務レバレッジ活用)

ROIC

7.0%

10%以上

キャッシュアロケーション~総還元性向50%水準を維持~

 営業キャッシュフローと負債を有効に活用して、8年間合計で7,400億円のキャッシュを生み出し、それを投資に5,700億円(注)、株主還元に1,700億円(総還元性向50%水準)配分します。

 

 

(億円)

 

 

 

 

(億円)

キャッシュイン累計(年平均)

 

キャッシュアウト累計(年平均)

 

Denka Value-Up
5ヵ年

Mission 2030
8ヵ年 

 

 

Denka Value-Up
5ヵ年

Mission 2030
8ヵ年

営業CF

1,717
(343)

6,500
(813)

 

投資CF

戦略

 700
 (140)

3,600
 (450)

資産売却

121

100

 

一般

1,093
 (219)

2,100
 (263)

借入

554

800

 

小計

1,793
 (359)

5,700
 (713)

合計

2,392
(478)

7,400
 (925)

 

株主還元

 (総還元性向50%水準)

599
 (120)

1,700
 (213)

 

 

 

 

合計

2,392
 (478)

7,400
 (925)

(注)2024年5月10日に公表した「2024年3月期 決算説明会資料」に記載のとおり、投資案件の優先順位明確化や、投資計画の更なる厳選、不急案件のスケジュール見直しなどにより、1,000億円削減し、4,700億円とすることを目指します。

※文中の将来に関する事項は、計画発表時において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

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